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隠蔽は東電だけか、在京メディアも責任を取れ

 福島原発事故で炉心溶融が隠蔽された問題の報告を読んで、東電の語るに落ちる無能さが再認識されました。無批判に隠蔽に乗っかった在京メディア各社も他人事のように報道すべきではなく、自らの責任も取るべきです。原発事故に際して公式の発表は福島現地の住民や国民に広く事態の真実を知らせるためにあるのです。その本分を外れて重大事態を軽く見せようとした東電、炉心溶融を口にした原子力安全・保安院の審議官を発表から外した政府も同罪ですし、メディア内部でも疑問の声が握りつぶされていたと聞きます。報道の自由世界ランキングを大幅に下げた国内メディアの覇気の無さはここから始まったのです。

 マニュアルに「炉心損傷割合が5%以上なら炉心溶融」と定められていたのに、5年後の今頃になってその判定基準が「発見」された不思議は、21日に公表された東電の《福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告問題に関する当社の対策について》でこう解明されています。

 《福島第一原子力発電所では、防災訓練は、予め日時が決められ、シナリオも用意されていたため、防災訓練に参加する緊急時対策班の要員らは、その都度、原災マニュアルを確認しなくても、対応することが可能であった》《本件事故当時の原災マニュアルに「炉心溶融」の判定基準が記載されていたことを知っていた者もいたが、限られた範囲の社員に止まっており》

 防災訓練で緊急時対策班員は原災マニュアルを読むなど自分で頭を使うことなく、シナリオに書いてある通りのお芝居をしていたと告白しています。だから少数の社員しかマニュアルの規定を知らなかったのです。「やったふり」をするものでしかない緊張感なし訓練が役に立つはずがありません。最初に爆発した1号機で、緊急時の命綱である「非常用復水器」を動かした経験者が皆無だった東電らしい、脱力感いっぱいの新「珍事実」です。

 事故当時の清水社長が「炉心溶融」など記載のメモを渡して「官邸からの指示によりこの言葉は使わないように」指示したとされる問題は、当時の枝野官房長官らが事実無根と猛反発していて尾を引きそうです。当時の菅首相も《東電第三者委員会委員長から「説明する義務はない」との返事》とブログで怒っています。当時の首相や官房長官に事情聴取せず、社長も指示を受けた詳しい経緯を説明できないままで「官邸からの指示」だけが一人歩きするのは異様です。ただし原子力安全・保安院が炉心溶融を知らないはずがなく、保安院内部で自主規制があったのは確かでしょう。


 事故発生から3日目に書いた第245回「福島第一原発3号機も炉心溶融、後手の連続」で掲げたグラフです。原発敷地境界で測定された放射線量(マイクロシーベルト毎時)が2日目「1050」と3日目「882」と大きく制限値500を超え、1号機に続き3号機でも炉心溶融は明確としています。これは当時、誰でも入手出来たデータです。

 朝日新聞の大阪本社で専門家に取材した結果をもとに東京本社に炉心溶融をアピールしたが、握りつぶされたと聞いています。朝日だけでなく在京メディアは政府・東電の発表以外は取材する気がなく、内部からの指摘さえ聞く耳を持たない状態を続けたのでした。いわゆる「大本営発表報道」に堕してしまい、2011年9月の第278回「説明責任を果たさない政府・東電・メディア」で指弾しました。東電を笑えない不始末が在京メディアにはあったのです。政治経済分野を含めて報道の自由は記者の精神的自由を構造的にスポイルしたために大きく損なわれたままです。


イチローには一里塚、更に伸びる大記録が異論消そう

 イチローがピート・ローズの持つ大リーグ安打記録4256本を上回る4257本の生涯安打数を記録しました。日本プロ野球での安打1278本をどう見るかで異論が出ますが、これからも伸びる記録の輝きが打ち消すでしょう。科学的に見たイチローの特異性はパワー全盛、ムキムキ筋肉だらけの大リーガーを、細身で靭やかな筋肉がもたらすスピードで上回れると証明してみせた点です。時速150キロ前後で投げ込まれる硬式ボールをヘッドスピード150キロ前後で振り出されるバットが弾き返す――地上で最速のスポーツ衝突現象がハイレベル硬式野球の真実です。軽く当てる程度では飛ばないボールを、イチローは自在なバットコントロールを伴う高速振り出しでヒットにするのです。


 イチローが今現在、高度な勝負を続けている現場をローズの記録に王手を掛けた14日パドレス戦8回、この日3本目の安打で見ましょう。「mlb.com」の実況画像から引用しました。ストライクゾーンが描かれているので見やすいです。1死1塁、相手の左腕は内角いっぱい、147キロ前後の速球攻めに徹し、左打者のイチローから見て胸元に真っ直ぐ差し込んでくる感じです。1球目中ほどは見逃しストライク、2球目が高目いっぱいで空振りストライク、3球目に高いボール球を見せておいて4球目は空振りした高さで勝負です。ボール1個真ん中に寄ったのをイチローは鮮やかに左翼線に流すヒットにしてしまいました。左打者は左腕に弱い常識に反して、イチローは左腕の方が高打率です。

 普通のプロ野球選手が苦手にする低目の球にイチローは異常に強く、内外角、高低どのコースもほとんど穴がなくて比較的弱いのは外角高目くらいです。最速衝突現象であるからにはどのコースでもバットが速く振れていなければなりません。筋肉を付けてムキムキマン化した大リーグ強打者はツボにはまれば強いですが、太い筋肉が邪魔してバットが振りにくいコースを持ちます。投手はその苦手コースを突けば凡打に倒せます。

 イチローもピート・ローズも身長は180センチ。現役時代のローズは特にムキムキマンではなかったものの体重90キロあったのに対し、イチローは80キロを切っています。2001年に書いた第102回「大リーグとの『垣根』は消滅した」で紹介した筋肉トレーニング法「初動負荷理論」が走攻守ともに際立つスピード感をもたらしているのです。イチローは大リーグ入りしてからほとんど体重が変わっていないといいます。ちなみにローズは打撃では金字塔を打ち立てましたが、二塁の守備も走塁も目立った選手ではありませんでした。

 さて、ローズらから異論が出ている日本での記録についてです。《ローズ氏 イチローの日米通算安打をチクリ「高校時代のものをカウント」》の言うように高校野球の記録ではなくオリックス・ブルーウェーブ時代の安打です。この記事にある《ダイヤモンドバックスの打撃コーチ補佐を務めるマーク・グレース(51)は肯定派の一人。現役時代に通算2445安打をマークした同コーチは「高いレベルの野球で記録された安打。場所が日本であろうが南極であろうが関係ない」》に賛成です。

 円熟の27歳で渡米して前人未到10年間連続200本安打を続けた時期の平均打率が「3割3分1厘」でした。直前まで日本で残した打率は「3割5分3厘」で、多少はおまけがある程度の差に過ぎません。イチローはまだまだ現役を続けますし、安打記録は4300、4400とさらに偉大になっていきます。王貞治の本塁打記録868本が以前は陰口があっても絶対的な最高峰として尊敬を集めているように、ローズとの比較にならない、誰も超えられない大記録としてそびえ立つでしょう。


インドでは首都に住んだら寿命が6.4年縮まる

 中国を抑えて世界最悪の大気汚染国になったインド、その首都デリーに住んだら寿命が6.4年、国民平均でも3.4年縮むとの研究が公表されました。政府の環境大臣が「為にする不当な結論」と批判する騒ぎになっています。モディ首相が米国を訪問するタイミングに合わせて出たのにカチンと来たようで、「正確に積み上げたデータに依拠していない」と否定する構えです。しかし、あまりにも観測拠点が少なくて実態を把握し切れなかったために沈黙していたインドの科学者がいよいよ動き出したと捉えるべきです。世界最大の英字紙「ザ・タイムズ・オブ・インディア」がこんな刺激的なイラストを載せています。


 7日付の「Delhi’s pollution takes 6 years from your life, says study」から引用しました。北西部にあるデリーで6.4年、以下の4州は東部で西ベンガルが6.1年、ビハールが5.7年など住民が寿命を縮めるとの表現です。息が詰まる真実だと、ガスマスクの絵をあしらっています。

 問題になっている研究はインド熱帯気象研究所の研究チームによる論文です。「Premature mortality in India due to PM2.5 and ozone exposure」です。2011年時点でPM2.5による死者数を57万人、経済損失68兆円と見込んでいます。2月にはカナダの研究で2013年にインドでの死亡者は約140万人で中国は約160万人との報道がありました。

 2月の第517回「重篤大気汚染がインド亜大陸全域で急速に拡大」ではNASA地球観測衛星による浮遊粒子状物質濃度データでの推定で悪化している状況を伝えました。今回の論文が出たのならとインド発の汚染状況データをさらに検索して、「Cause-specific premature death from ambient PM2.5 exposure in India:Estimate adjusted for baseline mortality」に詳細な汚染推定マップを見つけました。


 2000年から2010年の期間でPM2.5の年間平均値をマイクログラム/立方メートルで推定、詳細な地図にしています。日本の環境基準値「1年平均値 15μg/m3以下 かつ 1日平均値 35μg/m3以下」に照らして見て下さい。「4-15」である群青色の地域しか大丈夫なところは無く、ほとんどが東端部や南端部に限られます。ガンジス川沿いは特に酷くて、「76-90」の赤や「90以上」の焦げ茶で埋め尽くされています。これではインド旅行をしたい気持ちが薄れてしまうでしょう。

 しかもこのマップは2011年以前の推定です。第517回「重篤大気汚染がインド亜大陸全域で急速に拡大」の地図で2011年以降にずっと深刻化しているのが見て取れますから、今現在のPM2.5汚染地域はさらに拡大し、各地の汚染度も悪化しているはずです。

 インド環境相は「Pollution Report Malicious and Incorrect: Javadekar」のインタビューで論文の内容を非難する一方、対策としては環境を侵す経済活動の違反行為に新しく罰金を課す法律を作ると言ったに過ぎません。政府の当事者がこの程度の認識で環境が目覚ましく改善に向かうとは思えません。


韓国のPM2.5測定対応に疑問あり、杜撰で過小では

 韓国で大気汚染の測定や予測についてメディアから批判の声が巻き起こっています。PM2.5をめぐって中国から日本への影響をウオッチした経験から、中間にある韓国測定値は実態に合わないと疑問を提起したいと考えます。5月下旬には150マイクログラム/立方メートルを超える「非常に悪い」汚染が各地で発生、その予測が的確でなかった上に、汚染源として中国の影響をどれ位と見積もるべきかもはっきりしません。粒子状物質の成分を実測できる観測基地が少な過ぎるとの指摘もあります。しかし、測定値自体の信頼性が次に挙げるデータを比較すると揺らぎませんか。6/4の正午時点での日本気象協会(tenki.jp)のPM2.5分布予測と米国政府が測定結果をAQI指数にした汚染分布図です。



 PM2.5予測では最も汚染が酷い地域は北京付近であり、中国東北部から朝鮮半島に高い汚染域が下りてきています。ソウル周辺はかなり高い汚染と予測されています。ところが実際に測定された汚染分布を見ると健康人でも影響が出始める赤ランクの測定結果は1カ所あるだけです。AQI「161」ですからPM2.5で75マイクログラム/立方メートル相当です。

 中国・山東半島の付け根、山東省にも韓国と同じように汚染が南下しているので比べて下さい。こちらは赤がたくさんあります。予測と現実は必ずしも一致しませんが、比べれば韓国が手ぬるい感じを否めません。これまでにも中国の重篤大気汚染が日本国内に及ぼす影響を調べている際に、お隣、韓国の汚染は妙に軽いと感じたことが度々ありました。第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」で指摘したように関係各人がなすべきことをきちんとしているのか、疑われるのです。


 では次に、この汚染状況を市民はどう入手するのかです。掲げたのは韓国環境公団「エアコリア」にある6/4の13時現在のPM2.5測定分布図です。17地区の過去24時間、地域ごとの平均値でしょう。数値は低く、最高値は「42」で残りは「12」から「36」の範囲にあります。旅行者にも参照が勧められているサイトですが、局地的に急速に悪化していく場合などには気づかないで困る事態も考えられます。個人的な意見として測定値が過小である可能性を考慮しておくべきなので、韓国旅行は大気汚染に要注意です。

 中央日報の《韓国、粒子状物質リアルタイム分析可能な測定所、全国506カ所中6カ所だけ》が体制不備を厳しく指摘します。中国からの流入分を見積もれないのはこの事情も大きいです。

 《国民がそれなりに粒子状物質予報を通じて知ることのできる情報は濃度だけで、どんな成分を吸っているのかを知る術がない。2010年以降、毎年高濃度の粒子状物質現象が繰り返されているにもかかわらず、このような情報無知現象は改善されていない。環境部の粒子状物質の予報正確度が60%水準にとどまっているのも粒子状物質の成分を測定できる施設が6カ所に過ぎないことと関連があるというのが専門家たちの指摘だ》

 朝鮮日報の《的中率5割のPM2.5予報に不信感、日本気象協会のサイトで情報を得る人も》も不信感を露わにします。

 《微小粒子状物質(PM2.5)や粒子状物質(PM10)に関する韓国環境当局の不正確な予報が、国民を困らせている。濃度が「悪い」レベルに上昇したときでも前日午後5時に発表された予報は「普通」だったり、逆に「悪い」と予報されても実際には「普通」レベルの濃度だったりと、誤報が続いているのだ。「韓国政府の予報は信じられない」と日本のサイトで予報を確認する国民が増えるなど、政府への不信も深まっている》

 日本よりも中国に近く、当然ながら重篤スモッグの影響が大きいはずの韓国でPM2.5のどれだけが中国由来なのか信頼に足る数字が言えないようなのです。第517回「重篤大気汚染がインド亜大陸全域で急速に拡大」でインドやパキスタン、バングラデシュの対策立ち遅れを取り上げました。それに比べれば観測網が整備されていると見える工業国、韓国の内情がお寒いのです。

【2016/07/02追補】ハンギョレ新聞が《韓国環境部、粒子状物質の管理基準に工場排出除外》で、韓国の工場排出規制は大きな0.5ミリメートルまでの粉塵全体での排出重量の規制に過ぎず、PM2.5のような微粒子の規制に対しては「ザル法も同然だ」と伝えました。