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国家のエゴが歪ませた中国年金制度は大火薬庫

 60歳以上が2億人に達した中国の年金制度は20年で1331兆円の資金不足になるなど憂う報道が続きます。実は昨年、金沢大で書かれた中国人研究者による学位論文が現状で破綻同然であると主張しているのを発見しました。中国の年金制度と財政事情には不透明な点が多く、官僚の説明と報道している中国メディアとも故意かズサンかは知りませんが、内容の信憑性に疑いがありました。2年前に書いた第357回「年金制度欠陥と高齢化が中国財政破綻を呼ぶ」での疑問を解き明かしてくれる専門家にやっと出会えた訳です。

 まずは今年3月の報道《中国の年金制度、今後20年で1331兆円もの資金不足に陥る可能性―海外メディア》を見てください。

 《中国人力資源・社会保障部の尹蔚民(イン・ウェイミン)部長は10日、第12期全国人民代表大会第3回会議の記者会見で中国の年金制度の現状について語った。それによると、公務員を除く都市の企業就業者と個人事業主を対象とした都市就業者年金(=企業職工養老保険)の14年の総収入は2兆3300億元(約45兆4350億円)、支出は1兆9800億元(約38兆6100億円)、差し引き3458億元(約6兆7400億円)の黒字で、累計の残高は3兆600億元(約59兆6700億円)だった》――将来はともかく現状は黒字で、累計資金残高は増えていますよ――との説明です。

 王逸飛さんの博士(経済学)論文《中国における公的年金制度の構造的問題―経済・労働システムと政府間関係の視点から―》が2011年現在で説いている文章と並べると、カラクリが見えてきます。中国の制度では労働者収入の20%が社会プールに預けられて過去の退職者への年金支払いに充てられ、8%が個人口座に入ることになっています。この社会プールに余裕がありません。

 《2011年の社会プールの積立金は実際にはない。2012年版の『中国統計年鑑』によれば,2011年度の基本養老保険基金の総収入は1兆6895億元で,総支出は1兆2765億元で,当期余剰金は4130億元である。しかし,この4130億元は,政府財政補填の部分が2272億元で,いままで滞納した保険料の繰り上げ納付金が1968億元を占めている。すなわち,政府財政補填と繰上納付した保険料を除くと,当期の余剰金はゼロになる》

 とすれば累計の残高が有るなら個人口座の分であろうと分かります。しかしながら、名目として存在しても実は無い部分が大きいのです。《個人口座積立金の流用問題(空口座)が深刻である。2011年末まで,個人口座積立金から流用された金額は2兆元を超えている。本来は個人口座積立金の累計は2.5兆元であるはずであるが,実際に個人口座の積立金は2703億元である。流用された金額は2.22兆元を超えている》

 年金資金は北京・上海など直轄市や各省の地方政府が管理しています。1997年の改革から個人口座積立が始まったのでここから年金を貰う人はまだ少なく、大きな資金が目の前に有るのは魅力的ですから禁じられていても地方政府の事業などに流用する結果になってしまうのです。今年の政府説明「累計の残高は3兆600億元(約59兆6700億円)」が実際に存在しているとは考えられません。

 各地方政府は資金管理ばかりでなく独自の年金制度も作り上げているので地方ごとにシステムが異なります。労働者が直轄市や省をまたいで移動すると、個人口座の積立金は貰って行けても、もっと大きな社会プール分の年金は放棄せねばなりません。中央政府が地方政府に丸投げした結果、非常に厄介な制約が発生しています。全国統一ルールを作るべきですが、地方政府は資金にまつわる権限を手放しません。

 この学位論文はもっと大きな「巨悪」があると指摘します。それは計画経済時代に政府が約束していた年金支給債務に何の手当もしないで、新制度に移行した措置です。本来なら何十兆円も資金を積んで新制度を始めるべきなのに、国家負担を嫌ってゼロから始めたので過去の退職者への年金支給がいきなり社会プールの役割になりました。労働者収入の20%という高率な負担に耐えられないので加入しない企業も多く、加入率は6割を切ります。また、李克強首相が2013年に「社会保険加入者は3億人いるが、今年までに累計3800万人が支払いを中断している」と明かしたように、実質的に脱退してしまうのです。


 先日の第481回「中国の夢、技術強国化は構造的に阻まれている」から中国の年齢別人口推移グラフを再掲します。都市部の退職年齢が男性60歳、女性50歳(管理職は55歳)で日本よりも若いため60歳以上層の拡大が年金対象として問題になります。2015年で2億人、2030年に3億5千万人、2050年には4億5千万人もです。

 中国メディアの報道では2030年ごろに制度崩壊しかねないとされますが、現状でもボロボロと申し上げて良いでしょう。このままなら都市部労働者の半分は無年金で老後を迎えるしかありませんし、農村部で新たに始まった年金制度は月額で千円もなく社会保障になりません。社会主義国の看板を下ろしていない以上、見捨てるわけには行きません。今の中国政府財政に余裕が有るように見えるのは当然の財政義務を果たさずに来たからであり、直ぐ近未来に巨大過ぎて不可能な尻拭いを余儀なくされると考えられます。


中国の夢、技術強国化は構造的に阻まれている

 中国が先進国になれるか、『中所得国の罠』に陥ってしまうかの分かれ目は製造大国から技術強国に変身できるかです。知的財産権無視のパクリ社会では独創性が困難である上に、構造的に阻まれる要因が見えてきました。形の無いものにはカネを払わない国民性です。人口ボーナス期が終わって生産年齢人口が減少に転じ、中国政府には焦りの色が見え「中国製造2025」計画で「2025年までに製造業の競争力をドイツ、日本レベルまで高めたい」と言い出しました。


 国連統計から作成した、2050年までの中国の年齢別人口推移グラフです。生産年齢人口は15歳から64歳までが一般的ですが、中国の場合、都市部で決められた退職年齢が男性60歳、女性50歳(女性管理職は55歳)であり、均すと53歳程度と言われます。一方で年金制度が立ち遅れた農村部では高齢者はいつまでも農業をしているようです。退職年齢の引き上げが言われ始めましたが、新卒者の就職を阻むのでためらわれています。

 15〜59歳グラフを生産年齢人口の推移と見ると、2015年に減少段階に入って急速に減っていきます。2015年で60歳以上人口は15%、実数で2億人を超えます。2050年の段階では33%、4億5千万人に達し、15〜59歳は7億2千万人ですから現役1.6人で高齢者1人を支える恐るべき構図になります。日本との比較は第378回「日本に続き中国も超特急で超高齢社会へ突入予定」をご覧ください。

 一方、1995年から2010年にかけては生産年齢人口の急増があり、近年の中国の経済発展が人口ボーナスに負っているところが大であると知れます。人口ボーナスの立ち上がり期は改革開放以前で、まだ発展の準備が出来ておらず、チャンスを空費した点も見て取れます。十分に富む前に社会が老いてしまう恐れが語られる今にしてみると手痛い失着でした。

 昨年の第13次5カ年計画が中所得国を超えて高所得国を目指すとし、今年の「中国製造2025」計画が日独並みと言い出しますが、可能なのでしょうか。そもそも製造業の変調を指摘する報道があちこちで見られます。

 《中国製造業の衰退・・・「重大な危機に直面」=中国メディア》はこう伝えています。《中国国家統計局のデータを引用し、中国国内で製造業に従事している労働者の数も12年以降、前月比ベースで減少することが「常態化」していると伝えたほか、税収の伸びも同時期から鈍化していることを指摘し、「中国の製造業が重大な危機に直面していることを懸念せざるを得ない」と論じた。また、鉄道貨物輸送量も鈍化していると指摘し、「12年から前年比でマイナス成長になっている」と伝え、12年は前年比0.9%減、13年も同0.9%減、14年は同7%減だったと指摘、「これだけの指標が中国の製造業にとっての“曲がり角”が2012年だったことを示している」と伝えた》

 経済発展を続けるには粗製乱造から質的転換を図る以外にないのですが、中国の自主ブランド車の多くが自前のエンジンを持たない事実を知らされると首を傾げたくなります。《「三菱製エンジン」なくして、「中国ブランド車」はありえない!?=中国メディア》はこうです。《中国の自動車エンジンに関する技術が立ち遅れており、奇瑞汽車など自社で研究開発を行っている企業ですら世界のレベルから8−10年は遅れているとし、「成熟した技術を持つ三菱製エンジンを導入するほうが自社で生産するより安価で導入できる」と論じた》。これでは世界に向かって輸出する展開などあり得ません。

 中国のパソコンのOSはほとんどがWindowsXPの海賊版と言われます。具体的な形がないモノに金を払う習慣がありません。それが製造業発展に深刻な影を落としている例を《中国調達:見えないものにはカネを払わない中国》に見つけました。中国では機械を売った後のアフターサービスは無償でするしかないというのです。

 《日本国内では、カスタマーサービス部門は、一部の例外を除くと、競争にさらされることなく高収益を計上している。メーカーは本体販売の損失をカスタマーサービス部門の利益でバランスをとっている一面もある。実際、バイヤーの立場からしても、自社が受けるカスタマーサービス費を値切るというのはむずかしい。ところが中国では、その逆なのである。特定の顧客が支払を拒むのであれば、そのような顧客を相手にしなければよいが、どの顧客もそうなのであるから、そんなことを言っていたら、商売にならなくなってしまう。知的財産権の侵害でもそうだが、中国人は目に見えないもの、カタチの残らないものにはカネを払わないのである》

 《それでは、中国で逞しく商売しているローカルメーカーはどうしているのかというと、はっきり言って、彼らの商売は“売り切り御免”なのである。つまり、売ったあとのメーカーの供給者責任などという概念を持ちあわせていない》

 このような商売の仕方では製造業の技術を日本やドイツ並みにレベルアップするのは原理的に不可能です。不動産バブルの崩壊とか懸念が伝えられる中国経済ですが、真の危機は技術強国には到底なれない点にあると考えられます。国民1人当たりGDPが7000ドル近くに上昇し、1万2000ドルを超える高所得国になれるかは、資源浪費・環境破壊型の発展モデル転換も必要です。第439回「中国の大気汚染、改善遅く改革に絶望的閉鎖性」で指摘した通り、これも遅々として進みません。


瓦解していく科学技術立国、博士進学者は激減

 知的な営みを象徴する論文数が減少し、人口当たりで見れば東欧の小国にも抜かれています。研究者の供給源、博士課程への進学者が激減しているのですから、国是のはずの科学技術立国は瓦解と申し上げて良いでしょう。ポスドク1万人計画に乗った結果、定職がないまま30代後半から40代にもなった研究者からは悲痛な声があがっています。この事態にも政府は異常を感じ取れないと見えます。国立大学運営費交付金の重点配分が2016年から強化されると、中小の大学は人件費が賄えなくなって定員を減らさざるを得なくなります。退職者が出ても新規採用の見送りで対処するでしょうから研究者のお先真っ暗感は深まるばかりです。


 文部科学省の学校基本調査から大学院博士課程への入学者数を拾いました。2003年には18232人もいた入学者が2014年には15418人にも減りました。しかし、実は社会人からの入学者が急増しているために嵩上げされています。社会人を除いた進学者のグラフも作成すると、2003年の14280人が2014年は9608人まで減りました。何と3分の2です。人口当たりの博士号取得者は日本は欧米の半分以下ですが、今後さらに差が開くでしょう。

 博士号を取得したのに展望が無いのですからやむを得ません。生物科学学会連合のポスドク問題検討委員会が4月に《<重要なお願い>生物科学学会連合より行政(国、地方)、企業、大学・研究機関、および研究者コミュニティーに対するお願い》を出しました。そこから「図3:大学院博士課程修了者数と大学教員(25〜35才)の採用数の推移」を引用します。


 1991年には博士課程修了者数6201人に対して大学教員(25〜35才)採用数が5428人とほぼ見合っていたのに、90年代に進んだ「大学院重点化」で博士課程修了者数が急増しました。2013年には修了者16446人に対して、大学教員採用数は4982人しかありません。溢れている多くはポスドクになり、2013年段階で35才以上のシニアポスドクが37%を占めるほど高齢化しています。40才以上は16%です。《今、次世代を担う若手研究者が窮地に陥っています。ポスドク(任期付博士研究員)の雇用促進と研究者育成に是非ご協力ください》と訴える所以です。

 ポスドク1万人計画から「卒業生」が出始めた2001年に読者共作2「ポスドク1万人計画と科学技術立国」を書いています。日本のポスドクの仕組みが将来への展望を欠いており、大学の封建的な運営にも問題があると指摘しました。顧みて当時の心配がほとんど解消されていません。

 2011年閣議決定の第4期科学技術基本計画が使う現実と乖離した言葉の虚しさ、空々しさを見てください。《優秀な学生が大学院博士課程に進学するよう促すためには、大学院における経済支援に加え、大学院修了後、大学のみならず産業界、地域社会において、専門能力を活かせる多様なキャリアパスを確保する必要がある。このため、国として、博士課程の学生に対する経済支援、学生や修了者等に対するキャリア開発支援等を大幅に強化する》

 シニアポスドク問題がここまで深刻になると打つ手はあるのか、もう手遅れではないかと思えます。政府・文科省は10年、20年先を考えるスタンスを持たず、その場凌ぎを繰り返していると断じて良いでしょう。


無残な科学技術立国、人口当たり論文数37位転落

 科学技術立国を唱えてきた日本の無残な実情が見えました。人口当たり論文数を指標にすると東欧の小国にも抜かれて世界で37位に転落です。国立大学法人化で始まった論文総数の減少傾向が根深い意味を持つと知れます。国際的に例が無い、先進国での論文長期減少の異常を最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が新たに作成したグラフを《いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!!》から引用します。


 グラフは「人口当たり全分野論文数の推移(3年移動平均値)。日本は多くの東欧諸国に追いぬかれた。」です。年単位の凸凹をならすために前後3年間の平均を採用しています。右端に並ぶ国名が2014年での世界の人口当たり論文数ランクになります。この数年でクロアチア、セルビア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、スロバキアといった東欧の小国に追い越されたばかりでなく、欧米先進国との差が開くばかりである惨状が分かります。

 世界的な論文数増加の勢いに取り残される傾向が、バブル崩壊があった1990年代から始まっている経過も見えます。北欧の小国はもともと上位を占めている上に、2000年前後の世界的伸長ペースに取り残されて西欧の小国にも置いて行かれました。さらに東欧諸国にもという次第です。

 2014年の論文総数は「昨年と同様に世界5位で順位は変わっていませんでした。ただし、人口が半分のフランスに接近されており、このままのペースが変わらないと仮定すると3年後にフランスに追い抜かれて6位になります」。人口当り論文数は「国ではありませんが香港を加えますと、国際順位としては37位」、「このままの政策が継続されれば、さらに国際競争力が低下する」と豊田氏は主張します。

 昨年6月の第435回「2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる」続編で政府・文部科学省が採っている大学「改革」政策の無謀さを指摘しました。論文総数の異常減少グラフはそちらで見てください。

 豊田氏の分析が、論文数は大学への公的研究開発資金に左右されることを示しており、それは日本では国立大学運営費交付金です。交付金が2004年の国立大学独立法人化から10年間で13%も減額され、自由な研究に充てられる余裕がほぼ消滅しました。

 文科省の今年4月8日付《第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方について》はこれまでの重点配分方式では「大学改革促進係数により財源を確保した部分と、重点配分した部分の関係が不明確」「選択の幅が広すぎ、結果として各国立大学の強み・特色をより伸ばすことにつながっていない」と不十分とします。2016年から始まる第3期でもっと抜本的に重点配分していくと宣言しています。

 ここまで交付金総額を減らした上に重点配分を強力にすれば旧帝大クラスはともかく、中小の大学にはカツカツ以下の資金しか回らなくなります。「無駄な研究などしないでよい、学生の教育だけやりなさい」との含意があちこちに見えます。もともと財務省は教育のために配当すべき教員数よりも多くを抱えている現状が不満でした。しかし、重点配分でいま目立っている研究成果に資金を集中して早く果実を得ても、将来に育てるタネが草の根の研究者群から出て来る基盤を失ってどうするのか、とても大きな疑問があります。国家百年の計にかかわる論文数減少の意味を、自分の代で何か成果を出したい文科省官僚が全く考えていない愚かさが明らかになっています。


未運転の新型原発を売る商売に中国と韓国が熱中

 新型自動車を設計したメーカーが走らせる前に売り出すことはしません。多数の部品からなり、どこに異常が潜むか分からないからです。ところが、膨大な部品からなる原発を中韓両国は設計図だけで売る無謀な商売に熱中です。他国のことながら重大事故を起こせば地球規模での災害になり得る原発だけに、心配でなりません。現に韓国自ら運転経験がない韓国型の新大型炉がアラブ首長国連邦(UAE)で完成しつつあり、韓国が先に運転実績を作るように要請されています。


 手広く商売を広げているのは中国で、今年に入ってアルゼンチンとパキスタンからの受注が報じられました。それが上の写真「華竜一号」(環球網から引用)で、百万キロワット級の大型原発です。中国が自主開発し、知的財産権を全て掌握していると主張しています。福島原発事故をうけて重大事故予防機能を強化した第三世代の原発といいます。しかし、原発建設ラッシュの中国本土でも、この新型炉の建設はまだ始まっていません。パキスタンでは人口1000万を超す最大都市カラチの近郊に建設する予定で、不安を持つ住民から反対の声が出ています。

 中国本土で最も建設が進んでいる新型原発は米ウエスチングハウス社が開発した第三世代炉「AP1000」です。実はこの炉も本国の米国でまだ建設されていません。浙江省の三門原発と山東省の山東海陽原発でウエスチングハウス自身が建設にあたっています。同社はもともと加圧水型原子炉の開発者であり、豊富な開発と建設の経験を持っていますから設計図をいきなり現場に持ち込むのも許されるのかもしれません。それでも、2014年中の運転開始予定が、循環ポンプなどに技術的な支障が発生して3年遅れになっています。

 まだ出来上がっていない新型炉AP1000をベースに、更に大型化した原子炉「CAP1400」を中国は独自開発すると言っています。その新・新型炉に南アフリカなどが強い関心を示していると伝えられるのだから、長年、原子力をウオッチしてきた者として、とても大きな違和感を持ちます。知的財産権を掌握とする以上は、新しい設計でなければなりません。その新設計が確実に機能する実績を作らないで輸出の話が先に出来てしまうとは常識外れと言わざるを得ません。

 ロイター《〔焦点〕中国原発輸出、問われる「メード・イン・チャイナ」の信頼性》が伝えたような疑問が出ない方がおかしいのです。

 《先月には独自モデルの原子炉「華龍一号」をアルゼンチンに輸出することで基本合意。しかし、国営メディアが同モデルの「初航海」と表現したにもかかわらず、中国国内ではまだ華龍一号は1基も建設されていない。世界市場に原子炉を出荷できるのか、中国の輸出能力に懐疑的な見方が強まっている。中国の国家核電技術公司(SNPTC)でシニアエキスパートを務めるシュー・リェンイー氏は「われわれの致命的な弱点は、管理基準があまり高くないことだ。国際基準とは大きな差がある」と話す》

 中国の原発事情については1年前に第419回「新型炉ばかりの中国原発、安全確保に大きな不安」にまとめました。

 中国の場合、新設計と言ってもよく知られた加圧水型原子炉に変わりはないのですが、先日、韓国大統領とサウジアラビア国王の間で輸出覚書締結のニュースが流れた小型原発は、まるで違う形態の炉です。主な配管を省いて原子炉内に主要な機器を収納するコンパクト設計、9万キロワット発電の他に海水を脱塩し1日4万トンの真水を作るのが売りになっています。第469回「韓国のサウジ向け小型原発は韓流ファンタジー」でUAEで出来つつある新型炉と合わせて詳しく論じています。