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新型炉ばかりの中国原発、安全確保に大きな不安

 福島原発事故で一時足踏みしていた中国の原発建設が一気に進み始めました。今年2基目が運転を開始、年内に続々と運開です。中国での運転が世界初の2機種を始め主流国産型も新型炉で他人事と思えぬ危うさ満帆です。日本の原発ならフルパワーで長期継続運転が当たり前ですが、電力事情が悪く停電が発生しがちな中国では、無計画停電すなわち外部電源喪失のたびに原子炉の緊急停止、非常用発電機を含む炉心冷却用電源の確保、再立ち上げと煩雑な操作を繰り返さなくてはなりません。安定稼働実績が無い新型炉でこれを頻繁にするのは実地テストにはなるものの対応する運転員も含めて過酷です。3月末時点での原発建設と運転開始の動きをまとめたマップをご覧ください。


 2011年末現在、14基稼働の地図に26日運開の広東省・陽江原発で18基になるまでを書き加えました。福島原発事故の後では2013年2月、遼寧省の紅沿河原発が最初の運開、次いで福建省の寧徳原発、2014年に入って紅沿河2号、そして陽江1号です。以上の4基は「CPR1000」と呼ぶ仏アレバ社の加圧水型原発を国産化した百万キロワット炉です。最初に造られた嶺澳3号(広東省)から数えて4年に足りぬ稼働実績しか無いまだ新しい機種です。陽江原発の写真を引用します。


 CPR1000は年内さらに福建省の福清原発が運開予定です。そしてこの後、浙江省の三門原発と山東省の海陽原発で、世界でまだここだけの第3世代加圧水型炉「AP1000」が運転されることになっています。115万キロワットの大型炉です。東芝グループのウェスチングハウス・エレクトリック社がこれまでの経験を注ぎ込んで、運転員の操作や電源がなくても安全システムが働くように設計したといいます。三門1号と内部構造の写真を並べて引用しておきます。特徴的な点は格納容器の上に巨大円筒の水タンクが載っかっていて、上から水を注入できます。でも普通の運転員は最後の手段に頼らずに事態を収拾しようとするものです。


 広東省の台山原発では年内に「EPR 欧州加圧水型炉」と呼ぶこれも大型160万キロワット新型炉が運開予定です。世界で最初に着工したフィンランドのオルキルオト原発で完成していますが、運転開始には慎重になっていて「2016年までには」との意向ですから、3番目着工の台山1号が運転の先陣になる展開です。全くの新型炉を初めて動かすならフィンランドくらいの姿勢は不思議でも何でもありません。

 三門原発AP1000運転員訓練は2013年初から1年半の日程で始められました。それが終わる今年半ばには直ぐに運転しようとしているのですから、ウェスチングハウスが教育にあたるにしても首を傾げます。各地で原発が次々に運開していく中ですからベテラン運転員を集められるはずもなく、初心者に教えていく期間として1年半は短いと思います。2011年の第271回「高速鉄道大事故でも運行停止しない中国政府」で「ドイツ人が2−3カ月かけて学ぶ高速鉄道運転を中国は10日で学ばせた」エピソードを紹介しました。本当に謙虚さに欠けます。複雑系技術の現場にはマニュアル通りに対処できない修羅場がある恐ろしさを考えもしないのでしょう。

 福島原発事故後に中国政府は新規の原発計画はAP1000に一本化する方向に変えました。国産CPR1000は第2世代改良型炉で不安があるからです。それでも着工済みのCPR1000は冒頭のマップのように次々、大量に商業発電に入っていきます。大震災前日に書いた第243回「中国の原発、無謀とも見える大増設は大丈夫か」で見た、「2年余り準備し、建設を始めれば5年以内に商業運転に入れる」考え方でAP1000一本化を免罪符にして突っ走っていると見ます。PM2.5越境スモッグ騒ぎで中国との一衣帯水ぶりが実感されています。大きな原発事故だけは起こして欲しくない、しかし、ここまででお分かりのように信頼感はありません。

 原発増設は確かに大気汚染対策になる面があります。しかし、人口で世界の2割しかない中国が、石炭では世界の半分を消費している粗放・浪費の経済産業構造を変えるほど劇的な効果は無理です。重篤スモッグ問題についてはやはり「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」です。関連リンクを参照ください。


WHO報告の大気汚染700万人死亡、大多数は中印両国

 WHOがPM2.5など大気汚染での死者が2012年に推計700万人超だったとの報告を出しました。世界での数字と丸めて名指しこそ避けつつも、実は大多数が中印両国での発生と考えられるデータが添えられていました。世界一二の大人口国であると同時に大気汚染深刻国でもあり、人口当たりの大気汚染を原因とする死者数も多いのですから、どうにもならない現実が浮かび上がります。報告から屋外の大気汚染と屋内の大気汚染による地域別死者数のグラフ2つを引用します。


 WHOの地域分けは支部別になっていて少し特殊です。太平洋西部地域(Wpr)には中国を中心に日本からオーストラリアまで、南東アジア地域(Sear)にはタイ・インドネシアからインドまでが含まれます。「Wpr LMI」は太平洋西部地域の中低位所得国を指しますから日本などは除かれ、人口13億5千万人の大きさを考えるとほとんど中国です。南東アジア地域には12億2千万人のインドの他に2億4千万人のインドネシア、1億5千万人のバングラデシュと人口が大きな国がありますが、インドが7割を占めると見ればよいでしょう。

 屋外の大気汚染による死者は世界で370万人、地域別で断然トップなのは中国がほとんどと見られる「Wpr LMI」166万人です。インドが大半の「Sear」も93万人で続きます。世界の他の地域で目立つところはありません。屋内の大気汚染による死者は世界で430万人。インドが大半の「Sear」169万人とほぼ中国の「Wpr LMI」が162万人で肩を並べます。アフリカも58万人と目立つのは第210回「2026年インド人口世界一:牛糞が家庭燃料の国」で書いたインドと家庭燃料事情が似通っているからでしょう。中国での屋内汚染死者が多いのは暖房も含めた石炭系の燃料によると考えられます。

 屋内・屋外汚染の死者は重複する部分があるので両者を合わせて、ほぼ中国の「Wpr LMI」が281万人、インドが大半の「Sear」227万人と推定されました。昨年の報道による第355回「大気汚染による中国とインドの健康被害深刻」では中国の大気汚染死者数は123万人としていましたが、WHOの見直しでリスクは大幅に増えているようです。屋外汚染でみると虚血性の心疾患や卒中の4割を引き起こしているのを始め、呼吸器系疾患や肺がんなどの原因になっています。

 【参照】インターネットで読み解く!
     「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」
     第412回「中国重篤スモッグの巨大さが分かる衛星写真」
     第391回「インド大気汚染さらに悪化、危険過ぎるPM2.5とPM10値」


PCオーディオのワサピ化とタブレットで良い音

 流行のハイレゾよりもまずWASAPI化ですと2月に推奨して多くの方に読まれました。もう一歩進めて、全面ワサピ化してみた試みと、安いタブレットとヘッドホンで音楽を楽しめる組み合わせが出来たので紹介します。先日の『パソコンで音楽ならハイレゾよりまずワサピを』では、幅広く使えるAVプレーヤソフト「MPC-HC」を、音質へ悪影響が大きいウインドウズOSの音声ミキサーから切り離すことが出来る「WASAPI排他モード」にする話でした。これでようやくCD並みの音質がパソコンで実現します。

 パソコンにはこの他にもいろいろなオーディオソフトがあります。多くの場合に再生デフォルトになっている「ウインドウズ・メディア・プレーヤ」、ブルーレイ用の再生ソフト、それに我が家では使用頻度が高い録画テレビ番組をブルーレイ・レコーダや家庭内サーバーからLANで鑑賞するソフトです。メインにしているデスクトップPCではブルーレイには「CyberLink PowerDVD」、テレビ番組には「DiXiM Digital TV」を使っています。一部機能は「MPC-HC」で代替できるのですが、全面ワサピ化した方がずっと便利です。

 参考になるウェブは《フリーソフトを使ってビットパーフェクト再生する方法》です。「方法は少しトリッキーで、ASIO Windows Media Player Plugin と ReClock という二つのフリーソフトウェアの機能を組み合わせて実現します」

 説明されている手順を追っていただけば難しくはありません。デスクトップPCはこの方法で全面ワサピ化しました。しかし、東芝製のノートPCではウインドウズ・メディア・プレーヤがWASAPIでうまく再生できませんし、ブルーレイ再生の「WIN DVD」では無視されてしまいます。機種によって相性の問題があることだけはご承知おきください。ともあれテレビの音楽番組はどちらのPCでも断然良いクオリティになりました。

   ◆  ◆

 第396回「2014年はタブレット主流、パソコン文化変貌も並行」に写真を載せている10インチのタブレットが壊れてしまいました。音質が良いのが気に入ってベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールなども楽しんでいた機種です。タブレットの最多用途は電子書籍を読むことですが、外出時やキッチンなどの音楽プレーヤとして良い音にこだわっています。


 店頭で試した結果、レノボの8インチ「YOGA TABLET」に決めました。上の写真で比較のため16インチの東芝ノートPCに乗せてあります。タブレットなのに自分で立つ点がユニークで、重さが10インチの6割だから片手で持てるのが便利。買値21420円、3月中に買えば4000円のキャッシュバックがあります。最近、外出時によく使うAKGの密閉型ヘッドホンK404(写真右。アマゾンで3500円弱)と良い相性なのも気に入りました。音質イコライザーがダイナミックに変動するタイプで音楽を生き生きとさせる効果があります。もっと高額のフラット特性ヘッドホンで聞くと高音に強調がありますが、やや高域不足のK404を補完してくれます。

 ソニーの定額音楽配信サービス「Music Unlimited」からかなり大量の音楽をタブレットにダウンロードして聞きました。1960年代の洋楽ヒット集もあればカラヤン・ベスト100などクラシック、最新録音のポップスもです。「HE-AACの48kbps」という圧縮形式の優秀さを再認識しました。MP3など比ではありません。前のタブレットではCDから無圧縮コピーの音楽中心でしたが、記録容量を小さくしてもそう負けていません。外出時はイヤフォン・タイプの縮こまった音場で過ごしてきたので、街角で聴いて時に豪快に響く開放的な感じがとても新鮮です。

 【参照】『定額音楽配信サービスで音楽産業は持ち直すか』


若者内向き説に疑問あり、米国留学減少は別の要因

 日本の若者内向き説の根拠である米国留学の減少が別の要因で起きていると考えられる。中韓両国の若者は壮絶な国内就職難から米国留学を強く志向し、結果として日本の若者が割りを食っているのが実態ではないか――朝日新聞WEBRONZAスペシャルでタイトルの記事をリリースしました。

 エントリーの切り口を若者内向き説の是非に振っています。海外留学そのものより、若者説に関心がある方に読みやすくしました。「留学減少傾向を論拠にして『日本の若者は内向きだ』と、国内メディアばかりでなく海外発の報道やOECDなど国際機関の報告書にまで書かれるようになったが……」

 朝日有料会員でない方は後半部分が読めませんが、そのまま第415回「留学の大変動、中国と韓国の壮絶な就職難から」につながるよう構成してあります。


全国どこでも3次元「地理院地図3D」を試す

 国土地理院が日本全国どこでも3次元で見られる「地理院地図3D」サイトを19日に公開、かなりのアクセスラッシュになっているようです。世界的に有名な函館の夜景を材料にちょっと3D地形図を試してみました。

 3Dサイトの入口はこちらです。ページの右肩「3次元で見る」ボタンを押すと、まず筑波山が現れます。そこからスケールダウンして遠くに移動します。北海道・函館に行きましょう。「函館市公式観光情報・函館の夜景がきれいな理由」から函館の夜景写真を引用させていただき、作った3D地形図と合体してみました。地形図の高さ方向は実感に近い2.4倍に強調してあります。人間が函館山山頂から見ているのを上空から見る「神の視点」です。


 《高さ334メートルの函館山山頂展望台から市街地を見下ろす風景。山頂まではロープウェイで3分という近さで、山麓から連続する市街地は、手が届きそうな目の前に見えます。これが、展望台に出た瞬間の「わあ〜!」という感動を呼ぶのです》。この感じ、地形図からも分かります。本当に函館山から指呼一望になっているんです。函館市街の広がりがきれいな扇形になっている理由も、郊外に山が迫っているからだと知れます。

 3Dサイト入口ページ下の方に地理院オススメの地形名所も並んでいます。マウスの使い方を知った上で、名所では「拡大」ボタンを押さないで、地形図の方をクリックすると自在に操作できる3D名所地形図が現れます。まずこれで遊んでから、自分の故郷や土地勘がある場所を3D地形図にして楽しまれたらよいでしょう。

 年初に『本格的に空中散歩が味わえるグーグル3Dマップ』で首都圏や宮城県での都市3D合成景観の面白さを紹介しました。今回の国土地理院3D地形図は日本アルプスなど山岳の威容や島、岬、湾など起伏のある海岸線の美しさを伝えてくれます。どちらも使い方を覚えておかないと、もったいないですよ。


留学の大変動、中国と韓国の壮絶な就職難から

 日本の米国留学が減る傾向から若者が内向き志向と言われますが、近年の留学先大変動を起こしているのは中国と韓国の壮絶な就職難でした。各国最新データがそろう2011年と2007年を比較して判明です。21世紀に入ってからの留学の大波は大規模な頭脳移動に見えたものです。留学先がOECD諸国に限った集計では2000年の158万人が2011年に331万人にもなりました。しかし、留学先国で満足がいく就職をして残れるのは限られた層であり、大膨張の先頭に立っていた中国は今、留学生帰国ラッシュと国内大学の乱造による学卒者の氾濫に直面しています。

 2009年の第190回「留学による大移動は新段階、中韓米日で見る」で整備しておいた2007年の中韓米日4カ国データを基盤にして、2011年の状況を見るグラフ「2007→2011各国留学先の変動」を作りました。人数はその年の新たな留学者数です。2011年は欧州代表のドイツを加えて5カ国にしました。OECD統計「Education at a Glance 2013」に加えて、OECDから漏れている中国の留学生受け入れ統計を合わせています。


 日中韓3カ国の中で一番目立つのは中国からの米国留学が突出して増えた点です。10万人が18万人に膨れ上がりました。韓国も8千人ほど増やし7万人なのに、日本は1万5千人も減らし2万人です。日本の留学は米国以外は横ばいか増える傾向ですから、特に米国で減ったのは中韓の激増に押し出されたとも見えます。絶対数では中国が目立ちますが、人口が日本の半分もない韓国から日本の3倍半の米国留学を出すのは尋常ではありません。日中の対比は9倍ながら人口比の10倍と釣り合っています。中国からの米国留学では成績証明や提出論文の偽造など不祥事が米国メディアからよく聞こえてきます。ドイツから米国へは1万人弱と控え目ですが、英語圏の英国に2万人以上送り出しています。

 中国は留学受け入れでも2007年の19万人が2011年に29万人、さらに50万人を目指すと宣言しています。米国から中国への留学は棒グラフの間で見えにくいですが、8千人増えて23292人になっています。2位米国をはさむ韓国62442人、日本17961人はほぼ横ばいです。2013年には日本が3位の座をタイに奪われたと伝えられたように、中国は途上国からも幅広く受け入れています。一方、受け入れ規模が小さく8割近くが中国からと特異な韓国は留学の魅力が薄い国であると見て取れます。日本も中韓を合わせると8割になり、韓国の2倍半大きな受け入れ数15万ながら考えねばなりません。

 中国の海外留学は2000年が4万人だったのに、2007年15万人、2011年35万人、2012年40万人と急伸し続け、2013年にやっと41万人と微増に止まって激増期は終わった気配です。留学帰国組はかつては厳しい就職戦線で優位に立てたのに、その状況は霧散しました。《大卒予定者727万人、中国は史上空前の就職難〜かつて重宝がられた海外留学帰国組は今や見る影なし》が大学乱造と留学事情をリポートしています。

 《1997年7月にタイから始まったアジア通貨危機による経済不況に刺激を与えようと、中国政府は1999年に高等教育システムの拡大を決定し、大学の入学枠を大幅に増大した。この結果、1999年には85万人に過ぎなかった大学卒業生は、2003年には212万人となり、2005年:338万人、2006年:413万人、2008年:559万人、2009年:610万人、2012年:680万人と年々増大し、2013年には699万人となった。そして、今年はついに700万人の大台を突破して727万人となると予定されている》

 《海外各国の留学生に対する大学卒業後の在留条件が厳しくなり、大量の海帰族が中国へ帰国するようになった。一方では中国経済の低迷により従来通りの高成長が維持できなくなったことで、海帰族の就職環境は一変した。その結果、かつての名誉ある“海帰族”はたちまちのうちに“海待族(就職できない海外帰国組)”になり果てたのである》。人民日報は2013年の留学帰国者は前年比8万人増の35万3500人と報じました。

 韓国でも留学者数は2003年の16万人が2010年に25万人に拡大しました。サムスンとヒュンダイグループしか世界で稼げる企業が存在しない国情では、国内に留まっては就職先の選択幅は極めて狭いのです。サムスンへの受験者は年間20万人に上ると言いますから、悲劇的と見るか喜劇的と笑うかです。ただ、英語教育で日本の先を行っているのは間違いなく、米国留学には大きな力になるはずです。

 2010年の第228回「若者が目指す国、捨てる国〜世界総覧を作成」にギャラップ調査による若者移住指標ランキングを収録しました。世界148カ国の若者に移住したい国を聞き、それが実現したら人口がどう増減するかのランクです。韓国はOECD諸国にしては珍しいマイナス側の国でマイナス4%、中国もマイナス10%なのでした。留学志向がこれほど強烈である背景が見えます。ちなみに日米独はプラス側の国です。

 【参照】インターネットで読み解く!「人口・歴史」分野


福島原発事故の無為で告発さるべきはマスメディア

 福島原発事故の3事故調の委員長らを集めた日本記者クラブ討論会の報道に大きな違和感があります。マスメディアはまるで他人事ですが、あれだけの大惨事が起きて社会を変えなかったのはメディア自身の責任なのです。本当に差し迫った炉心溶融と高レベルの放射能汚染拡散を知らせる責務を、当時の政府による「大本営発表報道」に自ら委ねて放棄したままでした。今に至っても原発再稼働の是非そのものを報道の対象にしないで原子力規制委員会の処分任せにし、地震の可能性など細かな検討事項をめぐる報道をして足れりとしています。

 時事通信の《「社会変わる気配ない」=3事故調元委員長ら―福島原発》は《東京電力福島第1原発事故から3年を迎えるのを前に、事故の原因や対応を検証した政府、国会、民間の各事故調査委員会の元委員長らを集めた討論会が10日、東京都内の日本記者クラブで開かれた。国会事故調の黒川清元委員長は「あれだけの事故が起きても日本の社会が変わる気配がない。誰も責任を取らない」と指摘した》と伝えました。

 国家として誰かの責任を問う必要もあります。それ以前に未だにどうして福島原発事故が起きたのか分かっていないことこそ不思議なのです。昨年、第381回「福島原発事故、国家として原因不詳でよいのか」でこう申し上げました。

 《いくつもの事故調が違った結論を出し、放り出されている現状は「原子力ムラ」の意志なのかもしれません》《責任者を出さないと決めていた原子力学会や原子力ムラ政府官僚がほくそ笑む展開です。これほど影響が大きい大事故ならば原因をピンポイントで究明してシステムを改善するべきところを、原子力規制委による新規制基準は事故調報告を参照もしない安全システムの大風呂敷展開でかわしています。全てが曖昧模糊になっているようでは、現代屈指のテクノロジー国家として失格だと敢えて申し上げます》

 「3.11」東日本大震災3周年を前にした時事通信の企画記事《「事故に学ぶ姿勢足りず」=新規制は「ハード偏重」−班目氏〔東日本大震災3年〕》は事故当時、無能とされた原子力安全委員長のコメントを記録しました。驚くべきことに独立組織になった原子力規制委は前任者からの聴取さえしていないのです。「規制委は私を呼んで話を聞かなくていいのか。当時のコミュニケーションがどうだったかなど、一番大切なことなのにやっていない。あれだけの事故があっても何も学ばないなら(規制を)やる資格がない」(当時の経緯:第347回「無傷で終わる可能性が十分あった福島原発事故」

 マスメディアの事故当時の報道をめぐる言い訳も第282回「原発震災報道でマスメディア側の検証は拙劣」で書いたレベルからまるで変わりません。知らぬ顔を決め込んだまま、社会が変わらないとか伝えるのはとても奇妙です。


鳥インフルエンザ、終息せず散発発生を継続

 中国の鳥インフルエンザH7N9型流行は3月に入っても終息せず、散発発生を続ける傾向になっていることがWHOの定期リポートで明らかになりました。生きた鳥を料理に使う食習慣を絶たないと根絶は難しそうです。大きな都市では生きた鳥を扱う市場を鳥インフルエンザ流行に応じて一時的に閉めるのではなく、永久停止する動きになっています。WHOの「Report 14」にある週ごと発生例数グラフに、人民日報で報道されている最新データを加筆して以下に掲げます。


 昨年の第1波流行が患者135人で終わったのに対して、今の第2波は既に患者256人にもなっています。1週間に40例前後も発生したピークが旧正月の帰省ラッシュをはさんで存在しました。現在は週に10例程度の発生になっています。昨年第1波流行でのピークは第14、15週にあり、今回はまだ第10週なので気が抜けない状況です。死亡者は第1波が44人だったのに対し、第2波は2月末で72人もいて今後さらに増える見込みです。

 第1波と第2波の患者数を、主な市と省で北から並べて比較します。
  北京 2 → 2
  江蘇 27 → 15
  安徽 4 → 6
  上海 34 → 8
  浙江 46 → 89
  湖南 3 → 15
  福建 5 → 16
  広東 0 → 91
  全体 135 → 256

 上海市から北側は全体の流行規模が拡大したのに良く発生を抑えた印象ですが、浙江省から南では第2波流行の激しさが出ています。特に香港の北にある広東省は最大の患者数91人になっています。第1波では江蘇、上海、浙江で生きた鳥を扱う市場を閉鎖したら流行が終息しました。今回の第2波もそれに習った措置が取られました。北京と上海はさらに進めて永久停止を打ち出し、江蘇省の南京市も追随しました。浙江省でも杭州など主要都市は永久停止の方向ですが、小規模な市は漏れています。広東省では2週間の都市部市場閉鎖で患者発生が下火になっています。

 H7N9型は鳥にとっては高病原性ではなく感染しても死に至りません。このため生きた鳥に一般市民が接触しうる市場を閉じるしか無いのです。患者発生に伴う鶏やアヒルなどの殺処分で養鶏業界に莫大な被害が発生しており、鶏肉などを4度以下のチルド状態で流通させるシステムに移行が図られています。旧正月にはお祝いで生きた鳥をさばく料理の習慣があり、流行に拍車をかけたと見られています。

 しかし、中国全土で食肉チルド状態流通を実現するのは先のことでしょう。依然として中国南部では鳥と豚と人間の生活圏が非常に近い環境が残り続けます。鳥と豚と人間のウイルスが入り混じってパンデミック、感染爆発に至る新型が現れる危険があります。第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で指摘した中国医療事情の貧困問題があり、表に出ている患者数が実は氷山の一角にすぎない可能性を、WHOも別の報告で認めています。


実効ない大気汚染対策に中国学者が経済発展転換論

 北京などで丸6日も重篤スモッグが続いた後、国会に当たる全人代が開かれ李克強首相は大気汚染に宣戦布告と表明しました。しかし、粗放な経済成長のツケを正面から払うのは難しく、経済発展転換論が叫ばれています。スモッグ後の中国の報道では科学技術の専門家から「北京の空気は昨年より改善されたが気付いてもらえない」といった負け惜しみ、「海外のようにスモッグ解消に30年もかからない」とのピント外れ発言が続出して失笑モノでした。経済学者から出ている「GDP優先をやめて国民の幸福最大化」の提言が生きる時が来るのか予見できぬものの、ようやく真っ当な議論が登場と感じます。

 ウォールストリートジャーナルが「支出額に反映されない中国の環境対策――言葉では意気込み示す」で批判精神を欠く中国メディアにない視点を提供しています。

 《財務省が5日に発表した報告書によると、2013年の環境保護とエネルギー保全向けの支出は前年比9.7%減の1800億元(約3兆円)。これは昨年それら項目に割り当てられた予算のわずか86%にすぎない。2012年には、そうした項目に対する支出は予算を上回り、23%増の約2000億元だった。それに対して、政府によると、昨年は軍事支出に7200億元を投じた。李克強首相は今回、総力を挙げて環境汚染と闘う方針を表明した。5日の報告書では支出を前年から17%引き上げ、2100億元とすることも要求している》

 要するに中国政府首脳が声高に叫んでいる中国の環境汚染対策の内実はこの程度に貧しいのです。増え続ける軍事費まで含めて予算の大枠を変える気も無いのですから、劇的な改善があろうはずがありません。大気汚染の専門家は「北京の大気1立方メートル当たりPM2.5が平均400マイクログラムあった昨年1月に比べて、今年は300マイクログラムに減っている。しかし、一般人に気付いてもらうには100マイクログラム程度まで落とさなければ分からない」と言っています。

 インターネット検索をすると国家行政学院の張孝徳・経済学教授が重篤スモッグについて発言しているのが昨年来、目立ちます。「スモッグ克服と日常防護」(原文中国語)は人民日報による6日間スモッグ後の最新インタビューです。非常な長文ながらエッセンスをまとめると次のようになります。

 「都市の空気中に汚染物質は沈殿していて、風が吹かないと非常に強いスモッグとなる」「北京、上海などの大都市では、肺がんの発生率が8倍に増加したデータがある」「背景には欧米諸国からの汚染移転があり、エネルギーを使い出稼ぎ労働者の低賃金による安い製品生産で中国に汚染を残すようになった」「克服には根本的な原因を解決する必要がある。第一の問題はGDP増大の単純追求を改めること。国家のGDP最大化から国民の福利最大化に転じるべきだ」「私たちの生活はまだ米国のレベルに達していないが、多消費病に陥っている。着る服を数十着持ち、それを入れる部屋が必要になるべきではない」「1人当たり1万米ドルの年間所得ではあっても、我々は、先進国に比べて幸福になりうる。新たな目標が必要であり、いかにして最も省エネルギーで幸福と健康を最大化するかだ」

 宮本憲一さんが『環境経済学新版』(岩波書店)で、インド独立の父、ガンジーが「(人口が多い)インドが英国と同じことをすれば、地球がいくつあっても足りない」と主張し、地域に根ざしたネットワークを生かす経済発展を志向したと紹介しています。映画「ガンジー」に見る質素な衣服はそれを自ら体現していたわけです。インドよりも多い13億人の民がいる中国も、例えば年間に石炭なら世界の半分を一国で消費する資源・エネルギー浪費型の経済発展を根本から見直すべきなのです。

 第412回「中国重篤スモッグの巨大さが分かる衛星写真」は衝撃的で、非常に多数の方に見ていただきました。9百キロずつ離れた北京・南京・西安3都市間を丸呑みにした、人間の手に余る化け物ぶりに「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」と改めて思わざるを得ませんでした。


中国重篤スモッグの巨大さが分かる衛星写真

 2月下旬、丸6日も北京など中国主要都市を覆った重篤スモッグの衛星写真が中国網日本語版に掲載されたので、引用して紹介します。それぞれ9百キロずつ離れた北京・南京・西安3都市間を丸呑みにした巨大さが分かります。25日NASAによる撮影で、上空の雲は白く見えており、ねずみ色がスモッグです。


 オリジナルの「アジア上空を覆う濃霧 NASAが撮影」には地名が無いので、北京など3都市をプロットしました。日本の東京と博多の間も中国3都市間と同じく約900キロですから、スモッグ領域の広大さが理解できます。北京から北東に黒竜江省あたりまで伸びていますし、南はこの写真からはみ出ている重慶や成都の空も覆いました。23日の観測データとしてスモッグの領域は全部で143万平方キロと日本の陸地の4倍、特に重篤な部分が81万平方キロと伝えられました。

 微粒子PM2.5が大気1立方メートル当たり250マイクログラム以上が最上位汚染ランク「厳重汚染」になっています。20日正午に黄色警報が出て以来、PM2.5濃度は尻上がりの傾向を見せ、21日にオレンジ警報に格上げされたにもかかわらず、この写真の25日には北京は500マイクログラム前後の桁外れ汚染になっていました。結局、26日夕に北風が吹き出して今回の大気汚染は終息しました。『緊急措置効かぬ怪物スモッグが中国政府を打ちのめす』から入って全貌をご覧になってください。

 【参照】「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」