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沈没事故に見る韓国の総無責任、秩序国家は無理か

 ローマ法王の言葉「韓国民がこの事件をきっかけに倫理的に生まれ変わることを望む」に接し、時宜にかなった至言と申し上げます。旅客船セウォル号が明かした総無責任の実態は国家基盤を危うくする無秩序ぶりです。官民を問わず誰も自分の職責に忠実でなくて、どうやって国を運営するのです。戦前の大日本帝国を追及するエネルギーの半分でも回していれば、波もない穏やかな白昼の海に修学旅行生ら300人余が飲み込まれる悲劇は起きなかったでしょう。これまでに伝えられた経緯を集約するとこんなストーリーです。

 【ザル規制すり抜け改造、無謀な操舵】

 日本のフェリー会社から購入した中古船の最上部に客室を増設した結果、重心が上がって復元力が落ちました。船の長さや幅には改造規制があったのですが、高さ方向には規制が無かったのです。復元力を考慮した積載可能トン数の4倍近い車両とコンテナを積んでいたと報じられています。政府の役人は不安定性については考えていなかったと言います。貨物は鎖やワイヤーではなく普通のロープで固定されていた上に、さらに恐ろしい情報として海が穏やかならば、その固定さえしなかったケースもあったようです。

 事故現場で経験1年もない三等航海士が5度だけ舵を切るように指示したのに、操舵士が大きく回してしまった結果、荷崩れが起きたとされています。時速40キロ近いフルスピードで突っ走っている大型客船が舵を切るのは、乗用車ならば100キロで急カーブに入るのと同じです。積んだ貨物の不安定さを知れば、まず減速してからにすべきでした。以前にも舵を切って食堂の皿が滑り落ち大騒ぎになった経験をしているのに、この危険信号は共有されませんでした。

 【避難訓練の経験がない安月給船員】

 船長が月給27万円の1年契約職だったのを始め、船員も他の船会社に比べて6、7割の安月給だった点で、船員の士気が低い事情は分かります。おまけに船会社は定期的に義務付けられている避難訓練などの安全教育を全くしていませんでした。安全運行についてのチエックは当然ながら公的機関が実施していて、積載貨物の検査も含めて官僚の天下り先にもなっている規制組織が全く働いていなかったようです。

 避難訓練の経験もなく事故マニュアルを読んだことがない船員ばかりと知らされて、管制センターとの珍妙なやり取りの意味と背後が分かりました。船が大きく傾いている段階で避難の決断をせず「救助してくれるのか」と尋ねるばかりでした。救命胴衣の着用を指示してなお「船室で待つように」と放送しています。救命胴衣を着けたら甲板に出なければなりません。浸水する船内では救命胴衣は逆に脱出の妨げになります。

 【司令塔なきアマチュア救助態勢】

 韓国政府はこのような大事故には対策本部を設置してコントロールタワーになる人物を決めるとしていたのに、これに失敗しました。2、3日の間は海洋警察も海洋水産部も軍もばらばらに行動しました。首相が現地に赴いてトップに立つ形ばかりは作ったものの、ばらばらに上がってくる情報を横流しにするだけだったようです。海難救助経験豊富な日本の海上保安庁が支援を申し入れて断られていますが、意地だ、面目だという以前に、受け入れの決断を下せる司令塔不在だったと見るべきです。残念なことに、沈没してから丸2日間も船内への突入はなりませんでした。海上保安庁の特殊救難隊なら可能性があったかも知れません。

 沈没1時間前に現場に着いていた海洋警察が船内に突入すべきだったとの声が、今になって韓国メディアに出ています。『必死でないベストは役に立たぬ:韓国船と福島原発』では福島原発事故との対比で、『沈没報道の韓国メディア、海洋警察の劣悪さ無視』では日本の海上保安部取材を経験した常識として目の前の客室に多数の乗客がいると分かっているのに、傍観はないと論じました。何の装備もなく急行したからと弁明しているようですが、船に上がって救助に使えるロープやホースなどはないかも調べてもいません。単に待って、脱出してきた80人余りを収容しただけで「大きな仕事はした、文句はあるか」と海洋警察署の課長が居直ったそうです。


沈没報道の韓国メディア、海洋警察の劣悪さ無視

 旅客船「セウォル号」をめぐる海難事故としての非常識ぶりは目に余り、韓国メディアの報道ぶりも非常識の同類です。以下に引用する朝鮮日報の写真と記事は沈没まで余裕を持って到着した海洋警察の劣悪さを無視です。

 記事のタイトルは《旅客船沈没:「体を支えるのも困難だった」乗務員供述はウソ》。木浦海洋警察署の救助艇から撮影した写真3枚を並べて乗務員のウソを非難しています。しかし、写真を見た元新聞記者のわたしは、海洋警察の無為こそテーマにすべきと考えます。1枚目を見てください。


 《海洋警察が22日に公開した写真を見ると、救助隊員1人(点線内)がセウォル号に乗り込み、手すりに沿って取り付けられた救命ボートの方に移動する様子が見える。隊員は10メートルほど離れた後ろ側の救命ボートから取り出そうとしたが、全く動かなかった。隊員が10個目の救命ボートに手を触れていたとき、「立ち入り禁止」と書かれた操舵(そうだ)室左側の出入り口から、乗務員とみられる男性が飛び出してきた》

 救助艇の舳先に漫然と立っている4人の救助隊員は何をしているのでしょうか。いち早く乗船して「乗務員はどうした。乗客を早く甲板に出せ」と叫ぶのが、日本の海上保安部取材を経験した私の常識です。ところが、次の写真では飛び出した乗務員を収容したままであり、3枚目では救命ボートは蹴飛ばしても開かなかったと嘆くのみです。無為と言わずにはいられません。

 この時に撮影の別写真を入手して素材にした『必死でないベストは役に立たぬ:韓国船と福島原発 [BM時評]』でも疑問を投げかけました。前後の写真を見ると、韓国の官民メディアともに頭を丸めて出直すべきだと考えます。


必死でないベストは役に立たぬ:韓国船と福島原発

 韓国船セウォル号沈没事故の惨状はどこかで見た光景です。大震災の夜、全電源喪失の福島原発に電源車が向かうと一切放置になりました。救助艇は沈没1時間も前に着いたのに乗客がデッキに並ばぬ異様さを疑いません。真っ先に船を離れた船長は論外として、救助当事者も必死でベストを尽くそうとしていないのは、報道された写真からも明らかです。穏やかな天候の昼間、300人が犠牲になる事故現場とはとても思えません。


 船長が離船した際とされる写真です。この高いアングルで撮影されている以上、ボートのような小舟ではなく、責任者がいる救助艇です。これだけ旅客船が傾いていて避難客がなく救命ボートも浮きも使われていない不自然さに、海事関係者なら気づかないはずがありません。海上保安部の取材経験がある私には信じられません。客は救命胴衣着用の上でデッキに出て待機が常識なのに、船内ではこの時、「動かずに救助を待つように」と放送が続いていたのです。

 謎解きは朝鮮日報の《旅客船沈没:大統領の叱責恐れもたつく官僚》にありました。《政府や与党の関係者は「今回のセウォル号沈没事故で、専門性を備えた公務員が現場で積極的に動けずにいるのは『過ちを犯せば自分が全ての責任を負わされる』と恐れているためだ」と語った。現場を訪れた与党セヌリ党の関係者は「公務員は『自分ばかりが出て行って過ちを犯せば、責任を負わされる』と考えているため消極的だ。事態が終息したら誰も責任を取らない、ということを経験的に知っている」と語った》

 「3.11」では電源車が駆け付けたものの、接続すべき電源盤が建屋の地下にあって大津波で水没していました。第347回「無傷で終わる可能性が十分あった福島原発事故」で書いた通り、当時の原子力安全委、班目春樹委員長には電源盤の位置に危惧があったのに図面で確認しませんでした。《図面と見比べて電源盤が接続不能と早く判断できれば、重量級の電源車派遣は無意味です。切れている直流電源を補うためにクルマで使うバッテリーを10個か20個、かき集めて届けるのが最も有効な早道であり、1号機でほとんど働かなかった最後の命綱装置「非常用復水器」のバルブ操作を可能にして動かせたでしょう》

 韓国メディアは「先進国の仲間入りをしたと思ったのに三流国だった」と悲憤慷慨しています。シーマンシップ、職業倫理の欠如は隠すべくもありません。福島原発事故の際はどうだったでしょうか。政府の原子力安全・保安院も東電本店も職業倫理にもとることなく必死でベストを尽くしたでしょうか。非常用復水器を誰も実際に使った経験が無かった原発の現場も含めて、韓国船事故はわらえません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


行き詰まる福島事故原発建屋の遮水壁での隔離

 福島事故で溶融した核燃料の炉心を抱えている原発建屋を周辺から隔離し、水の出入りを断つ重要ステップが行き詰まろうとしています。ぐるり取り巻く遮水壁に計画の「凍土壁」へ原子力規制委が強い疑問を投げました。海側の遮水壁は通常の鋼管矢板打設方式ですが、地下に色々と埋まっている陸側では無理があり、苦肉の策としてマイナス30度の冷却液を埋設管で循環させ凍土で壁を造る方式が政府・東電に採用されました。大規模な土木工事で短期間なら凍土化実績がある方式ながら、福島原発事故では数十年にわたって地下の壁として固定される、言わば永久使用です。壁として凍らせ続けるのに年間で何十億円もの電気代がかかり、矢板のような強度・耐久性が保証されるものでないとなれば議論にならざるを得ません。


 日経BPケンプラッツが《前代未聞「凍土遮水壁」の成算》で詳細に特集しているので、そこから福島原発での見取り図を引用しました。海側は埋め立ててオレンジ色の鋼管矢板で囲うのですが、陸側遮水壁に問題ありです。「四つの原子炉建屋周辺を延長約1500m、深さ約30m、厚さ1〜2mの凍土壁でぐるりと取り囲み、建屋内への地下水の流入を抑制する」計画で6月に着工しようとしていました。

 時事通信の《「凍土壁」に疑問続出=安全性の証明要求−規制委》が検討会での議論をこう伝えました。

 《座長役の更田豊志委員はエネ庁の安全対策の検討状況を聞き、「えいやっと決めた部分がかなりある。これだけで安全上の判断はできない」と批判した。エネ庁側は「超一級の専門家に作ってもらった」などと反論。更田委員が「根拠を示してください」と語気を強める場面もあった》《検討会メンバーで首都大学東京の橘高義典教授は「壁が水圧を受ける。地盤の安定性が心配だ」と懸念を示した。京都大の林康裕教授も「検討が十分でないところも、見込みみたいなところもあるようだ」と述べた》

 原子力規制委は着工を認可しない構えです。《規制委、「凍土遮水壁」に懸念 政府・東電推進も「安全性、有効性は未確認」》は《「日本陸水学会」(会長、熊谷道夫・立命館大教授)が昨年末、「凍土壁では放射性物質を長時間完全に封じ込めることができないだけでなく、より大きな事故を起こす可能性が高い」とする文書を内閣府原子力災害対策本部に提出していたことが判明。熊谷会長は取材に対し「総会で決めたことで、学会の総意だ」と話した》とも伝えており、異論は学界に広がっています。

 見取り図奥にある地下水バイパスは海洋放出へ地下水汲み上げが始められた井戸です。第379回「原発後背地のタンク漏洩続出で収拾計画に困難」第382回「無管理同然、汚染水漏れ疑惑タンクが一気に拡大」で示しているように、その背後に汚染水タンク群がびっしりと立ち並んでいて、度重なるタンク操作ミス・漏洩で汚染レベルが上がり、混乱し始めています。

 陸側遮水壁施工にはもうひとつ重要な問題が隠れています。遮水壁が完成すると地下水の流入が止みますから、原子炉やタービン建屋地下の高放射能汚染水よりも周辺の地下水位が下がります。毎日400トンの汚染水発生が無くなるのは結構ですが、高汚染水が建屋外部に出るのは避けられないでしょう。遮水壁がきちんと遮断してくれないと高放射能汚染の海洋を含めた広域拡大に直結します。凍土壁は冷却液をつくる凍結プラントがもしも停電になったら機能を失います。テロ攻撃や航空機墜落といった異常事態にも弱いと言わざるを得ません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


ドルビーデジタルプラスでイヤホンの銘器復活

壊れて買い替えたタブレットに付属のドルビーデジタルプラスで往年のイヤホン銘器ゼンハイザーMX500が復活です。高品位の中音域を持つものの音域・音場の狭さからお蔵入りだったのが嘘のように変貌しました。2万円のタブレットですから本格オーディオの切れ味とかは無理ですが、音楽を聴かせる楽しさではそのあたりの携帯用ソリッドプレーヤはとても追い付けません。CPUが高速化してリアルタイムで音質補正できるようになった成果です。音楽プレーヤとして革命的です。

 MX500はボーカルや楽器がサビのあたりに使う中音域の密度が特に高い特質を持っています。歌手や奏者の個性を描き出せるので銘器と言われたものです。その代わりに高音域や本当の低域は足りません。好きな歌手のボーカルに集中して聴いている分にはそうは気になりませんが、ステレオフォニックな広がりも欠いていました。最近はケースに入れたまま、ほとんど持ち出さなくなっていました。


 レノボの8インチ「YOGA TABLET」に搭載のドルビーデジタルプラス画面です。ドルビーデジタルプラスはWindows8にも採用されているそうですが、この画面があるかは知りません。左側「映画」「音楽」「ゲーム」「ボイス」の選択で基本が決まり、中央のインテリジェントイコライザーで「オープン」「リッチ」「フォーカス」の3傾向か「マニュアル設定」を選びます。リアルタイムで音楽や音を分析しつつ好みの傾向に仕上げる仕組みが良く出来ています。下のサラウンドバーチャライザーは音場を広げるのにとても有効です。ダイアログエンハンサーは映画のセリフ強調機能です。元の音楽を壊さない範囲で機能を組み合わせると、中音域高密度のMX500の特質をそのまま延長してワイドレンジでダイナミックになります。

 第417回「PCオーディオのワサピ化とタブレットで良い音」でAKGの密閉型ヘッドホンK404と相性が良い点も書きました。豊かな低域の割に高音が足りないのをドルビーデジタルプラスで積極的に補正できます。この値段のオーディオパーツですから浸透力のある高音など質感は無理にせよ、ボリューム感は十分に補えます。質感はMX500が上です。どの機種にせよ単純な音質イコライザーでは実現し得ない音質補正が出来ます。


来年は一気に日本並み原発容量、中国は大丈夫か

 中国の原子力発電が急拡大、2015年には一気に日本の48基並み発電容量になる。福島原発事故による足踏みを脱して大型新型炉ラッシュだ。未経験炉に運転員の即席養成、運営の透明性不足、安全確保には疑問符だらけ。3月に運開した広東省・陽江原発1号で18基1586万キロワットの現状を、来年には40基4000万キロワット、2020年までには6000万キロワットにする計画が進む――朝日新聞WEBRONZAスペシャルで、タイトルの記事をリリースしました。

 インターネットで読み解く!第419回「新型炉ばかりの中国原発、安全確保に大きな不安」を一般向けに大幅加筆しました。中国政府は福島原発事故後の安全性検討から新規の原発計画は第3世代加圧水型炉「AP1000」に一本化する方向に変え、国産の第2世代改良型炉「CPR1000」は落第になりました。しかし、大量に建設中だった同炉が次々に運転開始です。来年で倍増の急ピッチぶりは非常識なほどです。透明性が疑われるエピソードとして次のような件も入れました。

 《米クリスチャン・サイエンス・モニター紙が「3.11」の1年後、2012年3月に伝えたエピソードが象徴的だ。国会に当たる全人代開催にあたり記者会見が持たれた。福島原発での炉心溶融事故を受けて中国の原発についても安全性がレビューされた。国営原子力建設会社のトップが当時は14サイトだった原発について、「いずれにも問題が見つかり、解決を要する。対処には3年かかるケースもある」と述べた。ところが、居合わせた記者たちは誰もそれ以上、詳細に問い質そうとしなかったのである。メディア報道が権力と馴れ合っている国では、例えば原発事故があっても真実が伝えられるか疑わしい》


幼魚豊漁で失われる水産資源、異を唱えぬ鈍感報道

 将来に向けて持続可能性が特に疑われている水産資源クロマグロとウナギの幼魚・稚魚が豊漁との報道が今年に入って続きます。豊漁ならば自主規制してでも資源を残せとなぜ訴えないのか、鈍感マスメディアに呆れます。本気で漁業資源を守ろうとしたら漁獲の総枠を規制した上で、個別の漁業者にも漁獲枠を与えるしかありません。個別枠が無ければ早採り競争に陥って幼魚でも捕ってしまうからです。個別枠の範囲で値段が良い大型成熟魚を狙うようになったノルウェーではサバ資源が回復し、今秋から漁獲枠倍増が伝えられました。

 昨12日には《季節外れの豊漁 富山湾でメジマグロ》で「県内ではメジマグロは十二〜二月に多く揚がる。四月の水揚げ量は少なく、過去十年間平均で約四トンだが、今月は既に十四トンを上回っている」と報じられています。

 3月に水産庁がクロマグロの漁獲規制を日本独自に強化する方針を発表したばかりでした。国際会議で訴えて同調を求める方針です。関東などでメジ、関西でヨコワと呼ばれる幼魚の漁獲量を来年から2002〜04年基準の半分にする規制を前提にすれば、自分の首を絞めるも同然な「いま取れる魚は取ってしまおう」とする漁業者の言い分を記事にして、幼魚豊漁と喜んでいては困ります。昨夏の第375回「クロマグロ規制を好機に漁業資源持続へ転換を」で掲げたクロマグロ産卵海域の地図を再録します。


 ウナギについては研究者から『シラスウナギの豊漁報道の異常性』(勝川俊雄公式サイト)と問題提起されています。今年の「豊漁」は極端に不漁だった最近ではやや多かったに過ぎず、《漁業先進国の基準からすると、日本のシラスウナギは、漁獲を続けていること自体が非常識》《日本メディアは、資源が枯渇した状態を基準に、少しでも水揚げが増えたら「豊漁」とメディアが横並びで報道しています。このように、目先の漁獲量の増減に一喜一憂するということは、水産資源の持続性に対する長期的なビジョンが欠如している》と厳しい指摘です。

 マグロとウナギ、日本の漁業規制は依然として中途半端です。新たなクロマグロ幼魚規制も具体的な削減方法を漁業関係者と協議することになっていて、ノルウェーのような先進的な規制が出来るか疑わしいものです。2006年の『世界規模での漁業崩壊が見えてきた』で、「21世紀半ばにスシが食べられなくなる」国際研究チーム予測などを取り上げました。あれから時が経過して、中国の遠洋漁業進出など世界規模で乱獲はますます酷くなっています。水産国日本のマスメディアには、この大状況を頭の隅に置いてもらわねば困ります。

 【参照】第305回「必死の養殖増産で人口増を賄う水産資源は限界」


理研調査も科学にあるまじき杜撰:小保方釈明を聞く

 STAP細胞論文の真偽騒ぎで小保方さんの釈明を実況中継で聞くと、捏造とした理研調査も科学の世界にあるまじき杜撰なものだったと判明しました。ネイチャーに掲載した後始末をオール日本として取り組むべきです。STAP細胞の存在確認がどうしても必要です。

 最初の報道から科学的冷静さを欠く展開でうんざりさせられたSTAP細胞ですが、理研の調査まで的確に実施されてないと言うべきです。最大の問題は小保方さんからの聞き取りすら十分でない点です。調査委員会の正式な聞き取りは1回しか無かったと言えます。論文で取り違えた画像の由来について本人の釈明を聞いていないと言わざるを得ません。実験ノートの提出も、その場にあったノート2冊を出しただけで「さらに4、5冊はある」と釈明しています。真偽の判定をする上で必要なデータ確認が尽くされていません。

 科学の常識を覆すほど画期的とされたSTAP細胞の存在・不存在を確認することが、日本として世界へ責任を取る道でしょう。小保方釈明でも「今回論文は現象論として書いたもので、次の論文でSTAP細胞を作る最適条件を示すつもりだった」としています。再現実験が成功していない現状を打開するためにも、小保方さん自身を加えたチームで実験を先行し、最適条件を学問的に明確にする必要があります。その上で第三者による再現実験を広げるべきです。

 どうして誤りについてきちんとした処理が出来ないのか――欧米の研究者にとって当たり前のピアレビュー、専門家同士による研究評価が日本の研究者では乏しい点が背景にあるように思えてなりません。第145回「大学改革は最悪のスタートに」〜急務はピアレビューを可能にする研究者の守備範囲拡大〜を参照いただけたらと思います。


人間ドック健診基準値の大幅緩和は遅すぎた結論

 人間ドック学会が健康診断の基準値を大幅に緩和と発表のニュースが流れています。学会ホームページに詳細情報が出ていないものの、医療費の無駄遣いや個人への負担軽減が見込まれ、遅すぎたくらいであり歓迎します。これまでにも2008年に書いた第160回「年3000億円の大浪費・コレステロール薬」を始め、医療関係者「常識」のおかしさをたびたび指摘してきました。実はもっと緩和して良いはずなのです。

 一番詳しいNHKの《人間ドック学会「健康診断の正常値 緩めるべき」》を引用します。同学会と健保組合で健康人5万人のデータから正常とされる数値の範囲を調べると正常値が次のように見直されました。 《血圧は、現在正常とされる数値が、上の値は129まで、下の値は84までですが、上の値は147まで、下の値は94までとなった》
《肥満度を表すBMIの値は、現在男女ともに25までですが、男性は27.7まで、女性は26.1まで》
《中性脂肪は、現在149までですが、男性では198まで》
《悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールは、現在男女とも119までですが、男性は178まで、女性は30歳から44歳が152まで、45歳から64歳が178まで、65歳から80歳が185まで》
《総コレステロールも、現在男女とも199までですが、男性は254まで、女性では30歳から44歳が238まで、45歳から64歳が273まで、65歳から80歳が280まで》

 昨年の『小太り長生きは日本で調査済み。WSJ報道に驚くな』に掲げたBMI値と全循環器疾患死亡リスクを示すグラフでは、日本男性の場合は「27.0〜29.9」の小太り群が最も死亡率が低くなっていました。今回の改定で「25」から「27.7」へ引き上げたものの、さらに上でも構わないのです。

 第160回「年3000億円の大浪費・コレステロール薬」では英国の調査結果を引いてコレステロール薬で「心筋梗塞が減ると言ってもプラセボ、つまり偽薬群の12%が投薬群で10%になる程度のことです。一方で癌の発生と死亡が明らかに増えますから、死亡総数では偽薬群と投薬群で差が無くなります。お金を掛けた医療がこの集団全体に対しては何をしたのか、首を傾げる結果になりました」と指摘しました。米国でも「“悪玉コレステロール”の値が大幅に下がったにもかかわらず、死亡したり入院が必要になったりする疾患の総数は減らなかった」のです。

 さらに第217回「男性で逆だったコレステロールの善玉と悪玉」『メタボリック症候群を冷静に眺めよう』などをお読みいただければ日本の健康診断基準が、海外に比べて異様であることが理解いただけるでしょう。今回の緩和はまだ不十分です。


エネルギー基本計画合意、虚構破綻は見えている

 エネルギー基本計画で自公与党合意、近く閣議決定が伝えられました。福島原発事故の反省に立つと言いつつ、原発ゼロを放棄、核燃サイクルを維持します。従来から守る虚構が目の前で破綻しようとしているのにです。「原子力発電は重要なベースロード電源」だから原発再稼働ですが、立地自治体にカネをばらまく仕組みではもう不可能です。事故時避難計画の対象が30キロ圏135市町村に大幅拡大した今、周辺自治体の同意取り付けは大間原発差し止め提訴の函館市のように困難になりました。核燃サイクルの中核、再処理工場は原子力規制委の新規制基準審査会合で重大事故への備えが欠落していると指摘が続いています。

 NHKの《函館市が大間原発差し止め提訴》は《訴えの中で函館市は「安全性が確保されたとは言えず、事故になれば自治体の機能が失われるほどの大きな被害を受ける」などと主張しています。合わせて「函館市は事故の際に避難などの対象となる半径30キロ圏内に含まれており、函館市が同意するまでは建設をやめるべきだ」と求めています。自治体が原告となって原発の建設差し止めを求める裁判を起こしたのは、全国で初めて》と伝えました。

 昨年末の『原発事故時の避難計画、具体化するほど無理目立つ』で指摘しているように、20万人以上を避難対象にする自治体があるなど、いざ過酷事故発生となって周到で実行可能な避難計画を用意するのが非常に難しくなりました。エネルギー基本計画政府案は「世界で最も厳しい水準の」新規制基準による審査が進んでいると称していますが、それだけでは周辺自治体から同意を取り付けられなくなっています。

 「原子力政策の再構築」と掲げ「もんじゅのトラブル、六ヶ所再処理工場の度重なる計画遅延、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定の遅れ等、原子力政策をめぐる多くのトラブルやスケジュールの遅延が国民の不信を招いてきたことも事実」としているのに、核燃料サイクル政策に実質的には手を付けないで済ませます。

 しかし 第407回「核燃料再処理工場の不合格確定、核燃サイクル崩壊」で「新規制基準の適合性審査が始まった青森・六ケ所再処理工場は、早くも不合格が確定したとお伝えすべき惨状になっています」とした通りです。その後の審査でも重大事故への備え欠落が言われ続けて、事業者である日本原燃は重大事故への考え方をまとめ直すことなっています。もんじゅに至っては第353回「高速炉もんじゅ稼働を絶望にする安全設備要求」にある原子力規制委の考え方なら今後、運転は不可能です。