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遅々として進まぬ中国の大気汚染への実効対策

 北京で6月28日、季節外れの重篤な大気汚染が発生しました。市当局が市民に外出しなように呼びかける惨状です。6月半ばに各種規制強化を盛った大気汚染対策10カ条が公表されましたが、実を上げていない証拠です。


 28日の汚染は北京市内各地で最悪である6級「厳重汚染」を観測。米国の北京大使館が公表しているリアルタイム大気質指標(28日18時現在)を見ても、微粒子「PM2.5」ばかりか「PM10」でも非常に高濃度な汚染があります。北京市環境保護監測センターが29日午前6時に出している観測値でも、市中心部で半数が6級を記録し、汚染は収まっていません。

 北京の重篤スモッグは市内を走る自動車の排気ガス、おとなりの河北省での石炭大量使用、天津市の石油化学工業などが汚染源として想定されています。大気汚染対策10カ条では地方政府が企業生産制限、車両使用制限などに乗り出すことも取り入れました。また、フィンランドと提携プロジェクト「美しい北京」を立ち上げて、大気汚染の主因を特定、効果的な改善策を探ることになっていますが、2014年末が報告書の目標と、気の長い計画です。

 第343回「中国大気汚染の絶望的な排出源構成と規制遅れ」で日本が考えている中国大気汚染メカニズムを紹介しました。研究者たちは実際に現地で汚染物質を採取、分析して発生源をきちんと突き止める必要があると考えています。フィンランドと組んで、地の利、環境汚染研究の質、量、経験で一番適切な提携相手である日本と組まないのは中国なりの意地でしょうが、実効対策を遅れさせる恐れがあります。


安倍政権は技術立国の底辺にも目利きにも無知

 《安倍政権が掲げる成長戦略の柱「科学技術創造立国の復活」で担当大臣が「革新するか死か」と叫んでいる。研究の現場を知らぬ見当違いに見えてならない。アベノミクスを応援する日経新聞が6月19日付社説《「技術立国」復活へ研究費配分を見直せ》を打ち出しているが、これまた上っ面の競争を煽る視点しか持たない。科学技術イノベーションを起こしたいのなら、広く底辺に水をまいてタネを育てるのが第一。その中から光る発想を目利きが拾い上げてプロジェクトにし、世界と本格的に戦わせる仕組みしかない。当たり前の「育成・選抜」が学閥体制ゆえに欧米よりも劣っていると『インターネットで読み解く!』第145回「大学改革は最悪のスタートに」(2004/05/13)で指摘した》

 26日にWEBRONZAで「安倍政権は技術立国の底辺にも目利きにも無知」をリリースしました。第363回「大学に止めを刺す恐れ大、教育再生会議提言」で論じたりなかった、イノベーションを阻む日本独特の学閥的隘路をはっきりさせておきたかったのです。後半部分は有料会員のみになりますが、結語の部分を以下に収録しておきますから、第145回「大学改革は最悪のスタートに」〜急務はピアレビューを可能にする研究者の守備範囲拡大〜と併せてお読みただければ大意は掴めるはずです。

 《学閥依存体制を改めるどころか、学閥でできた有名大学だけ残せば良いとも見える政策だ。イノベーション実現は確率的な世界であり、狙って出来るほど安易にはいかない。もし手持ちのネタに良いアイデアがあれば実現させれば良い。しかし、ネタ切れになった時に底辺から上がって行かなければ、技術立国など死に体と化してしまう。安倍政権を支える官僚は学閥依存に問題があることなど、既得権益から口が裂けても言えないだろう。しかし、ジャーナリズムは真実を見つめなければならない。中央省庁官僚からのリークを記事にしているだけの在京マスメディアに、ジャーナリズムの矜持と覚悟はあるだろうか》


生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力

 少子化社会対策白書のあまりの覇気の無さに驚き、国勢調査から生涯未婚率を予測し直して男35%、女27%にもなる結果を得ました。非正規雇用は増えるばかりで、若者の生活を不安定にさせている根源は政府施策です。『安倍政権が嫌いな雇用安定こそ少子化対策の核心』で指摘した通りです。生涯未婚率は人口学で50歳時点の未婚率と定められています。2010年国勢調査で20代前半だった世代が50歳に到達する25年後には、現在に倍する生涯未婚者であふれる事態になります。

 NHKの《少子化白書 晩婚・晩産化進む》は《生涯未婚という人の割合は、平成22年には、▽男性が20.14%、▽女性が10.61%で、いずれも過去最高に達し、「未婚化」とともに一生結婚するつもりはないとする「非婚化」も進んでいると指摘し》《内閣府は「若い世代は雇用が不安定で、所得が低い傾向にあり、こうした経済的理由から結婚に踏み切れない人が増えているのではないか」と分析》と伝えました。

 50歳に到達した世代ではなく、現在の若い世代がなる生涯未婚率を合理的に予測することができます。2010年国勢調査で男性の20代前半世代は未婚率94%でした。次の5年間で未婚率がどれほど減るか、年上の20代後半世代が2005年国勢調査からの5年間で21.7ポイント減らしている実績を採用します。そのあとの5年間は30代前半世代の実績24.1ポイントを、さらに50歳まで年上世代がした脱未婚実績を積み上げると合計58.6ポイントですから、現在の「94」から引き算して残る「35.4」が予測される生涯未婚率になります。男女別、世代別に同じ計算をした結果「生涯未婚率の世代別予測」をグラフにしました。


 2010年の生涯未婚率は増えたと言っても男20.14%、女10.61%に過ぎません。30代後半世代が50歳に届く10年後には男女共に倍増する勢いであると知れます。現在、20歳前後の若い世代が50歳になるころには、男35.4%、女27%前後にもなってしまいます。この予測方法は過去の世代の実績をもとにしています。実際には過去実績ほどに「脱未婚=結婚」が進まない可能性が高いはずです。もっと高い生涯未婚率が実現されると見るべきでしょう。なお、2011年にも同様の予測計算をしましたが、国勢調査速報版によるものでした。確定版の数字がかなり変わったと知り、計算し直しました。

 少子化社会対策白書は緊急に対策をと訴えつつ、具体的に何を進めるのかピンときません。第1部「少子化対策の現状と課題について」「第1章 少子化の現状」の最後に自らはっきり問題点を書いているではありませんか。

 『我が国は、欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じて家族政策全体の財政的な規模が小さいことが指摘されている。家族関係社会支出の対GDP比をみると、我が国は、0.96%(2009(平成21)年度)となっており、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べておよそ3分の1となっている』


 ここに添えられている合計特殊出生率の国際比較グラフも引用しました。人口維持に必要な出生率「2.1」に米英仏とスウェーデンが近づけているのに、2次大戦敗戦国の日独伊はそろって「1.4」前後と失格です。妙な自己責任主義では駄目です。人口を本当に維持したいなら、それなりに社会が面倒をみる、お金を掛けた強力な施策を打ち出すしかありません。女性手帳とか枝葉末節の議論をする暇があれば本筋の政策検討に移ってもらわねばなりません。

 【参照】インターネットで読み解く!「生涯未婚」関連エントリー
     第314回「非正規雇用にある男性の半分は生涯未婚か」 (2012/08/31)

都議選で再び大量パスした有権者、自公に乗り換えぬ

 都議選での自公の圧勝劇は過去2番目の低投票率の中、組織が堅かった自公共が強かっただけです。昨年末の総選挙に続いて非自公の有権者はゲーム感覚で大量に投票をパス、自公に乗り換えぬ意思表示をしました。全員当選で大勝ちした自公政権には、票の移動が無かった点で不気味ですらあるはずです。7月の参院選までの期間が短すぎるので同じ傾向が続く可能性が高いと見られますが、その後は政治的受け皿の出来次第でいつでも大きな様変わり、政権交代があり得る状況が継続します。

 昨年の総選挙比例区東京ブロックで、民主が100万票、維新が130万票、みんなの党が76万票を得ています。これと今回の都議選で得た得票数を比べると、失った票は民主40万票、維新100万票、みんな46万票に達します。総選挙から都議選の投票総数の落ち込み197万票が3党の失った票でほぼ説明がついてしまいます。結果としての当選者数は圧倒的ながら、自公に大して票が動いていません。

 昨年の「政治から降りずパスした有権者ゲーム感覚に問題」で紹介した石破自民党幹事長の談話「民主党に逆風は吹いているが、『自民党頑張れ』というのとは違う感じを持っている。仮に自民党が多数の議席を獲得しても、錯覚を起こしてはいけないというのが実感だ」は、依然として有効だと思われます。各地の首長選で自民が負けている事実も自民に追い風を感じさせません。

 総選挙と比べて大きく票を失った3党の行方はどうでしょうか。民主党は総選挙大敗の上に、総選挙時点からもう一段の有権者離反です。共産に抜かれた第4党15議席の数以上に深刻です。海江田代表の党再生は評価されなかったと見るべきでしょう。細野幹事長のぼそぼそした発言も愚痴にしか聞こえない場面が多いと思います。

 比例東京ブロック得票率20%の実績から大躍進を狙った維新は、現有3議席を2議席に減らしました。総選挙から100万票を失い、党としてほとんど終わったと評すべきです。従軍慰安婦をめぐる橋下代表発言が決定的でしたが、その前から何のために存在する政党か説明できなくなっていました。みんなの党は7議席を得たものの失った票は大きく、維新と合わせた第三極運動はしぼんでしまう勢いです。

 【参照】インターネットで読み解く!「有権者」関連エントリー


迷宮型原発事故は装置依存の新規制基準で防げず

 「世界一の厳しさ」と自称の原発の新規制基準が7月から施行されます。安全装置類でがちがちに固めた新基準の死角は、スリーマイル島事故のような迷宮型に対応していない点だと原発取材が長い立場から指摘します。もともと原発で過酷事故が起きるとすれば、熟練した運転チームでも対処しきれない迷宮型が最もあり得ると考えられてきました。福島原発事故のような全電源喪失はそうそう起きるものではないと思われていたから手抜きがあり、その穴を一気に塞ぐのが新基準です。しかし、福島原発事故によって運転チームの熟練度が考えられていたより恐ろしく低いと判明しました。

 時事通信の《原発新基準、正式決定へ=地震、津波想定を厳格化−施設対策は一部猶予・規制委》にある図を見ても、防潮堤、外部電源多重化、テロ対策でもある第2制御室、活断層判断の厳格化、電源車の高台配置などハードウエア整備ばかりが並んでいます。

 新潟県知事が「事故の検証・総括がないままハードに偏った規制基準のみ策定しても、原子力発電所の安全性について国民の信頼が得られるか疑問です」と批判しているように、原子力規制委は福島原発事故の原因を追究する作業をしませんでした。あれほどの重大事故が起きて、その原因をピンポイントで押さえて対策を明らかにするのが新しい原発安全基準であるべきでしたが、対症療法的に地震、津波、電源喪失、過酷事故への備えを並べて新しい対策としたのです。

 政府事故調と国会事故調とがきちんと原因究明を完了せず、結論が違った点に瑕疵があります。しかし、原子力規制委には最初から福島原発事故に寄り添う気は無かったとも言えます。事故の経緯をしっかりとつかんでいれば、改善すべきはハードだけでなく、人間系にも多いと分かるはずです。

 2011年末の「恐ろしいほどのプロ精神欠如:福島原発事故調報告」「東電技術力は2級品:NHKスペシャルで確認」で、いかに運転チームがお粗末な対応をしたか、まとめています。例えば原子炉への注水が出来ていない事実を知りながら、核燃料の崩壊熱で水が無くなっていく状況で水位計が誤動作して水位が上昇したのを疑問を持たずに眺めていたのです。もちろん炉心溶融を疑うしかない場面です。

 この程度の論理的思考力と判断能力しかないのであれば、スリーマイル島原発事故の状況には対処出来ません。原子炉のように内部をのぞいて確認できないプラントでは、外で得られた観測データから内部の状況を推測するしかありません。スリーマイル島事故では、それなりに能力があるチームが知恵を絞っても読み切れない迷宮型の経過をたどり炉心溶融に至りました。東電運転チームのレベルなら最初から話になりません。

 運転チームだけではありません。必要なら助言すべき当時の政府、保安院の専門家、それに政府・東電を取材していた在京マスメディアの知的レベルも恐ろしく低かったのです。第282回「原発震災報道でマスメディア側の検証は拙劣」で《朝日新聞の新聞週間特集を見て納得しました。科学医療エディター(部長)の談話として「原子炉は何時間空だきするとどうなるのかなど詳しいデータを知っていたら、もっと的確に記事を書けた」があります》と、証言を記録しています。

 重大事故での対処が問われる問題で、時事通信の《事故悪化想定の専門家養成=福島第1事故教訓に−原子力規制庁》はこう伝えています。《東京電力福島第1原発事故で、経済産業省の旧原子力安全・保安院に状況が悪化するさまざまな可能性を想定し、対策を進言できる専門家がいなかったことから、原子力規制庁は、庁内の専門家チームと各原発を担当する検査官の訓練を通じ、能力を向上させる方針を示した》

 検査官と言えば福島原発事故の現場から逃げ出した失態が指摘されています。そのレベルの人材をこれから訓練する段階です。ささいなトラブルから発展したスリーマイル島事故クラスの難題にぶつかれば間違い無くお手上げです。原発再稼働の可否を新基準だけで決めるのがいかに無謀か、少なくとも能力不足が明らかな運転チームの全面的な再教育、有事にフォローできる専門家チームの確立が絶対に欠かせません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


書籍流通に大波乱か、非破壊スキャン機が登場

 書籍が無傷のまま電子本にスキャンしてしまえる非破壊スキャン機が登場、7月発売なのに見る見るうちに人気を上げています。限られた好事家の範囲に留まらない可能性が高まり、書籍流通に大きな波乱要因発生です。「ScanSnap SV600」が12日に発表された時点ではアマゾンでメーカー直販価格と同じ59800円での予約だったのに、既に5万4千円台まで下がり、相当な引き合いがあったと考えられます。いわゆる「自炊」の簡便化で、オフィスや家庭などへの普及具合によってはベストセラー本の売れ行きが大幅にしぼんでしまう恐れがあり、市場の縮小で苦しむ出版業界には打撃になります。


 図のようにA3サイズでスキャンは3秒です。本の厚さは3センチまでです。東大生協に置かれたデモ機をリポートした《話題の非破壊型スキャナ、ScanSnap SV600に触れた》によると《台座部分にある「Scan」ボタンを押すと、ヘッドが動き対象物に光が照射されあっという間に見開き2ページ分のスキャンが終わった。次のページのスキャンができる状態になるまで約10秒待ち、ページをめくるとその直後にまたヘッドが動きスキャンされた》とあります。200ページの新書なら見開きでスキャンして20分余り必要になります。もし指で本を押さえて写り込んだら、後から消せます。

 手持ちの本を代行業者に持ち込んで本の裁断とスキャン作業をしてもらう電子書籍化に、著作権者側から異議が出て、《本の自炊代行、基本ルール合意 業界団体と権利者団体》が伝えられたところでした。「自炊代行業者は、電子化したファイルが私的利用を超えて外部に流出しないようにするほか、電子化後は紙の書籍を溶解処分するという。こうしたルールを守るための第三者による監視組織も設ける」のですが、手頃な価格の非破壊スキャン機が普及したら尻抜けです。

 非破壊スキャンですから、図書館や友人間で本を借りたり、新刊書を買ってスキャンして直ぐに売り払ったりできます。レンタル店でCDを借りて、音楽のコピーを作るのは当たり前になっています。それが書籍で可能になる事態です。大日本印刷と東京大が昨年、ページめくりもロボット化して超高速の非破壊3Dブックスキャナを発表、図書館の貴重な蔵書の電子化を受注することになっています。そんな大掛かりな装置は要らないから手頃で安く便利に、をあっさり実現してしまうのが日本のメーカーらしいところですが、社会的な影響は大きいと思えます。


中国の重金属汚染食糧は日本コメ消費の1.6倍

 人民日報が伝えた重金属汚染食糧1200万トンは日本コメ消費量の1.6倍にもなる膨大な数字です。汚染の線引が大甘である恐れがある上に、廃棄できようはずがなく、食べられている土壌汚染の深刻さが浮かびます。「人民視点」と題した土壌汚染特集なのに意外に中身はすかすかでしたが、国内にはるかに充実した大阪大リポートが存在したので参照しながら紹介します。

 14日付の「人民視点」のオリジナルから一部抜粋したのが、日本語版の《重金属汚染図が作成 一部都市では放射能異常も》です。しかし、2006年当時で汚染耕地1.6億ムー(1066万ヘクタール)、汚水で灌漑の汚染耕地3250万ムー(216万ヘクタール)、固体廃棄物がある農地200万ムー(13万ヘクタール)などの汚染規模を示すデータはオリジナルにしかありません。これは日本の農地の3倍にもなります。放射能異常は明確な説明がありませんが、汚染物質としてコバルトがあがっているので、コバルト放射性同位体だろうと思われます。鉱業や化石燃料の燃焼などで発生します。

 日本語版にこんな記述がありますが、詳細は不詳です。「全国多目標区域地球化学調査プロジェクトは、局地的な土壌汚染が深刻であることを発見した。例えば長江の中流・下流の一部地域では、カドミウム、水銀、鉛、ヒ素などの含有量に異常があった。都市部・周辺地域では水銀・鉛の含有量に異常があり、一部の都市では放射能異常があった。湖沼には有害元素が多く存在し、土壌の酸化が深刻だ」

 阪大リポートは「中国の重金属汚染土壌の現状と今後の対策に向けて―日本の歴史的射程から得られた教訓と最新の技術開発の展望を踏まえて―」で、2010年の国際シンポのために用意されたようです。イタイイタイ病のケースで、日本全国でカドミウム汚染基準を超えた農地が7500ヘクタールだった点だけ比較しても、現在の中国の土壌汚染規模は尋常でない大きさです。


 中国における汚染源は鉱山と精錬業が大きな部分を占めます。上の地図は2005年以降に発生した重金属汚染事故の記録です。「2006年度を断面に捉えると、各金属の排出量は鉛が約330トン、砒素250トン、六価クロム90トン、カドミウム50トン、水銀23トンである。ここではまず、汚染事故が最も多い鉛について、定量的な分析を試みることとする。統計によれば、2006年度の中国における排水中の鉛の総量は333.1トンであり、その内訳は60%以上が非鉄鉱業起因で、金属関係産業全体では約90%の排出量を占めているのが特徴である」「日本の鉛排出量は年間20トン程度であって、その50%近くが下水起因になっており、残りの大半が金属関係となっている。中国の場合、下水起因のデータが計上されていない状況で、全体の量が日本の約15倍にあたるので、今後下水起因の量が人口比で計上されるとすれば、鉛の排出量は更に大きなものになる可能性がある」

 水銀排出などにも膨大さをあげた上で「以上のように、中国の土壌汚染の全般を重金属汚染の面から俯瞰する時、日本の経験をはるかに越えて、汚染の実態は極めて深刻な状況にあることが推察される。その上、経済の高度成長期には生産が最優先となり環境対策は事後処理的になり易いことから、このような汚染の状況は今後も進行していくものと懸念され、しかもその規模と範囲が拡大途上にあり、従来の知見では解決が困難な状況になる恐れも浮上している」と指摘しています。

 これほどの悲惨な環境汚染が司法のチェックも受けないで進行している状況は第346回「『がん村』放置は必然、圧殺する中国の環境司法」で描いた通りです。中国の環境司法は企業の無過失賠償責任の建前は取っているものの、そもそも訴訟を受け付けないのです。


投資呼び込みは絵空事、内部留保99兆円の活性化を

 アベノミクス3本目の矢「成長戦略」が軽薄すぎて大きな失望感が広がっています。最も望まれた方向、大手企業100社で99兆円もと報道された内部留保を生かしてイノベーションを起こさせる道筋がありません。海外からの投資を呼び込むために教育や医療の環境を整えるとか、絵空事もいいところです。人口減少と高齢化社会の日本に海外大手が乗り込んでくるはずがありません。自前で持っている巨額内部留保を研究費として生かし、疲弊している大学との共同研究を奨励するなど、知恵を出すべきです。法人税率引き下げなど、無意味な企業優遇策では、これは達成出来ません。

 4月に共同通信の《大手企業の利益温存加速 100社調査、内部留保99兆円》は《大手企業100社が、利益のうち人件費などに回さずに社内にため込んだ「内部留保」の総額は2012年3月末(一部2月末なども含む)時点で総額約99兆円に上ることが7日、共同通信の調査で分かった。リーマン・ショック直後の09年3月末からの3年間で10%増。労働者の賃金は下落傾向が続く中、企業が経営環境の変化に備え、利益を温存する姿勢を強めている実態が浮き彫りになった》と伝えました。

 お金があるからイノベーションを起こせるとは限りません。しかし、国内大手が押しなべて投下できる余裕資金を持っているのです。革新的な技術や製品が生まれるのは確率的な世界ですが、国内の企業がみんなで挑めばどこかで「当たり」が出るはずです。いや、いくつも出てもらわねば困るのです。

 長い縮こまったデフレ状態はジリ貧ながら、得もしなければ損もしない状態でした。この状態を壊してリスクに満ちた海原に押し出したのは安倍政権です。成長戦略を成功させて税収大幅増で財政再建を可能にする道筋がかなわなければ、金利の上昇だけが残りかねません。それでは国と地方でGDPの2倍、1000兆円に近い大借金を返すどころではなくなります。失敗したら後の人に託すは許されません。

 成長戦略は要の中の要です。安倍首相はちまちました選挙遊説に走る時間があったら、本筋の中の本筋を練り直すことに全力を注ぐべきです。官僚からの安直な献策は遠ざけるべきです。「骨太の方針」に取り入れられた「世界トップ100に10大学」提言なども事情を知らないで聞けば上策に見えるかもしれませんが、第363回「大学に止めを刺す恐れ大、教育再生会議提言」で論じた通り、自殺行為になりかねません。


『江戸前』に赤信号、ウナギ汚染をなぜ騒がぬ

 在京メディアの放射能汚染への認識力は腐っています。《東京都、基準値超セシウム検出で江戸川のウナギ出荷自粛要請》がひっそりと報じられるなんて在り得ません。東京湾汚染深刻と研究者は昨年から警告済みです。既に5月中旬に水産庁が食品基準値以上の汚染検出と発表、東京都と千葉県は3月から汚染を把握していたといいます。事なかれ主義の行政とタッグを組んだマスメディアの怠慢極まれりと指摘します。東京湾汚染は一時的なものではなく、河川から流れ込むセシウムで来年春にかけてさらに悪化が予測されているのです。福島原発事故で「江戸前」魚介に完全に赤信号が出ました。

 産経新聞の《東京都、基準値超セシウム検出で江戸川のウナギ出荷自粛要請》は全文でこれだけの短い記事です。「東京都は7日、千葉県が同県市川市の江戸川下流域で採取したウナギの放射性物質を検査したところ、食品の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える140ベクレルの放射性セシウムが検出されたことから、関係する2つの漁業協同組合に出荷自粛を要請したと発表した。釣り客らにも注意を促す」「都がこれまでに行った検査では、30ベクレル以下で、基準値を超える放射性セシウムは検出されていなかった。都によると、江戸川や荒川など周辺の計5河川では年間約11トンの水揚げがあるという」

 ところが、スポニチが5月17日に《江戸川のウナギが基準値超 4匹から放射性セシウム》を報じていました。これも短い記事です。「水産庁は17日、東京都と千葉県の境を流れる江戸川の中流で捕られたウナギ4匹から国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超す放射性セシウムを検出したと発表した。検出値は最大で158・9ベクレルだった。水産庁や東京都、千葉県は3月に把握していたが公表していなかった」「問題のウナギが捕られたのは、江戸川に架かる北総鉄道の高架下と下流500メートルの地点。近畿大学の研究者が調べたところ基準値を超えたため水産庁に通報した」「水産庁は東京都と千葉県に連絡したが『ウナギ漁は夏からで、漁期の前までは調査しない』などとして調査も公表もしなかった。このため水産庁が保存されていた検体をあらためて調べ、今回初めて結果を公表した」

 研究者から通報があっても意図的に隠していたと判断せざるを得ません。直ちに汚染状況を調べに出動するのが普通の公務員の感覚です。出荷自粛要請ではなく強制力がある出荷制限にすべきです。

 東京湾の汚染は生易しいレベルではありません。昨年5月にNHKが《東京湾 再来年4000ベクレルに》でこう伝えました。京大防災研の予測では「放射性セシウムの濃度は再来年の3月に最も高くなり、荒川の河口付近では、局地的に泥1キログラム当たり4000ベクレルに達すると推定されるということです。これは、ことし1月に福島第一原発から南に16キロの海底で検出された値とほぼ同じです。比較的濃度が高くなるとみられる東京湾の北部では、平均すると海底の泥1キログラム当たり300ベクレルから500ベクレル程度と計算された」のですから、食品基準値超過を警戒して日常的なモニタリング体制を構築するべきです。今回のウナギ汚染経緯から全く無警戒と知れます。

 福島原発事故の放射能汚染で在京マスメディアには「前科」があります。2011年5月にも第261回「在京メディアは東京の年間限度線量超過も無視」で問題にしたホットスポットの存在をなかなか認めようとしませんでした。千葉・柏のような高線量ゾーンすら「流言飛語に惑わされないように」と決めつける論調を当初あちこちで見ました。

 ウナギ汚染報道の手ぬるさ、感度の低さを知ると、「大本営発表」報道はまだ終わっていません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


大学に止めを刺す恐れ大、教育再生会議提言

 政府の教育再生実行会議がまとめた「世界トップ100に10大学」提言は崩壊しかけている日本の大学を救うどころか止めを刺すでしょう。絶対的不足の公費支出を頂点に重点配分すれば底辺が枯渇、やがて全体も死にます。2004年の国立大学法人化以降、大学や研究機関の活力を示す論文数の伸びが止まり、減少に転じました。先進国の中で論文数が右肩上がりでないのは日本だけです。高等教育への公財政支出は、GDP比でOECD諸国平均の半分もありません。今回提言の参考資料にあるグラフで、財政支出の絶対不足をまず確認して議論しましょう。


 OECD諸国平均がGDP比1.1%なのに、日本は0.5%です。1.8%もある北欧、1%を超える水準で並ぶ西欧、米国の1%とも、公財政支出は比較になりません。学生個人についてなら日本の家計支出が大きく負担しています。この参考資料にある別のグラフ「高等教育への公財政支出の推移」を見ると、2000年比で日本は少なかった財政支出を減らし続け、2008年にやっと元に戻し、2009年で5%増しに過ぎません。この間、OECD諸国平均は138%になっています。財政支出が少ない上にますます差が開いているのです。

 日経新聞は「大学教育などのあり方」に関する提言について《「世界トップ100に10大学」 教育再生会議が提言》でこう伝えました。《海外で活躍する人材育成のため「今後10年で世界の大学トップ100に10校以上」を目指して国際化に取り組む大学を重点支援することや、英語を小学校の正式教科にすることなども求めた》《提言を受けた安倍首相は同日、「大学力こそ日本の競争力の源で、成長戦略の柱だ」と述べた。提言の一部は6月に政府がまとめる成長戦略に盛り込む》

 世界大学ランキングで日本の大学が弱い部門は国際化と論文引用です。東大と京大に続いてトップ100に押しこむためには、ここに重点的な支援が必要だとしています。提言本文も「高等教育に対する公財政支出は、国際水準に比して低く、国私立間格差も大きい現状があります」とさらりと触れ、「制度面・財政面の環境整備」に言及しますが、全体に及ぶ問題で膨大なお金が掛かり、具体的には何の改善策も書かれていませんから素通りされるでしょう。易きにつく官僚の政策的ツマミ食いは重点支援に向かうはずです。

 大学の実態は既に危機的です。論文数が特異に減少していると1年前に指摘した元三重大学長、豊田長康氏の「あまりにも異常な日本の論文数のカーブ」が反響を呼び、あちこちの議論で引用されています。内閣府総合科学技術会議「基礎研究および人育成部会」の資料として提供されたグラフを引用します。


 豊田氏は「この図をみると、少し太めの赤線で示されている日本の論文数が、多くの国々の中で唯一異常とも感じられるカーブを描いて減少していますね。いつから減少しているかというと、国立大学が法人化された翌年の2005年から増加が鈍化して2007年から減少に転じています。他の国はすべて、右肩上がりです」「法人化と同時期になされたさまざまな政策、たとえば運営費交付金の削減や、新たな運営業務の負担増、特に附属病院における診療負担増、政策的な格差拡大による2番手3番手大学の(研究者×研究時間)の減少、などが影響したのであろう」と指摘します。

 議論があるところですが、大学改革と称して足りていなかった財政支出をさらに絞り、絞った研究費を競争的に傾斜配分して研究者に無駄なエネルギーを使わせてきたと考えるべきです。日本の大学にきちんとした評価システムが無いまま、旧帝大中心の学閥的な予算配分に傾斜した結果でしょう。質的な改革を主張した第145回「大学改革は最悪のスタートに」で憂慮した以上の失敗の道をたどっていると感じます。「世界トップ100に10大学」という皮相な数値目標が達成された時、全体を支えるピラミッドが崩壊、高いペンシルビルがそびえて、それも長くは維持できなくなるでしょう。

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