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福島市街地の半分は居住不適。報道されぬ不思議

 福島市の市街地の半ばが放射線障害防止法に照らせば居住不適との測定結果が出たのに、全国的に報道されません。住民を避難させたくない自治体とマスメディアが結託している暗闇状態がまだ続くのでしょうか。福島市が3月に市内全域で実施した測定結果をまとめた放射線量マップには全部で783ある測定区画の内、398区画で0.75マイクロシーベルト毎時を超えていると明記されています。これは宿泊はもちろん飲食も禁じられる「放射線管理区域」の設定基準3カ月1.3ミリシーベルトを、2割以上上回ります。

 唯一見つけられる記事は福島民友新聞の「毎時1マイクロシーベルト未満95% 福島市放射線量マップ」です。「市内全域の平均測定値は毎時0.56マイクロシーベルトと昨年3月のマップの平均値より0.21マイクロシーベルト下がり、除染計画目標値の毎時1マイクロシーベルト未満の区域が全体の95%を占めた」と、行政サイドの除染計画に沿った目線で書かれています。


 しかし、上に掲げたマップと測定データを冷静に見れば測定値が下がったと喜べる状況ではありません。500メートル四方731区画、千メートル四方52区画で、各3地点を選定し5回の測定を平均しています。たまたま得られた数字ではない、重い測定値です。黄緑色区画以上、毎時1マイクロシーベルト以上なら年間で8ミリシーベルトを超し放射線防護上、もう一般人ではなく放射線業務従事者に近くなるのに220区画と全体の28%もあります。福島民友が「5%」と報じている意味が理解出来ません。ひょっとすると分母にする面積に測定対象外の山野まで含めているのかもしれません。そうならば「ミスリードの上塗り」です。

 福島原発事故発生以来、福島県内の自治体が住民に自主避難をさせまいと動いた点は周知の事実です。逆に「全町避難だから異議が言える異常な線量基準」で指摘したように、避難した双葉町などは年間5ミリシーベルト以上の土地に住民を帰還させる政府方針に抵抗しています。ソ連チェルノブイリ事故でなら希望者には移住の権利が認められた汚染水準だからです。

 法律に定めがある放射線管理区域以上の汚染ならば、自主的な避難が認められて当然です。《「自主的避難等対象区域外からの避難者への賠償実現会見」4/17福田弁護士・避難者(内容書き出し)》が和解によって初めて実現した自主避難者の権利認定について伝えています。

 この中に次のような発言があります。《実際に私が、最後に家を出る時に測った玄関付近の線量は、0.68マイクロシーベルト/時でした。で、私が一番「これはもうここにはいられない」と思った決定的なものは、2階に子どもの部屋があるんですけれども、その子どもの部屋の2段ベットの上の段がものすごい線量だったんですね。それはもう、しばらく子どもたちをそこに寝かして生活をしてしまってから、ふと気が付いて調べようと思って、普段は通常自分が生活をする状態で調べていたんですけれども、ふと思って2段ベットの上の段に上って天井付近を調べてみたら、本当にものすごい線量でした。あの時多分最初に測った時は0.7〜8ぐらい》

 このケースが放射線管理区域基準を超える汚染です。福島ではこのような当たり前のお母さんの感覚を口にできない雰囲気があると聞きます。福島市の放射線量マップの現実を前に、マスメディアも初心に立ち返って現状の報道で本当に善しとするのか、考えてみるべきです。福島では「大本営発表報道」がまだ続いていると批判されても仕方がないでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


ダルビッシュの秘密が動画に。大リーグで打てなくて当然、

 野球シーズンが始まって早々、驚異的に面白い動画が出ました。大リーグで完全試合まで行きかけたダルビッシュ、5種の球を投げているのに投球フォームが全く同じ。素晴らしい投球の秘密はこれだったんです。高速の硬式球に対抗するには打者も高速のバット回転が必要なので、どんな球が来るか、早めに見極めてバットを振り始めるのが打者の生理です。見極めをほぼ不可能にしている以上、打者は闇雲にバットを振りに行くしかなくなります。

 「何がすごいって、5球種を投げ分けているフォームとリリースポイント(ボールを離す場所)がほぼ同じなのです!」と紹介している「らばQ」の「全米が震撼…ダルビッシュの三振動画がありえないことになってると海外で話題に」に習って、ダルビッシュの5球種を合成したアニメーションGIFのリンクを貼っておきます。

ダルビッシュの投球

 2000年の第92回「新・日本人大リーガーへの科学的頌歌」で野球の高速現象を科学してあります。そこで「ホームベース手前でバウンドするようなフォークボールを好打者が空振りする例を数多く見るが、打者にとってフォークボールは直球と識別困難な非常に打ちづらい球であることが理解できる」「バットスイング開始からインパクトまでの時間は0.17〜0.2secは要する。したがって、36m/s(130Km/h)以上のスピードのボールであれば、投手板とホームベースの中間地点にボールが到達した時点でスイングを開始しなければならない」と整理しました。これを理解して上の動画を見ると、打者はノーチャンスであると確認できます。

 【参照インターネットで読み解く!「大リーグ」関連エントリー


台湾に鳥インフルエンザ、中国も含め警戒弱すぎ

 鳥インフルエンザが遂に中国国外に出てしまい、24日に台湾の男性(53)が発症確認です。男性は重体となり、ヒトからヒトへの感染が確認されていないからと言って、中国本土を含めて警戒体制が弱すぎます。インフルエンザウイルスは変異を繰り返し、環境に適応進化するものです。

 時事通信が伝えた《台湾で患者を初確認=中国本土外に拡大、江蘇省で感染か―鳥インフル》によると、「男性はビジネスで蘇州と台湾を往来。直近の蘇州滞在は3月28日〜4月9日で、上海経由で台湾に9日戻り、3日後の12日から発熱や発汗、体のだるさなどの症状が出た。16日に入院したが、19日夜から病状が悪化したため、隔離された。いったんは陰性反応が出たが、24日の検査で陽性と確認された」となっています。

 重体になっている経緯からから考えると、発症初期に投与すべき抗ウイルス剤使用のタイミングを失しています。ウイルスが大量に増殖してからは効果がないために、このような危機に瀕しては抗ウイルス剤で積極的に叩いて、流行に至る芽を摘まねばなりません。台湾と中国の人的交流の膨大さを考えると衛生当局はスタンバイすべきでした。日本もようやく強制的な入院などを可能にするよう動き出しました。

 中国では新たに22日に山東省にも感染が飛び火、2市5省に拡大しました。36歳の建材卸売従事者で発熱と咳が6日間続いてから病院に行き、鳥インフルエンザウイルスH7N9型陽性の判定が出ました。第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」で指摘したように、医療費の心配があって大流行が心配されるのに積極的に受診しない人が多いとも考えられます。これでは流行初期に叩くことは覚束なくなります。

 また、『鳥インフルエンザ感染源の探索は方向違いか』で感染源を鳥類と決めつけるのは危険と紹介しました。中国の患者の半数は生きた鳥と接触していませんし、新たな台湾の患者も同様です。

 【参照インターネットで読み解く!「インフルエンザ」関連エントリー


年金制度欠陥と高齢化が中国財政破綻を呼ぶ

 先週、中国の60歳以上人口が2億人を突破、中国政府の債務残高は地方の隠れ借金に年金債務を入れるとGDPの90%にもと、気になる報道が相次ぎました。中国の経済成長を束縛する内在要因は根が深いと知れます。人口学は65歳以上人口の割合が7%以上の社会を高齢化社会、14%を上回った社会を高齢社会としています。東アジアで日本は既に24%と高齢社会に入り、韓国が2018年頃、中国は2025年頃に仲間入りします。問題はその時の社会の豊かさで、日本はGDP1人当り4万ドルあったのに、韓国は現在2万ドル余り、中国は6千ドルに過ぎません。


 人口が日本の10倍もある中国の老齢化を論じる際、日中それぞれの国内比率だけではイメージが湧かない面があります。絶対的な人口ボリュームが見えるように日中の高齢化推移を同じ縮尺のグラフにしました。既に緑色の65歳以上人口だけで日本総人口を上回っている上に、世紀半ばにかけて3億人を超す膨大な数に膨らみます。また、このグラフからも読み取れるように中国の生産年齢人口(15〜64歳)は今がピークで、2011年から減少に転じています。(人口出典:日本中国

 レコードチャイナの《「白髪の中国」へ、初ピーク迎えた中国の高齢者人口増=問題山積み―中国専門家》がこう報じました。「2013年、中国の高齢者人口は2億の大台を突破して2億200万人に達し、総人口の14.8%を占めるまでとなった。1950年代の『ベビーブーム』に生まれた人々がいま、最初の高齢者人口増のピークを形成している」「現在、高齢者人口は年平均800万人ずつ増加しており、2050年には4億3000万人に達する見通し。その時には、中国では3人に1人が60歳以上の高齢者となる計算だ」

 65歳以上人口ではなくて60歳以上を問題にしているのは、中国の定年退職が日本よりも早いからです。日本総研の『中国における少子高齢化とその社会経済への影響』は「定年とは、男性が60歳、ホワイトカラーの女性が55歳、ブルーカラーの女性が50歳(ただし勤続10年以上)であることを意味する」「退職とは、所定の年齢を満たし、または労災、病気で働く能力を完全に失った者が職場を退いて年金等の社会保障制度を享受することである」とします。

 実際の退職平均年齢は52歳前後との指摘もあり、退職して年金を得るべき層はグラフ緑部分の1.5倍から2倍にもなりかねません。実は、曲がりなりにも年金制度が整備されているのは都市の住民だけで、人口の3分の2もいる農業戸籍の地方住民には試行が始まった段階です。グラフ緑部分には年金保険の保障がなく、福祉政策で手当すべき高齢者が多数含まれます。

 現在、中国の年金積立総額はGDPの2%程度しかなく、日本の25%などと比べて大きく見劣りします。ジェトロ・アジア経済研究所の『中国都市部における公的年金制度改革と所得移転』によると経緯はこうです。「1995年と1997年に中国都市部の企業部門について賦課方式から部分積立方式に移行する等の抜本的な年金改革が実施された」。しかし、部分積立方式に移行するにあたり、従来の積立金はゼロだったので2000年GDPの75%に当たる年金純債務が発生したが、「政府はその存在自体を認識しておらず、その処理について具体的な方策も打ち出さなかった」

 政府債務がGDPの90%にもなると伝えた日経新聞の《中国、地方の「隠れ借金」拡大 GDP比50〜60%》の背景はこれだったのです。公表ベースの政府債務残高はGDP15%と財政健全ですが《中国の招商証券や華泰証券が推計している地方政府の「隠れ借金」は約15兆元。項懐誠元財政相は「20兆元以上」という見通しを示す。これを反映させると、中国の政府債務はGDP比で50〜60%に跳ね上がる。このほか、旧鉄道省の鉄道建設債務や年金債務などの公的な借り入れもある。「広義の負債まで入れると政府債務は90%を超える」(華泰証券)》

 ロイターは昨年、《中国も年金危機、高齢化で「時限爆弾」》で「中国国務院(内閣に相当)は年金基金の積み立て不足解決の1つの方策として、定年退職年齢の引き上げを検討している。国民受けは悪い政策だが、それ以外に選択の余地はほとんどないだろう」と伝えました。

 この超不人気政策を高齢社会に入るまでに実現させるのは習近平政権しかあり得ません。しかし、上記『中国における少子高齢化とその社会経済への影響』は「反対する意見も根強くある。大卒者の就職難が社会問題化している今、各レベルの政府機関、国有企業、大学・研究所など労働条件の良い所に定年を延ばす人が堆積すると、若者の行く道が狭まり、それに対する不満が高まる。そもそも定年の引き上げを支持する者は特権を握る社会的強者が多い。地位が高く、資源の配分で有利な立場にいる人は、その利権を手放したくないだけだとの批判もある」と厳しい内情を指摘しています。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


鳥インフルエンザ感染源の探索は方向違いか

 患者は増え続けるのに感染源が見つからない中国の鳥インフルエンザ。日本の国立感染症研究所が19日に公表したリスク評価は感染源探索が方向違いであると示唆しています。鳥ではなく哺乳類を疑うべきと読めます。中国農業省は8万以上のサンプルを集めて分析中ですが、哺乳類については豚の屠殺場が入っているだけです。

 感染症研が公表したのは「中国における鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応」です。ウイルス学的所見の中で、「上海市鳥市場のハト、ニワトリおよび環境からの分離ウイルス3株」は患者から分離したウイルスと「明らかに異なる塩基配列もあり、今回報告された鳥分離ウイルスが、今回報告された患者に直接に感染したものであるとは考えにくい」と断定しています。

 決め手は、ウイルス増殖の最適温度を「鳥の体温(41℃)から哺乳類の上気道温度(34℃)に低下させる変異が観察」されているのに、鳥から分離したウイルスにはこの変異が無いのです。

 分離ウイルスの遺伝子解析で「鳥に対して低病原性であり、家禽、野鳥に感染しても症状を出さないと考えられる」とします。「一般的に、H7亜型のインフルエンザウイルスはブタにおいても不顕性感染であることが知られている。従って、この系統のウイルスがこれらの哺乳動物の間で症状を示さずに伝播され、ヒトへの感染源になっている可能性がある」と哺乳類に目を向けるよう述べています。

 農業省の17日付とりまとめでは、全国473の生きた家禽の市場、32の家禽処理場、896の養鶏場など、79の野鳥生息地、36の豚屠殺場、137の環境ポイントから84444サンプルを採取しています。47801サンプルを処理済みで、家禽市場9カ所と野生ハトの39サンプルからウイルスを検出しましたが、上の指摘の通り、ヒト向けに変異していないのです。

 「生きた家禽との接触」が当初から注目され続け、上海市が市街地での家禽飼育を禁止する措置を命じるなど、依然として鳥に眼が向いています。分析の結果からは、野生あるいは飼われている哺乳類にも探索の範囲を広げないと「犯人」は出て来ないのではないでしょうか。

 【参照】第356回「感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情」
     インターネットで読み解く!「インフルエンザ」関連エントリー


感染爆発寸前、鳥インフルエンザの困った事情

 中国南東部から北部の北京まで広がった鳥インフルエンザが本格的な感染爆発、パンデミック前夜の様相です。野鳥からも発見、鳥には弱毒なのに人は重篤の特性に加え、中国の貧しい医療事情から患者潜伏の可能性あり。16日までに公表の感染患者77人、死者16人で本当に網羅しているのか疑問が残ります。新型インフルエンザで記憶に新しい2009年のH1N1型は、過去に流行したウイルスと共通部分があって高齢者を中心に免疫が残っていましたが、今回のH7N9型は人間にとって全くの新型です。感染を広げながら進化するウイルスの特性も睨みながら、ウイルスが苦手とする夏まで目が離せません。もし日本に来るならば都議選があった4年前と同じ条件になり、「新型インフル5千人。お寒い都の監視体制」で指摘したように、公式発表と違い7月まで患者発生は続きました。


 人民網の「H7N9型最新情報」などで公表の感染・死亡データをグラフにしました。13日に北京で初めて7歳女児の患者が見つかりました。15日にはこの関連で4歳男児からもウイルスが検出されたニュースが流れましたが、潜在患者として扱われ、グラフの数字に入っていません。最も多いのは上海市の患者30人、死者11人で、周辺の江蘇、浙江、安徽の3省が続きます。14日に内陸部の河南省でも2人の患者発生が報告されました。16日には中国農業省から南京市の野生のハトからウイルス初検出が発表されました。

 少数の回復者も出ていますが、概して症状は重いようです。医学誌に投稿された52歳女性の進行状況を、日経メディカルの「中国のH7N9型鳥インフルエンザ、死亡例の臨床像が明らかに」から引用します。「第1病日=悪寒と発熱40.6度で発症。他の症状はみられず。服薬せず」。第2病日に救急受診するも投薬のみで帰宅。「第3病日=胸部X線施行、右下肺野に斑状陰影。抗生剤の経静脈的投与が3日間行われている。咳や呼吸困難は認められず」。そして、第7病日に「咳、呼吸困難の症状が急速に悪化し」転院。この時点で急性呼吸不全を伴う「重症インフルエンザを疑われ、気管内挿管・人工呼吸器開始」。そして呆気無く第8病日には「抗生剤・免疫グロブリン・ステロイド継続するも状態悪化」し死亡です。H7N9型感染と確定したのは、その翌日でした。

 重症インフルエンザを疑った時には既に手遅れになるのは、これまでの常識に反しているからです。抗ウイルス剤投与の機を逸しています。「要注意! H7N9はステルス型インフルエンザウイルスだ」がこう指摘します。「今までの新型鳥インフルエンザウイルスの対策は、暗黙の前提として鳥などの中間宿主に対しても強毒性のウイルスを想定していました。鳥や豚などの大量死の報告を受けて、ヒトへの感染を防御する対策を打つ、というのが防疫の手順でした」「WHOによれば、近代的な疫学研究が始まって以来、H7N9は鳥などの中間宿主に対して弱毒性インフルエンザウイルスがヒトに感染し、強毒性を示した初めての例となりました」

 日本の常識ではあり得ない話になりますが、治療費が患者自己負担になっていると、「上海市の隠蔽工作疑惑が浮上=鳥インフルエンザについて今わかっていること―中国」(kinbricksnow)が伝えています。「H7N9型鳥インフルエンザにかかると隔離病棟に入れられるということもあってか、1日1万元(約15万円)以上という法外な治療費が必要になるという」「南京市の感染者は治療費が支払えないため家を売る予定とも報じられた。これほどの治療費を支払える人はそうそういないし、死んでもいいから自力で治すことにチャレンジする人も多そうだ」

 「ヒト・ヒト感染が確認されていないため、SARSほど危険な病気ではない」というのが、無償治療にしない当局の説明のようです。毎月数万円で暮らしている人が普通なのに、社会全体の防衛を考える意識の無さにおそれいります。上海市が2月に新型ウイルスの端緒をつかみながら、グズグズしていたのも3月に北京で新指導部選出の全人代が開かれていたから遠慮していた疑惑があります。新型の封じ込めには立ち上がりを徹底的に叩くしか無いとされているのにです。

 最初の患者が出た上海など中国南部地域は新型インフルエンザの「火薬庫」です。人と膨大に飼われている豚と家禽類が日常的にかつ濃厚に接触しているために、種をまたぐ感染を起こす新型が生まれやすいからです。4年前には感染爆発と言えるほどの規模にはなりませんでしたが、今度の新型は中国国外に出るようなら非常に危険です。ブルームバーグの「中国の鳥インフル拡大なら世界的流行の恐れも−シノバック」が中国ワクチンメーカートップの意見として《今回の鳥インフルエンザの感染が「パンデミックとなるリスクが高まっている」と述べ、03年から広がった「H5N1型」ウイルスと比べると今回は「ずっと深刻な発生状況」だとの認識を示した》と報じています。

 【参照】インターネットで読み解く!「インフルエンザ」関連エントリー


大気汚染による中国とインドの健康被害深刻

 4月上旬に大気汚染が深刻な中国で2010年の死因の約15%は微粒子PM2.5によるとの報道がありました。元になる研究結果が最近、国別に公表され、インドがまさに中国の状態に突き進みつつあると判明しました。微粒子大気汚染と言えば年始めの北京の重篤スモッグが連想されますが、家事で使う固形燃料などから出る煙も仲間であり、重大深刻な汚染源です。大気汚染の何割かは家庭空気汚染が漏れ出たと考えられています。各国が参加した世界疾病負荷研究(Global Disease Burden GBD2010)の国別プロフィールから、中国とインドで健康に影響している主要リスクファクターのグラフを以下に抜き出しました。


 赤字で表示した「大気微粒子汚染」と「家庭空気汚染」は微粒子汚染として扱われています。報道にあった《中国の死因14.9%死亡者123万4000人》も両者を合わせた数字のようです。この合計で中国でリスク寄与12%もある第2位の高血圧を軽く上回ってしまいます。中国の環境NGO主任、馬軍氏が毎日新聞のインタビューで、北京に「地方から来る人たちが住む都市郊外には集団暖房設備がないため、石炭ストーブで暖を取る人もまだ多いのです。他の都市も事情は似ています。農村部でも、暖房や料理のためにトウモロコシや麦の茎を燃やすことが珍しくありませんが、この黒煙も大気汚染の一因です。社会の発展と遅れた部分の両方の原因による汚染が複合して起きているのです」と答えています。GBD2010のプロフィールは「5歳未満児の主なリスクは家庭空気汚染」とします。

 インドで目立つのが家庭空気汚染の寄与率が6%を超えて第2位である点です。率そのものは中国よりやや低く、第210回「2026年インド人口世界一:牛糞が家庭燃料の国」にあるように世帯の半分以上は燃料に乾燥牛糞・薪使用世帯なので火力が弱く、石炭を使う中国より少しマイルドなのでしょうか。近年の工業化進行で大気微粒子汚染が7位に入っていて、首都があるデリー地域などは世界最悪のひとつとの報道もあります。

 サンケイビズの「インドの大気汚染問題が深刻化 10年の死者67万人超」は米国のNPO健康影響研究所による数字を見出しに取り上げています。しかし、同じ記事の中で《政府機関のインド医療研究評議会幹部は、11年の政府調査で67%の家庭が固形燃料を使用していると指摘。「屋内の空気汚染による死者数も年100万人を超えている恐れがある」と警告を発した》と伝え、上のグラフからはこの数字が妥当に見えます。

 中国やインドより貧しいバングラディシュになると、リスクファクターのトップは喫煙、ついで家庭空気汚染で寄与率5%程度となり、大気微粒子汚染は見当たりません。日本の場合ならば大気微粒子汚染は8番目で寄与率3%ほど、もちろん家庭空気汚染はランク外です。


 世界気象機関(WMO)が3月にスイスで開いたシンポジウム「WMO’s Global Atmosphere Watch Symposium〜Air Quality & Health」は、2010年には大気微粒子汚染で330万人の死者、家庭空気汚染で270万人の死者と指摘します。2005年段階でPM2.5濃度をインド、中国、北米、西欧の都市・地方で評価した上のグラフが注目です。2008北京五輪より前の時期ながら、インドの都市部は中国に近づいていますし、中国の地方部でも欧米の都市部を超える濃度になりつつあります。今年初めの深刻な事態は積み上げられた結果であり、たまたま起きた事態ではありません。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー
     「インド」関連エントリー


原発新安全基準の是非は個別審査の厳格さ次第

 原子力規制委が意見公募にかけた原発の新安全基準は多層防護がうたわれているものの、個別原発でどれほど厳格な審査が実施されるかに大きく依存と読み取れます。現状と大差ない状態での再稼働まで実はあり得ます。福島原発事故の反省に立っているとは言え、津波で一気に機能を失った非常用ディーゼル発電機を分散配置や可搬式に変えれば、後は5年後に猶予して新設される「特定安全施設」の機能に頼るシナリオもあり得るからです。マスメディア報道は「電力会社がコスト増加から改修を諦めて廃炉も続出か」と伝えていますが、原子力規制委のさじ加減で実態は変わりうると見ます。なお、従来の「安全基準」ではなく「規制基準」と呼ぶようです。

 意見公募(パブリックコメント)は「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に対する意見募集ついて」で実施されています。法令の書き換えという形式で非常に読みづらいのですが、重大事故に焦点を絞って読んでみました。「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等に基づく原子力規制委員会の処分に係る審査基準等」が該当文書です。

 福島原発事故の特徴は1〜3号機の原子炉の底が抜けたばかりか、格納容器までも高温になった損傷で穴が開き、放射能封じ込め機能を失った点にあります。その結果、原子炉建屋にまで燃料体溶融で発生した水素ガスが漏れ出し、大きなガス爆発を生じました。格納容器の破損防止に注目すると、「(重大事故等による損傷の防止)第三十六条」は「発電用原子炉施設は、重大事故が発生した場合において、格納容器破損及び放射性物質が異常な水準で工場又は事業所の外へ放出されることを防止するために必要な措置を講じたものでなければならない」とします。原子力規制委員会が指定する格納容器破損モードがいくつも挙げられていて、最後が「溶融炉心・コンクリート相互作用」です。

 炉心溶融で原子炉の底が抜けた前提なので「格納容器の床上に落下した溶融炉心が床面を拡がり格納容器バウンダリと直接接触しないこと及び溶融炉心が適切に冷却されること」「溶融炉心による侵食によって、格納容器の構造部材の支持機能が喪失しないこと及び溶融炉心が適切に冷却されること」が指示されています。床のコンクリートは溶かしても、格納容器そのものの鋼板や構造材に影響させないように冷却せよというのです。

 新基準は従来設備に屋上屋を架す形で安全設備を加えます。典型的なのが5年間は建設が猶予された「特定安全施設」で、本体から百メートル離し「原子炉建屋への故意の大型航空機の衝突その他のテロリズムに対して重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれない」とされています。ここにも「格納容器破損を防止するために必要な設備を設ける」が指示され、「格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却機能(例えば、格納容器下部への注水設備)」が存在することになっています。「格納容器破損防止対策が有効に機能しなかった場合は、制御室から移動し緊急時制御室で対処することを想定」しているので、本体の機能が駄目ならここで防ぐ仕組みです。

 原発の配管は複雑怪奇です。福島原発事故でも外部からの原子炉への注水や格納容器からの排気のルートが四苦八苦しながらも作られました。実態は、東電が全配管状況を図面として把握していなかった杜撰があっただけで、きちんと設計図と工事の記録が管理されていれば、あれほど苦労することはなかったはずです。冷静になって考えれば新たな冷却ルートを既存の配管の組み合わせで作ることも可能なはずです。全く新しい冷却用配管を作れと指示されて、既存の複雑な配管や炉の機能と干渉しないように穴を開けて作る方が難しいかもしれません。出来上がった新しい安全審査の結果が額面通り新たな多層防護なのかは全く分かりません。

 第342回「大風呂敷に信頼が託しかねる原発新安全基準」で大枠について考えましたが、個別の原発審査の実情がどこまで厳格なのか、細部はこれからますます見えにくくなります。形式的にパブリックコメントをと言われても虚しい感じがします。実施段階で看板と中身に差がないと保証してくれる役割を、まさかマスメディアが果たしてくれると考える人はいないでしょう。そしてまた、福島原発事故では人間系が初動からミスを犯し続けた問題が新基準には見えていません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


放射能汚染水漏出、規制当局の眼が届かぬ点が問題

 福島第一原発で起きた地下貯水槽からの放射能汚染水漏出は2番目の貯水槽にも拡大しました。高汚染の高濃度塩水が同じなら広がらない方が不思議です。規制当局が実質的検証をせず、東電任せで丸投げした弊害です。先日の仮設配電盤故障による原子炉など冷却システム停止といい、福島原発事故で新設された原子力規制委が原発新安全基準などに追われて、終わってもいない福島事故収拾からあまりにも眼を離し過ぎている点が問題です。2番目の貯水槽でも放射性ストロンチウムが遮水シート外側の地盤で検出されました。

 毎日新聞の《クローズアップ2013:福島第1、汚染水漏れ 場当たり仮設の弊害》は「仮設設備を使い続けた弊害が出た」とのコメントを紹介した上で、その場しのぎを続ける東電側をこう伝えています。《第1原発で、貯水槽やタンクに保管されている汚染水は2日現在、約27万6000立方メートル。これに対し、保管容量は約33万立方メートルで、容量の8割強。東電は今後もタンクを増設して急場をしのぐ方針だが、事故から2年経過しても「自転車操業」は変わっていない。一方、原子力規制委員会は水漏れがあった貯水槽について法的な「使用前検査」などを実施せず、東電が作成した建設計画を事実上「追認」しただけだった。「貯水槽の建設計画を提出した段階で、規制委の承認を受けたと認識している」》


 東電発表資料にある「地下貯水槽概要」から「法面のシート構造図」を引用して、説明を追加しました。遮水シートは1.5ミリ厚のポリエチレン製で2層。一番外側のベントナイトシートは厚さ6.4ミリ、粘土質が水で膨らんで遮水する機能があります。普通の水ならば耐えられたでしょうが、高汚染の高濃度塩水にぶっつけ本番で挑むのは工学的な常識に照らして疑問があります。最初に漏洩が見つかった貯水槽では2層の遮水シート、ベントナイトともにバリアが破られていると確認済みですから、全部で7つある他の貯水槽に波及しないはずがありません。再び、「福島原発事故収拾が破綻している現状に気付け」と申し上げておきます。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


高速炉もんじゅ稼働を絶望にする安全設備要求

 原子力規制委が高速増殖炉もんじゅに対して、軽水炉に準じた多層安全設備を要求する方針です。溶融して格納容器の底に落下した炉心の冷却などを求めており、液体ナトリウムを冷却材にする高速炉では絶望的です。福島原発事故を経験した後でも核燃料サイクル維持が言われますが、安全規制で実質的に不可能になりそうです。最終的に水を掛けて冷やす手段が取れないばかりか、炉心溶融で核分裂反応の暴走が起きうる恐怖を持つ、もんじゅ稼働はほぼ消えました。

 4月3日の原子力規制委に出された「高速増殖原型炉もんじゅに係る規則等の整備について」では重大事故への対応について、こう書かれています。「高速増殖炉については炉心溶融時に即発臨界の可能性があり、この発生を防止することが非常に重要であることから」「設計基準事故より更に発生頻度は低いが結果が重大であると想定される事象が発生しても、放射性物質の放出を抑制すること」「原子炉冷却材が減少した場合において、全ての原子炉停止機能が喪失した事象が発生しても、炉心の著しい損傷を防止すること」

 さらに特定安全施設に関する要求として「軽水炉に対し特定安全施設の整備が要求されたことを踏まえ、もんじゅに対しても、炉内の溶融炉心の冷却機能、格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却機能、格納容器内雰囲気の冷却・減圧・放射性物質低減機能、格納容器の過圧破損防止機能等を維持するための対応を求める」としています。


 原子力研究開発機構の《「もんじゅ」のプラント情報》から引用した冷却系統図です。通常の原発と違い、高温の液体ナトリウムが冷却材として流れています。液体ナトリウムは漏れれば大気やコンクリート中の水と猛烈に反応して燃え上がります。事実上、唯一の安全設備として備える中央の「空気冷却器」は核分裂停止後の崩壊熱を大気中に放出する役割ですが、実際には機能が実証されていません。この2次系設備を使う以前の問題として、1次系が破綻したら冷やす手段などありません。炉心溶融して原子炉の底が破れる想定をしたらおしまいです。漏れだす液体ナトリウムがコンクリートに触れればまず燃えます。もちろん水をかけることはタブーです。ナトリウム受けに格納容器の底を鋼板で覆う対策をとっても、原子炉の底を溶かして落ちてくる溶融炉心まで受け止められるはずがありません。

 昨年9月の第317回「原発ゼロなのに核燃サイクル維持は思考停止の戯言」で野田政権末期の迷走に触れています。そこで「もんじゅは運転自体が恐怖なのです。福島原発事故のような想定外の事態が起きれば、軽水炉と違って最後は水を掛けて冷やす手段がとれません。さらに軽水炉は炉心溶融で核分裂反応が止まりますが、もんじゅの炉心溶融は核分裂反応を暴走させる可能性が高いのです。過酷事故を起こしてしまえば、福島原発周辺以上の惨状が関西一帯に生じます」と危惧しました。原子力規制委も真っ当な心配をされているようです。


福島原発事故にまだ残る重大な失敗と教訓

 河北新報が伝えた福島原発事故の新発見・注水失敗はまだ重要な教訓が残っていると見せつけました。原子力規制委が「継続的な事故分析」を掲げて福島第一の現地調査を開始する今、改めて事故全容解明が必要です。河北新報の《福島第1原発 1号機注水9割漏出か 現場、水圧で認識》は炉心溶融や水素爆発が起きた後の2011年3月20〜22日に原子炉への海水注入が足りなかったとの報道です。この結果、放射能の雲が発生して千葉県東葛地域など首都圏と東北南部にホットスポットを作ったと見られます。

 この失敗が分かったのは東電の社内テレビ会議の録画映像公開からです。東電は海水を吸い上げた段階の量で注水量を公表してきたのに、当時の吉田所長が原子炉への途中では水圧が10分の1に落ちていると発言しました。《東北大流体科学研究所の円山重直教授(熱工学)は、原子炉の温度や圧力のデータから「1号機は20日から22日、3号機は21日から23日ごろにかけて水がほとんど入らず、空だき状態だった。入った水もすぐに蒸発した」と分析。「格納容器の破損した部分から蒸気とともに放射性物質が大量に出ていた」と指摘する》

 こうして放出された放射能の雲は3月20日には東北南部へ、21日には風向きが変わって千葉県柏市など東葛地域から東京に向かい、雨で地表に落ちて各地でホットスポットになって行きました。後日、問題化した点から言えば非常に多くの首都圏人口に影響を及ぼした、大きな注水失敗です。

 政府・国会などの事故調報告は、1〜4号機が炉心溶融や水素爆発を起こした11〜15日までに焦点が合っており、20日以降の東電の不始末は見逃されてきたと言えます。タービン建屋の消火設備ラインを通じて原子炉建屋に水を流していた途中の漏水です。もっとも考えやすいのは耐震設計の重要度ランクが低くて大震災の振動で傷み、漏れが生じた可能性です。普段は重要でなくても、この事故のような緊急時には「命綱」にも変わり得る配管の耐震性設計をどうすべきか、重要な教訓になります。

 原子力規制委はこの3月27日に会合を開いて「東京電力福島第一原子力発電所における事故分析に係る検討会」について議論しています。各種の事故調報告で「基本的なところにつきましては、ある程度共通的な整理というものがあるわけでございますが、一方で現地をなかなか見ることができない等々の理由によりまして、技術的な論点もかなり残されているという状況」「廃炉のプロセスというものが進められているということになるわけでございますが、こういった原子炉等の設備機器というものがいろいろな影響を受けてございますので、今後の安全確保という観点からも現状をしっかり把握していくということが非常に重要な課題と認識」のようです。

 原発の新安全基準が策定中なのに福島原発事故から直接、学ぶのではなく、これでもかと多層防護増設を重ねる構成なのは、第342回「大風呂敷に信頼が託しかねる原発新安全基準」で指摘しました。本来の順序と逆転していますが、精力的に現地調査をして、現場で本当に問題になった事実に立脚して、安全設備を構成しなおすべきだと考えます。

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