<< December 2013 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
Latest Entry
Profile  Facebook
Dando's Site
Category
Search

Archives
Recent Comment
  • 9/29で『Blog vs. Media時評』サイトは閉鎖
    KI (08/31)
  • 危機の現状に対策が噛み合わぬ科学技術基本計画
    次のノーベル賞か? (08/13)
  • やはりノーベル賞大隅さんの警鐘を無視した政府
    森田 (06/19)
  • 自主避難の根拠は放射線障害防止法の下の平等
    宮本由香里 (05/15)
  • 社会の鏡インターネット検索、20年目にして危機
    森田 (05/08)
  • 社会の鏡インターネット検索、20年目にして危機
    業界人 (05/06)
  • 社会の鏡インターネット検索、20年目にして危機
    あ (05/05)
  • 科学技術立国崩壊の共犯に堕したマスメディア
    森田 (04/23)
  • 自主避難の根拠は放射線障害防止法の下の平等
    (04/08)
  • 京大さん、日経さん、ネット調査信頼は無茶
    (01/16)
Recent Trackback
Admin
   
Mobile

地球上の風の流れをリアルタイムに流線表示

 年の瀬、忙しい中ですが、一見に値する面白ツールを発見しました。地球上で吹いている風の流れをリアルタイムに流線表示してくれるマップです。最近、東京版から世界版にスケールアップした「earth wind map」です。これは見飽きません。日本付近を切り出した瞬間を以下に引用します。


 午後5時、北海道の北東にある強い低気圧による巨大な渦がある一方、本州から沖縄まで大陸から吹き出す風に吹き洗われています。シベリアから届く日本海側、中国北部から朝鮮半島越えに届く風も表現されています。この時間、中国北部では例の大気汚染、重篤スモッグは薄れていますが、1年間、話題になり続けた微粒子PM2.5がこうやって流れてくるのだと納得です。(『西日本各地でPM2.5による重汚染の異常事態 [BM時評]』

 「earth wind map」についての使用データなど自己説明は《地球 世界中の気象状況がビジュアライズ〜スーパーコンピュータが予報〜3時間ごとの更新》にあります。作者のCameron Beccario氏の話は《風の動きを可視化する「Tokyo Wind Map」がバージョンアップ、世界版「Earth」が公開》で読めます。「以前見た US Wind Map が素晴らしかったので、それに習って、JavaScript を学ぶかたわら、東京版が作れると思ったのです。東京版が完成すると、次は世界版を作りたいと思うのは自然な流れでした。世界版はこれまでに見たことがありませんが、地球上の空気の流れを見る上で便利だと考えたのです」。これは風のイメージを伝えるためのもので精密な情報ではありません。


原発事故時の避難計画、具体化するほど無理目立つ

 原発再稼働の前提であるはずの事故時避難計画は、対象が30キロ圏内135市町村に大幅拡大した結果、具体化するほど無理がある様相です。策定は4割もなく、大人口の長距離避難など実現可能か検証が必要です。25日に原子力規制委に出された内閣府調査から、原発集中地である福井周辺の自治体避難先地図を引用します。


 30キロ圏に全市すっぽり入ってしまう人口6万8千人の敦賀市が、隣の滋賀県や京都府を通り越して奈良県まで避難先を求めているのが目を引きます。他の自治体も大阪府や兵庫県、さらに遠く徳島県や和歌山県までも入っています。動員できるバスなど車両数の限界がある上に、重大事故発生が知らされれば道路は大混乱に陥りますから、こんな広域避難が本当に可能なのか、十分に検証しないと「絵に描いた餅」になります。

 朝日新聞の《原発避難計画、策定4割に満たず 立地30キロ圏自治体》はこう伝えました。《再稼働を目指し、電力会社が新規制基準の適合審査を規制委に申請した原発を抱える7地域のうち、避難計画がすべての自治体でそろっているのは、伊方、玄海の2地域のみだった。柏崎刈羽原発周辺では、9市町村の全てが防災計画はあるが、避難計画はまだ作られていない。福井の原発密集地域、泊、島根、川内の各原発の周辺では、ほぼ全ての市町村で年内にも、避難人口の把握や避難方法、経路の決定など基本的な作業が終わる見通し》その基本作業が上図ですから、道遠しです。

 柏崎刈羽の長岡市や島根の松江市のように人口20万人以上を避難させねばならない自治体は、避難が近距離であっても大変な難事業に直面しています。第386回「前のめる原発再稼働:新規制基準なら万全と錯覚」で指摘しているように、従来の形式的な避難訓練ではなく、大規模避難が実現できると示せる規模の訓練をしなければならないでしょう。そして、福島原発事故では避難準備区域とされる30キロ圏にも震災の翌日には高レベル放射能の雲が流れ出しました。時間の余裕はありません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


了解しかねる対中ODA継続、NGO支援に限定を

 人民日報日本語版で対中ODAをめぐる不思議な扱い――日本語版で伝えても中国語ではニュースにしない――を見た年の暮です。考えるに中国政府がするべき民生案件は即時中止し環境NGOなどへの支援に限定すべきです。尖閣諸島での中国のゴリ押しを横目に見て国民から無償援助継続に理解が得られるとは思えませんし、中国自身がアフリカの民生支援を大規模に推し進めているのに、日本が中国貧困地域の民生支援をする必要はないはず。3月に書いた第349回「中国になお無償援助、国内報道しない人民日報」をフォローしてデータを集めてみました。

 外務省は表向きは「2.中国に対する現在の我が国ODA概況」で「中国は経済的に発展し、技術的な水準も向上しており、ODAによる中国への支援は既に一定の役割を果たした。このような状況を踏まえ見直しを行った結果、純粋な交流事業は ODA による実施を終了し、草の根レベルの相互理解の促進や、両国が直面する共通の課題への取組(例えば、我が国への越境公害、黄砂、感染症といった問題の対策や、進出企業の予見可能性を高める制度・基準づくり)といった、限定され、かつ我が国にとっても利益となる分野に絞り込んでいる」と説明しています。

 しかし、北京の日本大使館ウェブで「対中経済協力ニュース」の一覧を見る限り、公衆衛生計画は上水道を引く事業だし、医療環境改善は診療所の設置、そして圧倒的に多いのが小学校の校舎建築や改修です。本当の問題意識があるNGO支援は僅かです。

 2013年だけで29件の事業イベントが並びますが、人民日報は検索で調べる限りほとんど報道しません。今年珍しく地方紙から転載で報じた中国語ニュースの1件、4月、タイトル仮訳で「日本の草の根無償援助が信宜市に」は広東省信宜市の小学校改修(1千万円規模)の調印式についてでした。この学校改修は大使館のイベント表にはありませんから来年完成したら出すのでしょう。中国の地方政府がすべき事業・施策の肩代わりをこれからも延々と続ける腹のようです。大使館の応募規定が示唆している、施設が出来上がったら銘板に「中日友好」の文字が入っていればオーケーでは、日本の納税者として到底、納得できません。

 3月のエントリーで吟味した結果、人民日報日本語版は政治的な意図を持って作成されており、日本語版にある記事が中国語版にあるとは限らないと分かっています。そのひとつが8月の「日本車の命運は中日関係次第」です。「国際商報・汽車周刊」編集長の署名で、《戦争賠償については、41年前に中国側が請求権の放棄を宣言したものの、多くの中国人にとっては釈然としないわだかまりとなっている。実は日本側は長年にわたり「対中政府開発援助(ODA)」を通じて、形を変えて戦争賠償を行なってきた。このうち3兆2000億円規模の円借款は30年の超長期、金利3%以下の優遇借款であり、中国側のある専門家は「インフラなどの要因を総合的に考慮すると、円借款は約57%が実質的贈与にあたる」と試算する。このほか、1472億円規模の対中無償援助と1505億円規模の技術援助もある。こうした援助は1980年代、90年代に中国が受けた外国からの援助総額の半分近くを占め、中国経済のテイクオフに軽視できない役割を果たした》とここまでは珍しく正論です。なお、この記事、中国語版には発見できません。

 ところが、議論を持っていく先が《だが中国の民間人でこうした事を知っている人は、今にいたるもまれだ。そのうえデータにも食い違いがあり、戦争賠償との関係も曖昧だ。したがって双方は整理し、しっかりと計算し、日本側が事実上一体どれほど「賠償」したのか、まだどれほど「借りがある」のか、あとどれほど「賠償」すべきなのかを確認して、戦争賠償問題を清算し、民間に説明すべきだ》なのです。戦争賠償の総額を双方納得して確定する作業は、南京大虐殺の被害者数が時を経るほど膨張し続けている1件を見てもまず不可能です。この記事は日本への「揺さぶり」と考えるべきでしょう。

 対中援助については《「対中援助は必要か」「国民が驚愕」=月面着陸成功で経済援助に疑問の声―英紙》のように英国でも疑問視されています。英国側でも「気候変動や経済成長といった世界的な問題で非政府組織と連携することは正しい」との姿勢です。例えば第346回「『がん村』放置は必然、圧殺する中国の環境司法」で描いているように、未発達な中国の法制と恣意的な実務の間で苦労しているNGOがあれば助けてあげる価値はあります。しかし、外交官の自己満足で貧困地区を支援するのはもう止めましょう。対中ODAは2011年度までの累計で円借款3兆3164億円、無償資金協力1566億円、技術協力1772億円にのぼっています。今後、例えば重篤スモッグで大気汚染改善の技術協力をするとしても、広く中国国内にアナウンスされないなら乗るべきではありません。


鳥インフルエンザ秋の流行10人に:まずい初動治療

 H7N9型鳥インフルエンザの感染者が中国広東省で拡大、10月以降で浙江省2人、香港2人と合わせ10人に。今年前半の流行時と同様に発症時に抗ウイルス薬で叩く治療が出来ておらず、重篤な患者が続出です。第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で指摘した医療をめぐる貧しい内情に変わりがないのは遺憾です。なお今月、別の新型鳥インフルエンザH10N8型による1人死亡が、世界で初めて中国江西省で確認されています。

 広東省の感染者は6人で、恵州市1人、東莞市2人、陽江市2人、深セン市1人。香港の患者は隣接する深センに出かけて鳥料理を食べていると報じられています。香港を含めた地域的な流行が案じられています。最新の深セン患者例では、男性38歳、9日に発熱と咳の症状が出て住んでいる南嶺村の診療所を受診、12日に悪化して南湾人民病院の救急へ。17日に肺から取った検体でH7N9型と確定、現在危篤です。

 日本新華夏株式会社のリポート「中国・広東省、H7N9対策会議を開催 関係当事者の責任を追及」は《広東省衛生計画生育委員会の陳元勝主任は、「高熱といったいわゆるインフルエンザ様症状が出た者及び感染家禽に接触した者が発症から48時間以内にタミフルといったノイラミニダーゼ阻害薬を服用しなければならない。もし、タイムリーに抗ウイルス薬を服用せず、症状が重症化したら、病院の指導者及び当事者(医師)の責任を追及する」と強調した》と伝え、後手に回って躍起になっている様子がうかがえます。健康保険が無いに等しい農民は少々の病気では受診をためらうところから改善する必要があるので大変です。


完全に破綻した福島原発汚染水の海洋流出阻止

 福島原発1号機の護岸すれすれにある観測井戸から16日、ベータ線放射性物質が1リットル当たり6万3000ベクレルも検出されました。地下水が流れこむのに強力な対策はなく海洋流出阻止は破綻したと言えます。下の地図で確認できるように、高レベル汚染検出エリアは止水剤を注入した壁で囲い込む形になっていました。地下で囲っても山側からは日々に地下水が流れ込んでいますから、汲み上げてやらないと溢れるのは当然です。


 海側の「No.0−3-2」が6万3000ベクレル検出の井戸です。13日には検出せずでした。12日に180万ベクレルを記録した「No.1-16」井戸は汲み上げを試験的に実施して13日が140万ベクレルに下がり、16日にまた増加して170万ベクレルに達しました。この分がオーバーフローして海側に出て行ったと考えるべきです。東電は汚染水を入れるタンクが足りなくなっており、汲み上げを続けられていません。

 原子炉建屋地下に流入する1日400トンの汚染水を収容する対策が基本計画になっていました。ところが、第392回「1日400トンの放射能汚染水が150トンも増える」で指摘したように、広大なタンクエリアで漏れた汚染が除去できず、雨が降るたびに汚染水が増える、お手上げ状態になっています。1日換算で150トン、4割近くも増えれば計画が破綻して当然です。

 1号機護岸から直接流れ出ている先は港湾内ですが、5、6号機が港湾内から吸い込んで使っている冷却水の放水口が外洋ですから、大量のベータ線放射性物質が外洋に出ていると考えざるを得ません。東京五輪誘致で「コントロール下にある」と言い放った国際公約はどうするのでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


権力側が設けた『土俵』を疑わぬ報道は公害に

 特定秘密保護法を巡って主要メディアが久しぶりに政府批判に足並みをそろえました。しかし、日常報道では用意された土俵の上で、例えば東電負担軽減策や国立大改革案が重大な欠陥があるのに無批判に報じられました。福島原発事故で1〜3号炉の炉心溶融が2カ月間も政府・東電から明確にされず、ピント外れの報道を余儀なくされた反省は消え去ったかのようです。東電問題で言えば、問題視する論調は税金の投入が東電救済になるとの薄っぺらいものしかありません。東電が負担に耐えられないのは周知の事実ながら、それを政府が助ける構図がマヤカシなのです。原発事故の責任の半分は安全審査をした政府にあります。今回の軽減策で政府は自らの責任を表沙汰にしないで東電責任論のまま逃げ切ります。原発の再推進に向け、第334回「原発事故責任者の1人と自覚が無い安倍首相」で指摘した不明の罪は葬り去りたいのです。

 日経新聞の14日付朝刊トップ《政府、東電向け融資枠9〜10兆円に倍増 除染加速》はこう伝えました。「原発事故処理では、賠償、廃炉、除染・中間貯蔵施設の費用がかかる。これらを東電の全額負担にすると、除染が進まず福島の復興も遅れかねないと、政府・与党は判断。費用の一部に国費を投入する方針に転じた。5兆〜6兆円に上る見込みの賠償は東電が全額払う。中間貯蔵施設(約1兆円)の費用は国が全額支払う。実施済みや計画済みの除染(2.5兆円)の費用は国と東電が分担し、追加の除染費用は国の負担とする。東電の負担は最大8兆円に限定する」

 国が負担すると言っても、原資は原子力損害賠償支援機構が保有する1兆円の東電株売却益や電気料金にかける電源開発促進税の投入、特別税徴収している復興財源からです。そして、東電が負担する内実は将来の電気料金への転嫁でしかありません。国民・消費者に隠れた負担として流れていきます。この政府の方針を何の注釈も無しに垂れ流して、経済の専門紙として恥じないのでしょうか。

 福島原発事故の事故原因は政府事故調と国会事故調の見解が違うなどして、誰がどうしたからとピンポイントで明かされることはありませんでした。細部が確定することは、そこに至った筋道が読み取れて、安全審査を含めた問題点をあからさまにする展開につながります。第381回「福島原発事故、国家として原因不詳でよいのか」で問題提起したように、この曖昧化は「原子力ムラ政府官僚」がほくそ笑む展開です。今回の軽減枠組みで、細部どころか、大枠としても政府の責任はもう問われません。

 2004年の国立大学法人化以降で疲弊を重ねさせた末に、かつて無い大学破壊に導く国立大学改革プランが公表されました。朝日新聞WEBRONZAに寄稿した《マスメディアも文科官僚も発想貧しい国立大学改革案》で「メディア報道の一知半解ぶりに唖然とさせられた。年俸制導入という小手先の施策を大手メディア横並びで伝えるだけであり、歓迎しているかのようだ。無理矢理の人件費削減を目指す文科官僚の意図を見抜く能力も無ければ、これから国立大学で起きる改革と称した惨事を予測する分析力も無い」と批判させてもらいました。

 上記の寄稿は読める部分だけ読まれて、視点を変えて対になっている、第397回「国立大学改革プラン、文科省の絶望的見当違い」に移っていただけば大意は通じるはずです。国立大の現場は昔と違い「教員にお金も時間も無い」悲惨な日常と化しています。しかし、官僚の短期成果主義は大学での教育研究をひたすら安上がりに、かつ効率化しようとしています。「世界トップ100に10大学」という皮相な数値目標を掲げ、人件費維持かつかつの底辺大学の予算から削り取って学閥大学に注ぎ込もうとしています。実現したら、全体を支えるピラミッドが崩壊、高いペンシルビルがそびえ立つだけで、それも長くは維持できなくなると予見します。既に歪は先進国中で日本だけ研究論文件数が減る現象として現れています。本当になすべき大学改革の道筋は学閥からの脱却であり、大学と人の評価を全面刷新する世界水準のシステムです。

 「土俵」設定の意味を理解できる専門記者が主要マスメディアにいなくなったのでしょうか。玄関ダネを追っている駆け出し記者、横書きのプレスリリースを縦書きに直す記者しかいなくなったかのようです。お手軽に情報が手に入る記者クラブ担当を2、3年のサイクルで回し続けた結果、似非「ジェネラリスト記者」ばかりになった恐れもあります。特定秘密保護法のように社論として反対でないと安心して論陣を張れなくなった、デスクレベルの見識欠如はわたしの現役時代から見えていました。

 福島原発事故以降の既存の権威が疑われる時代だからこそ、権力側がお膳立てした「土俵」の吟味が欠かせません。問題のたて方根本を疑う力が無ければ、メディアが市民社会から期待されている役割は果たせないでしょう。官製「土俵」の垂れ流しは権力への加担、報道の公害と指弾せざるを得ません。

 【参照】インターネットで読み解く!
     「福島原発事故」関連エントリー
     「大学」関連エントリー


中国政府も深刻大気汚染の底知れ無さに目覚める

 1月に始まった重篤スモッグ騒ぎ、師走になって中国政府もやっと大気汚染の底知れ無さを自覚したよう。国営新華社が異例の深刻ぶりを配信しました。小手先対応が無力なほど汚染源は経済発展に組み込まれています。同時に中国の新車販売が好調で今年2千万台を超えるニュースが駆け巡りました。クルマが主要汚染源であることは明らかなのに「3500万台も視野に入れる」と業界関係者がコメントする能天気に呆れます。グラフをお見せしましょう。中国で前年末まで過去10年間の新車販売累計がどう推移したか集計しました。北京市は北京五輪での青空回復を引き合いに出して「今回も乗りきれる」と主張しますが、2008年当時と比較にならない数のクルマが国内にひしめいているのです。


 2007年末まで10年間累計は4316万台でした。ところが、2012年末までの10年では1億1099万台にも上ります。2008年と2013年を比べたら2倍半以上の膨張です。クルマだけではありません。石炭消費もセメント生産も2012年に至って中国は世界の半分以上を占める規模になりました。どちらも10年で3倍になっているので5年前との比較なら2013年は2倍になっていると考えられます。北京五輪当時は市内工場の一時停止やクルマの半数を日替わりで使用禁止にして五輪本番での青空を得たのですが、現在は2倍を超える汚染源集積ですから半分を止められたとしても北京五輪当時のスッピンに戻せるだけです。その普段の北京を見て選手生命の危機を感じた有力アスリートが出場を取りやめました。

 新華社発を受けた共同通信《8億人が「呼吸困難に」 中国で大気汚染拡大 新華社が異例の論評》はこう始まります。《中国国営通信新華社は11日、今年深刻さが際立つ大気汚染を総括する異例の論評を配信、有害物質を含んだ濃霧は全国104都市に拡大し「8億人余りが呼吸すら困難となった」と振り返った。論評は「応急措置は役に立たず、濃霧発生は常態化した」とし、政府がここ1年、有効な解決策を打ち出せなかったことを示唆している》

 重篤スモッグで国際的に有名になった北京など北部に比べ、ビジネスが盛んな上海など東部地区は比較的大気汚染が少ないとされてきたのに先週は強烈なスモッグが覆いました。週明けには南部の香港までも濃いスモッグになり、もともとスモッグで知られる重慶など内陸部と合わせて全滅の様相です。ロイターは人が住む環境でなくなった点をとらえ「上海を2020年にロンドンやニューヨークと並ぶ世界経済の中心にする中国政府の野望の足かせになっている」と論評しています。

 《新華社の論評は、汚染により多くの国民が健康被害を受けたほか、小中学校の閉鎖や汚染物質の排出企業の生産停止が常態化したと指摘。12月に入り東部で深刻な有害濃霧が発生した際、多くの環境担当部門が緊急対応を試みたが「上海、南京、杭州などの地域が重度の汚染に見舞われるのを阻止できなかった」と強調した。さらに周生賢環境保護相の「発展の結果が健康な人を不健康にしてしまったのなら、皮肉なことだ」とする言葉を引用し、経済成長を最優先させてきた発展の在り方を問い直している》

 中国の経済成長率を今のまま延長して経済規模世界一が間近と見る愚かさにようやく気付いてもらえたようです。《『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない》で「起きている事象を冷静に観察すれば、根本的には打つ手がないほど環境対策を長期放置した超重度汚染であり、かつて日本が大気汚染を逆バネにして成長したほどの技術的蓄積が中国に無いのは明らかです」と早くから指摘してきました。大気汚染ばかりでなく水資源の汚染や土壌汚染も救い難いレベルに進んでいます。詳しくは「インターネットで読み解く! 環境・資源」の今年の項を参照いただきたいと思います。


PM2.5重篤スモッグが9日夜から10日、西日本へ

 先週、上海や南京で深刻な大気汚染になっていたPM2.5重篤スモッグが北西の風に押し流され、今夜から明日、西日本へ到達しそうです。正午に釜山付近でPM10値334マイクログラム/立方メートルを記録しています。SPRINTARSの10日午前零時予測図を以下に引用します。これを見ると、通常の中国からの越境汚染よりも非常に濃厚なスモッグが届きそうで不気味です。


 北京のスモッグは国際的に有名ですが、上海などビジネスが盛んな東部地区は比較的大気汚染が少ないとされてきました。しかし、この冬は大気がほとんど動かない悪条件に加え、北京など北部の石炭暖房の燃えかすが増えて広範囲でスモッグになりました。地方政府が工場へ停止や減産を命じ、学校は休校や屋外活動をやめさせる事態になっていました。昨日から強い寒気団が南下するので中国大陸はきれいになるのですが、とばっちりが韓国や日本に及びます。

 11月にも越境PM2.5が大気1立方メートル当たり200マイクログラム前後の重汚染を西日本各地で起こしており、これは『西日本各地でPM2.5による重汚染の異常事態』で伝えました。


国際成人力調査で優秀だった日本の欠陥がまた判明

 読解力と数的思考力でトップを得た国際成人力調査は手放しで喜べず――裏側に大きなデジタルデバイド問題を内包していたと指摘しましたが、さらに知的好奇心の面でも日本は欧米に比べ特異に低いと判明しました。OECD国際成人力調査の生データを独自分析したのが《成人の知的好奇心の国際比較》(データえっせい)です。以下に引用するグラフが示すように設問「私は新しいことを学ぶのが好きだ」に「とてもよく当てはまる」か「よく当てはまる」と回答した日本人は43%しかなく、米国人の81%とは大きな開きがあります。パソコンの苦手ぶりはわたしの『デジタルデバイド問題が表面化した国際成人力調査』で扱っています。


 好奇心についての設問は最初の背景調査の項目です。背景調査の後、パソコンで回答できるグループは「読解力」と「数的思考力」に「ITを活用した問題解決能力」を答え、パソコンが出来ないグループは紙で読解力と数的思考力だけに答えています。グラフにある数的思考力の点数は両グループを合算した結果です。北欧三国にフィンランドは成績が良い上に知的好奇心も高い特徴があります。日本は成績は平均288点とトップですが、知的好奇心では下から2番目なので先進国全体から大きく外れた場所にいます。米国やフランスなどは好奇心旺盛なのに成績は下位、英独はどちらも平均的な位置につけています。

 分析した舞田敏彦さんは《今から10年,20年先のことなんて分からない。インターネットをも超えるテクノロジーが出現するかもしれない。こういう変動社会において,躍進する可能性を秘めているのはどちらか。現在のみならず「未来」の視点も据えるなら,日本の位置に対する評価も変わってくるでしょう》と警鐘を鳴らしています。

 デジタルデバイド問題との絡みでは、イタリア人は日本以上にパソコンが苦手ですが、知的好奇心の点では8割と米国並みです。知的好奇心の最下位は韓国の36.5%で、パソコンが出来ない割合が30%と日本の36.8%に迫っています。日本と似ているとも言えます。上述『デジタルデバイド問題が表面化した国際成人力調査』で取り上げた、10代におけるPCリテラシーやネットワークリテラシーの日米格差にも視野を拡大して考えるべきでしょう。成績を見る限り若い頃の勉強は身に付いているのだが、新しいものに好奇心を持って挑む意欲が若い頃から乏しいのでは困ります。


無形文化遺産「和食」の核心は「だし」パワー

 ユネスコ無形文化遺産に「和食」が登録されました。提案書で日本の四季や多様な食材を活かした社会的慣習と説明されたものの、料理としての核心は「だし」であり、油脂の魅力に対抗できる稀なパワーを秘めています。これは京都大での動物実験で証明されています。欧米などの料理と違って油脂が少なくて済むヘルシーさを、和食が誇れる秘密こそ「だし(出汁)」にあるのです。日本人が発見した、甘味、酸味、塩味、苦味に次ぐ5番目の味覚「うま味」がそれに欠かせない存在になっているのも偶然ではありません。

 農水省が準備した「和食ガイドブック」は料理の項でこう説きます。《水を豊富に使えることで発達した蒸す、茹でる、煮るなどの調理法や、種類豊富な魚を処理するのに適した包丁などの調理器具、そして野菜と魚介中心の食事をおいしく食べるために工夫されただし(出汁)などが、「和食」の料理を支えている》

 出汁について動物実験しているのは京大の伏木亨教授です。「おいしさの科学と健康」で紹介されている実験があります。ネズミにとって油脂と砂糖水と出汁がどのくらい渇望の対象になるか比較するために、それぞれの一滴をもらうためにタッチパネルを何回まで触るかを測りました。《コーン油 150回:砂糖水 50〜60回:出汁・醤油溶液 50〜60回》がその結果です。油と糖分が動物に好まれるのは自明ですが、出汁が砂糖水と拮抗し、油の3分の1までもあったのでした。別の実験で油脂と出汁を両方とも得られるように設定すると、油脂の摂取量が減ることが分かっています。

 油と糖と出汁の美味しさは、脳内でβエンドルフィンといったモルヒネ様物質を生じて快感を与えるメカニズムである点も解明されています。

 「出汁を最も巧みに修飾してくれるものこそ塩分である」と第112回「食塩摂取と高血圧の常識を疑う」(インターネットで読み解く!)で指摘しています。欧米のように油脂を大量摂取しなくて済む食事が和食なのに、欧米基準で減塩食を勧めるのは大きな間違いです。「『健康日本21』のスローガンは洋風の高動物性脂肪食も、塩分が多い日本食もどちらも退けるものである。いいとこ取りしているようでいて、現実の人間のことを考えていない」と思いますから、詳しくは参照して下さい。

 肥満に悩む欧米では、植物性蛋白や線維質に富む食品、魚の良質油脂が豊かな和食に羨望の目が集まっています。現実の日本は若者を中心に欧米風ファストフード店が繁盛し、家族の外食でも油脂リッチなメニューがもてはやされています。伏木教授は出汁の美味しさを幼児期に刷り込む重要さも研究し、指摘しています。若い頃は脂ぎった食事でも病気が心配な中高年になったら和食に回帰してもらうには、良い出汁の魅力を体験しておくことが大事なのです。

 【参照】インターネットで読み解く!「食・健康」分野


国立大学改革プラン、文科省の絶望的見当違い

 文科省が公表した国立大学改革プランには絶望的な見当違いがあります。巨額ながら生命線資金でしかない運営費交付金に手を付けて競争的資金にする愚と、大学を評価する能力を持たないのに持っているとの錯覚です。本当に発動されたら国立大学法人化後、運営費交付金を年々絞られながらも辛うじて保たれてきた従来型バランスが一挙に崩壊するでしょう。第363回「大学に止めを刺す恐れ大、教育再生会議提言」で《「世界トップ100に10大学」という皮相な数値目標が達成された時、全体を支えるピラミッドが崩壊、高いペンシルビルがそびえて、それも長くは維持できなくなるでしょう》と指摘した「悪夢」に向かって確実に動き出したと見えます。

 国立大学法人運営費交付金は2013年で1兆792億円と額は大きく見えますが、授業料収入と合わせて教職員人件費や諸経費といった大学の基礎的な運営に充当されています。法人化初年の2004年には1兆2415億円あったのですから、10年間で13%も減額されました。以前なら少額ながら研究資金として配る余裕があったのに、今やかつかつの運営をするだけの生命線と化しています。研究費は外部から競争して獲得して来るようになりました。

 今回の国立大学改革プランの大きな柱は、その運営費交付金のうち4000億円を改革に積極的な大学に重点的に配分する点にあります。文科省が考える改革に沿わなければ、生命線以下の資金にして切り捨てもやむ無しと露骨に表明していると言えます。

 「今後10年で世界トップ100に10大学」と並んで当面の目標で掲げられた「教育研究の活性化につながる人事・給与システムに」と大幅な年俸制導入が何がしたいのか示しています。大学の教員は多すぎるから間引いて、もっと効率的に人件費を使えと言いたいのを、オブラートに包んでいます。財務省の文書「総括調査票」に「設置基準上の必要教員数と教員数の対比では、いずれの分野においても設置基準以上であり、最大で約4.7倍(常勤・非常勤教員数では約3.7倍)となる分野がみられる。特に、個々の分野の特性を勘案しても、教員数が過大となっている分野では教員数の抑制を図る」とあります。

 教員のクビを切る「間引き」が思うままに可能なはずはありません。内閣府の「2.2.4人件費削減の影響−常勤教員に関して」が「人件費削減の影響は特に35歳以下の若手教員層に強く反映される傾向があること。常勤教員給与総額の削減幅が大きい法人では当然若手教員数の減少も大きなものとなるが、総額を維持している大学でも一定程度の若手教員の減少を余儀なくされている場合がある」と報告しているように、人件費削減にさらに踏み込めば減っていくのは戦力になる若手研究者です。

 大学への評価体制を強化して行くとの方向にも、始めの一歩から間違っているのだから話にならない面があります。2004年に書いた第145回「大学改革は最悪のスタートに」で日本で評価が機能しない根本には研究者同士のピアレビューが出来ていない、たこつぼ型研究の実態があり、学閥のネームバリューに頼って恥じない研究費配分がまかり通る現状を変える必要を訴えました。文科省は評価が出来ない大学人に加え、外部からの声を入れれば機能すると考えているのだから何も見えていないと断じるしかありません。

 第363回「大学に止めを刺す恐れ大、教育再生会議提言」で取り上げている、先進国中で日本の論文数だけが特異に減少しているグラフを掲げます。


 国立大学改革プランには産業界からの共同研究受入額や特許収入が法人化後に増えたとする皮相なグラフはあるのですが、内閣府総合科学技術会議に出されたこのグラフは大学内部で何が起きているのか伺わせるのに、文科省は興味が無いようです。

 【参照】インターネットで読み解く!「大学」関連エントリー
     『安倍政権は技術立国の底辺にも目利きにも無知』