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核燃サイクルに死亡宣告:再処理工場は完成不能の窮地

 完成が15年も遅れている青森・六ケ所核燃料再処理工場が試運転を再開したのに、事実上、完成不能の窮地に陥りました。最終ガラス固化工程で溶融ガラスが流下しない初歩的トラブルに対処する方法が無くなっているのです。2兆円以上も掛けた再処理工場が完成せず、国策である核燃料サイクル全体が死に体になってしまいました。溶融炉の構造は以下のようです。

http://www.jnfl.co.jp/press/pressj2008/080711sanko.pdf

 毎日新聞の「六ケ所村:溶融炉に不具合 核燃料再処理工場」はこう報じています。《4年前にトラブルが起きた「A系」とは別の試験使用歴のない「B系」の溶融炉を使用。24日に放射性物質を含まない試験用の「模擬廃液」とガラスを混ぜたビーズを炉で溶かし処分容器に流下させる作業を始めたところ、流下速度が徐々に落ちた。作業を3回中断して炉にかくはん棒を入れ、回復を試みたが、不具合は解消していない。流下するガラスに含まれるはずのない数ミリ大の黒い異物が混入していることも判明。いずれも原因は分からず、試験再開のめどは立っていない》

 2年間、実物大の試験装置で実験を重ねた工程改善策を試す以前のトラブルであり、「B系」炉は出来が悪い不良品だったことになります。黒い異物混入とは炉壁などの部材が剥がれ落ちていると考えるしかありません。トラブルに悩んだ「A系」は汚染されて無惨な醜態を晒しており、溶融炉にもう代替えはありません。

やはり毎日新聞が4日前に伝えた「六ケ所村の核燃再処理工場:溶融炉の熱上げ完了 今週末にも製造試験へ−−日本原燃 /青森」は《今回は、模擬廃液とガラスを混ぜた「模擬ビーズ」を固化体11本分入れて溶かし、24日午後10時50分にさらに1本分のビーズを加えて炉内のガラスを流下させ、ステンレス製の容器に入れて固化体1本を製造した》としていますから、現在の炉内は1000度以上の高温に11本分ものガラスが溶けている状態です。

 「A系」と違って本番の高放射性廃液は未使用ですから修理をしたいところです。それには溶融ガラス全部を流下させて、炉の温度を常温に戻さねばなりません。ガラスが残ったまま温度を下げたら修理は出来ません。構造図を見れば分かる通り、無理矢理に流下を続けて細いノズルになっている下部にガラスに混じった異物が落ちていけば塞がれてしまうのは目に見えています。

 4年前に書いた「青森の再処理工場は未完成に終わる運命」の段階は、廃液に含まれる白金族元素の残留物がノズルに残ってしまうトラブルでした。新規開発同然の溶融炉を、実物大の試験無しに実戦に使う無謀さが招いた結果でした。日本原燃は炉内の温度管理を周到にすれば残留物を生成させずに済むと主張して、技術開発のために完成への試運転を延期しました。今回のトラブルははるかに手前、初歩の初歩段階ですが、出来上がってから長い間、使われなかった「B系」炉の内部状態を確認しないで走り出してしまった点に、相変わらず思いこんだら冷静な判断が出来ない技術的未熟さが見えます。「国策」原子力開発の低レベルぶりは改まっていません。

 高速増殖炉「もんじゅ」も含めた核燃料サイクルは、福島原発事故をうけて推進すべきかどうか見直されることになっています。これから議論がされる最中、日本原燃が再処理工場の試運転を再開した点に独断専行の批判が出ていました。完成前に中止されたくない――その焦りが自分の首を絞める結果になったと言えるでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「再処理工場」関連エントリー


東電の国有化を急いで考え違いを根本から正せ

 日経新聞が《東電資本注入 経営権で詰め 政府と会社側、値上げ絡み複雑に》で、福島原発事故を起こした東電が公的資金注入を望みながら、なお独立を維持したいと主張していると伝えました。こんな甘えを許してはなりません。急いで国有化し、東電の考え違いを正すべきです。考え違いは国有化に及び腰の財務省も同罪です。

 枝野幸男経済産業相は債務超過の対策になる1兆円の公的資金注入の前提として「国が経営権を取得する」考えを示しています。これに対して「東電には国による経営関与拡大への警戒感がある。資金注入は受け入れても議決権のない種類株を中心とし、民間企業として経営権を維持したい考えだ」。財務省も「賠償や廃炉などの責任が全て国に回ってきかねない」と異論を唱えています。

 大事故を起こした経営の責任を取ろうとしない態度、遅れに遅れている被災者への賠償といい、「電気料金値上げは権利」と開き直る点も世間一般の常識にないものです。事故から10カ月が経過しているのに改まらない東電の姿勢に国民はうんざりしています。まず国有化して、筋道はきちんと通さねばなりません。また、現行法による賠償の枠組みから東電に責任を負わせていますが、原発の安全審査でオーケーを出した政府の責任が消え去っている訳ではありません。政府は「東電が、東電が」と逃げてきた経緯を反省して迅速に行動すべきです。

 「電気料金値上げ、関電の否定で東電の根拠崩壊」で指摘したように、電力業界のナンバー2である関西電力が「値上げは考えていない」状況では、拙速な値上げの根拠は無くなったと評すべきです。過去に本来認められている費用以外の多くの経費を電気料金に盛り込んで、不正に溜め込んできた資金の清算が済んでいません。値上げ前にするべき資産売却も聞こえてきません。企業向けばかりでなく家庭向けの値上げも前提にし、しかも値上げの根拠を明確に示さない非常識も経営権を握ってやり直させない限り改まりません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


原発再稼働は法に基づく安全確認しかあり得ない

 枝野幸男経済産業相がこの夏の電力需要期を原発稼働ゼロで乗り切る可能性を表明して、その可否を含めて話題になっています。再稼働に向け新たに導入されたストレステスト(耐性評価)について個別原発での評価が始まったのに、早くも行き詰まったからでしょう。現在の法律では原発の安全は国による安全審査で担保されています。福島原発事故で崩壊した安全審査の指針を早急に再構築して法律通りに運用するしかない――当初から言われていた愚直な手法に立ち戻るべきです。現行法に何の根拠も持たないストレステストの結果がどう出ても、原発立地自治体が住民に安全と言えるはずがありません。

 ロイターの《原発稼働ゼロでも「夏乗り切れる可能性」=枝野経産相》は「原発がこの夏どのくらい利用されるのかされないのかは、安全・安心という(電力需給とは)全く別次元で結論が出るので、どうなるかわからない状況だ」との談話を伝えました。

 時事ドットコムの《「国民の信頼得られず」=批判派委員が会見−ストレステスト聴取会》は「原子炉メーカーがストレステストを行い、メーカーOBが審査している。そういうやり方では国民の信頼は得られない」と、テストが信頼されない構図を指摘しています。さらに言えば、事故を食い止めることが出来なかった経済産業省原子力安全・保安院が、自らの責任を明らかにすることなくストレステストを主導していること自体が信用できぬ要因です。

 原発安全確保をめぐる政府の勘違いは、昨年6月、「原発運転再開:安全指針の担保外す政府こそ違法」で指摘しました。6月当時、原子力安全委員会は安全設計や防災対策などに関わる指針の見直しに着手すると表明していたのに、ほとんど実績が出ていません。班目春樹委員長ら有能とは思えないメンバーを刷新することなく進めているのですから、期待できようはずがありません。一方、政府の事故調査・検証委は事故の責任は追及しない独自スタンスで進行していますから、指針に盛り込むべき内容が出るかは分かりません。実務家を総動員して安全審査の改訂作業を急がないと、いつまでも待つことになるでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


原子力体制を変革するエンジン不在が問題

 毎日新聞の《この国と原発:第4部・抜け出せない構図 政官業学結ぶ原子力マネー(その1)》はマスメディアで盛んになっている「原子力お勉強企画」でも質が高いと思います。福島原発事故を経ているのに来年度予算は何も変わっていない様が浮き彫りになっています。また、原子力安全・保安院に代わる規制組織「原子力安全庁(仮称)」も代わり映えしそうにありません。原発無い社会志向を言った菅・前首相が放り投げた後、原子力推進体制を変革するエンジンが見あたらないのですから、実態が変わらなくて当然です。

 「政府は12年度予算案に、原子力関係分として4188億円を盛り込んでいる。原子力政策見直しの結果が出ていないという事情はあるものの、11年度(4236億円)に比べ1・1%減と、東京電力福島第1原発事故を経てもほとんど変わっていない」「研究開発費は前年度比13・5%の減。中でも、昨年11月に行われた提言型政策仕分けで『存続の是非を含め抜本的に見直すべきだ』とされた『もんじゅ』を中心とする高速増殖炉サイクル研究関連予算は25・4%減となった。だが、それでも300億円が計上された」

 原子力ムラを政官業学の隅々までお金を回しながら維持していく仕組みにほとんど変化はないのです。「各国のエネルギー開発費の内訳」グラフは秀逸だったので以下に引用します。原子力に世界の中で日本だけ突出してお金が注ぎ込まれてきた様子を鮮明に描いています。これを30年、40年と続けていれば、超強力なリーダーシップ無しに方向転換など出来ません。この利権に依存して生活している人が多数、存在するからです。



 起こしてしまった原発事故の重大さから、米国のような独立した強力な規制機関が求められたはずでしたが、新設間近の原子力安全庁にはがっかりさせられそうです。「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」の「新原子力規制組織の謎」が痛烈です。

 「あきらかに、原子力ムラの汚物の臭いがぷんぷんする」「来年度予算の中に、すでにこの新組織の予算が入っている。504億円。この組織を設置するための法案が国会に提出されていない、つまりこの新組織の内容が決まっていないのに、予算が査定され、要求されているというのは、無茶苦茶だ」

 「新組織は三条委員会として独立させるべきだという問いに、内閣官房は、しどろもどろ」「危機管理の時には政治が統括する必要があるから、三条委員会は危機管理には向かないと、政府は説明するが、今の経産大臣の下の保安院の体制で、福島原発の事故に際して、危機管理が全くできなかったことを考えれば、大臣がいる組織でなければ危機管理ができないというのは嘘だ」

 現在、今回事故の危機管理が全く出来ずに信用が地に落ちている保安院が原子力規制組織の再編を前に、原発再稼働をめぐるストレステストの是非を評価しているのも不思議の極みです。ここでも求められるのは経済産業省よりも上の段階からのリーダーシップです。消費税増税にしか目が向かない民主党政権の指導部は自分からは何も考えていないと指摘してよいでしょう。いまや利権構造を温存したい官僚の御輿に乗っているだけです。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


電気料金値上げ、関電の否定で東電の根拠崩壊

 東京電力の電気料金値上げ(大口向けに4月から17%)が既成事実であるかのように在京メディア発で報道され始めています。しかし、電力業界のナンバー2である関西電力は、21日の朝日新聞経済面によれば「値上げは考えていない。原発再稼働に努力する」と否定しました。原発の相次ぐ運転停止、その代替えの火力発電用燃料費調達を根拠にした拙速な値上げは、同業他社が「まだ待てる」と言っている以上、根拠を失ったと評すべきです。

 《東電の電気料金「私物化」は過去まで遡り返済を》で指摘したように、東電は過去に本来認められている費用以外の多くの経費を電気料金に盛り込んできました。「発電とは無関係のものが費用計上されていると新たに判明したのは、ハード面では静岡県熱海市など各地にある保養所や社員専用の飲食施設、PR施設などの維持管理費」「ソフト面では、財形貯蓄の高金利、社内のサークル活動費、一般企業より大幅に高い自社株を買う社員への補助、健康保険料の会社負担など」あまりに常軌を逸しています。さらに、民間企業である以上、料金値上げをするなら潤沢とされる人件費の圧縮や不要資産の売却を徹底して当然です。過去の不当な利益を会社と社員に温存して値上げするなど許されません。

 時事通信の「東電値上げの悪影響懸念=GDPを0.1〜0.2%押し下げ−経財相」で「さらに景気を冷え込ませたり(産業)空洞化の背中を押すようなことにならないか、大変懸念している」との大臣談話を見ると、政府は何を考えて政策を立てているのでしょうか。GDPの0.1%減少にかかわる判断を一企業に委ねるなど論外です。巨額の国費を渡して支援するだけの現状を見直し、東電国有化を直ちに断行して、国民が納得できる資産内容まで削り経済への影響を最小限度に食い止めるべきです。そして、マスメディアは値上げの根拠を過去に遡って厳しく追及すべきですが、全く動こうとしません。何らかの癒着があると、普通の市民は考えるでしょう。


サンプリングの科学性無しに結論だけ安全の愚

 朝日新聞の「福島の食事、1日4ベクレル 被曝、国基準の40分の1」の非科学性には驚きを通り越して落胆するしかありません。サンプリングした標本が母集団を代表している保証が全くないのです。このような愚かな報道を1面トップで自社調査として打ち出すとは、ジャーナリズムとして末期的症状です。正しいと言えるのか、きちんと第三者に評価してもらうべきです。

 「家庭で1日の食事に含まれる放射性セシウムの量について、福島、関東、西日本の53家族を対象に、朝日新聞社と京都大学・環境衛生研究室が共同で調査した。福島県では3食で4.01ベクレル、関東地方で0.35ベクレル、西日本でほとんど検出されない」と結論づけている根拠が次のような標本です。「調査は昨年12月4日、全国53家族から家族1人が1日に食べた食事や飲んだものをすべて提供してもらい行った。協力家族の居住地は、福島県が26、関東地方(群馬・栃木・茨城・千葉・埼玉・東京・神奈川)が16、中部(長野・愛知・岐阜・三重)、関西(大阪・京都)、九州(福岡)など西日本が11」

 一見してあまりの標本の少なさに驚かされます。「福島中通り汚染は広く深刻、国は学童疎開を」でも指摘しているように、福島県内でも原発がある浜通り、放射能の雲が広がった福島市や郡山市など、さらに山間の会津地方では汚染状況がまるで違います。それを26標本で代表させるとは異常ですし、集計グラフの3番目に汚染が高い標本が関東地区である点からも、もっと詳細な調査が必要と判断できます。北関東に高汚染ホットスポットは存在しますが、福島現地の高汚染地区と張り合うのは無理です。肝心の福島で取るべき標本を外している可能性が高いのです。これで安全宣言をされても困ります。


『失われた20年』見直し機運、悪くない日本未来

 英銀最大手HSBCが出した2050年の予測「The world in 2050」を見て、『失われた20年』と自ら卑下する必要はあまりないのではないか、と考えるようになりました。人口が1億人まで減りながらも世界第4位の経済規模と主要先進国で最大の1人当たりGDPを持つ予想ですから、不平を言ってはばちが当たるというものです。新年になってニューヨークタイムズにも「日本の停滞は神話(The Myth of Japan's Failure)」が掲載され、本当に「失われた10年、20年」だったのか、見直される機運です。

 2050年の世界経済規模ランキング30位まで一覧表を引用します。2050年の予想GDP、2050年の1人当たりGDP、2010年の1人当たりGDP、2050人口と並んでいます。2000年の米ドル価値で表されています。

			GDP2050 2050($)	2010($)	人口
			(10億$)1人当GDP 1人当GDP (百万)	
   1 	中国		24617	17372	 2396	1417
   2 	米国		22270	55134	36354	 404
   3 	インド 		 8165	 5060	  790	1614
   4	日本		 6429	63244	39435	 102
   5	ドイツ		 3714	52683	25083	  71
   6	英国		 3576	49412	27646	  72
   7	ブラジル	 2960	13547	 4711	 219
   8	メキシコ	 2810	21793	 6217	 129
   9	フランス	 2750	40643	23881	  68
  10	カナダ		 2287	51485	26335	  44
  11	イタリア	 2194	38445	18703	  57
  12	トルコ		 2149	22063	 5088	  97
  13	韓国		 2056	46657	16463	  44
  14	スペイン	 1954	38111	15699	  51
  15	ロシア		 1878	16174	 2934	 116
  16	インドネシア	 1502	 5215	 1178	 288
  17	オーストラリア	 1480	51523	26244	  29
  18	アルゼンチン	 1477	29001	10517	  51
  19	エジプト	 1165	 8996	 3002	 130
  20	マレーシア	 1160	29247	 5224	  40
  21	サウジアラビア	 1128	25845	 9833	  44
  22	タイ		  856	11674	 2744	  73
  23	オランダ	  798	45839	26376	  17
  24	ポーランド	  786	24547	 6563	  32
  25	イラン		  732	 7547	 2138	  97
  26	コロンビア	  725	11530	 3052	  63
  27	スイス		  711	83559	38739	   9
  28	香港		  657	76153	35203	   9
  29	ベネズエラ	  558	13268	 5438	  42
  30	南アフリカ	  529	 9308	 3710	  57

 中国が首位、インドが3位に入っていますが、14億、16億の大人口ですから1人当たりGDPはそれぞれ1万7千ドル、5千ドルに止まります。日本はインドに抜かれ4位になるものの、1人当たりGDP6万3千ドルは5万ドル前後の米独英に少し差を付けています。ブラジル・メキシコなど中南米に、トルコ・韓国・インドネシアのアジア、エジプトなどアフリカ諸国も顔を出している一方、北欧諸国が姿を消しています。中国は現在の韓国並みの1人当たりGDPに達する予測ですが、「持続不能!?中国の無謀なエネルギー消費拡大」で指摘しているように成長に使える資源には限界があります。HSBC予測も地球2個分もの資源を使うことになると認めていて、実現可能かどうかには疑問が残ります。

 一方、ニューヨークタイムズは日本のバブルが崩壊した1990年から20年間の指標を挙げて、停滞は神話だったのではないかと問題提起しています。日本人の平均寿命は4.2歳伸び、アメリカ人より4.8歳も長くなっている▼インターネットの接続速度が速い世界50都市の38は日本が占め、米国はたったの3都市▼円の価値はドルに対し87%、英ポンドに対し94%も上がった▼日本の経常収支黒字は3倍増の1960億ドルに拡大したのに、米国は990億ドルの赤字を4710億ドルまで増やした――などを例示しています。1人当たりGDPの伸びで見ると、米国には過大評価があって、実は日本に後れを取っているのではないかと考え始めています。

 日銀の白川総裁が新年の講演「デレバレッジと経済成長――先進国は日本が過去に歩んだ「長く曲がりくねった道」を辿っていくのか?――」でこれに呼応する趣旨の発言をしています。《次に「失われた20年間」の後半期であるが、この時期については、人口動態の変化、より具体的には急速な高齢化の影響が大きい。日本の実質GDP成長率は確かに低下し、他の主要国と比較しても見劣りするが、過去10年の平均でみると、人口一人当たりの実質GDP成長率は他の先進国とほぼ同程度、そして、生産年齢人口一人当たりの実質GDP成長率で比較すると、日本が最も高い》。説明するグラフを以下に引用します。



 HSBC予測も日本の人口がかなり減っていくことを前提にしながら、1人当たりGDPが伸びて経済規模を維持していくと見ています。教育の機会均等や民主的な政治体制、法治能力も経済成長に影響するとされています。経済成長を考える上で人口の動向は支配的要因ですから、増減表を一部引用します。先進国でも米英加豪は増え続け、日独伊はかなり減っていきます。中国とブラジルは途中で減少に転じますが、インド、インドネシア、サウジアラビアあたりは増え続けます。中国の人口ボーナス期は終わりかけていますが、インドはこれから人口ボーナス期に入るところです。






アップルの設計思想が間違い:NYの演奏中断事件

 今週火曜の夜、ニューヨーク・フィルの演奏中に、最前列の客が持っていたiPhoneのアラーム音(マリンバ)が鳴りやまず、指揮者が演奏を中断する騒ぎがありました。しんみり聴くべき弱音部分で起きた珍事で、iPhoneに買い換えたばかりの老紳士は「2日間眠れなかった」とニューヨークタイムズ紙に答えていて、サイレントモードにもしていたそうです。それでもアラーム・クロックは作動して鳴る仕組みにしていたアップルの設計思想に間違いありです。

 CNNの「NYフィルの公演中に携帯の着信音、指揮者が演奏中断」はこう伝えています。《マーラーの交響曲第9番を演奏している最中だった。会場にいた観客がツイッターやブログで伝えた話を総合すると、交響曲は最後のクライマックスを過ぎて「音楽と静寂が入り混じる」極めて繊細な場面。タイミングは最悪だったという》《音に気付いた指揮者のアラン・ギルバート氏は手を止めて演奏を中断。会場には着信音だけが響き渡った。ギルバート氏は持ち主に向かって「終わりましたか?」と尋ねたが、返事がなかったため「結構です、待ちましょう」と言い、指揮棒を譜面台の上に置いた。着信音はさらに何度か続いた後、ようやく鳴りやんだという》。着信ではなくアラームでした。

 ブラックベリーからiPhoneに買い換えた直後で、妻がアラームをセットしたことも知らなかったそうです。鳴っているのが自分の携帯電話であることにも指揮者に言われるまで気付かなかったといいます。何と言っても、サイレントモードにしてある安心を裏切った設計の方が絶対に悪いと思えます。ジョブズが生きていたら何と言うでしょうか。

 この件をフェースブックで話題にしていて、日本国内の主要な演奏会場には携帯電話の着信を阻む装置が備えられていると教えて貰いました。携帯は常に基地局と交信して制御情報を得ているので、基地局より強い電波を演奏会場に出して制御を無効にし、圏外と誤認させる仕掛けです。ただし今回の事件には効き目はありません。


再処理工場再開:核燃料サイクルの即時停止を

 福島原発事故の惨事で原子力開発へ「待った」がかかった状況なのに、青森の核燃料再処理工場の建設が再開されました。当初予定の3倍にもなる建設費2兆円余りを投じて、まだ完成しないのは最終工程の高レベル放射性廃液のガラス化が出来ていないためです。この工程はA系列でさんざん失敗し尽くした後、残っているクリーンなB系列で試運転を試みる計画です。福島原発事故の放射能汚染とは桁違いな超高汚染、文字通りの「死の空間」がさらに増えることになり、核燃料サイクルを中止する場合、巨額の撤去費用と作業員の大量被曝が避けられません。

 東京新聞の「再処理工場 MOX燃料工場 批判の中 再開着々」は《核燃料サイクルをめぐっては、本紙の調べで、四十五年間に少なくとも十兆円が投じられたことが判明。電気料金の一部が主な原資となっているが、サイクルが完成するめどは立っていない。今夏をめどに決まる新政策でも、核燃料サイクルの存廃が最大の焦点だ》《再処理工場では、二つある溶融炉のうち、実際に使われて極めて高い放射能に汚染されたのは一つだけだが、今春以降はもう一方の炉も試験する予定だ。原燃は「準備が整い次第、試験を再開したいと考えていた」とコメントしている。ただ、核燃料サイクルが中止になれば、厳重な管理が必要になる高濃度の放射性廃棄物を増やすだけの結果となる》と伝えています。

 原子力委員会事務局は《「新しい政策が決まるまでは、今の政策が生きている。事業者は現政策に基づいて工事を行っている」と説明。提言を出すことは考えていないとした》と言っているのですが、電気料金と税金を原資にした事業である以上、民間業者が勝手に判断してよい案件ではありません。現在、付いている予算の問題ではなく、将来、発生する無意味な費用が膨大になる点が心配されるのです。


離婚率が特異な減少、震災で家庭防衛意識か

 元日に公表された「平成23年(2011)人口動態統計の年間推計」で、離婚率が2011年に従来の動きから外れて特異な減少を見せました。東日本大震災と福島原発事故に直面して、家庭防衛を強く意識した結果ではないかと見られます。また、震災後には結婚を考える人が増え婚活サイトが活況との報道がありましたが、婚姻率はわずかに下がり目立った変動にはなりませんでした。



 離婚件数は2006年から年間25万組台を保ってきましたが、2011年は23万5000組と推計されました。離婚率は人口千人当たりで表され、「2」前後を維持していたのに一気に「1.86」まで下がる結果になりました。過去に遡ると20世紀末へ急降下した形であり、1997年の「1.78」、1998年の「1.94」の間に入る水準です。2002年に「2.30」のピークを記録した後、減少に転じたものの、上のグラフに見られるように下げ止まった状態でした。

 数年前には厚生年金分割制度スタートで熟年離婚が増えるのではないかとも言われていました。しかし、2009年に書いた「続・離婚減少は定着、熟年離婚の嵐吹かず」で分析した通り、2003年からの経済状況好転にシンクロして離婚率減少傾向が現れていたのです。その後、リーマンショックで不況に入り失業率が2009、2010年に5.1%まで上がりましたが、離婚率は特に増えることもなく横這いを維持しました。2011年はそこから目立って離婚が減っているのですから、経済的な要因よりも心理的な側面が強いと考えられます。

 【参照】インターネットで読み解く!「人口・歴史」分野エントリー…生涯未婚など


沈鬱な政治不信の連鎖:国民と政治家と官僚と

 立命館大の上久保誠人准教授が一昨年末に《再び敢えて問う、実は国民こそ政治家から「信頼」されていないのではないか》と唱えてから1年、小泉政権の郵政解散から始まった政治不信の連鎖は止めどなく進んでしまった観があります。与野党の政治家がいかに国民の信を失っているかは、大阪ダブル選で既成政党完敗が示してくれました。大震災・原発事故の収拾と復興をめぐる官僚の無能ぶりには呆れ果てました。そして、財政再建のみをテーマにした増税に舵を切った野田首相は、国民から増税理解を得るための切り札、公務員給与引き下げに失敗する体たらくです。

 上久保さんは「(かつての)自民党・社会党が国会で強硬策に訴えるか、妥協を模索するかを、常に世論の動向を見ながら使い分けていた」「過去の事例を勉強していれば、菅政権の国会運営の困難は、与野党間にパイプがないからではなく、国民が野党の妥協を許さないからだとすぐにわかる」と指摘しました。マスメディア政治部報道では政策の本格論議より言葉尻をとらえた失言がもてはやされてきた点や、それを受けた内閣支持率調査があまりにも感情的に動いてしまうのも短命な首相を生み続けている要因でしょう。

 ブログが隆盛を迎えた2004年からブログウオッチを続けていると、2005郵政解散による劇的な勝利の後、小泉首相が盛り上げた世論を裏切って「改革」が日本を変える期待から遠いことをあからさまにした時、ネット上での政治熱は一気に冷めました。これが今日に至る不信の原点です。そして、自民党が圧倒的に支持された正統性が失われたのに、衆院の大量議席差だけを頼りに3代の首相が立ちました。従来の政治とカネの問題より政治不信は深いところで進みました。

 変えるためには既得権益を打破するとした民主党に民意が集まっていき、2009総選挙で初めて本格的な政権交代が実現しました。福島原発事故で明るみに出た「原子力村」のように、長期政権下に出来た日本の官僚制は既得権益と結びついています。その意味で民主党の「官僚外し」は正しかったのですが、代替えするスタッフを集めずに無手勝流で、つまり裸の「政務三役」が適切なアシスト無しに各省庁を切り回すドンキホーテを演じてしまいました。無惨な判断ミスがあちこちで起きました。在京メディア政治部は相変わらず政策に疎く、政局にしか関心がありません。1年前の「『新政権を育てるのに失敗』年賀状での心配事」で描いた通りです。

 官僚を使いこなす仕組みさえ整えれば打開できるかもと思い始めていた矢先に起きた東日本大震災と福島原発事故が、優秀とされた日本の官僚には非日常事態に対処する能力が無いと証明してしまいました。また、災害からの復興という難易度が低い課題が遅れに遅れている理由は、財務省官僚が所得増税が決まるまで復興財源を認めなかったからです。そして今、消費税増税では財政再建が語られるだけです。

 自民党の河野太郎議員が「消費税の引き上げについて」で「消費税を引き上げるならば、基礎年金の財源に充てるべきだ」「買い物をするたびに必ず消費税を支払うので、未納や免除は生じないので、全ての日本人が65歳になれば満額の基礎年金を受け取ることができるようになる。高齢者の生活保護も廃止できる」「専業主婦も消費税を負担するため、三号被保険者問題も解決する」と主張するような、年金制度を憂う人に響く問題意識は聞こえてきません。

 参院で野党が問責決議案を可決してしまったから閣僚を呼べないので衆院でも審議が出来ないなど、あまりに愚かしくて話になりません。これだけ誰も彼もが不信感を抱いているのですから、国会のオープンな議論の中で問題点を明らかにし、知恵を結集して国民の理解と信頼を回復するしか道はありません。この状態で総選挙に突入すれば、国民には選ぶ選択肢が無いと映るでしょう。旧政権与党の自公両党が野に下って何もしていないのに、再び自分の所にお鉢が回ってくるかのごとく構えている感じがする点に、大きな違和感を持っています。