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重篤大気汚染がインド亜大陸全域で急速に拡大

 重篤なインド大気汚染は首都デリーだけでなくパキスタン、バングラデシュまで含めたインド亜大陸全域に拡大、悪化しています。NGOのリポートが大気汚染物質の平均濃度が昨年初めて中国を上回ったと報じました。グリーンピース・インディアが今月まとめた《Clean Air Action Plan: The Way Forward》がそれです。2011年以前と2011〜2015年を比較できるよう、NASA地球観測衛星「アクア」による浮遊粒子状物質濃度データを利用した汚染分布図を以下に引用します。


 2005年から中国とインドで大気汚染が進みました。中国の場合は2011年に汚染ピークがあり、重篤スモッグ問題の顕在化でそれ以降は改善に転じました。二つのマップ比較でも長江流域を中心に東部と内陸部で良くなっています。ただし、重工業が盛んで石炭消費が大きい東北部は悪化しています。これに対し、ほとんど対策が打たれなかったインドは全域が悪化の一途です。汚染がよく報道されるデリー周辺だけでなくガンジス川が海に注ぐバングラデシュまでの北部一帯、パキスタンのインダス川辺りまでの国境周辺、南インドの高原地帯にまで汚染が広がっています。

 今月半ばには《大気汚染死者は年間550万人、印中で過半数》との報道もありました。《カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究によると、インドでの死亡者は約140万人で中国は約160万人だった。両国で全体の55%を占める計算になる》のです。

 昨年末の第509回「あの北京よりデリーはPM2.5で65%悪い大気汚染」で伝えたように《デリーの平均値はそのまま「Hazardous」と表現される厳しい重汚染であり、病弱な人に限らず健康人でも避けたい危険状況です。インドの汚染は自動車や工場からの排出ガス、違法な野焼きにラジャスタン砂漠からのダストが複合したものです》

 グリーンピース・インディアのリポートはインドの大気汚染モニター態勢があまりにも貧弱と指摘します。PM2.5のような微粒子汚染観測基地は全国23都市に39カ所しか無く、900都市に1500カ所もある中国とは比べ物になりません。結果としてインド大都市の大気汚染状況は正確には捕捉されていません。

 インド当局者の見解は少し前までは、中国のように警報を出して社会を統制するのは社会主義体制だから出来ることであり、民主主義のインドでは国民各自の責任で行動すればいいと木で鼻をくくったものでした。しかし、ヒンドスタンタイムズで今回のリポート報道を見ると、デリー科学環境センター幹部が「国の大気浄化プランが必要だ。それに基いて各都市は短期・中期・長期、そして緊急時の対策を立てねばならない。それも直ちにするべきだ」と主張しています。

 実態が知られていないから何もしてこなかったインド政府の不作為は酷すぎます。リポートが使っている衛星観測データは中国でのPM2.5測定値と強く相関しているので大きな誤りは無いはずです。パキスタン、バングラデシュまで巻き込んだ観測網整備と抜本対策が急ぎ必要です。


炉心溶融の判断根拠無いから無しと発表の愚が暴露

 福島原発事故から5年も経って恐ろしく愚かな発表が東電から出されました。大津波翌日から言われていた炉心溶融が2カ月間も政府・東電の発表から消えた理由は、東電が判断根拠を持たなかったからと明かされました。しかも、今になって調べると「社内マニュアル上では、炉心損傷割合が5%を超えていれば、炉心溶融と判定することが明記」されていたので、判断する根拠は備わっていました。大津波4日目には5%を超す損傷が確認されて法令に従った報告書が提出されていたのです。原発のマニュアルは政府の原子力安全・保安院、原子力安全委にも備わっているべきであり、発表の根拠を問う実証的な取材を怠ったマスメディアを含めて愚劣も極まります。

 東電のプレスリリース《福島第一原子力発電所事故当時における通報・報告状況について》は「新潟県技術委員会に事故当時の経緯を説明する中で、上記マニュアルを十分に確認せず、炉心溶融を判断する根拠がなかったという誤った説明をしており、深くお詫び申し上げます」としています。さらに原子力災害対策特別措置法15条で内閣総理大臣が原子力緊急事態を宣言するために報告を求められている「非常用炉心冷却装置注水不能」や「直流電源喪失(全喪失)」などの事象発生報告が遅れた点も反省事項として挙がっています。

 大津波翌日午後の政府記者会見で保安院の中村幸一郎審議官が「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表したのはよく知られています。しかし、やがて中村審議官は発表の場から消えてしまい、炉心溶融は禁句の扱いになっていきました。「大本営発表報道」に傾いていたメディア各社は、燃料棒が長時間、冷却水から露出した事実を知りながら政府・東電に同調してしまいました。今回の東電発表を責めるなら、自らの愚かさも俎上に載せるべきです。

 大津波翌日の第244回「福島第一原発は既に大きく壊れている可能性」、翌々日の第245回「福島第一原発3号機も炉心溶融、後手の連続」で伝えているように、公表されていた原発敷地での放射線量をウオッチしていれば炉心溶融が無ければあり得ないほど高水準になっていました。

 5月24日に公表された《福島第一・第二原子力発電所への地震・津波の影響について》で73ページを参照してもらうと、1号機の原子炉水位は大津波翌日正午には燃料頂部から1500ミリ以上も下がった最低ラインに落ちています。冷却する水が無いのですから30分、1時間で燃料棒は溶けてしまいます。

 保安院・中村審議官が発表していた時刻には完全に炉心溶融していたのです。住民避難の観点からも安全側に倒して判断する原則が全く機能せず、判断基準が無いから炉心溶融の事実を口にしないとは、何という恐ろしい錯誤・倒錯でしょう。


中国の異様な言論統制、安全弁も根こそぎ圧殺

 中国共産党機関紙・人民日報の編集幹部が「政府は非建設的な批判でも一定程度受け入れるべき」と唱えてネット民に大反響を呼びました。メディアも大学も圧殺する言論統制が進む現実の中、悪い冗談か本音かです。2月14日、人民日報の下にある環球時報、胡錫進編集長が中国版ツイッター・微博につぶやき「新中国の歴史が証明するように、言論の自由は社会の活力と不可分」とまで言っています。言論の自由は中国の憲法に明文規定があるのに、習近平政権になってから4年、思想・言論の統制は厳しくなる一方です。社会的な安全弁になる意見の多様性やオルタナティブな議論など不要とされ、党と政府の言うことを聞く愚民だけいればいい方向に突き進んでいます。以下に引用したのは問題の「つぶやき」画像です。


 中国のメディアにいる記者、新聞10万人、テレビ15万人にマルクス主義の試験を通らないと記者証を更新しないと伝えられたのが2013年10月でした。さらなる記者受難の報道が今年になって重なってきました。

 1月末には時事通信《消される調査報道=記者の逮捕に波紋−「暗部」取材を警戒・中国》が甘粛省で《地元紙の調査報道記者3人が相次ぎ失踪、うち1人が月末に「恐喝」容疑で逮捕されたことが分かり、大きな波紋を呼んでいる。記者は拘束前に「社会の暗部」の取材・報道を続けており、当局から圧力や脅迫を受けていた》と報じています。金と時間が掛かる調査報道自体にも各地メディアで危機が迫ります。

 2月、朝日新聞の《中国の新聞元編集者が失踪 社内規定暴露で当局拘束か》が《「南方都市報」系のニュースサイト元編集者が1月にタイで失踪し、中国の公安当局に拘束されていることが分かった。元編集者は国外で、中国共産党の指示に沿った非公開の社内規定を暴露したため、当局に強制的に連れ戻されたとの見方も出ている》と伝えました。

 このような例は裏側を知らないと理解できません。福島香織さんが《弾圧と低賃金と闘う「中国新聞労働者」の受難》で低い収入の中で多数の記事を書き続けなければならない実態を紹介しています。日本などのメディアと大きな差があり、その上に真実に迫れば冤罪の危険まで加わります。

 かつては政府批判をする先生がごろごろいたはずの大学。2013年5月、マイクロブログで先生のつぶやきから暴露されニュースとして世界を駆け巡ったのが、大学で話してはいけなくなった「七不講」通達です。「普遍的価値」「報道の自由」「市民社会について」「市民の権利について」「中国共産党の歴史的過ちについて」「権貴資産階級(権力者・資産階級)について」「司法の独立について」いずれも語るべからずとされました。

 次いで2015年1月には中国教育相が「欧米の価値観を掲げる教科書を教室に持ち込ませてはならない」とし、「中国共産党の指導力を中傷したり社会主義を汚す見解が大学の教室に持ち込まれることがあってはならない」と語ったといいます。

 そして、今年1月、ロイター《中国当局、大学教授らの「不適切」発言を監視》がこう伝えました。《中国共産党の中央規律検査委員会が、大学の授業中に政策批判などの「不適切な」発言が行われていないかを監視するため、調査官を大学に派遣したことがわかった》《共産党員に対し、主要政策に対する批判的な発言を禁じる規則が1日から施行されたことが背景にあるとみられる》

 最初は「べからず」訓示の形に留まったものの、今年からはお目付け監視役を大学に派遣してがんじがらめにするところまで進んでいます。

 ネットなら言論の自由が生まれるかと思わせた希望もとっくに消え去っています。大規模なネット検閲が実施されているのは公然の秘密です。香港大の研究チームがどんな言葉が検閲・削除対象か、ネットを監視して割り出しています。《中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」》によると、毛沢東に習う個人崇拝にまで進もうとしている習近平主席がらみが目立つようです。

 2015年の検閲《1位に輝いたのは、オープンカーにくまのプーさんが乗るかわいらしいプラスチック製おもちゃの写真》。《クルマに乗ったプーさんの写真がなぜ検閲の対象になったのかというと、実は、中国では習近平国家主席は「くまのプーさん」に似ているとバカにされているからだ》。トップ20のうち習主席がらみが4件だそうです。

 《2位は、8月に起きた天津市の爆発事故についてのポスト。少なくとも173人の死者を出した大規模爆発は政治家や警察を巡る癒着や役人の職権乱用が背景にあるとして大きな批判が噴出した》《3位は天津の事故からすぐ後に、遼寧省鞍山でも小規模な爆破と火事が起き、「鞍山で救助を待つ人はすぐにポストをしろ」と発言されたポスト》

 民衆の不満が政府に向かわないよう細心の注意が払われ、事前に芽を摘むように働いているのです。そして、中国のネット対策は2016年に更に飛躍するとの観測も出ています。

 西本紫乃さんによる《民意と向き合うために中国が進めるSFばりの超監視社会》は「インターネット・プラス」戦略に注目しています。《どうやら中国国内の有力なインターネット企業に資本を集中的に投入してネット市場における支配的な地位を占めさせ、国民生活のさまざまなサービスをそれら企業のIT技術によって提供して、ほぼすべての国民がその中に包括されるようなシステムをつくる》。《個人のデータを国家の一元的な管理のもとに置こうという戦略らしい。どうやら「インターネット・プラス」はITサービスを総動員した国家的な監視システムを作り上げるという巨大な構想のようだ》

 2016年の年明けに流れている情報を集約すると中国が進んでいる道はますます異様に見えます。第505回「中国変調、政治ばかりか経済の民主化も遠のく」で「中進国の罠に陥らずに経済発展するには政治の民主化が必要」と指摘しました。社会に備わった民の力を生かさないで国力発展は無いはずですが、経済民主化ではなく国営大企業へのさらなる集中、南シナ海問題など外交でも周辺国を無視した独善と、傍目にも困るターニングポイントを今年になって回りつつあるのです。


原子力ムラの対極、熊取6人組の安全ゼミ終わる

 福島原発事故で原子力ムラが見せた狼狽と無責任の対極にある存在が、京大原子炉実験所を拠点にした批判科学者集団「熊取6人組」でした。2月10日、彼らが35年余り続けてきた原子力安全問題ゼミが幕を閉じました。グループで最後の実験所職員、助教の今中哲二さん(65)が定年退官するためです。最後の講演で今中さんが「行政の意思決定や政策実行に係る人々、つまり役人や政治家に間違いや不作為があった場合には個人責任を問うシステムが必要だ」と締めくくりました。世界の原子力史で未曽有の惨状を招きながらぬくぬくとしている原子力ムラの政治家・官僚・学者への痛烈な非難です。


 泉佐野市のホテルで開かれたサヨナラ懇親会での写真です。左から海老沢徹さん(77)、亡くなった瀬尾健さんの遺影を持つ今中さん、川野真治さん(74)、小林圭二さん(76)、それに昨年まで現職だった小出裕章さん(66)の5人が並びました。皆さんそれぞれとの様々な取材経験が脳裏に駆け巡りました。(参考サイト:原子力安全研究グループホームページ)

 私が熊取と深く関わるようになったのは1986年のチェルノブイリ事故がきっかけですから、ちょうど30年になります。83年に朝日新聞大阪本社科学部員になった頃、熊取6人組は「西の科技庁」と呼ばれていました。国の原子力政策、科学技術庁を批判するにしても徹底的に自分で取った実験・実測データを基礎にしていた実証主義で、全国の原発反対グループから厚い信頼を得ていました。

 福島原発事故でこうしたデータ主義と現場主義が鮮やかだった例は『飯舘村南部に広い高汚染地域:現地調査で確認』(2011/04/04) で伝えたケースです。飯舘村での高い汚染が今中さんたちの現地踏査で初めて目に見える地図になりました。これには前段があって第253回「高汚染無視で飯舘村民を棄民する国とメディア」(2011/04/01)で「国際原子力機関(IAEA)が福島原発の北西40キロ、飯舘村で測定した土壌の放射線レベルが極めて高かったのに、原子力安全・保安院は無視を決め込み、マスメディアは事態の意味を理解しようとしません。国とメディアが一体になった文字通りの棄民です」と指摘した状況を打ち破る実測データでした。

 その飯舘村の今について今中さんは「除染という名の環境破壊が進み、惨憺たる有様です。国は来年には村民を帰す方針ながら、村民1人当りで何千万円という無駄な除染費用を使っています」と主張します。個人の生活再建こそが目的のはずなのに、村の再建に目標がすり替わり、除染しても放射能レベルは半分にしかならないのですから多くの村民は帰村しないでしょう。

 今中さんや小出さんたちと福島原発事故の関わりは第258回「在京メディアの真底堕落と熊取6人組への脚光」(2011/05/11)でまとめています。原子力ムラが発する「がん発生のリスクが高くなるという明確な証拠があるのは100ミリシーベルト以上」とする恐ろしく一方的な断定を当時のマスメディアが臆面もなく報道する中で、中央官庁に依拠しないオルタナティブ情報源としての熊取6人組の価値が大きく見直されたのです。

 この第112回安全ゼミの最後で小出さんが厳しい発言をしています。「福島原発事故で出された原子力緊急事態宣言は5年経っても未だに解除されていません。この宣言があるために放射線防護関連法令が停止され、これから何十年もこのままでしょう。それなのに経済優先の安倍内閣は『アンダーコントロール』と嘘をついてオリンピックを誘致しました。こんな国なら私は喜んで非国民になります」。他の地域なら放射線管理区域並の汚染として禁じられる場所に、福島では人が住み、飲食をして寝ているのです。

 チェルノブイリ事故当時は優れた運動組織者だった阪大理学部講師の久米三四郎さんが元気で、毎週のように熊取の会議室に集まって事故の進展を睨みながら分析をしたのを記憶しています。私も83年の欧州取材で知り合った研究機関などからドイツやスウェーデンの汚染データを入手して討論に加えてもらいました。福島原発事故ではこうした活動が出来なくて残念でしたが、事故翌日に書いた第244回「福島第一原発は既に大きく壊れている可能性」など一連の分析記事は、チェルノブイリ当時の経験、その後、科学部員でなくなっても通った安全ゼミがなければ不可能だったと思えます。


危機の現状に対策が噛み合わぬ科学技術基本計画

 1月下旬に閣議決定された新年度からの第5期科学技術基本計画の駄目ぶりに呆れています。論文数・重要論文数の減少顕著と認識するのに原因たる政府の失政を見ず、基盤改善無しに小手先で対策が打てると主張します。計画検討段階で出された科学技術・学術政策研究所による《研究論文に着目した 日本の大学ベンチマーキング2015》の参考資料からグラフ「日本の論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数の世界ランクの変動」を引用します。全領域でこんなに国別ランクが下がり地盤沈下したのを放置して、夢物語のイノベーションを語ってどうするのでしょうか。


 左から「全体」「化学」「材料科学」「物理学」「計算機科学・数学」「工学」「臨床医学」「基礎生命科学」の分野が並んでいます。各分野ごとに3つに分かれ、「ALL」は論文数、「Top10」は他の論文に引用された件数が世界のトップ10%に入る注目の論文数、「Top1」は世界のトップ1%に入る更に重要な論文数です。

 2001〜2003年のランクと比べて2011〜2013年のランクがどう動いたか赤い矢印が示しています。日本は全体のALLで見て2位から5位に、Top10で4位から8位に、Top1では5位から12位にも下がっています。順番に右へ見ていただけば分かる通り、どの分野・カテゴリーでも赤い矢印は下向きで軒並みにランクを落としています。今後、世界を引っ張れるはずがなく、無残と申し上げます。

 2001〜2003年と2011〜2013年の間に何があったのか、2004年の国立大学法人化とそれに続く運営経費毎年1%削減による「国立大学いじめ」を指摘せざるを得ません。この報告はグラフに続けて以下のように指摘します。

 《世界における我が国の位置の相対的な低下に対し、国の中の構造の変化がどのように起きているかをモニターしたところ、我が国の論文産出において主力となるのは大学部門であり、国公私立大学全体で論文産出の72.6%(全分野)を占めることが明らかとなった。つまり、我が国の論文産出においては、大学の勢いが国全体の勢いに大きな影響を及ぼす》

 2001〜2003年から2011〜2013年の間、世界的には研究論文は増え続けているのに日本の論文数は3%減りました。国立大が4%も減らし、私立大は12%増加、特法・独法の研究機関が8%増やしても国立大の減少の大きさには太刀打ちできませんでした。

 第5期科学技術基本計画の本文も「今世紀に入り、我が国の自然科学系のノーベル賞受賞者数が世界第2位である」と誇りつつも問題点を認めます。「まず重視すべき点は、我が国の科学技術イノベーションの基盤的な力が近年急激に弱まってきている点である。論文数に関しては、質的・量的双方の観点から国際的地位が低下傾向にある。国際的な研究ネットワークの構築には遅れが見られており、我が国の科学技術活動が世界から取り残されてきている状況にあると言わざるを得ない」。まさに危機的です。

 それでいて対応策は「問題点の背景には、科学技術イノベーション活動の主要な実行主体である大学等の経営・人事システムをはじめとする組織改革の遅れや、組織間、産学間、府省間、研究分野間等の壁といった様々な制度的要因などが存在する。こうした点について、改善を速やかに進めていく必要がある」とするだけで、政府・文科省の失政「国立大学いじめ」には言及しません。

 それどころか第511回「科学技術立国さらに打撃、大学淘汰で研究職激減」で伝えているように、予算編成でこれからは国立大学への交付金毎年1%削減がルール化されてしまいました。また「科学技術イノベーション活動を担う人材に関して、若手が能力を十分に発揮できる環境が整備されていない、高い能力を持つ学生等が博士課程進学を躊躇しているといった問題点もある」と他人事にように憂うだけで、研究職ポストの激減が近未来に迫っている現実を見ません。

 対策としては科研費などの効率的な配分で対処できるとの議論があります。これは「我が国の科学技術活動が世界から取り残されてきている状況」の根本原因を無視した議論です。2004年の第145回「大学改革は最悪のスタートに」で問題提起したように、依然として多数を占める「たこつぼ型」研究者を、広い視野を持つ自立した研究者に変えていくしか道はありません。たこつぼを出てお互いの研究を評価し合えるピアレビューが出来るようにしなければなりません。こうした研究姿勢の根本のところで欧米に追い付いておらず、科研費審査なども学閥のネームバリューに頼る現状で効率的な配分が出来るはずがありません。