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住民帰還は役所都合の大義、大半は未だ帰らず

 福島原発事故で汚染され荒廃した故郷に住民が帰還するのが当然、との論調をマスメディアが維持し続けるのに異議を唱えます。「汚染度が下がり帰還しうる」と「帰って何とか生活できる」との間には大きな落差があり、さらには「昔通りに満足な生活」へのギャップは現状では超えがたく大きいのです。緊急時避難準備区域解除から1年、現地福島からの報道は避難住民に寄り添っていないと常々感じ、毎日新聞・山形からの《疎開の現在:’12夏・山形/1 賠償打ち切り 帰郷への希望しぼむ /山形》を読んで納得の思いがしました。

 1年前まで緊急時避難準備区域だった福島県南相馬市原町区から、山形市の借り上げ住宅に避難する木村勝男さん(77)に取材しています。「体力が衰えたせいか、帰郷へのかすかな希望を抱いていた昨年の夏とは考えが変わってきた。昨年は残暑の日差しの中で故郷の山河の暮らしを懐かしんだが、今ではそうした気持ちも薄れた」「福島県内では、除染作業が進んでいる。それでも、木村さんは安心して故郷に戻れないと考えている。『たとえ自宅に住めたとしても、山全体を除染することはできないだろう』と思うからだ。木村さんにとって、故郷に戻るということは野山に囲まれて暮らすこと。『それがかなわないなら、気をもんでも仕方ない。もう、あきらめるしかない』」


 この地図は福島民報の《【避難準備区域解除から1年】住民帰還進まず 除染、生活基盤課題多く 5市町村》から引用したもので、木村さんの南相馬市のほかに4市町村がいま同じ問題に直面しています。

 「全域が緊急時避難準備区域だった広野町は住宅などの除染が進む。水道などインフラも復旧し、広野小と広野中は二学期から自校での授業を再開した。しかし、町民約5500人のうち、町内に戻ったのは1割の500〜600人程度」「今年1月に帰村宣言した川内村は、住宅などの除染が年内にも完了する見通しだ。ただ、周囲の森林は手つかずの状態で、住宅の除染が済んでも放射線量が比較的高い地域があるという。人口約2800人のうち週4日以上、村内で生活しているのは現在、800人程度とみられる。住民からは『放射線を心配し、腰を落ち着けて住む人は少ない』との声も漏れる」

 満足に暮らせるどころか、何とか生活できる程度にも改善されていないのに、緊急時避難準備区域住民は8月末で東京電力からの精神的苦痛に対する賠償金(1人当たり月10万円)をうち切られています。木村さんは「裕貴恵さん夫婦が南相馬市から仕送りもしてくれる。『俺の年金と合わせて節約していけば孫と3人が暮らしていけないこともない』とは思う。一方で、『本当に”帰ってこい”と言われているようだ。避難を続けたい自分の気持ちと世間の流れは、全く逆なんだな』とつぶやく」

 放射能の恐れを別にして、この程度の住民数では生活に必要な物資を扱う商店が立ちゆかないでしょうし、クルマを運転して遠くに買い物に行けない高齢者らは生きていけません。暮らせないところに帰還させようとする政府・自治体ご都合の大義に、全町避難している大熊町と富岡町、浪江町が「5年間は帰還せず」と表明、双葉町が「全町避難だから異議が言える異常な線量基準」で指摘したように抵抗しています。それが持つ重要な意味をマスメディアは全国ニュースとして伝えようとしません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


中国政府主導だった反日デモと愛国教育の正体

 尖閣をめぐり過去にない激しさだった反日デモが中国政府の「お達し」でぴたりと収まった後、ネット上に中国人ライターによる反日デモの体験ルポが登場しています。制服の警官が参加登録からバス移動、決起集会まで仕切る報告に、官製茶番劇とのお付き合いはもうたくさんだ――との思いがしてきます。さらに中国外に出ている中国人が冷静に語る愛国教育の実情もネットで読めます。こちらも歴史とは離れた「扇動」でしかない中身に、自分で相対化できる知識人はともかく、巨大な人口の民との相互理解は道遠しと考えざるを得ません。日本では右傾化が進み、日中ともに暗雲が覆いつつあります。

 「大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜」の《反日デモ参加中国人「修学旅行のバス状態でした」 現地からの反日デモ・レポート 後編》は満州事変の記念日、9月18日に瀋陽でのルポです。

 ネットで知った集合場所に行くとバスが待っていて《車上には制服姿の警官が数人おり、規定の登録用紙を配られて「名前」「ID番号」「電話番号」「QQ(チャット)の番号」「住所」「家族構成」などを記入させられた》。人民解放軍瀋陽軍区・軍人クラブ内にある八一劇場で決起集会。《集会中には「理性的な愛国を」「国内外の記者がこれを見ている、破壊活動はするな」とお達し》。バスが出発、警官が敬礼。しかし日本領事館から遠ざかるコースに不満を言うと《車内で警官が「政府の方でこういう段取りになってるから」「デモバスはそれぞれルート違うから」「最後は領事館行くから」と 説明するも、車内のデモ隊は不満》で、「下ろせ」と騒ぎが起きて車内のビデオで記録されています。

 反日の根っこにあるのが愛国教育であり、「チェンマイUpdate」が《中国の反日暴動に対するタイにいる一中国女性の見方》で、バンコクでジャーナリストをしている中国女性ツァン・チーさんの見方を紹介しています。《小学校に入り、教わる歌は愛国歌ばかりである。「母国への頌歌」、「共産党なしには新中国はなかった」、「太陽は紅く、毛主席は最愛の人」などである。学校で見る映画は、革命映画ばかりである。その中で悪者は、哀れであほで邪悪な、いつも日本人か地主である。ヒーローは、赤軍兵士、共産党メンバー、農民、労働者同胞となる》

 《こういった独善的な刷り込みは大学までも続くので、私は、大学では強制的で時間を多くとるマルクス・レーニン主義のイデオロギーと共産党の主義・政策を教える「政治講義」ををスキップしたほどだ。こういったものが多く教えられる一方で、市民としての権利をいかに要求し、使うかといったことは一切教えられてこなかった。前向きな姿勢で、合理的で、平和的で、合法的なやり方でいかに価値や力を獲得すべきかも教えられない。我慢して、交渉し、妥協する方法についても教えられない。他人の利益を尊重することも教えられない。ただ教えられるのは、「敵を倒せ!」ということだけである》

 今度の事態について、レコードチャイナの《<反日デモ>ナショナリズムの操作が招いた報い、負のパワーが中国社会を覆い始めた―香港誌》は自由な香港からの視点で危機感を表明しています。

 《今回の暴動と化した反日デモは、中国の歴史上のターニングポイントに位置づけることができる。それは、この10年続いた「繁栄の時代」の終わりと動乱の時代の幕開けを意味している。社会の中の「悪」のパワーがさらに呼び起こされ、すべての人(特に都市部の中産階級)を新たな恐怖のどん底に陥れた》《もはや、どんなに立派なショッピングセンターや高級ホテルに隠れても、安心感は全く得られない。人々は否が応にも現政権の「維穏(社会安定の維持)」体制に頼らざるを得ない。だが、今後はこうした悪循環が加速することで、理性を求める声は一層出しづらくなり、一部の極端な勢力が中国社会全体を牛耳るようになっていくだろう》

 尖閣諸島をめぐる中国の軍事的な威嚇発言と行動で、日本でも日米安保体制が完全に見直され、かつ集団的自衛権行使が表面に躍り出るまでになっています。日本の政界の右傾化は避けようもなく、それが中国に跳ね返る流れにならざるを得ません。

 【追補】さらに、ニューズウイーク「中国ナルシスト愛国心の暴走」にこうあります。《とはいえ、被害者意識は中国当局が育ててきたいびつな愛国主義の一面にすぎない。それと同じくらい重要なのは、中国政府が自国民に刷り込んできた「身勝手に国益を追求する他の大国と違って、中国は国際社会で正義を実践する国だ」というイメージだ》
 《一部の外交当局者や専門家は間違いなく、状況をもっときちんと把握している。彼らは「中国の外交は正しい」というイメージに違和感を覚えているかもしれないが、それを公言することはない。政府の外交政策について民衆やエリート層が受け入れる批判は、政府が弱腰過ぎるというものだけだ》

 【参照】インターネットで読み解く!「反日」関連エントリー


福島原発の放射能早期流出、防災計画に大影響

 福島原発事故から1年半も経過して「事故翌日 双葉町1590マイクロシーベルト」(東京新聞)との驚くべき数字が公表されました。公衆の年間被曝限度を40分ほどで浴びてしまう高線量で、資料を見直すとさらに高濃度の放射能の雲が原発から流出したのは確実です。その範囲は25キロにも及び、今後の防災対策では30キロ圏内は事故があれば直ちに退去すべきとなるでしょう。避難人口が膨大になり、足の確保など地域の防災計画に根本的で大きな見直しが迫られます。

 震災や地震で事故当時に記録が回収できなかったモニタリングポスト25カ所について、福島県は「昨年三月十一日から同三十一日までの、放射性物質の飛散状況をモニタリングポストで観測した結果を公表した。空間放射線量の最大値は、原発から北西に約五・六キロの双葉町上羽鳥で、十二日午後三時に毎時一五九〇マイクロシーベルトを記録した」。下のグラフが上羽鳥での変化です。


 格納容器の圧力を下げる大規模な蒸気排出「ベント」が1号機で午後2時半ごろに実施され、流出した放射能の雲が襲来した結果です。午前10時にも毎時6.9マイクロシーベルトのピークがあり、こちらは中途半端なベントで失敗した時刻と一致しました。


 午後2時半ごろ実施のベントで雲はどう流れたのか、上の地図を見てください。東電が「福島第一原子力発電所事故における放射性物質の大気中への放出量の推定について」で公表しています。双葉町役場の東側を北へ流れ、浪江町を経て午後5時過ぎには南相馬市役所付近に達しました。上羽鳥モニタリングポストは双葉町役場から西に1キロ以上離れています。放射能の雲は真上を通っておらず、雲の直下はさらに高線量だったはずです。ベントでの放出量は希ガス3000兆ベクレル、ヨウ素131が500兆ベクレル、セシウム134が10兆ベクレル、セシウム137が8兆ベクレルという膨大なものでした。

 この時刻、住民の避難は原発から10キロ圏内に限られていました。20キロ圏内の立ち退きが指示されるのは午後6時25分です。ところが、今回のデータで超高線量の雲が既に20キロ圏を超えていた恐怖が判明しました。原発側で把握できていなかったのでしょうか。福島第一原発モニタリングポストの配置は以下の通りです。


 1号機の北側で生きていたモニタリングポストは「MP−4」だけで、ベントの際に毎時1050マイクロシーベルトのピークを記録しています。しかし、放出高度が120メートルと高く、真北に流れた経路から西に外れていたためにモニターしきれていません。本来は放射能の雲の線量を把握して風向きから関係自治体に警告を発すべきなのに、監視体制は全くのザル体制だったと言わざるを得ません。まさしく緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」の出番だったのです。新しくできた原子力規制委員会は「防災計画も整わなければ原発再稼働はない」と明言しています。

 【参照】「SPEEDIデータ隠しで乳児を犠牲にした政府」
   インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


原発丸投げ政府と危うい規制委、再処理工場

 福島原発事故から1年半、原子力政策を転換する大きな節目が来ているのに、開いた口がふさがらない展望の無さです。民主党政権は脱原発、2030年代の原発ゼロを掲げるエネルギー戦略を閣議で決定しませんでした。一方で建設中の3原発はそのまま続行させ、停止中の原発再稼働は新たに発足した原子力規制委員会に丸投げしました。その規制委の発足記者会見では新安全基準への道筋がまるで見えません。原発ゼロなのに維持を決めた核燃サイクルの基幹である六ケ所再処理工場がまた完工延期を決め、出来たとしても当初予定から16年遅れの体たらくです。

 東京新聞の「原発ゼロ ズルズル後退 エネ環戦略 閣議決定せず」は「原発ゼロ戦略の閣議決定を見送ったのは、脱原発を打ち出した戦略に反発を強める経団連などの経済界や原発関連施設立地の自治体、米国などに配慮し、政策の調整の余地を残すためとみられる」と伝えます。原発運転期間を40年に限ることも明記していたのですが、建設中の原発続行を経済産業相が認めたために2030年代に運転ゼロの目標も怪しくなっています。

 NHKの「姿勢問われる原子力規制委員会」は率直な疑問をいくつも投げています。「規制委員会が安全性をどのような方法で評価し運転再開を判断するのかは示されていません」。事務局である「原子力規制庁の職員の8割以上は原発事故で『専門性の欠如』や『初動の対応のまずさ』を指摘された保安院と原子力安全委員会の職員です」

 政府と国会の事故調査委が出した福島原発事故の原因は違っています。政府の従来の暫定基準と違って新安全基準には、その原因を反映させざるを得ません。原因を確定する道筋すら見えません。

 来年10月を完工と延期した六ケ所再処理工場にも、1989年に事業申請した当時とは環境が激変していると指摘せざるを得ません。例えば、本格運転が始まると使用済み核燃料棒を切り刻んで溶かすために、放射性の希ガス「クリプトン85」だけで年間33京ベクレルを環境に放出します。1京は1億の1億倍です。トリチウムなどの放出も桁はずれです。福島原発事故を経験した国民は食品1キロ当たり10ベクレル単位の放射性物質に敏感になっています。この状況で、完工したから運転ですと認められるか、大きな疑問があります。

 【参照】特集F1「核心曖昧な事故調報告は安全基準再建に障害」
   インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


尖閣対立に危険な臭い:『戦闘』すら可能性が

 中国の巡視船6隻による尖閣列島領海侵入、公船に対し実力行使が出来ず併走するしかない海上保安庁巡視船を見て、間もなく休漁期が開けて中国漁船が混じると厄介に思えました。領海に入る漁船は拿捕出来ますが、中国巡視船が割ってはいるとどうなるか。日本が実効支配している現状を崩すのが目的ならば、領海に入って操業する中国漁船を日本側に拿捕させなければよいのです。日本に備えがあるか心配なところに、台湾側がもっと危険な計画を持っていました。

 レコードチャイナの《<尖閣問題>漁船100隻超による抗議活動を計画=台湾当局が護衛―台湾》は「台湾紙・中国時報によると、台湾の海洋巡視部局は13日、漁業警備の現場をメディアに公開した。場所は尖閣諸島から45カイリ離れた地点。責任者はもし9月下旬に漁民、あるいは台湾の議員が尖閣諸島上陸を希望するならば、特殊勤務隊員を派遣して日本側の妨害を排除すると約束した」と伝えました。

 日本と台湾の公権力に属する者同士が発砲はしないにせよ、直接ぶつかって何らかの実力行使をする――『戦闘』と呼んでいい事態が危惧されます。海上保安部門が決定できる軽微な問題ではないと考えます。中国巡視船との接触や漁船拿捕への妨害も発生すれば、これに近いレベルです。

 中国本土での日系工場焼き討ちやトヨタ販売店多数の襲撃には意外な感じを持ちました。しかし、新華社の《日本車破壊の4人を逮捕 日本製品ボイコットのデモで=中国広東省》の論理を注意深く読めば、中国市民の私有財産を脅かすのは犯罪だが、中国市民が購入する前の日本製品は別と受け取れます。「市民が日本車を購入すれば、私有財産となる。市民が長い間資金を貯めて買ったものかもしれない。日本製品のボイコットは個人の考えから出発するものでも、何の理由もなしに他人の日本車を壊すことは私有財産を脅かす行為だ」

 「大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜」の「毛沢東の肖像画まで登場した反日デモの性質をざっくり考えてみた」は「そもそも中国において、都市部で人間が百人以上集まって何かをガヤガヤとやっていたら、それは金儲けやバーゲンに関係したものでない限り、基本的にはほとんどがどこかの誰かの意を受けた政治闘争や大衆動員だと考えるべきものなのだ」とした上で、日本メディアが往々にして唱えるネットの圧力による暴走を否定します。「ネット上で『反日言論』が盛り上がっているのは事実だが、それは3.のように当局の政治的正義として反日が示されているから、ネットが活発化しているに過ぎない。ニワトリとタマゴの順番が逆である」

 これまでとは明らかに違う局面に踏み込んだ中国側に対し、日本政府は全く準備が出来ていない印象です。竹島問題であった「解決しないことをもって解決とする」合意を破って右往左往している韓国大統領と、尖閣列島での「棚上げ」原則を国有化で侵した野田首相とはほとんど同じです。実効支配している側は事を荒立てずに推移させていれば有利なのに、自分で問題を顕在化させた愚行として記憶されるでしょう。『戦闘』行為など呼び込まないよう願うのみです。


原発ゼロなのに核燃サイクル維持は思考停止の戯言(追)

 政府の新たなエネルギー・環境戦略原案の内容がメディアで一斉に伝えられています。20年以上先の2030年代に原発稼働ゼロを目指しながら核燃料サイクルを維持、「もんじゅ」も研究炉として動かす――とは「現状を固定して何も変えない」と同義です。文字面だけ見ても、原発ゼロとサイクル維持が並んでいる愚かしさに、原子力の素人政治家が原子力ムラ官僚に踊らされている様があまりに露骨です。こんな「朝三暮四」で福島原発事故の実態を見てしまった国民を騙すことは不可能でしょう。

 毎日新聞の《エネ戦略原案:政府「核燃サイクル維持」 原発ゼロも併記》は最初から切れ味が悪い表現ばかり。「2030年代の原発稼働ゼロを目指す方針を明記する一方、実現方法の見直し規定を盛り込んだ」「核燃料サイクル政策を巡っては、再処理事業を当面維持する方針を明示し、関連施設を抱える青森県などへの配慮を示す」と、各方面への「配慮」だらけだったと語っています。

 高速増殖炉「もんじゅ」(福井・敦賀)については「政策転換を図り、放射性廃棄物減量化を目指す研究炉としたうえで成果が確認されれば研究を終了する方針」ですが、高温液体ナトリウムを冷却材とするもんじゅは運転自体が恐怖なのです。福島原発事故のような想定外の事態が起きれば、軽水炉と違って最後は水を掛けて冷やす手段がとれません。さらに軽水炉は炉心溶融で核分裂反応が止まりますが、もんじゅの炉心溶融は核分裂反応を暴走させる可能性が高いのです。過酷事故を起こしてしまえば、福島原発周辺以上の惨状が関西一帯に生じます。

 昨年秋に書いた《「もんじゅ」と再処理工場の廃止に踏み出そう》で核燃料サイクル政策の見直し遅れを指摘し、「具体策検討を急がないと、判断しようにも出来ない状況に陥ります。民主党政権に官僚に指示して段取りをつける能力があるのか心配です」と危惧した通りに事態は動いています。過剰になっている大量のプルトニウム問題や国際的な調整、使用済み核燃料の最終処分問題など何も手を付けず、無手勝流で行く――字面を変えただけの現状維持路線です。

 【追補】政府は14日に新たなエネルギー・環境戦略をまとめました。2030年代の原発ゼロ目指す▼原発再稼働ありとし運転は40年▼核燃料サイクル維持▼再生可能エネルギーは30年代に3倍▼電力システム改革や地球温暖化対策は先送り――が骨子です。

 基本的に原発推進の日経新聞《「原発ゼロ」矛盾随所に 再稼働や核燃サイクル継続》からも批判が出ています。「衆院解散・総選挙もにらんだ急造の戦略は詰めの甘さが随所に目立つ。『原発稼働ゼロ』の時期や手法は明確でなく、再生可能エネルギーを2030年に10年の3倍に増やす目標も実現のめどは立たない。電気料金の上昇で家庭や企業に及ぶ負担増も不透明だ」

 そして、野田首相の発言として「あまりに確定的なことを決めるのはむしろ無責任な姿勢だ」と述べたと伝えています。首相には「戦略」の意味が理解できていません。動きがとれなくなっている隘路をどう切り開いていくかこそ、示すべきです。これでは現状固定の上に原発ゼロを乗っけただけであり、政策上の矛盾はますます深くなりました。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


インテルのPCプロセッサ支配に黄昏が訪れた

 永遠に続くかに思われたインテルのコンピュータ・プロセッサ業界支配に、ようやく黄昏の時が来ました。《プロセッサの売れ行きの主流がARM系SoCになりIntelは売上予測を下方修正》(jp.techcrunch.com)が第3四半期の売上高は「売上の当初予想142億ドルに対して、今回の修正予想は138億ドルだ。それはAMDとの競合によるものではなく、AMDも同じ問題に直面している」と伝えました。インテルのマイクロプロセッサはウィンドウズPCやマックPCに使われている頭脳部分で、AMDと覇を競ってきました。

 台頭した競争相手は携帯電話に使われてきたARM系SoCで「SoC:Systems on a Chip」が示すようにワンチップに機能を統合しながら低消費電力であり、かつ高い演算能力を持ちます。パソコンの潜在的な対抗馬スマートフォンからパソコンと直接競合し始めたタブレット、さらに小型のパソコンにまで搭載されています。開発元のARM社(英国)は技術をライセンスするだけで自社生産はしておらず、プロセッサ生産は世界で数十社が手掛けています。

 もちろんパソコンの市場が消えることはありませんが、売り上げは落ちていてヒューレットパッカード社は第3四半期に89億ドルの赤字を見込んだそうです。インテルの主力商品の市場は斜陽化していく一方です。実は何年も前からインテルのPCプロセッサはオーバースペックではないかと思われ始めていました。そんなに高速で演算する用途は個人ユーザーには存在しないと言われつつも、2年ごとに約2倍、トランジスタの集積度が上がるという「ムーアの法則」の看板は掲げたままで高集積高速化は高発熱を生みました。夏場にエアコンが使えない我が家では冷却ファンでは足りず、水冷式のプロセッサ・クーラーを付けないと不安定でたまらない状況です。「どこでもコンピュータ」の時代にインテルは合っていません。

 「あいふぉんす。」の「iPad以前とiPad以後」が2011年のタブレットとパソコンの相克についてまとめています。「さらに興味深いことは、pad(=tablet)の出荷台数である。2011年Q4のDesktopPCの出荷台数は2千9百万台。一方tabletの出荷台数は、2千6百万台を越えた。2011年を通すと、まだDesktopPCの出荷台数はtabletの出荷台数を上回っているが、tabletがDesktopPCの出荷台数を追い抜くのは時間の問題であろう」

 「今なぜtabletが爆発的に普及し始めたのだろうか」。もともとタブレットは特定用途向けにあちこちで使われていたが「iPadはこの壁を打ち壊したのである。iPadは、この壁を打ち壊し、特定用途ではなく、どの様な用途にも変化を遂げるデバイスとしてtabletを蘇らせたのだ」「ただそれを実現する為には、いくつかの技術的な要素が揃わないければならない。思うに、その技術的要素とは、次の3つであろう。まずは、マルチタッチというUI技術。次は、低消費電力を常に目指してきたARMのCPU性能の向上。3点目は、無線通信インフラの整備を基盤としたインターネットの普及」

 ARM社の日本法人は横浜市にあって、そのホームページで技術情報を提供しています。「モバイル コンピューティング ― ネットブック、スマートブック、タブレット、およびeリーダー」には桁違いの低い電力消費で済む優位ぶりが書かれています。「ローカルおよびWebベース アプリケーション向けの超低消費電力プロセッサ・コア」の性能は「最大電力消費200mW(今日のPCの10W台に対して)」「アイドル時の電力消費約10mW(今日のPCの数W台に対して)」

 ARM社の創業は1990年で、アップルなど3社のジョイントベンチャーです。それから20年余り、インテル全盛の時代を日陰で生き抜いてきて、ついに表舞台に登場してきました。

 【参照】インターネットで読み解く!「パソコン」関連エントリー


政府こそ原子力ムラ:規制委人事、ゼロに難題

 政府は新たに発足する原子力規制委の委員人事について、与党内にも大異論があるのに国会の同意を得ることなく、首相の権限で任命します。原発ゼロをめぐる経済産業省の難題山積み文書といい、脱「原子力ムラ」の政策が模索されるどころか、政府こそが原子力ムラ本体であると判明しつつあります。国会は7日まで審議はでき、同意人事の採決は可能でした。福島原発事故を受けて民主党は脱原発なのですが、間もなく政権を去ることが確実な情勢では官僚を動かすことが出来ず、官僚に振り回されています。

 原子力規制委員会の人事については、8月の「原子力規制委員長にはレフェリー役の中立派を」で紹介しているように原子力の専門家や体制派ばかりの顔ぶれに与野党から疑問が噴出しました。それにもかかわらず、規制委人事差し替えが検討された形跡すらありません。その上での国会無視、強行突破です。

 東京新聞の《原発監視はや「骨抜き」 事後同意も不要論 規制委人事 国会素通り》は「国会同意人事に関し、今国会では採決せず、野田佳彦首相の権限で任命する方針を固めた。次の国会での事後同意を求めないことも検討している。規制委は政府からの独立性が高いにもかかわらず、国会のチェックを受けようとしない姿勢は政権として無責任と言われても仕方ない」と主張します。

 経済産業省が出した「エネルギー・環境戦略策定に当たっての検討事項について」は原発をゼロにすれば大変なことになるとのトーンで貫かれています。電力料金の大幅値上げや原子力安全を支える技術と人材の喪失、外交・安全保障への影響、地球温暖化対策への支障など、マイナス要素のオンパレードです。

 脱原発を実現するために知恵を絞ればこのようなシナリオがあるとの文書が存在した上でなら理解できますが、これでは「無理だからお止めなさい」と言っているも同然です。50兆円、100兆円の巨額費用が掛かると脅されて、注釈無しで伝えるマスメディアも同罪と言えるでしょう。前提の置き方でどうにでも変わる数字を確定的に扱うマスコミがどうかしています。

 原発維持と核開発の潜在能力が関係しているかの議論について、河野太郎議員が「原発と抑止力」で鋭い指摘をしています。「もしプルトニウム爆弾を作って核実験をやれば、NPT違反になるのだから、外国からの原発のウラン燃料の供給は止まる。だから、もし万が一、日本が核開発をやろうというならば、原子力への依存度をあらかじめ下げておく必要がある」

 地球温暖化についても墨守する前提が間違っていることは、昨年末の「京都議定書延長で良い子ぶる余裕は存在しない」で「東日本大震災と福島原発事故の収拾・復興へ膨大なエネルギーを投じるよう迫られている現在、冷ややかに一歩引いて対処するべきです」と述べた通りです。ニューヨークタイムズがウェブに掲示している「各国別の温暖化ガス排出量グラフ」で日本のボリュームがいかに小さいかを見てください。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


橋下維新八策と永田町・政治部独善の崩壊

 橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会が国政進出で打ち出すマニフェスト「維新八策」の最終案が公表されました。この全文がネットで読める場所が日経新聞電子版にしかない点が、既に示唆的です。自民党を霞ませてしまう、この最終案は橋下ファンから待望されていたはずと考えていましたが、ツイッターでは批判的な意見が多いと見ました。しかし、より衝撃的だったのは橋下氏が相変わらず大阪市長のままでいて、東京には出ないと宣言した事実です。永田町の政治家とマスメディア政治部は東京中心=永田町完結政治へ回帰を待望していたのに、それは当分無くなりました。

 みんなの党の渡辺代表と会談した後、マスコミが観測記事を流していた橋下氏の国政進出はあっさり否定されました。橋下氏のツイート(8月29日)にこうあります。《渡辺さんとの会談で、僕が「国政に出る」、「市長を辞職するときのセリフももう考えた」と言い、ナンバー2にあろうことか中川議員を置き、しかも松井知事も国政に出て、大阪でまたダブル選をやると言ったのこと。ここまでの嘘は週刊誌でもあり得ない》

 ツイッターの動向が見られる「buzztter」で「維新八策」を検索すると、最終案発表後のツイートピークは44件と平凡な数字ながら、だらだらと関連発言が続いています。「駄目な自民党と民主党に代わる政党になって、世直しをして欲しい」との応援組に対して、「よく読むとかなり怖い維新八策」「新自由主義のオンパレード」「格差を改善すると『政権交代』を叫んだ民主党に騙された人々が、今度は維新の会に騙される」など批判的なツイートの方が多い印象です。

 ブログを検索しても同じ傾向です。「常夏島日記」の「橋下氏の維新八策に日銀改革が含まれない理由」は「橋下氏は、中曽根康弘―橋本龍太郎―小泉純一郎とつながる『戦後政治の総決算』路線の嫡子として認められつつあるということであり、その路線を担った人間集団の中核的な人材の少なくとも一部が橋下氏のブレーンとして参画しているのでしょう」と断じます。有名ブロガーでは「2015年の春ごろに日本消沈」(極東ブログ)が「最終案の全文が出たので読んでみたのだが、正直、皆目意味がわからなかった」「新味はなく、政権交代時の民主党のような威勢の良さだけで押すなら、現在の民主党のように躓き、政治の第三極とはならないだろう」と指摘します。ただ、それでも相当数のサイレントマジョリティは維新に付いていくと見るべきです。

 まだ国会議員5人の政党要件を満たしていない「党」のマニフェストと議員集めが全国紙各紙で大きく報じられ、日経がその全文を読めるようにするとは異例すぎます。民主党による政権交代を旧態依然「政治とカネ」追及スタイルでつつき壊し、得るべき果実は何も残せなかったメディア政治部。その結果出来る総選挙での「真空地帯」に維新が進出します。連立政権の一角に納まる可能性があるからこその過剰報道ですが、民主党と決定的に違うのは、橋下氏を永田町の政治家と政治部が囲い込めていない点です。維新八策の中身よりも、それをテコにした議員選別よりも不安にさせている要因は「東京の常識」が通じないギャップでしょう。東京都の石原知事がいかに乱暴な発言をしても永田町の飛び地での「乱」に過ぎませんが、橋下政治手法への土地勘は狂いっぱなしです。