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後始末にも後進性、セウォル号沈没の裁判報道

 300人を超す犠牲者の韓国セウォル号沈没事故、今月、韓国最高裁で船長に無期懲役、救助にあたった海洋警察艇長に懲役3年の刑が確定しました。その報道ぶりに司法もメディアも合わせた韓国の後進性が露わです。もし日本国内で起きたとしたら、乗客を見捨てた殺人罪で無期懲役の船長への非難もさることながら、積極的に救助しなかった海上保安官(海洋警察に相当)への批判は大変な厳しさになるでしょう。国家公務員への業務上過失致死罪が確定した重大性に韓国メディアは気付いていません。第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」で描いた構図を自覚できないからです。


 朝鮮日報が報じた事故現場の写真を引用しました。これほど傾いた旅客船に左の救助艇が到着していて、行動すべき艇員は思案投げ首の態です。赤い破線の所で艇員が一人だけ救命ボートの点検をしていますが、定期的に定められたボート展開をせずに塗装だけ塗り重ねた結果、開かなくなっており役に立ちませんでした。懲役3年の艇長が指揮を取っていました。この写真の時点でも乗客に退船を指示していれば全員が助かったとの判断が専門家から出されています。

 懲役3年確定はWoW!Koreaの《セウォル号“いい加減な”救助の海洋警察前艇長に懲役3年》だけが日本語での報道で、朝鮮日報などの日本語版は伝えていません。最高裁までの経過はこうです。

 《キム前艇長はセウォル号事故現場で救助指揮官として船内の乗客状況を確認及び乗客退船誘導措置、セウォル号との交信などの初期救助業務をおろそかにし、多数の乗客を被害に遭わせた容疑で起訴された》

 《1審では「現場指揮官として救助措置を履行していたならば、一部の乗客が船外に出てきて生存していた可能性がある」とし、懲役4年を宣告した。2審では、キム前艇長の責任を認めながらも「大型事故に関する訓練もまともに受けていないキム前艇長に全ての責任を負わせるのは過酷だ」として懲役3年に減刑された》

 検察が起訴を逡巡した状況は第447回「セウォル号沈没での不作為なければ全員助かった」で描きました。第464回「セウォル号救助失敗に国家の罪を認める判決」では、1審の地裁判決が艇長の過失による犠牲者数を56人に限定し、公務員犯罪が国家賠償につながりにくいようにした司法の後進性を伝えました。2審判決はさらに責任を薄めていると読めます。

 第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」で指摘したように、韓国民には法やルールは他人に守らせるもので、自分は自分で判断するとの個人本位の人治意識があるようです。法やルールにがちがちに拘束されているはずの公務員の業務上過失致死もありがちなことと見えているのでしょう。メディアも含めて、これに真剣に怒り、断罪していく姿勢を見せないようでは、今後も韓国社会に法治国家への変化は起きないでしょう。


イスラム選民教義が危険、テロに責任とイラク紙

 大部分のイスラム教徒は同時多発テロと無関係のはずですが、イスラムの選民教義がテロを招いているのであり「ムスリム全員がテロの直接責任者」との厳しい主張が、アラブ世界に属するイラク紙から発信されました。ワシントン・ポスト紙もイスラム研究者による「教義は何かしらテロに関係ある」とする主張を記事にしています。預言者ムハンマド以来のイスラムの教義は動かせないものと考えられてきましたが、21世紀の世界を安定に導くには大改革が必要と言うのです。

 中東報道研究機関メムリの《アラブとムスリムは世界に荒れ狂うテロの直積責任を認めよ ―イラク紙編集長の主張― 》はこう述べます。

 《小学校、中学校、高等学校そして後になると大学でも、宗教と歴史の教科で我々は選民であり、至高且つ栄光の民であるとか、我々の宗教が真の宗教であり、(地獄の業火から)救われる正しい民は我々であるとか、ほかの民は偽りの民で地獄に落ち業火に焼かれる不信心の民であり、その民の殺害は許され、その民の財産と妻を我々がとっても構わないなどと教えている》

 《我々の子供達と孫達は、他者の宗教や民族或いは国籍などに関係なく、すべての他者を敵視して、世界聖戦をやっているのである。この環境が過激イスラム集団を生みだした。この集団は、貧困と失業という土壌で発芽し、汎アラブ主義の名においてそして又時には宗教と宗派の名において犯される拝斥、人権強奪、個人及び集団の自由の侵害そして信義の侵害によって育っていく》

 《我々はテロに対する我々の責任からのがれることはできない。言い訳も役に立たない。まず我々は責任を認め、我々自身と他者に謝罪し、今から我々の生き方を改めていかなければならない。そのためには、教育のカリキュラムを再検討し、初等教育から大学レベルまでそれを根本からかえなければならない。それをやらないと何も前に進まない》

 ワシントン・ポストの「Shadi Hamid」署名による《Does ISIS really have nothing to do with Islam? Islamic apologetics carry serious risks.》について、東京大学先端科学技術研究センターの池内恵・准教授がフェイスブックで解説してくれています。ジハード「聖戦」が問題です。

 《イスラーム教の教義の中に厳然として存在するジハードの規範が、近現代の国内法・国際法とは異なる原理に基づいている》

 《イスラーム教の教義の中には、イスラーム教の観点からあってはならない国内・国際秩序を武力で制圧することが義務であるという主張が正統化される余地があるという事実は、直視しなければ対峙できない》

 《メディアの報道は、教義の面を誰一人理解せずに報じているので、「差別と偏見が原因だ」と言ったものになりがちだ》

 《教義の一部が、一部の信者をテロに走らせているという因果関係は見つめないといけない。こちらが先にあるものだからであり、「根本原因」を探るのであれば、こちらにも取り組まなければならない》

 2003年の拙稿第139回「イスラム、自爆テロそして自衛隊」では中東で生まれたユダヤ教、キリスト教、イスラム教は同じ神を信じる一神教の宗教であり、三つの宗教は対立していなかった歴史から説き起こしています。

 しかし、イスラム教では地上に神の国を実現するイスラム共同体を防衛するジハードが成人男性の義務とされ、殉教者は最後の審判を受けることなく天国へ導かれるとコーランは記します。 イラク戦争で《政治的にも軍事的にも八方塞がりであったフセイン大統領は、ジハードによる戦いに持ち込むために、敢えて早々に敗れた》可能性があり、そのイラク軍残党が現在のIS(イスラム国)の中心メンバーを構成しています。


中国変調、政治ばかりか経済の民主化も遠のく

 中国が中進国の罠に陥らずに経済発展するには政治の民主化が必要と見られているのに、経済の民主化まで遠のく事態が進行しています。株式信用取引の証拠金率を100%に引き上げ、巨大国有企業の寡占強化などです。ネットでの言論の自由、大学での教育の自由まで奪ってきた中国共産党・習近平指導部は、あらゆる自由化・民主化を押しつぶす時代錯誤に突き進むようです。国土全体に広がる深刻な大気汚染が改善されない点に象徴されるように、国民の下からの批判を封印して官僚組織が真っ当に機能するはずがありません。

 信用取引の証拠金率は50%ですから、現在は証拠金の2倍の売買ができていますが、23日から100%にすればもう信用取引とは呼べない事態です。融資残高は22兆円の規模でした。ウォールストリートジャーナルの《上海・深セン取引所、信用取引の証拠金率引き上げ》はこう伝えました。

 《上海証券取引所は声明で「相場の回復に伴い、信用取引の規模や売買代金が再び急増している」と指摘。今回の措置は「投資家の正当な権利を保護するとともに、システミックリスクを回避する」ことが狙いだと説明した。また、市場の健全な動きを促すだろうと述べた》。何が健全か当局の見解は以下のようです。

 《中国の株式取り締まり強化は「みせしめ」−萎縮する証券業界》が報じる通りなら、海外で見られる普通の売りも買いも出来ません。《ファンドマネジャーらによれば、規制当局者は、株式取引所からブローカーへの警告書簡を通じて、当局が何を好み何を好まないかを告げている。例えば株価が上昇しているときに買い注文を積み上げるのは悪いことだ。市場が下落している時に、株を投げ売りすることも警告対象になるという》

 7月の株式市場暴落の際に書いた第490回「中国の無謀な株式市場介入に海外批判止まず」の市場に任せる方向とまるで反対に進んでいます。株の売りも買いも当局の顔色を見ながらしなさいと、市場関係者を縛っています。信用取引も機能しなくなっては一般投資家の足は遠のくでしょう。

 10月に開いた共産党中央委第5回全体会議(5中全会)には民主化へ期待がありましたが、出てきたのは一人っ子政策の見直しだけでした。巨大国有企業を改革して民間企業の活力に任せるどころか、さらに寡占化を進める方向になっています。計画経済への逆行です。

 中国現地の声を拾っている《実名!中国経済「30人の証言」 日系企業が次々撤退、大失速の真相〜こんなに異変が起きていた》には注目される証言があります。

 《「中国の景気は悪いなんてもんじゃない。以前は政府が、石橋を叩いて渡るような慎重かつ的確な経済政策を取っていたが、いまの政府が進めているのは、石橋を叩いて割る政策だ」(南楠・食品卸会社社長)》《「3年前まで国有企業には手厚い福利厚生があったが、習近平時代になってすべて消え、初任給も毎年1000元ずつ減っている。それで優秀な若者から辞めていく」(胡麗芳・別の大型国有企業社員)》

 南シナ海でゴリ押ししている習近平指導部は、国内的にも奇怪なゴリ押しをしているように見えます。北京も含む中国の東北部はこの数日、重篤なスモッグに覆われています。『虚飾の青空剥がれ北京に重篤な大気汚染が戻る』で人為的に作った青空が剥げ落ちたと指摘しました。暖房に石炭を使うシーズンに入って一気に深刻化したのです。環境対策への投資で経済成長が拡大するとか楽観的な意見など消し飛んでいます。


核燃サイクルは破綻目前、国策に責任者なし

 高速増殖炉もんじゅに「安全の番人」原子力規制委が運営機関交代を突き付けました。核燃サイクルのもう一方の柱、核燃料再処理工場も安全基準で行き詰まっています。国策が破綻目前なのに政府の責任者が見えません。20年前の超ずさんナトリウム漏れ事故の際に抜本見直しがあるべきだったのに国策だから放置されました。核燃料再処理工場についても福島原発事故を契機にした安全基準見直しで原子力規制委の審査が難航しています。2016年完工の現目標など無理で、当初の1997年完工予定から20年遅れは確定、いや完工はしないと観測しています。

 もんじゅ(福井・敦賀市)について毎日新聞の《クローズアップ2015:もんじゅ運営交代勧告へ 文科省、手詰まり感》が政府・文科省の駄目ぶりを詳しく伝えています。

 《今回の勧告は、原子力規制委員会設置法に基づき、原子力施設の安全が確保されない場合は他省庁に改善を求めることができる「伝家の宝刀」(文科省幹部)だ。前身の旧原子力安全・保安院にはこうした勧告権はなく、2012年9月の規制委発足後、初めての行使となる》《規制委は、勧告権行使の理由について、(1)もんじゅを保守管理できない原子力機構に運転能力はない(2)解決のゴールが見えない本質的な問題を文科省に認識させる(3)設備と人の技術が劣化し放置できない――などとする》

 もんじゅを建設した元の動燃を継承する原子力機構に代わる存在は国内にありません。《規制委の田中俊一委員長は4日の記者会見で、もんじゅについて「原子力機構に安心して任せられない」と指摘。廃炉の可能性については「(監督する)文科相がいろいろ考えて判断する」と突き放した》とあるように、「実質的に終わった」感が滲んでいます。

 もんじゅは全く発電をしたことがないですが、1日の維持管理に5000万円もかかり、これまでに投入された国費は1兆円にのぼります。それでいて第353回「高速炉もんじゅ稼働を絶望にする安全設備要求」で指摘したように福島原発事故後の安全要求に応えるのは原理的に不可能です。技術的には潰すしか無いけれど、日本が48トンも蓄えてしまった原爆原料プルトニウムの使いみちとして国際的には高速増殖炉路線の旗を下ろせないので置いてある存在です。

 青森・六ケ所村の再処理工場はもっと金食い虫で年間維持費が1100億円です。もちろん完工していないので再処理実績はありません。第491回「核燃サイクルの愚図ぶり、官民ともあんまりだ」で描いたように当事者の日本原燃も、監督者の経済産業省も国策ゆえの大甘な対応を続けてきました。

 規制委による重大事故対策の安全審査は《再処理施設 前回までの審査会合における主な論点と対応について》の後半部に一覧がまとめられています。原燃側が説明できていない空白部だらけです。10月5日の審査会合議事録が公開されていて規制委側から重大事故に関する《今回のこの説明は、基本方針とか条件なんで、個別具体的なやつがないと、善し悪しというのはなかなか難しいかなと思っているんで、これは今後細かい一個一個の事象とともに確認をしていきたい》との発言が出ています。2015年も終わりが見えてきているのに「日暮れて道遠し」そのものです。


国を滅ぼす機械的予算削減しか能がない財務省

 財務相の諮問機関、財政制度等審議会分科会で了承された国立大学法人運営費交付金の機械的削減とそれに見合う授業料の引き上げには唖然とさせられました。科学技術立国を根底から破壊する亡国の政策と言うしかありません。たかだか1兆円規模の大学交付金を減らしてきた上に更に削減する前に、40兆円にもなる医療費を何とかしろと言わねばなりません。財務省に予算の中身に踏み込み質を問うて削減するだけの能力が無いから、機械的予算削減に頼る恐ろしい事態です。

 大手マスメディアはいまひとつ事情を飲み込めておらず、反応が悪いのですが、《国立大授業料 40万円値上げ 財務省方針 小中教職員3.7万人削減も》が明確に主張しています。《財務省は26日、国立大学に対する運営費交付金を削減し、授業料の大幅値上げを求める方針を打ち出しました。減額分を授業料でまかなうと、現在53万円の授業料が16年後に93万円にもなり、憲法26条が求める「教育を受ける権利保障」を投げ捨てる暴挙です》


 日本の高等教育への政府支出が各国に比べて低い事実はよく知られています。《第3章 高等教育への公財政支出》からグラフを引用しました。日本の《公財政支出のレベルは低いが、民間支出が高いため、GDPに対する投資の比率はOECDの平均レベルとなる。イギリス、ドイツの投資は、それぞれ1.3と1.1で、日本よりも少ないが、対GDP公財政支出は、両者0.9と日本よりも多い。フランスの投資は1.3と日本とほぼ同じであるが、公財政支出1.1であり、日本よりも多い。イギリス、ドイツ、フランスの公財政支出は、日本のそれのほとんど2倍といえる》

 この公的支出をもっと減らして、民間支出つまり家庭の学費負担をもっと大きくさせようとする政策が今回、了承されたのです。国立大がそこまで授業料を値上げすれば私立大も追随するでしょう。現在でも学費ローンの返済に悩む若い世代が多いのに、とんでもないと言わねばなりません。

 2004年の国立大学法人化をきっかけに起きている研究崩壊については第495回「浅知恵、文科省による研究崩壊へ予算編成開始」で論じています。十年続いた毎年1%交付金削減が研究の一線を痛めつけ、先進国中で特異な論文数の減少を招いています。第496回「40兆円超え医療費膨張に厚労省は無策なまま」ではこれも医療費の中身に踏み込めない官僚の姿を問題にしました。

 国立大学協会の《財政制度等審議会における財務省提案に関する声明》は国立大学を危うくし教育格差を広げる点に危惧と疑念を表明しています。《国立大学法人の基盤的経費である運営費交付金は、平成16年度の法人化以来12年間で1,470億円(約12%)の大幅な減額となっており、各国立大学においては規模の大小を問わず、その運営基盤は急激に脆弱化しており、諸経費の高騰も相まって危機的な状況にある》

 そんな無茶苦茶な政策はないと言っているのですが、妙に弱々しく、断固として抗議しているようには見えません。マスメディアの反応も弱い中、このまま現実になる恐れがあると指摘します。