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2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる

 「骨太の方針」が決定された後、読売新聞が再来年から国立大交付金を重点配分する政府方針を報じました。手を出すべきでない愚策であり、先進国で唯一、論文数が減少中の日本の研究体制が崩壊する日が見えてきました。2004年の国立大学独立法人化からボタンの掛け違いが始まっています。独立法人にすることで大学の裁量幅が広がるどころか、人件費・諸経費を賄っている国立大交付金を絞り続けて10年間で13%も減額され、研究費を外部から獲得する競争に研究者は追われるようになりました。人件費縮小は若手研究者ポスト縮小に直結しました。「重点配分」を求める財務省は大学教員は多すぎると考えているのですが、研究を担うのは人である点を忘れています。

 「骨太の方針」には「国立大学法人への運営費交付金を抜本的に見直す」と書かれており、読売新聞は1兆1千億円の4割を「学長のリーダーシップや学力向上などを評価の基準に使い、改革に積極的に取り組む大学に重点配分する」と伝えました。第363回「大学に止めを刺す恐れ大、教育再生会議提言」で掲げている、先進国中で日本の論文数だけが特異に減少しているグラフが以下です。太い赤線グラフの異様さが重点配分論者の目には入っていないのでしょうか。


 論文減少の異常ぶりを最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が最近になって、世界各国のデータと比較、解析する謎解きに挑んでいます。《OECDデータとの格闘終わる・・・日本の論文数停滞・減少のメカニズム決定版!!(国大協報告書草案14)》です。各国データの中身を精査して、整備が十分でない国は除くなど苦労したあげくに「図69.主要国における大学研究開発人件費増加率と論文数増加率の相関」に到達されています。左下の赤点が停滞している日本です。


 明解な相関関係が現れています。《今回の分析結果から推定される因果関係としては、【大学への公的研究開発資金 ⇒ 研究開発人件費 ⇒ 大学研究従事者数 ⇒ 論文数】という流れが本流ということである。そして、この10年ほどの間の日本の大学への公的資金増加率、大学研究開発人件費および研究従事者数の増加率は、今回検討した国の中では最低であり、その結果、論文数の増加率も最低になっていると考えられる》

 これまでは現象面から交付金の縮小が論文数減少に結びつくと考えられましたが、この分析で因果関係は決定的になりました。それなのに交付金重点配分でさらに人件費縮小、ポスト縮小が加速されるでしょう。

 論文の数など問題ではない、良質な論文だけあればよい――と政府は考えているのかも知れません。大学の評価体制を強化するので、良質な仕事が増えるはずと算段している可能性もあります。しかし、第397回「国立大学改革プラン、文科省の絶望的見当違い」でその思い違いを指弾しました。

 《大学への評価体制を強化して行くとの方向にも、始めの一歩から間違っているのだから話にならない面があります。2004年に書いた第145回「大学改革は最悪のスタートに」で日本で評価が機能しない根本には研究者同士のピアレビューが出来ていない、たこつぼ型研究の実態があり、学閥のネームバリューに頼って恥じない研究費配分がまかり通る現状を変える必要を訴えました。文科省は評価が出来ない大学人に加え、外部からの声を入れれば機能すると考えているのだから何も見えていないと断じるしかありません》

 非効率ながらも自然発生的な多数の研究論文をピラミッドの底辺にして日本の科学技術は伸びてきました。お金を掛けないで、ちょっとした工夫で仕組みを変える魔法の杖を自分たちは持っていると政府・文科省が考えているなら、不遜の極みです。欧米で行われている王道の研究評価を国内でも確立するしか道はありません。その上でならば効率的な配分があり得るかも知れませんが、いま実施されようとしている重点配分は「思い付き・思い込み」に過ぎません。これまであった科学技術立国の文脈さえ破壊するでしょう。


危惧が急拡大、中国に世界初・巨大炉を任せて

 フォーブズ誌が「中国は新たなチェルノブイリを輸出する気か」と題した刺激的な記事を公開しました。通常原発の2倍ある巨大出力炉を世界で初めて運転するのに、中国の規制当局は技術的に「めげてる」としか見えません。海外で熟れた技術を輸入して模倣、「国産化」する戦略だったのに、原子力では何を間違ったのか、最先端の第3世代炉に飛びつきました。結果として、全くの新型炉を中国が世界初で運転しなければならなくなりました。ノウハウをもらうどころか、ゼロから創出して世界に送り出さねばならない――中国原子力規制当局がその任にないと、建設が大詰めになる程に歴然としてきたのです。

 22日付のフォーブズ誌記事《Will China Export The Next Chernobyl?》は20年来、上海や香港で活動し、現在は原子力を追っているライターが書いたものです。広東省・台山原発で建設中の「EPR 欧州加圧水型炉」と呼ぶ出力160万キロワット新型炉を取り上げています。

 この炉はフランス・アレバ社が設計し、フランスとフィンランドでも建設中で、いずれも遅れがちなのに、中国だけが建設が先行しています。運転開始も迫っています。ところが、フランスの規制当局者が「中国とはフィンランドほど緊密な協力関係にない」と認めています。問いかけても応答がないのです。「協力関係が上手く進められない原因は、中国当局の能力・人的資源が足りないからだ」「彼らはoverwhelmedされているように見える」

 「overwhelmedされる」は「圧倒されている」「打ちのめされている」と訳したらいいと思いますが、いま風なら「めげてる」ではないでしょうか。


 それにもかかわらず、中国は原発機器国産化と知的財産権取得、それによる輸出には熱心なのです。上に掲げたのは台山2号機用の蒸気発生器で長さ25メートル、重さ550トンもあって、EPRはこれを4ループで4基備える巨大な炉です。早くも2号機段階で国産化に踏み切っていますが、昨年、フランスの検査官が現地で見た限りでは蒸気発生器もポンプも適性な管理状態ではなかったと言います。

 それでも原発輸出はパキスタン、トルコ、ブラジル、南アフリカなどと商談を進めています。フォーブズ記事は「何かが間違っている。近い将来、中国内か、中国のプラントが設置される場所で新たなチェルノブイリ事故が起きかねない」と警鐘を鳴らしています。

 もう一つの第3世代炉「AP1000」も含めた中国原子力の動向は第419回「新型炉ばかりの中国原発、安全確保に大きな不安」にまとめました。AP1000は幸か不幸か、メインポンプに設計上の問題が発生して2015年末まで運開が延期されました。年内にも運転されるかもしれないEPR、台山1号機の危うさが大きな焦点になってきました。サイトは香港の西160キロの海岸線です。ブルームバーグも同様の危惧を報じています。

 【参照】第433回「理系の中国ウオッチャー、メディアは急ぎ育てよ」


理系の中国ウオッチャー、メディアは急ぎ育てよ

 マスメディアで中国経済の動向には破綻懸念もあって目配りする記者は多いが、深刻化する環境汚染や無謀にも見える急拡大の原発増設などを的確に監視できる理系ウオッチャーも大至急で育てるべきだと提言します。メディアを監督・指導する「国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局」が18日に中国の新聞やテレビ局などの記者が、所属する報道機関の同意を得ずに当局に批判的な報道をすることや、独自にウェブを立ち上げて批判することも禁じる通達を出したと伝えられました。これまで以上に中国メディアからのクリティカルな情報は貧弱にならざるを得ません。昨年から今年に掛けての大気汚染・重篤スモッグ問題で国内メディアの感度は悪く、日本へ微粒子PM2.5が越境して初めて騒ぎ出した観がありました。経済以外にも一衣帯水の位置にある中国から目が離せなくなっているのです。

 今回の通達以前に既に中国メディアの情報が劣化していると感じた例があります。国営新華社が配信した記事《世界初の「第三世代加圧水型原発」が来年にも稼働―中国》です。《中国だけでなく世界にとっても初めてとなる第三世代加圧水型原子炉AP1000型「浙江三門原発一号機」が2015年末にも稼働する。5月29日、新華網が伝えた。国家核電技術公司の王炳華董事長は「浙江三門や山東海陽など4基の第三世代自主プロジェクトAP1000は順調に建設が進んでいる。三門1号機は来年末、海陽1号機は2016年初めに稼働する予定だ」と述べた》

 別の中国語ソースが伝える真相はメインポンプ設計に問題が発生して1年半も運転開始が遅れるのです。当初は今年半ばにも運転開始予定でしたから、順調には進んでいません。おまけにこの日本語版記事に添えられた原発の写真は第三世代炉AP1000型ではなく、CPR1000型と呼ぶ改良型第二世代炉です。国営通信社のレベルが暴露されており、専門知識や時系列情報を把握した、まともな記者・編集者がいないと判断できます。運転開始が遅れると伝えられる前の事情は第419回「新型炉ばかりの中国原発、安全確保に大きな不安」にまとめてあります。

 大気、水、土壌と環境汚染は深刻ですが、PM2.5スモッグ越境以外は日本に関係ないと思われていました。心配な中国産農産物は店頭で選ばなければ済みます。ところが、小児血管の病気「川崎病」の原因物質が中国北東部の穀倉地帯から来る風に運ばれるとの推定が5月に国際研究チームから公表されました。中国側は「言いがかりだ」との態度ですが、第428回「川崎病の流行ピークと中国農業改革の節目が一致」で関係を疑わざるを得ないと指摘しました。体内に侵入した毒素が子どもの心臓血管に奇形を作り、血栓が出来やすくなって死に至ることもしばしばあります。この未発見毒素の挙動がPM2.5と似ている面があります。PM2.5の拡大写真は実に様々な像が示されており、どれかが該当するのかも知れません。

 中国の海洋進出や外交での大国主義はますます強面になっています。自国の主張を通して、他者の意見など聞く耳を持たない中国の最大の弱点は環境問題です。環境問題は石炭消費が世界の半分など資源とエネルギーの無茶苦茶な浪費で経済を拡大してきたツケですから、経済発展を制限する要因になります。第412回「中国重篤スモッグの巨大さが分かる衛星写真」に800キロの辺を持つ三角形を埋め尽くしたスモッグの写真が掲げてあります。小手先の対策が効かない深刻さを、日本メディア発で厳しく問うていくべきです。もう中国メディアからの情報横流しでは環境問題は斬れません。英語メディアや業界情報にも目が利く専門知識を備えたウオッチャーを配置して、中国現地で手に入る情報を分析できる態勢を整えて欲しいものです。

 【参照】「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」[BM時評]


STAP細胞疑惑=小保方ファンタジーの闇を推理する

 STAP細胞疑惑の点と線が繋がりつつあり、発見全体が小保方氏の脳内妄想による虚構だった疑いが濃厚です。実験による実証科学の作法を知らない初心者の発想が、輸入学問の伝統で崇められてしまった日本的悲劇です。「ハーバードで敏腕」と伝え聞いただけで「実験ノートを見せろ」と言えなくなる国内有数の研究者たち。小保方氏の研究者としての危うさは博士論文段階でも察知できたのに、漫然と通した早稲田大の審査。「こうであったら」とのファンタジーが実証科学論文になる危険が今後も再発する可能性はあると言わざるを得ません。

 1月末のSTAP細胞発表の報道を見て、長年にわたり科学記者をした者として猛烈に違和感を感じたのは先行研究に全く触れていなかった点です。実験による実証科学では「先行研究群という巨人の肩」に乗って初めて未知の地平が拡大するものです。一人だけで、ある日突然、巨人になることなど無いのです。

 この分野のメイン学会である分子生物学会の理事長、東北大の大隅典子教授が《続・小保方会見で解明されなかった問題は何か〜研究の文脈に注目せよ》でこう指摘しています。

 《オリジナルのiPS細胞のような遺伝子導入を用いない方法については、この他にもある種の低分子化合物を加える方法、細菌を用いる方法などもあるので、STAPだけが素晴らしい、夢のような方法、という訳でもありません。このあたり、他の方法で多能性幹細胞を誘導している日本人研究者も表立って声を挙げていませんが、仮にSTAPが本当だったとしても「酸処理でうまくいくなら、とても簡便な新しい誘導方法の一つですね」という扱いのように思います》

 STAP細胞発表の当事者にはこうした周辺の研究事情が認識されていなかったのです。「先行研究群という巨人の肩」のどこに乗るかで研究の行方は大きく左右されます。その意味で先行研究の探索は単なる文献検索ではなく中身の吟味が必要であり、大きな意味を持ちます。ところが、小保方氏の博士論文では「小保方晴子の博士論文の疑惑まとめ」の指摘のように、バックグラウンド部分の大半が盗用でした。先行研究への本来持つべき敬意が小保方氏には欠けていました。

 小保方氏は2年間のハーバード留学の間、バカンティ教授の下で細胞をごく細い管に通して含まれているかもしれない多機能細胞を選別する実験をしているうちに、管を通すストレスが細胞を機能分化する前の状態にリフレッシュされるとの着想を得たようです。さらに、弱い酸処理でも同様になると考えるようになりました。バカンティ教授を細胞の「選別派」からiPS細胞のような「誘導派」に変えたのでしょう。バカンティ教授にも新たな展開になり、畑違いによる先行研究の探索不足が起きたと考えられます。

 秘密裏に小保方氏の囲い込みを図った理研の上司、笹井氏は第431回「STAP細胞が『世界3大研究不正』とされた衝撃」で描いたように、実験ノートを持ってくように言う「ぶしつけな依頼をすることが難しい」状況を非難されています。2013年春以前の所属長だった若山教授も《「実験ノート一度も見たことない」若山教授会見3》で《言い訳になるかも知れませんが、早稲田大を出ている研究者で、ハーバードのバカンティ先生の右腕だと言われているぐらい優秀な研究者という触れ込みで紹介されて引き受けた研究員。大学の4年生に言うように、「実験ノートを見せなさい」なんて言うようなことはできませんでした》と言っています。

 かつて東大は3カ月遅れで世界の研究潮流を国内に導入するのが使命の一つと言われたのを思い出しました。ハーバードという名前が出るだけで、輸入学問の伝統、負い目からはそう簡単に抜け出せないようです。

 決定的な捏造に至らせたのは、小保方氏の「ポエム」とも言われた実験ノートの貧弱さでしょう。根本である日付を含めて必要事項が残されていない実験ノートでは、膨大になる実験データの統制は不可能です。論文疑惑が明らかになったあとで論文画像の差し替えを申し出ていますが、それが適切な画像かどうか、もはや判断できないと言われます。

 サイエンス誌への論文投稿がデータの不整合で却下されたのに、却下の本質的な意味を考えるよりもネイチャー誌に載せようと必死でした。この状況では「こうあって欲しい」との脳内妄想で、現実の実験データの方を取捨選択する、過去の博士論文を含む異なる実験系列から持ち込んで整合させるように進んで不思議ではありません。なぜなら当人ですら、どの実験データか確実に分類できていないようだからです。実証科学にして、本当ならば恐るべき研究実態です。実験ノートの記入法を教えなかった教員の罪は重いと考えます。


STAP細胞が『世界3大研究不正』とされた衝撃

 STAP細胞論文疑惑の取り扱いに転機が来ました。『世界3大研究不正』との認識が改革委員から示されてみると、「ふとした過ち」のニュアンスではなく「故意捏造」として全体像を世界に提供せざるを得ないからです。「研究不正再発防止のための改革委員会」が出した理研の組織改革への提言書は非常に厳しい内容です。これまでは「割烹着」小保方さんのキャラクターからか、何かの間違いが積み重なった感覚が抜け切れませんでした。理研の調査も一部の間違いを確定してネイチャー論文撤回で止まっています。それでは説明責任が果たせていない状況と認識すべきです。

 日経メディカルの《ドイツ人物理学者、韓国人生物学者の研究不正に並び…STAP論文を「世界三大研究不正」の1つに認定》は改革委記者会見をこう伝えています。

 《委員長を務める新構造材料技術研究組合理事長の岸輝雄氏が、「世界の三大研究不正に認定されたと、海外の友人から聞いた」と話し、科学界で重大な問題と受け止められていることについて、危機感を口にした。委員の1人で研究倫理を専門とする信州大教授の市川家國氏も、「実際にSTAP問題は、Schon氏、黄氏と並ぶ研究不正と考えられている」と指摘。加えて、画像の加工や使い回しなど、「不正の種類が多様であり、かつ、それに対する組織の対応にも問題があったという意味で、最も深刻な研究不正になるのではないか」との考えを述べた》

 ヤン・ヘンドリック・シェーン氏の場合、高温超電導など2000年からの画期的論文でセンセーションを巻き起こし、数々の受賞をした挙句に、データの捏造・使い回しが判明して大量の論文が撤回されました。米ベル研とスイスの大学を兼任、同僚が実験設備を確かめたいと申し入れても「こちらには無い」ですり抜けました。黄禹錫氏のヒトES細胞論文は2004年、ヒト体細胞由来のクローン胚から胚性幹細胞(ES細胞)を作ったとし、霊長類でも成功していないのにと世界を驚かせました。クローン牛なども発表されましたが、調査の結果はいずれも捏造でした。

 「研究不正再発防止のための提言書」はSTAP細胞論文の作成過程での組織的ズサンさを指摘します。発生・再生科学総合研究センターは急遽採用した小保方さんが「研究者としてのトレーニングが不足」「STAP細胞の研究内容や意見の重要さに比して論文を完成させる経験が不足」と認識していました。笹井グループディレクター、丹羽プロジェクトリーダーを小保方氏の助言担当に指名し「STAP研究の成果を記した論文がNature誌に採択されるよう、論文の作成指導を笹井氏に依頼した」。笹井氏は論文共著者であることに加え助言担当でもあったから「データの慎重なチェックを行うことがむしろ通常であり、かつそうすべき職責を負っていたというべきであった」。小保方さんに自分のところに研究ノートを持って来させるような「『ぶしつけな依頼をすることが難しい』としてその職責を回避できるような問題ではなかったというべきである」

 理研の規定では研究ノートも実験データも理研の所有であり、作成や保存手法も所属長が指導するとされていましたが、同センターではないがしろにされていました。

 第421回「理研調査も科学にあるまじき杜撰:小保方釈明を聞く」でも心配した調査の不十分に加えて、構造的ないい加減さが存在する点は間違いありません。理研で進められているSTAP細胞の確認実験も中途半端なものになっていると指摘があります。何らかの科学的な発見があったのか無かったのかはっきりさせ、論文捏造過程など全体像を解明して世界に説明しなければなりません。


絶滅危惧種指定、ウナギの食べる心配報道は異様

 国際自然保護連合がニホンウナギを「近い将来、絶滅する危険性が高い」として絶滅危惧種に指定しました。メディアは食べられなくなる心配とセットで報道しますが、保護に失敗した日本はむしろ歓迎すべきなのです。昨年夏に第371回「食べられぬ心配だけで保護意識が無いウナギ報道」で紹介した稚魚激減グラフを掲げます。積極的な保護策を打ち出せぬまま最盛期の50分の1まで落ち込んでしまい、はっきり言って手遅れ状態です。


 自前の稚魚が採れなくなって日本がしたことは中国・台湾からニホンウナギ、さらにヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、最近では東南アジアのウナギの稚魚まで大量輸入して、それぞれの資源存続を危うくしただけです。水産先進国としてニホンウナギの完全養殖に近づきつつはありますが、野生資源保護には全く無策でした。

 今年はニホンウナギ稚魚がすこしだけ多めに取れました。それでマスメディアはは蒲焼きの値段が下がるとはしゃぎました。漁業資源の持続性が疑われるクロマグロの幼魚と合わせて第422回「幼魚豊漁で失われる水産資源、異を唱えぬ鈍感報道」で批判した通りです。

 報道の姿勢が読者・視聴者にベースを置くのは常識です。それが「ウナギ消費者」で良かったのは資源がこんなに細くなる前の話です。絶滅危惧種に指定された段階では、当然ながらどうやって保護していくのかを考える視点に転換すべきです。主要メディア横並びで保護を求める国際的な世論の高まりや国際的な取引規制を心配して、日本がどうすべきか論じないのはあまりに異様です。


海洋警察に過失致死容疑、韓国で大遅れの検察捜査

 旅客船「セウォル号」海難事故の際に現場に駆け付けた韓国の海洋警察が、乗客を脱出させる活動をすべきだったのに手落ちがあった――検察が海洋警察本庁などを家宅捜索して過失致死容疑の捜査が始まりました。事故の直後に『沈没報道の韓国メディア、海洋警察の劣悪さ無視』で取り上げた朝鮮日報の写真を掲げます。1人だけ乗船した海洋警察官は奥にある客室入り口に向かおうともせず、救命ボートが開くか点検しています。警備艇の舳先に少なくとも4人が見えている海洋警察官は手持ち無沙汰で立ったままです。


 中央日報の《<韓国旅客船沈没>船内進入しなかった海洋警察…過失致死容疑の適用を検討》は無為・不作為ぶりをこう伝えました。

 《事故現場に最初に到着した海洋警察の警備艇は事故が起きた4月16日午前9時43分に西海(ソヘ)地方海洋警察庁と木浦(モクポ)海洋警察庁に、「乗客が中にいるが出てこられない」と報告した。その一方でセウォル号に乗り込んだ海洋警察は乗客を避難させようとせず救命ボートが広がるかだけ確認し降りてきた。午前9時53分には「(乗客を脱出させなければならないので)船内に入れ」という西海地方庁の指示に「傾斜がきつく乗り込む方法がない」と答えた。しかしこれより16分後に全羅南道(チョンラナムド)の漁業指導船の乗組員は船に乗り込んで乗客を救い出した》

 《検察はこうした海洋警察の救助活動に職務怠慢または過失致死容疑を適用できるか検討する方針だ。延世(ヨンセ)大学法学専門大学院のハン・サンフン教授は、「海洋警察がセウォル号の船内に入らなかったことに対しては過失致死を適用できる。もし船内進入の指示があったのに入らなかったとすれば遺棄致死責任を問うこともできる」と話した》

 日本なら海難事故の救助手抜きの疑いで海上保安庁が捜査を受ける大失態です。私の海上保安部取材経験からすれば、乗客数百人と聞いて現場に来たケースで日本の保安官が突っ立ったまま何もしないなんてあり得ません。傾いていようが乗船して船員をつかまえるなり、乗客の誘導に走るなりします。沈没すれば海に投げ出される危険はもちろんありますが、当然のリスクとして頭に入っています。

 セウォル号海難事故では韓国の海洋警察は誰も海に落ちなかったそうです。スピーカで乗客に脱出するように呼びかけはしていたとの弁解は見ました。しかし、この写真の段階でも船内放送は「救助隊が来るまでその場に待機して」と繰り返すばかりでした。迅速に行動して乗客を甲板に出せば犠牲者300人は少なくとも半分以下になったでしょう。過失致死容疑は当然過ぎます。

 【参照】第425回「国民性悪説に至った韓国メディアと反省なき日本」
     第430回「苦悩する韓国、日本の過去像か異質な国民性か」


苦悩する韓国、日本の過去像か異質な国民性か

 旅客船沈没事故・地下鉄追突事故など社会のたがが外れている実態露呈に韓国が苦悩しています。マスメディアによる追及の続編を読むと日本がたどってきた過去像にも見えるし、我々と全く違う国民性の国とも思えます。第425回「国民性悪説に至った韓国メディアと反省なき日本」で韓国メディアの風向きが完全に変わったと指摘しました。朝鮮日報などは安全点検のキャンペーンを社会の色々な場面で粘り強く展開しています。

 中央日報の《【コラム】毎月1隻ずつセウォル号が沈没する=韓国》は「年間5000人以上が死亡する。大韓民国の交通事故だ。衝撃的な数だ」「大韓民国は先進国クラブといわれる経済協力開発機構(OECD)加盟国だ。本当に恥ずかしい。交通事故の死亡率は高い。人口10万人あたりの交通事故による死者(2011年)は、OECD加盟国の平均が6.8人だが、大韓民国はなんと10.5人にのぼる」と数字をあげています。

 人口が日本は韓国の2倍半あるのに交通事故死者数は少なく、10万人当たりなら韓国の3分の1です。しかし、日本だって昭和から平成に移る頃は死者が今の3倍もありました。交通事故に関してならば四半世紀前の日本だと思えば良いでしょう。安全点検キャンペーンでカラオケボックスやスーパーマーケットなど商業施設の防火設備や避難経路不備も取り上げられますが、日本だってこれが改まったのはそんなに昔ではありません。

 朝鮮日報の《【コラム】巧遅より拙速を好む国》がインド工科大で経営学博士号を得たキム・ヒョンドゥク氏の国民性比較論を掲載しています。韓国の「パルリパルリ(早く早く)文化」の功罪についてで、とても示唆的です。

 「韓国人とインド人はさまざまな面であまりにも大きく異なる。例えば仕事を始める前、韓国人は極端な楽観主義者であり、インド人は徹底した悲観主義者だ。韓国人は問題の70%を把握した上で『パルリパルリ』仕事を始めるが、インド人は120%確認してからその仕事をやるかどうか決める。ところが実際に仕事が始まると、韓国人とインド人の態度は正反対となり、韓国人は徹底した悲観論者、インド人は安易な楽観論者に変わる。インド人はあらかじめ把握してあった問題が発生すると落ち着いて対応し、損失が発生しても受け入れるべきは受け入れる。これに対して韓国人は『パルリパルリ』に執着するため、あらゆる問題が想定外であり、そのため大騒ぎをする。だからインド人は韓国人のことを『短い導火線』『押すだけでパニックになる人間たち』と表現する」

 日本人の立ち位置はインド人と韓国人の中間辺りなのでしょうか。

 セウォル号沈没の際に船長が真っ先に逃げ出しました。これに対比して朝鮮戦争の歴史を引いて「大統領がまず逃げた」と痛切な指摘が《[歴史と責任(1)] セウォル号の悪魔、大韓民国の悪魔…》にあります。「私たちの歴史の中にセウォル号の悪魔を上回りこそすれ決して下回らない悪魔はあまりにも多かった」「セウォル号船長イ・ジュンソクがそうしたように、李承晩は北朝鮮の攻撃で陥落の危機に陥った首都ソウルから一番最初に逃げた人だった」

 封建的身分制度が日本が朝鮮半島に介入を始める19世紀末まで存続しました。そこでは貴族階級に当たる「両班」が特権階級で科挙を受験できて上級官僚を独占しました。現在でも志の高い精神を両班意識とも言うのですが、両班階級の指導性に日本人から見ると疑問符が付くのです。両班がもし大きな官職に就けると遠縁まで含めて親族縁者が群がって来て、それを扶養する義務がありました。韓国の歴代大統領が親族まで含めた利益誘導と汚職にまみれ、職を辞した後で司直の手を煩わせ続けている構図とそっくりなのです。

 下層民から搾取したのは日本の武士階級だって同じです。しかし、有志の武士たちが明治維新を起こし、日本を近代化させました。もちろん維新政府で私腹を肥やした輩は出ましたが、維新の推進者だった西郷隆盛が最も嫌う行為でした。そして、廃藩置県、廃刀令、徴兵制と進む近代化は士族全体を裏切る形になりました。第53回「明治維新(上)志士達の夢と官僚国家」で描いた通り、それでも推進を続け、今に至る官僚制度を作ったのが大久保利通です。維新の先覚者精神と似通うものを韓国に見つけるのは難しいと感じます。

 【参照】インターネットで読み解く!『沈没事故に見る韓国の総無責任、秩序国家は無理か』


原子力規制委員に前学会長は完全な骨抜き人事

 原子力規制委員に前原子力学会長の田中知・東大教授を推す国会同意人事案は規制の完全骨抜きを意図しています。同氏が中心の福島事故学会報告はみんなが悪かった、誰の責任でもないと原子力ムラの意向そのものです。原子力学会は「関西電力大飯原発3、4号機運転差止め裁判の判決に関する見解」で福井地裁判決を批判しています。学会報告で直接原因のみならず、根本原因まで明らかになっていると胸を張るのですが、報告を読むと小学生の作文のような無内容に驚かされます。マスメディアが学会報告を取り上げなかったのは当然ですが、こうした考え方の人物を原子力規制委員に充てる人事については明確に批判すべきです。

 学会見解は地裁判決の「事故原因が究明されていないとの指摘は事実誤認であります」と言い、明らかになっているとします。政府や国会など各種事故調の結論が一致しない中、原子力学会が専門性を発揮して切り込んでくれたのかと思いきや、学会ウェブにある報告の中身を見て愕然とします。

 事故の直接要因は「1. 不十分であった津波対策 2. 不十分であった過酷事故対策 3. 不十分だった緊急時対策,事故後対策および種々の緩和・回復策」とした上で、「過酷事故の現場対処に不手際が認められるが、それは事前準備に起因するもので、直接要因とは言えない」と具体的な問題点の指摘を一切しません。1号機の非常冷却システムの使い方を誰も知らなかったのも準備不足で片付けられるようです。誰が準備をしなかったか問われるべきですが、全ては「不十分」で片付けます。

 根本原因としては事故の背後要因を並べます。「専門家の自らの役割に関する認識の不足」「事業者の安全意識と安全に関する取組みの不足」「規制当局の安全に対する意識の不足」「国際的な取組みや共同作業から謙虚に学ぼうとする取組みの不足」など淡々と不足項目があがります。これでは不始末を犯した弁解書を書いているだけです。専門性のかけらもありません。

 これに対して、学会に批判されている地裁判決は例えば「いったんことが起きれば、事態が深刻であればあるほど、それがもたらす混乱と焦燥の中で適切かつ迅速にこれらの措置をとることを原子力発電所の従業員に求めることはできない。特に、次の各事実に照らすとその困難性は一層明らかである」と地震から始めて津波や外部電源喪失などを詳しく検証しています。真剣度は段違いです。

 田中氏が会長の原子力学会は事故当初から個人責任を追及しないよう声明で求めました。さらに『自分で福島事故を究明しなかった原子力学会』で指摘した通り、福島原発事故から1年間、何もしなかった無様を身内から批判されて、田中氏が委員長の学会調査委が立ち上がりました。それから2年掛けて「不十分」と「不足」でまとめたアバウト報告を出して平然としている人物が原子力規制委員に適任とは考えられません。全てを曖昧にしたい政府・原子力ムラの意向に沿った人事です。メディアは維新や民主の不同意の動きを報じるだけで済ませるべきではありません。

 【参照】第381回「福島原発事故、国家として原因不詳でよいのか」
     第309回「科学者・技術者への不信感と原子力学会の欺瞞」


骨太方針の寝言、人口減対策は男性正規雇用拡大を

 「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」の原案が明らかになり、人口減対策に本格的に取り組むと伝えられます。女性の育児・出産対策が柱とは相変わらずの寝言です。統計が示す有効策は男性の正規雇用拡大です。安倍内閣お得意の雇用の流動化はこれに逆行します。15〜34歳男性の有配偶率は、正規雇用が40.3%あるのに、非正規雇用は11.1%に過ぎません。出産の前提になる結婚そのものを増やさなくて何が人口減対策でしょうか。


 『結婚離れは非正規雇用増の結論避ける厚生労働白書』で取り上げた厚生労働白書のグラフ「年齢別・雇用形態別にみた男性の有配偶率の比較」を掲げました。非正規雇用の男性にはこれだけ歴然とした結婚のしにくさ、あるいは結婚に手が届かない収入の低さ・不安定さがあるのです。

 一方、読売新聞の《人口減克服、次の最大のハードル…骨太方針原案》はこう報じます。《デフレ脱却と経済再生の次に乗り越えなければならない最大のハードルとして「人口減問題の克服」を位置付けた。50年後も1億人の人口を保つため、抜本的な少子化対策を進め、人口減と低成長の悪循環を断ち切る必要があると強調した》《女性が育児をしやすい環境を整えるため、社会保障や税制など、あらゆる分野で制度を見直す》

 生涯未婚率予測を昨年の第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」で示し、非常の多くの方に参照されています。5年ごと国勢調査の結果をもとに予測する手法であり、調査のたびに生涯未婚率が上がっています。結婚観や恋愛観などが変わった要因もあるでしょうが、近年の非正規雇用の拡大がベースになっていると考えざるを得ません。もし正規雇用へ戻すことが難しいならば、「同一労働・同一賃金」の原則に従って非正規雇用収入の底上げを目指すべきです。