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2大政党時代を終わらせる首相に議員統制は無理

 民自公3党合意による増税・社会保障一体改革関連法案の衆院採決で、民主党内から多数の反対・棄権が出る見込みです。消費増税と引き替えに民主党が掲げてきた旗をほぼ下ろしてしまう野田首相が所属議員を縛れると考える方が、むしろ異常です。民自2大政党時代に入って少数党から立候補しても勝てないのが常識になりました。しかし、次の総選挙で2大政党の支配は終わりそうです。選挙で落ちる恐怖が求心力にならなくなったのです。

 民主党とともに人気が落ちたのは自民党もです。第308回「政党支持率4割連合が決める政治に正統性無し」で、増税協議を進める過程で民主、自民ともに政党支持率がずるずると下がっていく様子をグラフにしました。公明と3党合わせても4割しかありません。現在は無党派層になっている広大な領域を取るのは別の党です。2大政党時代終了の引き金は引かれました。

 野田首相は不退転の決意さえ固めれば、民主党得意の「政治主導」で何でも出来ると思いこんでいるかのようです。それは在京マスメディア各社の応援のせいかも知れません。せっかく世論調査をしながら民意の在り方よりも、小沢系造反に焦点を絞る、次の日経報道が典型的です。

 25日朝刊に出た日経新聞の《小沢系造反の動き「理解できず」53% 本社世論調査》で世論調査の中身を見ると、民自公3党合意について「評価する」は36%なのに「評価しない」が52%もありました。大飯原発再稼働についても「賛成36%、反対46%」でした。これだけ民意と離れていれば国政選挙でしっぺ返しを食うのは必然です。民主の総選挙敗北を必至にした首相を、自公とマスメディアが支える奇妙な構図が浮かび上がっています。政党支持率のようにメディア支持率が調査できるならば、既成マスメディアは民自公3党と一緒に落ち込んでいるでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「政党支持率」関連エントリー


科学者・技術者への不信感と原子力学会の欺瞞

 東日本大震災と福島原発事故を受けた平成24年版科学技術白書はかなり苦渋に満ちたトーンになっています。メディア報道は科学者・技術者への国民の信頼が揺らいでいると伝えましたが、不信感の段階まで進みつつあると感じます。過去の失敗を認めて挽回すべく率先して努力しているならまだしも、原子力学会は政府や国会の事故調査委が報告を出すこの時期に、これから事故調を立ち上げ、来年末の報告を目指します。それで自己満足以外に何の役に立つのか、科学技術者の社会的な責任はどうしたと国民から思われて当然です。

 白書第1章第2節「科学技術政策に問われているもの」に震災前後での国民意識の断絶が現れています。《今回の地震・津波や原子力発電所事故により、科学者や技術者に対する国民の信頼感は低下したと言わざるを得ない。科学技術政策研究所の調査によると、震災前は12〜15%の国民が「科学者の話は信頼できる」としていたのに対して、震災後は約6%と半分以下にまで低下している。「どちらかというと信頼できる」を含む肯定的回答の割合を見ても、震災前に76〜85%だったものが、震災後は震災前より10ポイント強も低い65%前後で推移している》とあります。次はもう一歩、踏み込んだ設問です。


 《震災前は「科学技術の研究開発の方向性は、内容をよく知っている専門家が決めるのがよい」との意見について、「そう思う」と回答した者が59.1%であったのに対して、震災後は19.5%へと1/3程度にまで激減している。「どちらかというとそう思う」を含む肯定的回答の割合を見ても、震災前は78.8%であったのに対して、震災後は45.0%へと大幅に低下している》

 震災前の回答ならば、ほぼ専門家に丸投げの意識と見てかまわないと思います。しかし、震災後には肯定派45.0%に対し前は極小だった否定派が半分の22.3%もあります。「どちらともいえない」が29.6%まで増えているので、これでは専門家に判断を委任しているとは到底言えません。

 この不信感は地震予知の失敗もあるでしょうが、原発事故対応の底なしの無惨さや放射線被曝影響について出された情報のいい加減さなどが非常に大きく働いたと思います。政府の出す食品や環境の基準を信頼しない市民が多数、存在するようになりました。専門家の否定そのものです。

 世界最大級になった福島原発事故を専門領域に抱える日本原子力学会は、3月の定期大会で事故の真剣な究明をしてこなかったと身内から批判を浴びました。アリバイ作りのような取りまとめ作業を専門委で始めたものの、結局は「福島原発:原子力学会が調査委 発生1年3カ月でやっと」(毎日新聞)となりました。

 《発生から1年以上たってからの発足について、調査委員長に就任する田中知(さとる)・東京大教授は「遅いとの批判もあろうが、廃炉作業の過程で判明する事実もある。今だからこそ俯瞰(ふかん)的に事故を見つめられる」と説明した》

 《東電や政府が公表したデータを活用して》調査とあるので、新しいデータを発掘する気はないようです。それなら専門スタッフが手薄な政府や国会の事故調に全面協力して、専門家の視点で切り込んでいくべきでした。国の事故調が夏場に報告を出し、それに基づく公的措置が採られた後の来年末に報告を出す意義が説明されていません。国の事故調報告を踏襲するのなら意味はありませんし、それを否定する画期的な中身になるのなら「証文の出し遅れ」として、逆に社会的な批判を受けるのではありませんか。どちらのケースも国民からの不信を増幅するだけです。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


原因は語らず懸命努力説明ばかり東電事故報告

 福島原発事故で東電は20日、「福島原子力事故調査報告書」を公表しました。膨大すぎて読み切れませんが、3基の原子炉が炉心溶融を起こすに至ったポイントに絞れば、襲ってくる難事態に東電側は懸命に努力した、とひたすら説明するものの、事故調査報告で必須である「そうなった原因は何か」に全く答えていません。

 最初に爆発した1号機について3月に書いた第300回「福島事故責任は誰にあるか、判明事実から究明」に、政府事故調の指摘を入れました。全電源喪失後に残る最後の非常冷却装置「非常用復水器」について「1号機の全運転員は非常用復水器作動の経験がなかった」です。このために非常用復水器が津波襲来後に動作していないことに遅くまで気付かず、最終的に冷却容量のごく一部しか使われなかったので炉心溶融を起こしました。

 東電報告書は「非常用復水器に関する教育については、日々の現場巡視や定例試験、OJTなどの中で行われており、その中で、その系統・機能やインターロックを把握している。また、津波襲来までは非常用復水器を用いて原子炉圧力制御を行っており、運転員は運転操作に必要な知識は有していた」と強弁します。動作が停止したのは電源喪失で自動的に弁が閉じる仕組みになっていたからであり、電源喪失下では中央制御室から弁閉鎖を発見するのは困難とします。

 1号機と同型の原子炉を運転する米国では、電源喪失時に弁閉鎖となるから運転員は手動で弁を開けに行く訓練をすることになっています。政府事故調の指摘も「電源喪失時に使ったことがあるのか」を問うているものであり、東電の「津波襲来前には使えていた」はピントはずれもいいところです。原子炉を開発した米国側が緊急時に必要としている運転員訓練を日本側に伝えないはずがなく、誰かが握りつぶしたとしか考えられません。

 誰が、どうして、そのような愚かな行為をしたのかを解明するのが東電の社内報告のはず。「交流電源、直流電源が喪失した場合の機器・系統の動きについて、非常用設備を中心に検討分析し、必要に応じて手順書や教育・訓練へ反映をすることが必要であると考えられる」という当事者意識が無い結論は噴飯ものです。原因を究明すれば責任を取らねばならない人物が出ます。それをひたすら避けているのが、福島事故全体の構図です。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


政党支持率4割連合が決める政治に正統性無し

 消費税増税と社会保障改革を巡る民主・自民・公明の3党合意がなったことに全国紙は各紙社説で賛同です。長年の「決められない政治」から「決める政治」へとの評価ですが、政党支持率の推移を見ればこの3党が民意を代表していないことは明らかです。3党合計が、次にグラフを掲げるNHK政治意識月例調査で4割、「民主8%、最低を更新=内閣支持24%、不支持55%−時事世論調査」にいたっては民主8、自民13、公明4で計25%しかありません。国会の現有議席がどうあれ正統性を欠くと指摘します。


 NHK政治意識月例調査では、政党支持率の3党合計は5割を軽く超えて6割前後が常態でした。2010年半ば、鳩山内閣退陣前後に41%台まで急降下、菅首相で持ち直したものの退陣時には40%に下がりました。野田政権になって本格的な回復はなく、消費増税路線が強まった昨年12月に38%になってから4割前後に低迷したままです。原因は民主党政権の不人気だけではありません。過去のように民主が沈めば自民が浮くのではなく、自民党もいっしょに沈んでいます。

 2009年総選挙で何が語られたか、有権者は当然、記憶しています。増税問題を含めて民主党の背信行為の数々に厳しくならざるを得ません。3党による増税協議が有権者の政治不信をさらに強める構造になっています。公党間で政策を妥協し合うというより、民主党がずるずると総選挙公約を下ろし続ける形で協議は進みます。このまま進行すれば、初の本格政権交代で残されたのは消費税増税だけだった――想像もしたくない、空しい事態が目に見えるところまで来ています。

 譲歩を迫り攻める側の自公両党にも有利には働きません。持っている政策がもうこりごりと思える自公政権時代と本質的に変わりません。野に下ってから2年余り、本格的に政策を磨き直す時間は十分にあったのですが、そうする動機もやる気も無かったと、有権者は見透かしています。復調からは遠い自民の政党支持率推移がそれを語っていると思います。

 【参照】第294回「沈鬱な政治不信の連鎖:国民と政治家と官僚と」
    インターネットで読み解く!「政党支持率」関連エントリー


9歳少女の給食告発ブログが世間を動かす

 貧弱で食べ足りない英国の学校給食を毎日、写真撮影してブログで採点と合わせ公開した9歳少女が、本当に世間を動かすことになりました。ツィッターやCNNの《英国小学生の「給食」ブログに世界が注目 地元では政治論争も》などで、少女に対して写真撮影の禁止命令が報じられると、お終いと告げるブログ「Goodbye」に異例と言える200万件ものアクセスが発生しました。

 この少女マーサさんは14日、当日の新聞ヘッドラインに記事が出たことを理由に撮影禁止を言い渡されました。CNNは《地元アーガイル・アンド・ビュートの協議会は、学校給食サービスへの不当な攻撃がマスコミで大きく取り上げられ、給食調理スタッフの間で仕事への不安が高まっているとしてマーサさんに食堂での写真撮影を禁じた。マーサさんはブログ上で「写真が撮れなくなって悲しいし、給食に関する意見交換やみんなの給食の写真が見られなくなるのは寂しい」と不満を述べた》と伝えました。


 ブログ記事が始まった5月8日分と、6月の高採点分の給食を並べてみました。5月8日分の投げやりな感じは、日本のネット上で「コーンは数が数えられるほどしかない」と失笑を買いました。一方で6月分の充実ぶりは一見して明らかです。マーサさんには世界中から学校給食の写真が届けられ、ブログは貧困な世界を含めて子どもと食べ物を考えるグローバルな交流の場にもなっていました。

 撮影禁止になる前でも毎日数万人が訪れていた人気ブログに、当局の撮影禁止命令が火をつけた格好です。「建設的な批評をどうして禁じるのだ」など応援のコメントは2000件以上に上ります。200万件アクセスとも合わせて、少女の父親から当局側にも伝えられたのでしょう。最新のブログでは来週からは写真が出せると書かれています。

 ★その後の話:”あなたは食べるものがあるだけ幸せ”とのメッセージに出会い、少女は食べるものがない途上国の子どもに目を向けて募金を募ることになります。2億円近い寄付が集まり、アフリカの給食施設建設の支援などが実現します。少女のブログ・リポートなら「Lirangwe Report」を、または【あなたの良心が、世界を変える】を御覧ください。

 【参照】インターネットで読み解く!「給食」関連エントリー


形式論理ばかりの国会事故調に解明期待は愚か

 最初から福島原発事故の責任追及をしないと公言して独自の戦いをしている政府事故調に比べて、事故真相解明の期待が持てる感じがしていた国会事故調にも暗雲が掛かってきました。最終報告一歩手前、6月9日の「現時点での論点整理」に見られるのは、石頭の形式論理ばかり。与えられた諸条件を固定的に見て、そもそも前提が間違っている可能性を考えないようですから卓見が出てくる可能性は極めて薄いでしょう。

 「論点1:今回の事故の対応においては、官邸が、オンサイト(発電所内)の事故対応に過剰な介入をしたのではないか」はメディア報道で話題です。いわゆる「東電の全面撤退」を菅首相が阻止したかどうか、の議論です。吉田所長が全電源喪失下で6基も炉がある原発を10人を残して守ると考えたのは「東京電力が残留する人数として検討・決定したものではない。したがって、今回の事故処理にあたって、菅総理が東京電力の全員撤退を阻止したと理解することはできない」と決めつけています。撤退の社長決裁文書でも残っていないと認定できない姿勢です。

 また、「原子炉が厳しい状況に陥った後も、事故対応できたのは、炉の状況を最もよく把握していた現場であった。また、最後まで持ち場を離れない、現場職員・協力会社の使命感が、今回の事故対応の重要なポイントであった」と、ほとんど現場絶賛の雰囲気です。

 事故の始まりで決定的な役割だった、電源喪失時でも動く非常用冷却装置の運用失敗について重くは考えていないようです。最初に爆発した1号機の運転チームは全員がこの装置の運転経験が無く、起動に必要な弁を開く実地訓練も受けていなかったのです。

 運転の問題について「今後考えておくべきことは、更に厳しいシビアアクシデントが起きた場合に第一義的責任を負う事業者はどのように対処するのか」との視点しかありません。今回の事故では発電所の運転スタッフの力量が明らかに不足していました。第288回「2、3号機救えた:福島原発事故の米報告解読」で整理した事故経緯からも、技術に通じた強力な司令塔を置いて現場を指揮させ、段取り良く進めれば少なくとも大幅な事故規模縮小になったはずです。

 「論点5:原子力災害における各事象が急速に進展する場合、初動の避難指示にあたっては緊急時迅速放射能環境予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用は困難ではないか」もいただけません。「SPEEDIは、確度の高い放出源情報と気象予測情報が得られることを前提とするシステムであり、これらの情報が得られない場合には、SPPEDIを効果的に活用することは困難である」との指摘は既に議論済みの錯誤です。放出放射能量は確かに不確かでも、風向きによってどこに流れるのかの推定は有効でした。

 11日のNHKニュース「SPEEDIで実測も非公表」は「文部科学省が福島第一原子力発電所の事故対応を検証した報告書をまとめ、事故の直後に原発の北西部に職員を派遣し、高い放射線量を測定したのは、SPEEDIという放射性物質の拡散予測を基に調査地点を選んだ結果だったことが分かりました」「原発から最も多くの放射性物質が放出された去年3月15日の対応について、文部科学省は原発から北西およそ20キロの福島県浪江町に職員を派遣し、午後9時前に最大で1時間当たり330マイクロシーベルトの高い放射線量を測定したとしています」と報じました。

 この浪江町周辺から、さらに北西の飯舘村にかけての道を多くの避難民が避難ルートに使い、あるいは途中で腰を落ち着けてしまいました。ここを避けるのには、SPEEDIが十分な情報でなくとも生かしうるケースでした。問題なのは政府側に手持ちの情報を総動員して住民を守る気持ちが、ほとんど無かった点でしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


大飯原発再稼働へ新潟県から鋭い安全性疑義

 大飯原発再稼働に向けて野田首相が地元福井県の意向を丸飲みした記者会見をして、地元同意取り付けが可能になりました。しかし、首相会見に対してもう一つの原発大立地県新潟の泉田知事から鋭い原発安全性への疑義が提出されました。官邸ウェブにある首相の冒頭発言と、原子力発電に関する野田総理の発言に係る知事コメントは生煮えのマスメディア社説などを見るより、対比して検討しておく価値があります。

 安全性について首相の主張は次の部分に集約されています。「福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています」「これまで1年以上の時間をかけ、IAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて積み上げ、安全性を確認した結果であります」

 泉田知事の反論は論旨明解です。「福島原発事故はいまだ収束しておらず、事故の検証も進行中であり、換言すれば、意思決定過程や組織のあり方なども含めた事故原因の特定も行われていません。事故原因が特定されなければ、対策を講じることができないことは自明の理であり、専門家である原子力安全委員会も班目委員長が安全を確認していないことを明言しています。このような状況下で専門家でもない総理が安全性を確認できるはずもありません」

 対等に討論したら、野田首相側の旗色は極めて悪くなるでしょう。専門家による討論を何回重ねようが、事故の原因について究明・集約はされておらず、新安全基準の本質は応急対策をまとめたものです。

 さらに知事の反論は「『電源が失われるような事態が起きても炉心損傷に至らないことが確認されている。』との発言についても、現実には、『電源が失われなくても、炉心冷却に失敗すれば、大惨事になる』ということが福島の教訓であることを無視した説明です」と踏み込みます。

 『電源が失われなくても、炉心冷却に失敗すれば、大惨事になる』は分かりにくいかも知れません。福島原発事故ではこの文言通りの事態は無かったからです。全電源が失われた場合でも最後の命綱である非常用冷却装置があり、それをきちんと使えば炉心溶融から爆発・放射能流出の惨事は避けられたのに、結局は炉心冷却に失敗した事実を指すと考えられます。

 5日の毎日新聞《東電事故調:非を認めず 最終報告案「状況の把握困難」》がまさにその核心部分でした。爆発を起こした1・3号機についてです。

 《政府事故調(畑村洋太郎委員長)は昨年12月に公表した中間報告書で、1号機の冷却装置「非常用冷却装置(IC)」について「認識不足や操作の習熟不足があり、全電源喪失直後に弁が閉じて機能していない状態に気付かなかった」と指摘。バッテリーで作動する3号機の冷却装置「高圧注水系(HPCI)」の操作についても「代替注水手段が確保されていないのにHPCIを手動停止したのは、バッテリーが枯渇するリスクを過小評価し、(高圧のため注水できずにいた原子炉の)減圧操作に失敗した」と批判した》

 《これに対し、社内事故調の最終報告書案は、1号機のICについて「勉強会や試験などを実施してきた。弁の動作も電源喪失のタイミングによって開閉いずれの可能性もある」「弁の状態を認識し、対応するのは現実的には困難だった」と弁明。3号機のHPCIの操作についても、「損傷する懸念があり早急に止める必要があった」「減圧操作のための弁はわずかな電力で開けることができ、操作可能と判断した」と主張した》

 1号機の運転チームは誰1人として、この非常用冷却装置を実際に動かしたことがなかったのが実情ですが、発電所幹部は動いていると思いこんでいました。3号機冷却装置の停止は発電所幹部との十分な打ち合わせもなく、次の対策である海水注入を用意する前になされて、炉心溶融の引き金になりました。

 第300回「福島事故責任は誰にあるか、判明事実から究明」で検討した「大惨事にしてしまった事象の分かれ目」を考えるにつけ、「防ぐ仕組みが用意されているから安全」とは到底言えないと知れます。現実に非常用冷却装置は用意してあったのに、東電は不可抗力で使うのに失敗したと主張しているのです。野田首相が主張している安全対策は非常に薄っぺらいと言わざるを得ません。福島事故以前の考え方「危機対策は揃っている」でしかなく、東電の失敗ぶりを全くフォローしていません。

 【参照】インターネットで読み解く!「原発再稼働」関連エントリー


大飯再稼働:3日も動けぬ野田政権は政治家未満

 大飯原発再稼働で細野原発相が地元福井県の同意が得られぬまま帰京して3日間、野田政権は動きがとれずに日を送りました。「ボールは政府の側にある」と言われた謎が解けないのです。原発相が子どもの使いだったと分かったのですから、ならば地元選出国会議員に知事の真意を聞きに行かせれば良いだけの話です。そんな手も打たないで思案投げ首しているとは、広く聞く耳を持たねばならない政治家の集まりとは到底思えません。実は「福井県の抵抗:真意は暫定基準に格下げ実質撤回か」で尽きていると考えます。

 しかし、日経新聞の《福井知事の「首相意思表明」要求に官邸困惑 大飯再稼働で》は《首相官邸が関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を巡り、福井県の西川一誠知事が「野田佳彦首相の国民への意思表示」を求めていることに困惑している。首相は既に「私の責任で判断する」と重ねて表明しており、知事の真意を測りかねているからだ》と伝えます。

 時間が経過して一度失敗した関西広域連合側も気を取り直して、毎日新聞の報じる《大飯原発:再稼働 滋賀と京都両知事が7項目の再提言》と、またコマが回り始めました。時期限定での再稼働や、特別監視体制への参画など、福井県と利害がぶつかる項目が並びます。1週間前に局面が戻りつつあります。

 何もしないで熟し柿が落ちるのを待つケースは、仕掛けていればこそです。何の仕掛けもしないで日を送る野田政権に、何の不思議も感じていない在京マスメディア。多分、東京・霞ヶ関界隈は政官メディアみんなして「引きこもり」かリゾート気分なのでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「原発再稼働」関連エントリー


福井県の抵抗:真意は暫定基準に格下げ実質撤回か

 大飯原発再稼働で福井県の同意が得られないまま細野原発相は東京に引き返す羽目になりました。西川知事に面会すれば喜んで「イエス」と言ってもらえると考えていたようですから、野田政権は「ぼんくら」の集まりと断言できます。再稼働のための新安全基準を30日、政府は関西広域連合を稼働容認に引き込むために「暫定基準」に突然格下げしました。本格安全基準として審査手続きを進めてきた地元福井県の立場が無くなったことに、まだ気付いていないとは政治家として中央官庁官僚としてレベルが低すぎます。

 4日に福井でのやり取りをもっとも詳しく伝えているのはロイターで、国内マスメディアの報道では状況が判りません。「大飯原発再稼働の必要性、首相は国民に訴えを=福井県知事」はこう報じています。

 《西川知事は「政府部内からいろいろな見解、矛盾した主張が出て県民にとって迷惑」と指摘した上で、「再稼働の必要性について首相は国民に訴えていただいて、様々な疑問に答えていただくことが国民の安心と支持につながる」と強調した。西川知事は政府側に対し「夏場だけの稼動とか大飯原発に限定した稼動に限定した一部の言い方があるが、政府がそうした考え方ではないと示して頂きたい」と要望した》《さらに西川知事は、再稼働に向けたストレステスト(耐性評価)で原子力安全・保安院の審査が終了した原発についても「新規制庁の設置を待つことなく、原子力安全委員会が責任をもって審査する立場にある」と畳みかけた》

 毎日新聞の《大飯原発再稼働:福井知事「判断のボールは国にある」》は「首相が原発の安全性に責任を負い、原発を中長期の電源に位置づける考えを明確にすることが再稼働に同意する条件になるとの考えを示した」とも伝えています。

 西川知事としては出来ることなら元の本格基準に戻して欲しいのでしょう。県原子力安全専門委の審査はそれが前提で進んでいるし、県民への説明も暫定安全基準では困ります。それが難しいなら、実質的に暫定基準格下げ撤回と受け止められる説明を、野田首相から国民に対して示して欲しいのでしょう。

 31日の「大飯再稼働の稚拙な仕掛け、橋下流の限界見た」で指摘した「安全基準を格下げすることで限定稼働が出来る、一般人には理解しにくい『腹芸』」シナリオを書いた官僚は本当に罪作りです。この十数年、当座を乗り切るため、あるいは自分の代さえ受ければ善い、と見える中央官僚のパフォーマンスがあちこちで発生しています。「騙し」で取り繕う場面でないことが「原子力ムラ」官僚には分からなかったのでしょうか。いや、元はと言えば国の安全の元締め原子力安全委が了承していない新安全基準を、野田首相以下4閣僚の政治主導で決めてしまった点に錯誤の発端があり、それを関西広域連合が突いていました。構図全体に無理があったのです。

 【参照】インターネットで読み解く!「原発再稼働」関連エントリー


大飯再稼働で福井県「ちゃぶ台返し」で粘る

 関電大飯原発再稼働に向けた細野原発相の福井県訪問が週明けの4日以降に遅れています。関西広域連合の了承を「騙し」で取り付けた野田政権には意外な展開でしょうが、福井県には「ちゃぶ台返し」をして粘りたい真っ当な理由があるのです。マスメディアは再稼働の期間限定問題が焦点と報じていても、問題の核心は土壇場になって政府が関西広域連合に妥協して新安全基準を暫定基準に格下げした点にあります。福井県原子力安全専門委員会が週明けにも「安全が確認できた」と答申するとメディアが報じた直後に、新安全基準が暫定基準におとしめられたのです。

 時系列を追うと、毎日新聞≪大飯再稼働:福井県専門委「安全」追認 知事決断へ≫など、福井県側リークらしい観測記事が出たのは5月30日の各紙朝刊でした。この日に鳥取であった関西広域連合の会合で細野原発相が原発再稼働のための新安全基準を暫定基準であると格下げし、「大飯再稼働の稚拙な仕掛け、橋下流の限界見た」で指摘したドタバタ劇が始まりました。

 政府が再稼働の新安全基準を暫定基準に格下げすると聞いて、需給逼迫の夏場限定運転を望んだ関西広域連合は稼働オーケーを出します。それを逆手にとり了承を得た点だけ吸い上げ、再稼働が動き出しました。今後の原子力規制は国会審議中の独立性が高い新規制組織に委ねられますから「先のことは新規制組織任せで、期間限定など知らない」と枝野経産相は突っぱねました。

 どうしてもこの夏を原発稼働無しで乗り切っては困る「原子力ムラ」の意向を体現している経産官僚の気持ちはわかりますが、この第一段階の「騙し」で梯子を外されたのが福井県原子力安全専門委ですし、西川知事でしょう。「新安全基準は想定外を隠れ蓑にする欠陥品」で指摘しているように、従来の原子力行政の読み方をすれば、問題点を無視できるように新安全基準は出来ています。

 福井県の専門家もその流れに乗るつもりだったはずです。ところが、「実は不完全な暫定基準だ」と突然、言われたら、専門家としてどのように県民に説明したらいいのでしょうか。霞が関周辺のご都合主義の学者と違って、住民に原発反対派が存在する福井県ではそれなりに対応してきました。「政府が言っていることだから十分です」とはとても言えない風土になっています。霞が関の原子力ムラ官僚にも、児童会役員風に言われたまま行動している細野原発相にもこの機微は理解できないようです。

 運転期間の限定など、既に枝野経産相が「13カ月フル運転だ」と公式に否定しているのですから問題ではありません。万全の安全基準との前提で審議してきた福井県側が暫定安全基準に落ちて整合性を保てるのか。政府がここで福井県側の意向に配慮しすぎれば、「橋下市長『民主政権倒す』を撤回 大飯再稼働巡り」(朝日新聞)で≪橋下徹大阪市長は、再稼働は妥当と判断した民主党政権を「倒すべきだ」とした4月の発言について、「暫定的な基準が認められ、前提事実がなくなった」として撤回する意向を示した≫とまで言っている関西側との軋轢が再燃します。

 正式基準か暫定基準かは主導権がどこにあるかに響いています。もちろん福井県には「原発地元」の範囲に滋賀県や京都府を割り込ませて、既得権益を失いたくない地域エゴも背後にあります。この際だから国に要求したい案件もあると見られます。

 もう一度最初から審議し直しを要求して引き延ばしも可能です。基準を政治駆け引きで格下げしただけで、暫定基準とするきちんとした理由や、暫定で足りない点があっても安全であるとの説明さえ政府はしていないからです。そもそも論で言えば、関西広域連合が指摘しているように、現行法で安全のお目付け役である原子力安全委が新安全基準を了承していないのです。

 【参照】インターネットで読み解く!「原発再稼働」関連エントリー