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中国の環境NGOが大気汚染改善に挑む最初の一歩

 悪化の報道こそあれ改善の兆しがない中国大気汚染。鈍な政府と違う立場で企業を動かそうと中国の環境NGOが取り組みを始めた報告を、当のNGOリーダーが来日したシンポで聞いたデータを加えてリポートします。10月下旬、都市集中暖房を始めた中国東北部ハルビンで微小粒子状物質PM2.5の濃度が大気1立方メートル当たり1000マイクログラムの観測上限を超えたニュースは衝撃的でした。30日、大阪でのシンポでも風がなく空気が滞留してしまう気象条件が第一にあげられましたが、根本的には自動車や工場・建設現場からの排出が経済発展とともに膨大になった点が問題です。NGO報告はセメント産業の排出量の大きさに着目しています。

 北京にある「公衆環境研究中心」がそのNGOです。2006年発足で中国内46の環境NGOと連携、先輩格として相談相手にもなっていると言います。ウェブサイトで目立つのが汚染排出源企業のデータベース化です。例えば下のマップは汚染水、排気、重金属、畜産養殖等の排出源です。各地の市民が拡大して見れば身近な汚染源を見つけられます。


 政府が色々な場所で公表している環境汚染情報をかき集めてひとつのデータベースにして見せています。発足当初は2500件に過ぎなかった情報が13万件にも膨れ上がりました。そこから下の図のようなマップが出来ます。北京市内だけ抜き出して環境汚染違反で監督を受けた企業を見つけ、それがどのような中身だったか、元の政府文書が読めます。


 データを活かす例として「公衆環境研究中心」報告のひとつ、セメント産業を取り上げた「RESPONSIBLE INVESTMENT IN THE CEMENT INDUSTRY: STILL A LONG WAY TO GO」を読んでみました。下のグラフのように世界のセメント生産の58%を中国が占めていて、セメント製造工程での砕石や加熱に使う石炭など、重篤スモッグを起こす環境汚染排出源として膨大です。セメント生産量は過去10年で3倍にもなっています。


 重篤スモッグの素になる微粒子や窒素酸化物などが製造工程のどこで出るのか、調べあげています。中国全体で見ても石炭消費量が過去10年で3倍になり、昨年は世界の半分に達しました。「公衆環境研究中心」は環境基準を守らない企業からの素材・製品を買わないよう大手企業に圧力を掛け、「グリーン度」のランキングを作って企業を環境保全に誘導しようとします。例えば米アップル社は最初は応じなかったのですが、今はランキングに好意的に変わったと言います。メディアや市民・消費者も加わって圧力をかける戦略です。

 セメント業界では大手17社を選定、過去の環境汚染例をリストアップして調べています。5月には環境NGOの連名で各社に要請を送りつけました。好意的な反応を見せたのは多国籍企業の1社だけで、他社は再度の申し入れにも逃げる姿勢です。まだまだ先は長いぞ――が現在の到達点です。東京では11月1日にもヒューマンライツ・ナウ主催シンポがありこちらが案内です。

 【参照】「インターネットで読み解く!」
     第388回「PM2.5発がん性認定、お座なりの日中政府に痛撃」
     「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」
     第346回「『がん村』放置は必然、圧殺する中国の環境司法」


減反廃止に躊躇不要、選挙が心配無い安倍政権

 減反廃止をめぐり数日来、踏み込んだり揺れ戻したりの報道が続いています。衆参両院で圧倒的な多数を持ち、久しぶりに選挙の心配が無い安倍政権が出来たのに積年の農業政策課題に踏み込めなくては価値がありません。相変わらずマスメディアからは数が多い中小農家の不満の声が表面に出ていますが、本筋は日本の稲作を本当に支えているコメ専業農家をどうして維持・持続させるかにあります。その意味で減反廃止だけでなく農地の集約と大規模化、農家補助の手法を含めたパッケージを早く示さねばなりません。農業を諦めてもらう可能性が高い兼業農家へのケアも含めて、決着を長引かせる方が罪が重いはずです。

 25日の林農相「減反見直し、補助金は大規模農家重点」表明から、26日の「減反、5年後廃止案 政府・与党で浮上 慎重論も」と積極的ながらぶれている日経新聞に対して、読売新聞は「減反、10年内の廃止検討…支援は大農家中心に」と深刻な調整難航を予測します。


 NHK世論調査による政党支持率の推移を掲げました。10月段階では自公政権党の40%に対して5%の民主党、4%の共産党がある程度です。これは3年後、2016年の参院選すら心配する必要が薄い状況を示しています。自民の伝統的基盤だった農協系の得票を心配する必要が無くなったのです。TPPでの選挙公約無視といい、この政治状況無しには無理でした。

 2007年の『専業農家の救出を急がねば稲作は崩壊』で、かつての豊作貧乏から進んで、経営持続困難が迫る専業農家問題を指摘しました。この時点で抜本的な対策が取られるべきだったのですが、政権交代した民主党は農家の票を目当てに小規模零細農家まで救う戸別所得補償制度を導入しました。結果的には第219回「戸別所得補償が米専業農家救出に効き始めた」で紹介したように、コメ価格が下がっていく中で専業農家の切迫感に一息つかせつつ、小規模零細農家には超緩慢な「死」をもたらしました。

 野党として民主党政策を厳しく批判した自民が政権を取った以上、かつて出来なかった政策転換をするのが当然です。TPPでコメの関税が維持できるかもしれないとか躊躇している場合ではありません。今、果断にやらなければもう機会は来ません。


再び中国に鳥インフルエンザ禍、秋2人目ともに重症

 鳥インフルエンザの患者が中国浙江省で10月になり相次ぎました。死者45人を出した春の大流行が、寒冷な季節になって再燃する恐れ大です。2人の容態はともに重く医療体制の改善が十分でない可能性もあります。H7N9型鳥インフルエンザの発生は3、4月の集団発生の後、WHOへは7月27日の報告を最後に途絶えていました。春の流行で伝えられた患者数は137人以上で、報告があった2市10省の中で浙江省が最も多くの患者を出していました。

 10月15日に浙江省衛生庁から報告された最初の患者は紹興県在住、35歳男性の会社従業員で、8日に病院にかかっています。国慶節の大連休中に出歩いて感染した可能性もありそうです。ついで23日の発表は嘉興市に住む67歳の農家の男性で、16日に病院にかかりました。いずれも重症で病院側が積極的に救命治療にあたっているとされます。

 春の流行で重症患者が多く出ました。感染初期に抗ウイルス剤で徹底的に叩いてしまえば重症化は防げることが多いのです。第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で紹介しているように、高額の医療費を恐れて受診が遅れるケースがあったと確認されています。春の流行では公的な医療費支援を当局が掲げてから収束に向かった面もあったようです。もともと地方の農業籍住民には健康保険制度は極めて貧弱ですから、ちょっと具合が悪い程度では病院にかからないのです。

 【参照】インターネットで読み解く!第359回「鳥インフルエンザ、死者減れど重症化が深刻」


汚染水流出で明らかになった東電1カ月放置の怠慢

 大雨で高レベルの汚染水まで溢れ出す事態になりました。発表の放射能測定レベルから騒ぎが大きくなった1カ月間、東電がタンクからの漏出対策に何ら有効な手を打っていない、放置していた怠慢が浮かび上がりました。想定外の大雨との弁解はあり得るとしても、最初に問題になったH4エリアのタンク以外にも大小の漏れがあると分かりながら漫然と時を過ごし、大雨になったらギブアップでは話になりません。9月16日付「福島第一原子力発電所各タンクエリア堰内溜まり水の全ベータ放射能分析結果(簡易測定)について」にある主なタンクエリア測定マップに、10月20日に測定されたストロンチウム90のデータを書き込んだので御覧ください。


 大雨の中で測定されたので薄まっていますが、1カ月前と各エリアの濃度対比は同じ傾向です。この間には台風26号による大雨を経ており、そこでかなり洗い流されているはずです。各エリアのタンクで漏出元の検査をして対策が取られていれば、もっとクリーンになっているべきです。漏出タンクの分解検査をしたH4エリアでも1リットル当たり12000ベクレルの高汚染ですから、いったい1カ月、何をしていたのか、外部から見て不可解としか言いようがありません。タンクエリアの地盤は透水性のコンクリートですから放射性物質はいくらでも地下にしみ込みます。

 東電には事態をドライブしていく気力すら無いように見受けられます。第379回「原発後背地のタンク漏洩続出で収拾計画に困難」で指摘しているように、タンク群がある場所は炉心溶融した原子炉の後背地で、ここまで放射能汚染を拡大させると福島原発事故の収拾計画全体が崩壊してしまいます。原子炉4基周辺だけに汚染を限定し、最終的に地下遮水壁で囲んで周囲と完全に分離してしまう必要があるのです。後背地まで放射能汚染拡大では環境への放射能流出が断ち切れません。

 第380回「五輪国際公約した以上、汚染水の安全な移転を」での提言を繰り返すしか無いようです。杜撰で今後も欠陥露見が予想されるにわか作りの現在のタンクは放棄して、正規の新設タンクに全ての汚染水を移転すべきです。途轍もない困難が予想される廃炉に向けてエネルギーを注ぐべき時に、余分なエピソードに過ぎない汚染水問題を危機にしてはいけません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


汚染水めぐり中国中央テレビが韓国番組利用し捏造報道か

 中国中央テレビが韓国公共放送の番組をつまみ食いして福島原発事故の汚染水で捏造報道した可能性が高いケース発生。韓国側は日本で食品の安全性取材をしましたが、中国側が強引に汚染水問題にすり替えたようです。問題の記事はXINHUA.JPの18日付《韓国記者が「東京五輪」開催に疑問、東京近海の汚染水調査を実施 「安倍首相の発言通りではなかった」―中国メディア》です。下に引用するテレビ画面が示すように、韓国KBSの画面を使って中国CCTVが報じた内容がソースになっています。


 最も粗雑なのは次の点です。《安倍晋三首相は五輪開催地を決定する最後のプレゼンテーションで「汚染水の影響は0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」と説明した。だが、KBS記者が日本の大学と共同で東京近海の7カ所で海底の泥を採取して検査した結果、いずれのサンプルからも基準値を超えるセシウムが検出された》

 東京湾・荒川河口の泥で1キロ当たり625ベクレルのセシウムを検出したと聞いても日本国内では驚きはありません。関東の河川中流域では1000ベクレルを超える場所はいくらでもあります。2011年3月の事故当初に放射能の雲が何度も関東を襲い、雨が降った場所に蓄積して今も下流に流れ出しています。しかし、現在進行している汚染水漏出問題とは何の関係もありません。

 韓国KBSが日本向けに提供している「KBS WORLD」には関連記事はありません。ネット上で検索すると《福島原発事故で明らかになった日本の二つの顔 KBS時事企画の窓15日午後10時放送》(原文:韓国語)という番組お知らせページに行き着きました。

 「現場ルポ、福島の真実」として《福島原発事故が起きてから30カ月。"時事企画の窓"の取材陣は、福島原発の8キロ点まで接近した》と始まり、東京湾7カ所での海底土調査へと続きますが、放射能の由来については正しく認識しています。取材の意図は韓国の水産物輸入禁止に関連した食品の安全性にあり、日本政府の発表を信じられないとする仮設住宅避難民の声を紹介。1067件の食品放射能測定データを独自に入手、95件で基準値を超えていて韓国政府の放射能検査網をすり抜けている場合があると指摘します。

 実際の番組で何か語られたか確認しようがありませんが、番組お知らせページには汚染水問題は全く出ていません。現地を知らない中国中央テレビの記者が東京湾の汚染は格好のネタと飛びついた可能性が高いと判断します。ネットで検索すれば汚染水漏出と関係が無いと知るのは容易だったはずです。取材の基本能力を欠いています。

 【参照】インターネットで読み解く!
     第382回「無管理同然、汚染水漏れ疑惑タンクが一気に拡大」
     第364回「『江戸前』に赤信号、ウナギ汚染をなぜ騒がぬ」



PM2.5発がん性認定、お座なりの日中政府に痛撃

 PM2.5など微粒子大気汚染に発がん性を認めたWHOの認定は、汚染源退治に成果がない中国政府のみならず、中国から越境汚染が深刻になっているのに対処しようとしない日本政府にも痛烈な警告になりました。冬場の石炭暖房が有力汚染源とされていたのに、この夏も重篤スモッグが頻発、国慶節の大連休で工場が休んでいた今月初旬にもスモッグ続きと発生源の常識が覆っています。冬に向かって心配が増すばかりです。こうした中、17日に大気汚染赤色警報発令の場合、自動車のナンバープレート末尾の偶数・奇数によって運行停止、つまりクルマの半分を動かさない強制措置が発表されました。2008年の北京五輪を乗り切った奥の手ですが、5年間の経済発展・人口集積の大きさは膨大で運行停止の有効度は下がっているでしょう。


 中国全土をカバーしている「全国都市大気実況」で今日18日午後3時の北京付近を拡大しました。北京の重度汚染マークは内陸の河北省、沿岸部の山東省にも広がっています。これより南部は比較的汚染は軽く、上海近くになると良好な空気でした。こうした南北の汚染落差はウオッチを続けていると頻繁に見られます。7月初めに米ニューヨーク・タイムズなどが伝えた「中国北部の汚染は南部に比べて深刻で、住民の平均寿命が5年半短縮する恐れがある」とした調査結果について、中国当局は「根拠に乏しい」と否定しました。もし認めたら国民への影響が計り知れないと考えたのでしょうが、発がん性を考えても疑わしさは拭えなくなりました。


 7月の第373回「中国大気汚染が高濃度で関東から西日本を覆う」で紹介した「PM2.5まとめ」による越境汚染の広がりを示すマップです。赤い点では国内の環境基準大気1立方メートル当たり35マイクログラムを超えています。この7月25日は185地点でしたが、400地点に迫る日がありました。環境省は2月に、早朝に85マイクログラムを超える日は健康に影響する1日平均で70マイクログラムを超える恐れとの暫定指針をまとめました。ところが、このシナリオ通りにならず、住民に警告を出せずに70マイクログラムを超えた日が発生しています。また、2倍を基準に取るのがおかしく、呼吸器が弱い人には環境基準レベルで注意を喚起するべきだと考えます。

 梅雨から夏の時期に中国で重篤大気汚染が続発し、その汚染大気が日本海で滞留してしまう予想外の事態が続きました。第374回「対岸の火事でないPM2.5、抜本的な浄化支援が必要」で伝えた通りで、中国の主要汚染源が世界に例を見ない膨大な石炭使用にある点は間違いありません。石炭からの汚染物質除去では並外れた環境技術を持つ日本に、最近の歪んだ日中関係から頼れなくなっている中国は哀れです。まさに「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」です。


最大電力供給で無視できなくなった太陽光・風力

 この夏の最大電力供給で太陽光・風力発電が果たした役割は2%、320万kwと大型原発3基分に相当しました。昨年より倍増して無視できない規模になり、大増設でピーク電力カットの主役にする計算もあり得ます。原発全廃で先を走るドイツに比べると大幅に物足りませんが、発電設備は太陽光が876万kw、風力が260万kwと合わせて1千万kwを超える規模まで伸びました。電力供給の一番の修羅場で太陽光発電の設備効率4割を見通せる状況です。総合資源エネルギー調査会・電力需給検証小委の「2013年度夏季需給検証のまとめについて」をもとに計算した太陽光・風力、それに原子力のグラフを掲げます。


 電力需給検証小委は最大電力の日に供給されたのは、太陽光が220万kw、風力は24万kwとしています。しかし、小口の家庭用太陽光発電ではエアコンなど自家消費で余った分を電力会社に売電する仕組みになっています。この資料から計算すると自家消費は76万kwあり、その分だけ最大電力需要が抑えられたのですからこれを除外するのは不公平です。合わせて320万kwあった太陽光・風力発電が、唯一動いていた原発、大飯3・4号の236万kwを圧倒しています。なお、他の再生可能エネルギーとして水力が1287万kw、地熱が27万kwありました。最大電力は16125万kwと膨大です。

 最大電力の計算は電力9社それぞれの最大日分を合計しています。太陽光発電は夜は動きませんから、設備効率は年間を通じては13%程度と言われます。それにしても晴れて暑い最大電力の日に全国平均34%の設備効率は低く感じます。ひとつには電力消費のピークが、太陽が南中している正午ごろではなく西に陰り始めた午後3時くらいに来るためでしょう。計画調整で午後5時にピークが来た九州電力で効率21%まで落ちたのもかなり響いています。中部・関西は4割台で、九州も関西なみだったなら平均は4割に迫ります。

 電力供給力を電力需給検証小委が事前に想定していますが、太陽光・風力ともとても低く見積もられていました。実際には太陽光が2倍、風力にいたっては10倍の電力を供給しました。

 ドイツでは再生可能エネルギーが発電量に占める割合は2012年で22%にもなっており、太陽光だけみても2010年から年間700万kwを超える増設を続けています。それも家庭用よりも大型な設備に比重が移っています。2012年初に書いた『原発無しの夏確実、太陽光発電でピークカットを』では5割のピークカットを見込みましたが、今回実績で九州電力のような特殊ケースが無ければ設備量の4割程度は最大電力供給の力になれると判明しました。250万kw分を増やせばピーク時で100万kw原発1基と同じ力なのです。原発再稼働が不透明なのですから政策的に設備増設を進めるべきです。


デジタルデバイド問題が表面化した国際成人力調査

 経済協力開発機構が初めて実施した国際成人力調査で日本は「読解力」と「数的思考力」でトップなど優秀でした。その半面でデジタルデバイド問題が一気に表面化、パソコンでなく紙での回答が36.8%と異例の高さになってしまいました。キーボードへの慣れが昔から欧米とは違うと言われますが、20年前から中学校で始まった技術家庭科「情報基礎」など、多くの人には不要のプログラミングにこだわる堅苦しい内容の情報教育が必ずしも成功していません。そうしたツケが、国際比較の場で数字になって現れたと見ます。

 時事通信の《日本、読解と数的思考1位=IT活用、PC利用者トップ−初の成人力調査・OECD》はこう伝えました。《日常生活や職場で必要とされる技能(成人力)を測るため、経済協力開発機構(OECD)が24カ国・地域の16〜65歳を対象に初めて実施した国際成人力調査(PIAAC)の結果が8日公表され、日本は3分野のうち「読解力」と「数的思考力」で1位だった。「ITを活用した問題解決力」でも、パソコン(PC)で調査を受けた回答者の平均点ではトップだった》

 国立教育政策研究所がまとめた「OECD国際成人力調査(PIAAC)調査結果の要約」によると、日本からは住民基本台帳から無作為抽出した5200人が参加している大規模な調査です。調査の入り口でコンピュータを使った経験を聞かれ、(1)「使った経験がない」(2)コンピュータによる調査を拒否(3)経験があっても導入試験で不合格――の3つの場合は紙による回答に回り、「ITを活用した問題解決力」の設問は受けません。日本の場合は(1)10.2%(2)15.9%(3)10.7%にものぼりました。この合計36.8%はOECD平均値24.4%を大きく上回りました。IT活用設問に答えた日本人は優秀だったのですが、そもそも答える対象外に3分の1以上の人が入っていたわけです。

 IT活用設問に答える対象外にこんなに多くの人が入るのは、日本以外ではポーランドの49.8%、イタリアの41.5%があるくらいです。米国15.6%、ドイツ17.7%などIT先進国には例がありません。

 2000年に書いた第85回「iモード狂騒に見る情報リテラシー」で「お手軽iモード」で情報リテラシー教育もなく情報の海に投げ出された若い世代の狂騒ぶりを描きました。その当時の通信白書が「特に目立つ傾向としては、10代における日米の格差であり、PCリテラシーで20.3ポイント、ネットワークリテラシーで30.7ポイント、日本の方が劣っている」としているのですから、今回の調査結果はその延長にあると見るべきでしょう。2011年には『日本人の4割はパソコン無縁:欧米と大きく乖離』とも報じています。


前のめる原発再稼働:新規制基準なら万全と錯覚

 原子力規制委が実施している新しい「原発安全審査」規制基準へ適合すれば万全との錯覚が広まっているように見えます。政府から年明け再稼働の希望が出るほどですが、有事避難の防災計画完備のサイトはまだ無いはず。甚だしいのは内閣府経済再生・防災担当の西村康稔副大臣で、3日にTBSの番組録画で安全審査と地元の理解を前提にしながらも「早ければ年明けに何基か動きだすことを期待したい」と述べています。そんな楽観が出来るほど防災計画を仕上げたとは聞きません。30キロ圏から外への避難が計画されているので、県外避難があちこちで必至です。各県の間を調整するのはもちろん政府です。福島原発事故の避難で起きた悲劇を忘れて、新規制基準を通れば過酷事故は起きないと誤解されては規制委も心外でしょう。

 1年前に日経新聞《防災計画なければ「原発再稼働は困難」 規制委員長》で《田中俊一委員長は24日の記者会見で、原子力発電所の周辺自治体がつくる地域防災計画について「再稼働の条件ではないが、(つくってもらわないと)再稼働はなかなか困難になる」との見解を明らかにした》はずでした。しかし、実際には安全審査は原子炉等規制法に基づくもの。地域防災計画は原子力災害対策法が仕切っており内閣府が所管ですから、この1年間で規制委の防災計画への言及トーンが下がってきていました。

 福島原発事故の避難で重病の患者まで十分なケアシステム無しに遠くに運ばれて病状が悪化、多くの死者を出しました。この失敗から避難区内であっても病院に放射線防護を備えたシェルターが造られるといいますが、看護スタッフの保護・物資補給を含めて本当に機能するのか疑問です。取り残された南相馬市役所の例が示すように、必要な医療・生活物資が運ばれてこなければシェルターに閉じこもっても難渋することになります。

 柏崎刈羽原発の30キロ圏、長岡市は25万人を避難させなくてはなりません。同市内のバスでは5%しか運べません。もし新潟県内の他市町村からもバスが応援に向かうならば、地理不案内の運転手と膨大な避難住民をうまく結びつけるだけでも気が遠くなるほどの準備が要ります。これまでの形式だけだった避難訓練ではなく、緻密で大規模な訓練をしてみないと防災計画の実効性は検証出来ないでしょう。30キロ圏で全国135自治体480万人が対象の過去に例がない大規模体制づくりの要に居る防災担当副大臣が、脳天気に年初から再稼働を口にしているのでは話になりません。

 即時避難は5キロ圏だけで、30キロ圏は避難準備区域と振り分けられていますが、福島原発事故では新たな事実が判明し、大地震・津波の翌日に25キロの地点まで高いレベルの放射能の雲が流れ出ました。この問題を第319回「福島原発の放射能早期流出、防災計画に大影響」で取り上げています。もし過酷事故が起きた際には早期に避難するしか無い――防災計画の作成を真剣に考えるなら本来ここから出発すべきです。

 【参照】インターネットで読み解く!「規制基準」関連エントリー
     「福島原発事故」関連エントリー


自炊代行違法判決で非破壊スキャン機普及に拍車か

 電子端末で読書するための画像変換「自炊」を業者に代行させるのは違法と、9月末に東京地裁が判決を出しました。著作権法の判例から予測できた判決で、これで非破壊スキャン機の改良と普及に突き進む予感がします。代行サービスの場合は本の所有者が背の部分の裁断とページのスキャンを依頼します。スキャンした裁断原本を廃棄する原則を守れば「本」の数は増えません。今年夏、登場した非破壊スキャン機は図書館から借りた本からでもスキャンした「画像本」を作ってしまいます。代行業者の駆逐が、裁判に訴えた作家ら著作権者にとって本当に良い選択だったのか疑問です。何しろ日本のメーカーは狭い市場でもニーズがあると認識したら、安くて便利な機械に進化させるのが得意なのです。

 著作権法が許している私的複製に、著作物を所有している利用者の代行サービス依頼が当たるかが問題でした。公開された判決文は極めてオーソドックスで、身も蓋もありません。「複製の対象は利用者が保有する書籍であり,複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らが管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化するというものである。電子ファイル化により有形的再製が完成するまでの利用者と法人被告らの関与の内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付するのは利用者であるが,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら法人被告らであり,利用者は同作業には全く関与していない」

 裁判官は過去の判例の積み重ねから逸脱できません。当然ながら違法の判断になり、一部の業者は不服として控訴を表明していますが、ひっくり返す展開は非常に難しいでしょう。

 7月に発売された非破壊スキャン機について『書籍流通に大波乱か、非破壊スキャン機が登場』で、予約段階で定価59800円から5万4千円前後に下がったと伝えました。価格コムの「ScanSnap SV600」価格推移を見ると、現在は最安値が更に9千円も下がって、4万5千円を割っています。需要の旺盛さを表していますし、次の新製品が見え始めているのかもしれません。

 実際に使用した人の意見があちこちで読めて、やはり本のページをめくっていくのが煩わしいようです。それでも代行サービスに頼んで蔵書のかさを減らしたい人なら、自宅にアルバイトを頼んででも処理してもらう利便性はありそうです。もちろん、技術開発でページめくり装置ができれば申し分ありません。図書館の蔵書を高速高精度で画像化するシステムが動き出していますが、あちらは値段が千倍くらい違います。多少はスピードが遅くても何とか安価に考案してしまうのが日本なのですが……。

 非破壊スキャン機が家庭や職場などにかなり普及する事態になれば、単行本や漫画本などが大きな影響を受けざるを得ません。ちょうど、カラオケサークルの愛好家たちが歌手のCD新譜を買わずにコピーし合って居るような状態が起きてしまうでしょう。