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甲状腺がんで福島事故否定する見苦しい科学者

 福島の子どもに多発している甲状腺がんは「放射線の影響とは考えにくい」と専門家評価部会が中間報告をまとめました。彼らのボス、山下俊一氏が「もう増えない」と1年前にした予測と正反対の現実なのに唖然です。科学者が立てた仮説に現実が反していたら、仮説を疑うのが科学の大原則です。「100万人に1〜2人」とされてきた従来の甲状腺がん発生頻度に対して、事故当時ほぼ18歳以下の38万5千人を調べて、これまでに87人のがんが確定しています。これは第一次検査段階である1年前の倍増以上です。「スクリーニング効果」では抗弁し得なくなっています。

 山下氏は首相官邸の《福島県における小児甲状腺超音波検査について》で《医療界ではよく知られたスクリーニング効果(それまで検査をしていなかった方々に対して一気に幅広く検査を行うと、無症状で無自覚な病気や有所見〈正常とは異なる検査結果〉が高い頻度で見つかる事)の発生が懸念》と説明しました。

 さらに1年前の国際ワークショップ《福島の甲状腺がん「放射線影響ではない」?国際会議》報道でこう述べたとされます。《山下教授は、福島県の甲状腺健診で甲状腺がんの子どもがすでに33人手術を受けていることにについて、「5〜6年目にチェルノブイリと同じになることはない」と発言。(1)チェルノブイリと福島では放射線量が異なる、(2)スクリーニング効果が生じている、(3)ハーベストエフェクト(死亡後に発症する病気がスクリーニングによって事前に発見されること)という3つの理由から、「今後も増えるだろうとは予測していない」と結論づけた》

 昨年末の第459回「福島の甲状腺がんは原発事故原因が決定的に」では、1巡目検査で「異常なし」グループから4人が強い甲状腺がんの疑いに進んだ点を中心に取り上げました。これまで知られていなかった事実、2011年3月15日以降に事故当初よりも大量の放射性ヨウ素放出があったとNHKが報じたと指摘しました。3つの原子炉が順次、炉心溶融事故を起こし、その後からさらに多くの放出が続くとはチェルノブイリとは違いすぎていて、山下仮説で説明がつくとは考えられません。

 チェルノブイリ事故当初に使えた医療検査機器は貧弱であったと知られています。山下氏も認めているように現在の日本と検査のレベルが違うのです。日本が過剰な検査であると見るより、現実を映していると考える方が科学のアプローチとして自然です。

 今回、最も詳しく報じている朝日新聞の《福島)甲状腺検査「勧めることが望ましい」 県評価部会》は全国向けでない福島版の記事です。《部会では複数の専門家が、大部分は比較的進行がゆっくりな甲状腺がんについて健康な子どもを網羅的に検査することで、必ずしも治療しなくてもいいがんを見つける過剰診断の恐れがあると警鐘を鳴らした》と山下仮説が生きていると伝えています。それならばこれに反対する立場の専門家のコメントが必須なのにありません。他のメディアの記事にも異論がある専門家は登場しません。見苦しい科学者にマスメディア全体が同調しています。これは際立って異常な事態です。


閣議決定の少子化社会対策大綱は甚だしい見当違い

 20日に閣議決定の少子化社会対策大綱。初めて結婚の問題まで踏み込んだそうですが、若者に一方的に自立、結婚、出産を説教しているだけです。非正規の就職が半分にもなる現状を頬かむりした甚だしい見当違いです。第384回「結婚も離婚後も危うい非正規雇用の給与格差」で紹介した年収の落差《正規職男性520万円、非正規職男性225万円》を直視しないで少子化対策を論じても無意味です。

 内閣府の「少子化社会対策大綱(案)」には『若者の自立が難しくなっている状況を変えていく。』とあって、こうです。《若者が、自己実現や社会への参画を目指しながら、自己の選択として、職業や結婚、出産、子育てを自らの人生において積極的に位置付けていくことは、自立した社会人となる上で非常に大切なことである。しかし、近年それを阻む要因として、若年失業者やいわゆるフリーターの増大など、若者が社会的に自立することが難しい社会経済状況がある》

 だから《早い頃からの職業意識の醸成のための教育や、教育と雇用との間で連携の取れたキャリア形成を支援することなどにより、若年失業の流れを転換してゆくことが求められている》とするのですが、ちゃんと就職しても非正規では結婚するに足る収入が得られない現実を伏せています。まるで若者の自覚の無さが少子化問題の核心であるかのようです。雇用の流動化を進めて、働く者に更に不利な状況を作りつつある安倍政権らしい少子化対策と申し上げます。

 これでは第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」 で国勢調査を使って予測した、現在30代以下の若者世代で生涯未婚率が跳ね上がっていく恐るべき未来に全く無力でしょう。育児休業を取得しやすい環境づくり「イクメン奨励」など育児問題の改善は意味はありますが、結婚できる状況になって初めて効いてくる施策です。大企業で大幅賃上げのニュースが流れて沸いていますが、非正規職にはあまり恩恵はないでしょう。

 報道するマスメディアに政府施策を批判できる視点が無い点は、いつものことながら残念です。


インフルエンザ感染爆発、心配な変異警告2件

 中国の鳥インフルエンザとインドの豚インフルエンザで、流行性や毒性を強める遺伝子変異の研究報告が相次いで発表されました。どちらもマスメディアが日本には現地流行状況をきちんと伝えていない、心配な状態です。中国では話題になった2013年の第1波の流行規模を今年の第3波が凌いでいますし、インドの医療体制はスタッフ、型判定キットや薬が足りず、患者は貧困から医者に掛かるのが遅れることが知られています。


 WHOが2月25日まででまとめた中国鳥インフルエンザの患者発生推移を、「WHOリスクアセスメント(2/23付)」にあるグラフに加筆して引用しました。患者総数は2013年から数えて600人を超え、死者は212人以上です。2014年秋からを第3波と見ると患者は160人以上で、2013年第1波の135人を既に上回ります。第2波は300人程度と見られます。第3波は2月末から3月に入っても各地で患者増加が伝えられますが、中国メディアの報道が抑えられているのか、昨年3月の第414回「鳥インフルエンザ、終息せず散発発生を継続」のようにWHOデータと照合して合算するのが困難です。つまり人民日報の記事データベースに多くの患者報道欠落があります。

 12日にロイターが伝えた《H7N9型鳥インフル、突然変異でパンデミックの恐れ=研究報告》は香港大チームの研究です。《中国の5省15市で、H7N9型インフルエンザの進化と拡大を調査。ウイルスが鶏の間でしばしば突然変異し、パンデミックに発展する可能性のある遺伝子変異を獲得しながら存続、多様化、拡大していることが分かった。人での再発の恐れが強まっており、脅威が増大しているという》

 《研究報告は「(ウイルスの)拡大と遺伝子の多様性、地理的拡大は、有効な制御措置が講じられなければH7N9型ウイルスが地域を越えて存続・拡大する可能性を示唆している」と述べ》パンデミック(世界的大流行・感染爆発)の恐れを危惧しています。

 インドで流行っている豚インフルエンザH1N1型は、2009年の世界的流行で最初の年で1万数千人の死者を出しました。その後、毎年流行するようになり、新型ではなく季節性インフルエンザの扱いになっています。それが今年のインドで特異な動きを見せています。カナダCBCが伝えるところでは昨年のインドでの死者は218人だったのに、PTI通信によれば3月8日の時点で今年は1370人の死者が出ているといいます。

 時事通信の《豚インフルの死者1500人=強毒性に変異か―インド》は流行が始まる昨年12月から数えた死者は3月13日までで1537人とし、死者数が3月半ばで昨シーズンの10倍にもなっている計算です。《米マサチューセッツ工科大(MIT)は、2009年に世界中で大流行したH1N1型ウイルスが強毒性に変異した可能性があると指摘。「流行の状況をより厳密に監視し、対策を講じるために詳細なデータを集める必要がある」と警告している》と報じました。インドのウイルス変異が本物なら中国の新型と同様に世界規模で大きな影響があるでしょう。


中国大気汚染ドキュメは4億視聴も抹殺の動き

 中国の女性記者、柴静さんが自主制作した中国大気汚染ドキュメンタリーが推定4億視聴と網易教育サイトが伝えました。しかし、中国ではネットで見られなくなり、人民日報が記事削除と政府側に抹殺の動きがあります。一方で全国人民代表大会直前に清華大学長から環境保護大臣に起用された陳吉寧氏は、これまでの無能な大臣とは異なり、環境汚染に強い危機感と巨額予算の必要性を表明しました。環境保護を巡るせめぎ合いはマダラ模様で進んでいます。

 先日の第468回「中国大気汚染に女性記者がNスペ自作、視聴1億超」で紹介の「穹頂之下(Under the Dome)」が「7日から動画サイトで視聴不可」と報じたのは8日のAFP通信です。これと同時に公開当初は好意的に伝えていた中国共産党機関紙、人民日報が関連記事を削除したようで、「柴静」でサイト検索しても2月17日までの昔の記事しか現れなくなりました。人民日報日本語版でも検索すると4本の記事がヒットしますが、記事の本文は削除されて見られません。しかし、4億の閲覧は中国のネット人口が6億5000万人であることを考えれば強烈な影響を残したと言えます。

 凸凹模様と言うべきか、その記事のひとつは中国網日本語版《中国、PM2.5テーマの人気ドキュメンタリー 環境保護部「意義ある」》に転載されていて読めます。頭隠して尻隠さず状態になっています。

 《中国中央テレビ(CCTV)の元記者・柴静さんが自費製作した環境保護がテーマのドキュメンタリー「穹頂之下」(103分)が2月28日、インターネットを通して発信され、話題を呼んでいる。陳吉寧・環境保護部部長は1日午後、記者会見で、同作品を見たことを明かし、「国民の環境保護に対する意識が日に日に高まっており、環境の質の改善や健康な体を守ることに対する強い期待が感じられた。国民全体に対して環境問題に対する関心や自覚を呼びかけ、社会全体で協力して環境保護のために努力するのに意義がある」との見方を示した。人民網が報じた》《「これは、ニューメディアの時代において、政府メディアと国民がいかに触れ合えば良いかを示している。メディアを通して、環境情報を積極的に発信し、国民の環境保護業務に対する支持を得、参加に対する自覚を呼びかけるべき」と指摘した》

 とても真っ当な指摘ながら、メディアの統制は環境保護部とは全く別の共産党宣伝部門が担当しています。大気汚染ドキュメンタリーを4億人が見てしまえば、いまさら無かったことには出来ないのですが、ネット上で視聴した人から「責任は政府にある」との書き込みが氾濫していますから、官僚的な対応が発生してしまうのかもしれません。

 新しい環境保護大臣は強いメッセージを発信しています。《中国環境相「わが国の汚染物質排出強度は、史上最悪とされたドイツや日本をはるかに超えている」―中国メディア》では「人口密度や工業化による単位面積当たりの汚染物質排出量では、われわれはすでに過去最悪だったドイツ、日本を2−3倍上回っている」「われわれは人類史上いまだかつてないレベルの、発展と環境間における矛盾に直面している。環境問題は国民生活や民族の未来に関わる長期的な問題。その解決を急ぎ過ぎてはいけないが、おざなりにするのはもっといけない」と語りました。これとは別に数年で最大190兆円の投資が必要になるとも言っています。研究者だけあって、これまでの官僚とは違う取り組みが期待できるかも知れません。


韓国のサウジ向け小型原発は韓流ファンタジー

 韓国大統領とサウジ国王の間で小型原発の輸出覚書締結のニュースが流れました。韓国メディアは中小型原発市場を切り開いたと興奮気味です。興味があって調べると、韓流ドラマ「こうであったら」願望の塊に見えます。設計だけでまだ実験炉もない原発をサウジアラビアで20億ドルで2基建設して、試験運用の後で第三国に共同で輸出する夢の様な話です。加圧水型炉の技術を踏襲するものの、主要機器を大口径配管で繋ぐのを止めて原子炉容器内に集約して安全性を高めるという触れ込みです。まずは主要部を図で見てください。


 図中のように略称「スマート(SMART)原子炉」と呼ばれています。蒸気発生器4系統と加圧器も循環ポンプも炉心がある圧力容器に組み込まれています。電気出力は真水化プラントが無ければ10万キロワット、1日4万トンの真水を造るなら9万キロワットに落ちます。発電用蒸気を分けて、熱で海水を蒸発させる古典的な脱塩プラント付きです。(図はIAEAのウェブから)

 一体化すると確かに有利に見えますが、炉心の近くにあるために運転を始めると機器はいずれも中性子を浴びて放射化されます。故障や不具合が発見されても人間による修理や手直しは不可能になります。実験炉で機能や性能を確かめる段階を踏まずに「完璧に動く」実用炉が出来ると考えるとはファンタジーそのものです。おまけにこの炉は60年運転を標榜しています。40年運転が世界の標準である今、韓国単独で膨大な部品や資材のレベルを60年運転に引き上げる力があるとは思えません。

 10万キロワット1基が1200億円程度かかる点も疑問です。100万キロワットの標準的大型原発に比べると数分の1ですが、10万キロワットの石炭火力なら230億円で建設できます。1000億円投じれば100万キロワットの天然ガス火力が出来るのです。また、原子力と無縁だった国が導入すると厄介な核廃棄物や放射線管理など問題が発生します。世界に小型炉需要はいっぱいあるとの主張ですが、小国が導入するにはハードルは高く、10万キロワット石炭火力に脱塩プラントを付けた方がずっとお手軽です。

 実験炉も造らない悪い癖は、韓国の新型炉「APR-1400」が設計図だけでアラブ首長国連邦(UAE)に売れて2基建設中だからでしょう。140万キロワットの大型炉ですからUAEも怖いので率先して新型炉の運転をする気はなく、同型の新古里3号機をまず完成させて運転性能が実証されたら動かすつもりです。今年9月までに運転させる約束になっていて実現できないと毎月、違約金を払わせられるのですが、行き詰っています。重要部品の制御ケーブルの耐火性が偽造されて保証されないと判明、代替え品が見つけられない状況です。送電線も地元の反対で出来ていません。

 UAEもサウジも韓国のズサン体質に気が付いていないのが不幸です。大型フェリー沈没事故をめぐる第464回「セウォル号救助失敗に国家の罪を認める判決」や、国民性を解き明かした『奇怪な韓国の闇、民衆は達観する「愚政府・愚役人」』が能弁に語っていると思います。


中国大気汚染に女性記者がNスペ自作、視聴1億超

 深刻な中国大気汚染に欠けていた“NHKスペシャル”を中央電視台記者だった柴静さんが自主制作して公開。中国版ユーチューブでの視聴回数は1億を超え、コメントが1日で5万以上と熱狂的に迎えられています。語りや表情までNHKキャスター国谷裕子さんを連想させる細身の柴静さんが、2000万円と言われる私財を投じて作った104分のドキュメンタリーです。重篤スモッグが注目された2013年から関心を持って追っていますが、中国側にまともな報道番組が出ない不満を持っていました。あのような独裁体制の国だから出来なくて仕方がないかと思っていたところに、汚染源に当たる企業、業者までほとんど実名で登場、政府や大手国有企業も批判してしまいます。


 写真は重症患者の映像を語る柴静さんで、ユーチューブの記録ビデオ「穹頂之下」から引用しました。

 10年前、山西省の空が石炭採掘で暗く汚れていた取材経験から、現在の全国的な大気汚染状況まで語っていきます。科学的な分析を加え、微粒子PM2.5を中心にした汚染物質が体内に侵入する場面はかなり手間がかかったアニメを作っています。現場への直撃取材、専門家たちへのインタビュー、統計データや過去映像が豊富に使われ、中央電視台(CCTV)退職から1年がかりで制作したとはいえ、相当なチームを用意したと見えます。

 ビデオに中国語の字幕は付いていますが、断片的にしか分かりません。日本語で書かれた解説記事《台湾メディアが報じる柴静の「穹頂之下」から見える習近平政権の思惑》をお勧めします。

 調査を始めた動機はビデオから彼女自身の言葉です。《2013年1月の北京は、25日間「濃霧」の状態でした。当時、私は陝西省、河南省、江西省、浙江省に出張に出ていました。感じることができるのは喉だけです。それでも、空を見上げてみれば、25の都市と6億人を飲み込む大「濃霧」でした。北京に帰って来た後に、私は自分が妊娠していることを知りました。普通、女性にとって心踊る瞬間ですね。私は何も期待をしませんでした。彼女が健康で生まれてくれさえすれば、と》。《私はその後離職し、彼女を見守ることにしました。でも、帰り道、いつも怖かった。空気からは焚き火のような味がしました・・・。この「濃霧」は2カ月続きました。このことは、私にこの「濃霧」がすぐに無くなるものではないことを思い起こしました。10年前に山西省で生活していた時の空と全く同じだったのです》

 解説記事の「編集後記」は《柴静には強力な後ろ盾があるはずです。国家のトップ級だと思います。そうでなければ、インターネット系とは言え、全国配信をこれだけ長い間できるはずがありません。また、人民網に声明を載せることもできません。むしろ、すぐに捕まるでしょう。この動画の中で攻撃されている対象は、大手国有企業です。特に鉄鋼、発電、石油関連、すなわち昔から非常に力が強かった超巨大な中央系国有企業です》と指摘します。

 《画像の中に強烈な一言があります。中国石化の方がインタビュー上で、「もうどうしようもない。企業は太りすぎた。それも水ぶくれだ」と話す部分があります。当事者からこのコメントを吐かせるだけでも相当に強烈なインパクトがありますし、背景に巨大な力が動いていることが分かります》

 北京で開幕の全国両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)直前の時期に公開されて話題になった点も重要でしょう。昨年夏の第439回「中国の大気汚染、改善遅く改革に絶望的閉鎖性」の冒頭でこう描きました。

 《中国の大気汚染、微粒子PM2.5による重篤スモッグの改善は遅々として進まないと判明。環境保護法を改定し、門前払いだった裁判で環境訴訟を取り上げる準備はしたものの特定NPOしか訴えられぬ閉鎖的改革です。日本と同じ無過失責任の法体系をテコにして環境汚染源を封じていくには、広く国民の訴えを生かすべきなのです。ところが、民衆に自発的な行動力を発揮させるのは共産党指導部には怖くて仕方ないと見えます。官製のお仕着せ訴訟でぼつぼつ進むのでは済まないほど、空気も水も土地も汚染は深刻かつ広範囲です》

 荒療治が必要と、権力を持つ側が判断し始めた可能性があります。第465回「中国大気汚染は北京より地方省都がずっと深刻」にあるように逃げ場がない全国スモッグに国民の不満は渦巻いています。


日本の原子力推進派は手抜きを上手とまだ誤解

 六ケ所村の核燃料再処理工場の安全審査を3月末で済ませ設備改善工事にかかる目論見を日本原燃が放棄しました。重大事故にも余裕があるとの定性的評価に対し、規制委は定量的に議論しなくては駄目だとすっぱり拒絶。来年3月末まで完工を延期していて、審査が終わり次第工事に入って間に合わせるとの釈明を信じる人はいないでしょう。本当の始末を付けぬ逃げ腰・曖昧が原子力の世界で横行しています。福島原発事故がどうして起きたのか、どう悲惨に展開したか、手抜きだらけだった事実をまたも忘れているようです。


 原燃の放棄が伝えられた2月27日には大阪・熊取の京大原子炉で第111回原子力安全問題ゼミが開かれていて、4年ぶりの会に出席していました。上は過去最大140人参加でぎっしりの会場です。川野眞治さんが熊取6人組で先見性を発揮してきた過去を振り返った後は、小出裕章さんの定年退職に伴う最終講義のようでもありました。題して『原子力廃絶までの道程』から、従来の安全基準から規制基準に変わった問題で「新規制基準は破局事故を前提にする」の項を引用します。

 《原子力推進派は、大飯原発運転差止判決がゼロリスクを求めていて科学的でないと批判している。しかし、原発が絶対に破局的事故を起こさないと言って、ゼロリスクを宣伝してきたのは、原子力推進派である。もちろん、「ゼロリスク」の機械はなく、非科学的だったのは原子力推進派である》

 《今回の基準も「安全」基準ではなく「規制」基準、そのため、それに合格したからと言って「安全だとは申し上げない」と田中俊一規制委員会委員長自身が言っている。ところが政治の場に行くとすり替えが行われ、安倍首相は「安全を確認した」と言い、誰一人責任を取らなくていい形になる。そして、出来ない避難計画は各自治体に押し付ける》

 実際、最初に「合格」の川内原発再稼働では避難計画も周辺自治体の同意問題も驚くほどいい加減で推移しています。本当に事故が起きた時に、住民に対して恥じない釈明と対処が出来るとは思えません。2番手の高浜原発など若狭湾について詳しく見た『原発事故時の避難計画、具体化するほど無理目立つ』を2013年末に書いているので、ご参照ください。

 困ったことにマスメディアがその手抜きの共犯になっています。原発事故後の除染で出た大量の汚染土を保管する中間貯蔵施設について、安全ゼミ席上で今中哲二さんが「30年後に福島県外に撤去するなどあり得ないと誰もが思っている。ところが、地元メディアの記者に聞くと『あれはタブーですから書けません』との返事が返ってくる」と批判していました。また、放射線管理区域に指定せざるを得ない広大な汚染地域に住民を住まわせている惨状に、在京マスメディアは目をつむり続けています。(参照:第358回「福島市街地の半分は居住不適。報道されぬ不思議」

 核兵器をいつでも持てるようにするために原子力開発を続けている――これが公然とは口に出来ない日本の国家的タブーです。六ケ所再処理工場にして1997年完工予定がこれほど延び延びになっても止めません。第448回「死に体の核燃料再処理、政府の救済人事も無理か」で新規制基準適合審査について見ています。現状でも規制委の出した重大事故がらみの宿題は回答できずに多く残り、冒頭の厳しいやり取りが1月末にあったのですから、この安全審査を容易にパスするはずがありません。

 原発汚染水の管理も泥沼状態です。上手に誤魔化す手法に決別すべき時期に至っていると主張します。こんなボロボロの意思決定しか出来ない国家に核兵器の戦略・戦術決定、核の発射ボタン管理が可能でしょうか。溶融炉心がどこに行ったか知れない3原子炉の廃炉に取り組むだけで、今後に十二分な困難が待っています。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー