<< April 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
 
Latest Entry
Profile  Facebook
Dando's Site
Category
Search

Archives
Recent Comment
  • やはりノーベル賞大隅さんの警鐘を無視した政府
    森田 (06/19)
  • 自主避難の根拠は放射線障害防止法の下の平等
    宮本由香里 (05/15)
  • 社会の鏡インターネット検索、20年目にして危機
    森田 (05/08)
  • 社会の鏡インターネット検索、20年目にして危機
    業界人 (05/06)
  • 社会の鏡インターネット検索、20年目にして危機
    あ (05/05)
  • 科学技術立国崩壊の共犯に堕したマスメディア
    森田 (04/23)
  • 自主避難の根拠は放射線障害防止法の下の平等
    (04/08)
  • 京大さん、日経さん、ネット調査信頼は無茶
    (01/16)
  • 国にも原発事故責任、無原則な東電救済を許すな
    森田 (12/25)
  • 東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる
    森田 (12/18)
Recent Trackback
Admin
   
Mobile

科学技術立国崩壊の共犯に堕したマスメディア

 英ネイチャー誌3月特集が「日本の科学力は失速」と明確に打ち出したのをマスメディアは理解できなかったと言わざるを得ません。科学技術立国崩壊を食い止めるおそらく最後の機を逃し、失政の共犯者に堕しました。ネイチャーによる日本語プレスリリースはこう述べています。世界の《全論文数が2005年から2015年にかけて約80%増加しているにもかかわらず、日本からの論文数は14%しか増えておらず、全論文中で日本からの論文が占める割合も7.4%から4.7%へと減少しています》《他の国々は研究開発への支出を大幅に増やしています。この間に日本の政府は、大学が職員の給与に充てる補助金を削減しました》《各大学は長期雇用の職位数を減らし、研究者を短期契約で雇用する方向へと変化したのです》……この国立大学法人運営費交付金の削減と世界での論文数シェア減少の相関ぶりがひと目で理解できるグラフを用意しました。


 2015年の科学技術白書に収録されている「全分野での論文数シェア」グラフは2011年までですからネイチャー指摘の2015年まで延長しました。その中に第495回「浅知恵、文科省による研究崩壊へ予算編成開始」(2015年9月)で作った交付金の推移グラフを年次が合うように縮小して取り込みました。両者の因果関係を何年も前から主張し続けてきましたが、大本営発表報道で飼いならされたメディアは政府が認めないので見てみぬ素振りです。これには国立大学協会に提出された豊田長康・鈴鹿医療科学大学長による「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」と題した実証的な報告がある点も紹介します。

 4月16日付で日経新聞が《社説・科学技術立国の堅持へ大学改革を》を出しました。他のメディアがネイチャーの分析をお座なりに扱ったのに比べたら社説を書くだけマシとしなければならないでしょうか。

 《ネイチャーの警告は重く受け止めるべきだ。何が活力を奪っているのか。大学関係者からは、国が支給する運営費交付金の削減をあげる声が多い。交付金は教員数などに応じて配分され、大学運営の基礎となってきた。政府は04年度の国立大学法人化を機に毎年減額し、この10年間で約1割減った。しかし、大学予算全体はそれほど減っていない。政府は交付金を減らす代わりに、公募方式で研究者に資金獲得を競わせる「競争的研究費」を増やしてきた。本質にあるのは研究費不足ではなく、もっと構造的な問題とみるべきだ》

 そして、研究者の高齢化・年功序列、若手の研究職がなく高学歴ワーキングプア化、閉塞感の打破などをあげ、「大学の自発的な改革を加速させるときだ」が結論です。しかし、ネイチャー特集に含まれる角南篤・政策研究大学院大学副学長のコメント《多くの大学人は政府主導の改革に懐疑的であり、もはや自ら改革が出来ないほど大学財政は窮迫している》とあるのをお読みになるべきです。

 交付金は今後も年に1%ペースの継続削減が決まっており、第535回「文科省主導の大学改革が国立大の首を絞める」で取り上げた「教員1人年間研究教育費が3万円」という、何のために大学教授がいるのか理解不能な悲喜劇ぶりを知るべきです。

 大学の現場にいる一級の研究者が極めて悲観的な展望を持つ現状は第542回「ノーベル賞・大隅さんの警鐘は政府に通じまい」で伝えました。大隅さんの憂慮を再録します。《競争的資金の獲得が運営に大きな影響を与えることから運営に必要な経費を得るためには、研究費を獲得している人、将来研究費を獲得しそうな人を採用しようという圧力が生まれた。その結果、はやりで研究費を獲得しやすい分野の研究者を採用する傾向が強まり、大学における研究のあるべき姿が見失われそうになっているように思える》

 さりながら昔に戻せば良いとは思いません。2004年の国立大学独立法人化にあたって書いた第145回「大学改革は最悪のスタートに」〜急務はピアレビューを可能にする研究者の守備範囲拡大〜の問題意識は現在でも有効です。大学改革は欧米に比べて大きな欠陥を抱えた研究の仕方を改めるのではなく、むしろ学閥優先に振れてきた十余年の壮大な失政でした。それを認めてやり直さなければならないのに、この国のマスメディアは小手先の改革がまだ通用すると軽薄に思い、政府にちょっと改善を促す程度で実際は追随し続けます。


自主避難の根拠は放射線障害防止法の下の平等

 今村復興相が福島原発事故での自主避難者について「帰還は自己責任」と発言した問題には誤解と混乱があります。自主避難に法的根拠がある点について、発言撤回した大臣も追及のマスメディアも認識が足りないのです。1年間に被ばくする線量限度を「1ミリシーベルト(mSv)」とすると放射線障害防止法が規定しています。ところが政府は原発事故による緊急避難として「年間20ミリシーベルト」まで認める運用をしてきました。次々に出ている避難指示解除もこの路線上にあり、医療機関などにある放射線管理区域に当たる線量でも帰還して生活して良いことになっています。故郷に帰りたい高齢者ならそれでも構わないと思うでしょうが、これから子育てをする若い層が「帰れない」と思うのは当然です。避難指示解除で帰らない人も自主避難者に加わることになり「法の下の平等」が根拠である点を再認識すべきです。

 放射線障害防止法の条文をそのまま読んでも「年間1ミリシーベルト」は出てきません。この法律は放射線源施設の認証基準をそれぞれ規制していって、外にある一般社会での線量を一定以下に落とすよう出来ています。法第十二条の三「認証の基準」は文部科学大臣らに省令で定める技術基準で認証するよう求めています。それに基づく施行規則第十四条の三には「当該申請に係る使用、保管及び運搬に関する条件に従つて取り扱うとき、外部被ばく(外部放射線に被ばくすることをいう。以下同じ。)による線量が、文部科学大臣が定める線量限度以下であること」とあります。そして、文部科学省の「設計認証等に関する技術上の基準に係る細目を定める告示」で「文部科学大臣が定める線量限度は、実効線量が一年間につき一ミリシーベルトとする」となっているのです。法律である以上、国民は国や自治体に法を守るよう求める権利があります。

 福島原発事故から6年、「無理にでも復興」の動きが露骨です。昨秋の第539回「役場集落等だけ再生?福島の『復興像』に疑問」で「役場周辺集落などを重点的に除染して住民帰還させ、町復興のシンボルにする政策意図です。しかしこれでは、チェルノブイリ事故での住民の移住基準であり、放射線障害防止法で定める放射線管理区域の設定基準でもある年間5ミリシーベルトを超える地域に役場集落がぽつんと存在することになります」と、チェルノブイリと比べても異様な運用に疑問を呈しました。

 「帰れない」のは当事者の問題とするのはとんでもない誤解です。福島でも避難指示を出さなかった郡山市などの地域、関東の放射能汚染ホットスポットなどから多くの自主避難が出ています。福島県だけで2万6000人とみられています。事故当時に「最低限でも学童疎開はするべき汚染レベル」と指摘したのに、住民をつなぎとめたい国と自治体が適切に対処しなかったツケが顕在化したと考えるべきです。福島県外なら放射線管理区域では飲食も寝泊まりも禁止され、できるだけ速やかに退出するように規定があります。「気のせい」で帰れないのではありません。

福島の甲状腺がん、低年齢増えチェ事故化の恐れ

 福島の甲状腺がんは1巡目検査に比べ2巡目で事故当時10歳以下が2.7倍に膨れ上がっています。チェルノブイリ事故で10歳以下が顕著に増え始めた事故6年目が昨2016年に相当すると指摘して警鐘を鳴らします。「第5回放射線と健康についての福島国際専門家会議」の2016年10月提言は「福島におけるこの明らかな甲状腺異常の増加は、高性能な超音波診断機器を導入したために引き起された集団検診効果であると考えられる」と相変わらず現状を無視していますが、事故1〜3年目に実施の1巡目結果と事故4〜5年目の2巡目結果を比べることすら怠る「専門家」とは何なのか、ほとほと情けなくなります。福島の1、2巡目検査結果と、チェルノブイリ事故で汚染が深刻だったベラルーシ・ゴメリ州の1〜5年目と6年目の甲状腺がん登録を比較できるようグラフで並べました。


 できるだけ最新の県民健康調査「甲状腺検査」公表資料に基づいて「悪性ないし悪性疑い」とされた1巡目109例と2巡目69例を、事故当時の年齢で並べました。1巡目では10代後半にピークがあって集団検診効果と言わしめたものです。しかし、2巡目結果を重ねると10歳以下に顕著な異変が現れました。1巡目でわずか7例が2巡目で19例に、つまり2.7倍になっています。「放射線の影響なら低い年齢で現れるはず」と主張する専門家なら、1巡目は集団検診効果が大きかったとしても2巡目は別物ではないかと考えるべきです。

 ゴメリ州では1986〜90年は各年齢に散発的でしたが、6年目の1991年から0〜5歳、次いで6〜10歳の甲状腺がんが急速に増えました。チェルノブイリでは原子炉が爆発して放射性物質の飛散が激しく、空気中や雨で環境に定着したセシウムが被曝主体の福島とは状況が違います。全く同じ推移とは限らないものの福島の10歳以下の異変は、チェルノブイリであった1991年以降、爆発的ながん増加再現を強く懸念させます。

 原発があった浜通り、放射能の雲が再三流れた中通り、それ以外の地区とのがん発生に差が見られないというのも集団検診効果説の根拠でした。しかし、2015年12月の第508回「甲状腺がん、2巡目で明瞭な放射線影響に気付け」で2巡目に限って地図で分布を見ると汚染地域に集中していると初めて指摘しました。

 2巡目結果が出揃った現時点で検討すれば、いわき市を汚染地域から外して分類したのが間違いの始まりだったと分かります。2011年10月の『この放射能の雲の下に膨大な人がいた事実に戦慄』に掲げた放射能汚染ルート地図で福島市など北方面、郡山市など中通りに流れた以外に、首都圏に向かう雲がいわき市を通っています。

 汚染地域を原発周辺・福島市・郡山市・いわき市など、それ以外の会津地区などを対照地域としましょう。甲状腺がん発生率は1巡目で計算すれば汚染地域0.040%に対して対照地域0.025%になります。2巡目は汚染地域0.029%に対して対照地域0.015%でした。集団検診効果が薄れた2巡目で、より明確に放射線影響が出ていると考えます。

 2016年末のourplanet-tv.org《福島の小児甲状腺がん疑い含め183人〜2巡目で68人》は岡山大の津田敏秀教授の見解を伝えています。《「2巡目の検診結果は、相馬地区を除き、すでに桁違いの甲状腺がんの多発を示している。もちろん、統計的有意差が十分にある。」とした上で、「もはや2巡目について、スクリーニング効果」や「過剰診断仮説」は原理上は使えず、むしろ1巡目における「スクリーニング効果」や「過剰診断仮説」を評価をするにあたっての基準になる」と指摘する》

 2016年から福島では3巡目の検査が実施されています。まだ最終結果は出ませんが、その受診率が大きく下がっている点が危惧されます。今年2月の第26回「県民健康調査」検討委員会の資料では主に汚染地域で4-7歳42.1%、8-12歳53.5%、13-17歳63.2%しかありません。2巡目の受診率は4-7歳80.2%、8-12歳93.3%、13-17歳87.1%もありました。2016年9月の「福島県民健康調査」検討委員会で希望者のみを対象にするなど検査の縮小が提案され、異論が多く出て議論の末に現状継続となりました。受診率激減で分かる通り実質的に検査は縮小されているのです。これからが心配される時期なのにです。