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絶対的医師不足の激化しかない新専門医制度導入

 医療崩壊が言われ始めて10年余、ウォッチして来た立場から来年導入の新専門医制度は絶対的な医師不足を激化させるしかないと考えます。大学の医局が再び研修医を抱え込む新体制は潤沢な医師数が無ければ無茶です。医学部の新増設に反対してきたのが医学界の大勢の中、2004年の初期研修医制度導入で研修医が大学を離れて自分で研修先病院を選ぶようになって、医局の力は地に落ちました。新専門医を育てる基幹施設は大学が中心とすることで復活したいとしか見えません。自前の努力で研修医を集めてきた自治体や中小病院が先行きを危惧して当然です。残念なことに、マスメディアは推進側と反対派の主張を両論併記する報道で逃げておく姿勢がありありです。

 2006年6月に《医療崩壊が産科から始まってしまった [ブログ時評59]》を書き、翌年には《お産の危機は首都圏にこそ迫っている [ブログ時評83]》で医師数が足りなくて地元で出産できなくなっている県があると指摘しました。最も医師不足が深刻な領域の一つ、産婦人科で調べれば新専門医制度の問題点が明らかになるでしょう。


 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が2014年に出した「わが国の産婦人科医療再建のための緊急提言」から引用したグラフ「資料2 2008-2013年度の都道府県別新規産婦人科医数(人口十万対)」です。学会と医会は年間500人の新規医師が欲しいと願っていて、それが真ん中の赤線です。全国的にとても足りていません。特に赤い棒グラフの県は希望レベルの半分以下で「極度の重症」と申し上げるしかありません。

 《過去6年間の都道府県別の人口あたりの新規産婦人科専攻医数には明らかな地域格差がある。東京、京都、大阪、岡山、徳島、福岡の都府県で研修開始した医師は相当数が周辺県に派遣されるなどして、その県の産婦人科医療に貢献しているものと考えられるが、そのような広域連携を考慮しても、資料2で赤で示した県については、絶対的不足状況に対する、緊急のてこ入れが必要と考えられる》

 赤グラフでも全国最低レベルにある福島で初期研修をした山本佳奈さんが《Vol.043 「基幹施設は大学が基本」が招く産科医療の危機 〜地方から考える産婦人科専門医制度〜》でこれから何が起きるか示しています。

 《私が初期研修を行った福島県の南相馬市立総合病院の産婦人科の常勤医は、たった一人だ。年間約230件ものお産を、常勤医一人でこなしている。一方、福島県立医科大学は常勤医18人に対し、年間分娩数は499件だ(2015年度)。常勤医一人当たりの分娩数はたったの24件である。どちらの施設で研修する方が、より経験を積むことができるかは一目瞭然だ。だが、南相馬は一人しか指導医がいないため、福島県立医大の連携施設の扱いだ。専門医を取得したければ、基幹病院である福島県立医大に所属しなければならない。どうすれば南相馬で研修ができるのかと、福島県立医大の産婦人科教授に相談したところ、「産婦人科医師が一人しかいない病院に専攻医は派遣することはない」と断言されてしまった》

 このままでは「地域医療に支障をきたす」と懸念する全国市長会に対して、日本専門医機構は大学への研修医吸い上げがあっても研修過程で関連施設に派遣するから支障はないとの立場です。でも、年間230件ものお産で孤軍奮闘している一人医長の病院は対象ではないのです。

 厚生労働省はまだ来年実施に必ずしも同意していません。6/13付、メディ・ウォッチの《専門医機構、地域医療への配慮について「必ず」都道府県協議会の求めに応じよ?厚労省検討会》はこう伝えています。

 《新たな専門医制度によって地域・診療科の医師偏在が助長されないよう、専門医機構は、研修施設群の状況などを「必ず」都道府県協議会に情報提供し、かつ都道府県協議会で「是正の必要がある」などとの求めがあった場合には「必ず」協力するべきである?。12日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」(以下、検討会)では、荒井正吾構成員(奈良県知事)からこうした強い要請が出され、日本専門医機構の理事長である吉村博邦構成員(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)は関連規定の修正を約束しています。厚生労働省医政局医事課の武井貞治課長は、「検討会では、機構や学会が地域医療へどう配慮しているかをフォローしていくことになる。今般指摘された規定修正の状況や、都道府県協議会の状況などを見ながら、次回の検討会開催を考えたい」とメディ・ウォッチにコメントしています》

 これまでは専門医と称しても各学会で養成と認定の仕組みはばらばらであり、質を揃えたい趣旨は理解できます。しかし、絶対的な医師不足の中でおやりになるのは国民医療に重大な背信を招きかねません。医師免許を得たら一生安泰という医師のエゴが捨てられる程度に医師数を増やしてから、向上心がある医師は専門医に取り組むシステムにすべきです。医学部を作らせないで医師が足りないのに研修医は大学中心に集める――余りに自己中心的だと思われませんか。


やはりノーベル賞大隅さんの警鐘を無視した政府

 2017年版の科学技術白書を読んでみると、ノーベル賞受賞で大隅さんが発した日本の科学研究への警鐘を政府は予想通り無視したと断ぜざるを得ません。その後の内外からの政策批判にも聞く耳を持たずメディアも同調です。科学技術白書は《特集 2016年ノーベル賞受賞、及び学術研究・基礎研究の振興に向けた我が国の取組》との大特集までして「素朴な疑問に根付いた知的好奇心」から発した大隅さんの仕事を研究関連データを跡付けて称賛、さらに「日本の基礎科学力の揺らぎを生じさせている危機的な課題」にまで踏み込みます。しかし、具体策として挙げられている政策は従来のままであり、それが科学技術白書自身が「トップ10%論文の順位で比較すると、この10年の間に、日本は4位から10位に低下している」と分析している危機の原因になっている問題に触れようとしません。

 大隅さんの警鐘は昨年10月に第542回「ノーベル賞・大隅さんの警鐘は政府に通じまい」で紹介しました。当時も安倍首相以下、的はずれぶりは鮮明でした。《政府が「選択と集中」のさじ加減が出来るとの不遜さをがノーベル賞学者の憂いの対象になっているのに、国立大運営費交付金削減を毎年1%ずつ積み増ししてきた失政への反省など何処にもありません》


 科学技術白書は大隅さんの研究「オートファジー(自食作用)」に政府の科研費が総額17.8億円と大きな支援をしてきたと胸を張ります。このグラフはノーベル賞に至る大研究が国によってどうサポートされたかを知る標本です。大隅さんは東大助教授だった1988年に顕微鏡下で酵母細胞のオートファジーを発見しましたが、3年間は論文にならず科研費も細っています。東大でも認められず教授になれる見込みがなく、岡崎の基礎生物学研究所に招かれて集まった若手と単細胞の酵母から多細胞へ対象を拡張、成果を出してから特別推進研究採択などで大きな研究費が付いたのです。

 認められず苦しい時期に支えてくれた研究費はどこから来たのか、科学技術白書もこう認めています。《東京大学在籍中には、上記の科学研究費助成事業と併せ、国立学校特別会計における「教官当積算校費」等によって研究が進められてきた。このことは、研究者の自由な発想に基づく学術研究を支援する上での基盤的経費の重要性をも示すものである》

 現実は2004年の国立大学法人移行以後、毎年削り取られて、今やその自由な研究費がほぼゼロになっています。研究費どころか、教員数削減に多くの大学が走っています。ノーベル賞受賞を機に国立大学理学部長会議が声明「未来への投資」を出しました。

 《国立大学の基盤経費として措置されている運営費交付金は、独創的な研究のシーズを広く探索するための原資となります。大隅先生の研究で言えば、顕微鏡を使って動く粒を観察する過程に当たります。この時期の研究は、研究者自身にとってもどのように展開するかわかりませんので、競争的資金で支援されることはありません。ましてや産業界からの支援はあり得ません。しかし、大隅先生の研究からもわかるように、この時期の研究が決定的に重要です。この10年間以上にわたり毎年1%ずつ行われてきた運営費交付金の削減が基礎研究の体力を奪っていることは明らかです。このままでは、10年後、20年後に日本からノーベル賞が出なくなることを懸念します》


 上の図「被引用度が高い論文数の国際的なシェア」で国立大学法人移行前の2002-2004年と10年後、2012-2014年の比較を科学技術白書がしています。他の論文から引用が多い重要論文のシェアが10年で4位7.2%から10位5.0%に劇的に落ちています。いまやオーストラリアやスペイン以下です。

 「日本の科学力は失速」、危機的状況にあるとの指摘を英ネイチャー誌が3月特集でしたばかりです。第554回「科学技術立国崩壊の共犯に堕したマスメディア」で全分野での論文数シェアのグラフを掲げました。論文数全体でも最盛期に比べて半減し、国立大学法人運営費交付金の削減とぴったり歩調を合わせています。

 科学技術白書の端々には現在の政策へ違和感が滲んでいます。校費研究費の重要さを認めた上記の引用部分もそうです。けれども現実にはマスメディアから異論が出るわけでもなく国立大学法人運営費交付金の毎年1%削減積み増しが政策としてビルトインされたままです。ノーベル賞学者が放つ警鐘も理解しない愚かな政府と世界の二大科学誌ネイチャーの指摘さえ無視する大政翼賛メディア、恐ろしく情けない国になったと考えます。


中印の電気自動車へ移行は大気汚染に逆効果招く

 大気汚染悪化でワースト双璧になっている中国とインドが電気自動車への移行で切り抜けようとしています。しかし、両国とも石炭火力発電に頼っておりそこから生まれた電気を使うのでは汚染は悪化せざるを得ません。自動車のエンジンで直接生み出されるエネルギーに比べて、発電・送電さらに蓄電とステップを踏むたびにロスが生じ、さらに発電源が石炭では自動車による汚染よりも大気を汚して当然です。中国は電気自動車の世界シェアが3分の1に達してさらに拡大を狙い、インドは2030年までに国内で販売する自動車を全て電気自動車にする政策を発表しました。WHO調べの「PM2.5濃度が高い20都市ランキング」を以下に掲げます。

 《PM2.5濃度が高い上位20都市》
            (μg/m3)
1.  イラン ザーボル     217
2.  インド グワーリヤル   176
3.  インド イラーハーバード 170
4.  サウジアラビア リヤド  156
5.  サウジアラビア ジュバイル152
6.  インド パトナ      149
7.  インド ラーイプル    144
8.  カメルーン バメンダ   132
9.  中国 ケイ台       128
10. 中国 保定        126
11. インド デリー      122
12. インド ルディヤーナー  122
13. サウジアラビア ダンマーム121
14. 中国 石家荘       121
15. インド カーンプル    115
16. インド カナ       114
17. インド フィールーザバード113
18. インド ラクナウ     113
19. 中国 邯鄲        112
20. パキスタン ペシャーワル 111
       (2016年 WHO調べ)

 日本のPM2.5環境基準では「年平均で15μg/m3以下であり、かつ1日平均値35μg/m3以下」としていますから、年平均100以上ある都市など論外です。インドは首都デリーをはじめとした北部から10都市もランクインしています。中国は首都北京を囲む華北地域の4都市が並びます。北京の年平均は「85」くらいです。2016年の第517回「重篤大気汚染がインド亜大陸全域で急速に拡大」でインドと中国の汚染の動向を掲げました。2011年にピークだった中国はやや改善の方向に見えますが微々たるものであり、インドは北部はもちろん南部までも悪化の一途です。

 こうした中、6/5付の《大気汚染の影響による死亡数が世界2位のインド、2030年までに電気自動車のみ販売へ》(新電力ネット)がこう伝えました。

 《インド政府は、国内で販売する自動車について2030年までに全て電気自動車とする政策方針を発表しました。インドでは年間100万人以上がPM2.5の影響で死亡しているという報告もあり、電気自動車への変換によって大気汚染が改善することが期待されます》《インドだけではなく、中国が4月に発表したロードマップにおいても、2025年に予想される年間3500万台の自動車販売の内、少なくとも5分の1を代替燃料車が占めることを目標としています》

 しかし、現在の電源構成を見ると石炭火力がインドで76%、中国で60%を占めています。インド政府は昨年末に「今後10年は石炭火力発電の新設をゼロにする」との国家電力計画案を公表しました。現在でも電力不足で停電が多発しているインドにして、再生可能エネルギーを大幅に増やす計画は意欲的ではあっても実現可能なのでしょうか。さらに電気自動車の使用分が追加として加わるのです。

 安易な電気自動車(EV)シフトへの警鐘はこれまでにも鳴らされています。昨年9月、フィナンシャル・タイムズの《欧州、電気自動車増で大気汚染の恐れ》は欧州環境庁《EEAの研究は、EVの充電に石炭火力発電だけが使われた場合、EVのライフサイクルを通したCO2排出量がガソリン車やディーゼル車より多くなることを示す、以前の研究を基礎として発展させたものだ。大気汚染の専門家らは、EEAの最新の調査結果は、EVが増える中で、各国が環境に優しい発電方法を検討する必要性を浮き彫りにしたと話している》と述べています。

 また《EEAの研究によれば、EVのシェアが2050年までに80%に達すれば、充電のために150ギガワット(GW)の追加電力が必要になるという》としており、大型原発50基を新設する電源に相当します。インドのように自動車全面移行を唱えるならば相当の覚悟と計画が必要です。非効率的と知られるインドの行政にその能力ありやです。第530回「インドでは首都に住んだら寿命が6.4年縮まる」で描いたようにインドの環境大臣の現実認識は信じられません。