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再発必至、中国高速鉄道事故の無意味な政府調査結果

 年の瀬になってもう出ないかと思っていた中国高速鉄道事故の中国政府による調査結果が公表されましたが、これほど役に立たない事故調査報告も珍しいと思います。毎日新聞の「中国:前鉄道相ら54人処分…高速鉄道事故」は「列車制御システムの設計上の重大な欠陥と応急措置の不備など人為ミスによる事故だった」と伝えています。額面通りに受け取れば中国高速鉄道網は即刻、運行を停止して列車制御システムを一新しなければなりません。関係者の処分など二の次のはずです。

 「制御システムは鉄道省と関係が深い国有企業が請け負ったが、設計段階から開発管理が混乱し、システムに重大な設計上の欠陥と安全上のリスクが生じた。だが、鉄道省の入札審査や技術審査が甘く、欠陥が修正されないまま導入された」「落雷で欠陥のあるシステムに障害が起き、誤って後続列車に進行を許す青信号が発信されたことが主因と断定。運行を管理する上海鉄路局作業員の安全意識も低く、障害への対応の不備で事故を防ぐことができなかった」

 列車追突により死者40人の事故を起こしたのですから、再発を防ぐことが第一義であり、責任追及はその次です。ところが、事故前に汚職疑惑で解任されていた前鉄道相に罪をかぶせることが前面に出てしまっています。高速鉄道では高速すぎて人間の注意力では安全を保証できないから、通常の信号だけでなく列車同士の接近を許さない高度な列車運行制御システムも備えている意味を本当に理解しているのか疑わしくなります。

 「核心は信号の青・赤ではない:中国高速鉄道事故」で時事通信報道を引用して「CTCSと名付けられている列車運行制御システムには、中心的技術として日本の川崎重工業のものが導入されているほか、仏独など欧州各国の技術も使われている。しかし『中核のプログラムは解析すらできていない』と関係者が認めるように、つぎはぎ状態で、業界内では以前から信頼性を疑問視する声があった」と指摘しています。中核プログラムがブラックボックスでも想定問答の範囲内では入力内容と出力内容が相応しいているから使えているだけで、恐ろしいことに想定外の入力があったときにシステムがどう返答するのか、「それは運任せだ」と言っているのと同じなのです。

 制御システムがこのような悲惨な状況にあるのに、導入責任者の罪を問うたとて始まりません。急ぐべきは工学的常識の範囲に収まる検証済みのシステムを構築することです。それでなければ大量公共輸送機関とは言えません。このまま運行を続ければ必ず悲惨な事故が再発します。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国高速鉄道」関連エントリー


恐ろしいほどのプロ精神欠如:福島原発事故調報告

 福島第一原発事故について政府の事故調査・検証委が26日、中間報告書を公表しました。夕方、伝えられている情報を見る限りで一言にまとめれば「恐ろしいほどのプロ精神欠如」です。事故前の想定の甘さ、事故対応・作業の不手際を取り上げればきりがないほどであり、そこに一貫して見えるのは取り返しが付かない重大事故を起こし得る原発に対する謙虚さの欠如です。私の原発取材は関西電力がメインでしたが、伝えられる東京電力の仕事ぶりに比べればずっと真摯だった記憶があります。

 500ページを超す報告書。今のところオリジナルデータが豊富なのは中日新聞で《福島第1原発 政府事故調の中間報告(上)》《福島第1原発 政府事故調の中間報告(下)》で、ほぼ全体像がつかめます。

 最初に爆発した1号機で電源喪失後に残る最後の安全装置「非常用復水器(IC)」について「1号機の全運転員はIC作動の経験がなかった」との報告にはまさかと思い、目が点になりました。発電所幹部はICが順調に作動していると思いこんで「1号機の海水注入が遅れた一因はICの作動状態の誤認識にある。1号機のベント(蒸気を放出して圧力を下げる措置)に時間がかかったのは、ICの作動状態の誤認に起因すると考えられる」としています。しかし、最後の頼みの綱である安全装置起動が運転訓練に組み込まれていない東電の運転員養成態勢は異常すぎます。3号機で安全装置を運転員が勝手な判断で停止した件と合わせて、人災による事故拡大が確定しました。

 政府側のお粗末さも深刻です。「経済産業省の緊急時対応センター(ERC)に原災本部事務局が置かれたが、原子力安全・保安院は助言が遅れ、決定に影響を与えることはほとんどなかった。官邸地下の危機管理センターに関係省庁の局長級の緊急参集チームがいたが、菅直人首相や閣僚らが集まった官邸5階の決定を十分把握できなかった」のですから、あの危機時に専門家チームの助言無しにアマチュアが手探りで決断していたことになります。注水の応援派遣で消防庁より先に警視庁を呼ぶなど、おかしなことだらけでした。保安検査官が原発の事故現場を放棄して退避した点も問われています。

 津波の想定について保安院の対応は叱責されています。「保安院は09年8月、東電に津波評価の現状説明を求め、翌9月、東電が貞観津波の試算を説明した。保安院の審査官は対策工事の要求はせず、上司の森山善範審議官(当時、原子力安全基盤担当)らに報告もしなかった」「津波対策基準の提示は保安院の役割だが、その努力がなされた形跡はなかった」となっています。やはりプロ精神を欠く人災と結論づけられる要因でしょう。

 【参照】「東電技術力は2級品:NHKスペシャルで確認」
 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー

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厚生年金積立金の枯渇まで10年ほどに見える

 12月に公表されたばかりの《平成22年度厚生年金保険・国民年金事業の概況》は、厚生年金積立金が22年度末まで4年間で25兆円も減って114兆円しかないと報告しています。23年度予算では8.4兆円を取り崩すことになっており、受給者の増加で年々増える一方です。来年度予算ではさらに消費税増税を先食いした年金交付国債分2.9兆円の取り崩しが加わります。運用での損失も膨大で、現状の無為無策で行けば積立金枯渇まで10年ほどに見えます。



 上のグラフは積立金の推移に運用利回りの利率を書き込んだものです。「運用利回りは、平成18年度3.10%、平成19年度△3.54%、平成20年度△6.83%、平成21年度7.54%、平成22年度△0.26%」とリーマンショックの激動が入って乱高下しています。この5年間で保険の実質収支は計19兆円の赤字でしたから、25兆円の積立金目減りの内、6兆円は運用損だったわけです。

 さらに年金積立金管理運用独立行政法人の「最新の運用状況ハイライト」によれば、東日本大震災で打撃を受けた今年の運用は悲惨です。第2四半期だけで3.7兆円のマイナスになっています。今年度末で100兆円を割り込んでいる恐れが大になっています。欧米の経済不安が続く来年も順調ではないでしょう。

 政府は「試算」の形で厚生年金積立金の枯渇が考えられるケースを示しています。デフレが続き、経済成長率もマイナスで名目賃金の上昇率もマイナスで行けば2031年度に枯渇するという、あり得ない例を提示していますが、目の前で起きている積立金の目減りは見通せていません。ほんの2年前に行われた「平成21年財政検証結果」は140兆円台の積立金が続くとしていました。あまりにも杜撰だったと言うべきでしょう。自公政権下の「100年安心プラン」など夢のまた夢でした。

 【参照】インターネットで読み解く!「年金」関連エントリー


著作権者の強欲な録画課金認めず:知財高裁判決

 消費者の私的録画をめぐって著作権者側の横暴すぎる課金を認めない知的財産高等裁判所判決が出ました。《録画補償金訴訟、東芝が知財高裁でもSARVHに勝訴》(INTERNET WATCH)が「ダビング10」などの著作権保護技術で制約があるデジタル専用録画機は、録画による補償金を機器代金に上乗せして消費者から徴収する制度の対象外とする判決と報じました。

 「アナログチューナー非搭載のDVDレコーダー(デジタル専用録画機)における私的録画補償金をめぐって、私的録画補償金管理協会(SARVH)が販売元の東芝を相手取って起こした訴訟の控訴審判決が22日、知的財産高等裁判所であった。2010年12月に東京地方裁判所で言い渡された一審判決と同じく、SARVHの請求が棄却され、東芝が勝訴した」「知財高裁の判決では、一審で否定された『デジタル専用録画機は課金の対象外』という東芝の主張も認められた」

 アナログ番組の録画ビデオは、さらにダビングできることから著作権者の損害を補償する制度が出来ました。デジタル放送への移行ではデジタル番組は無劣化コピーが可能であるとして、「ダビング10」などの著作権保護技術で国内ではコピーを厳しく制限しました。コピーを認めないケースもあります。それなのに私的録画の補償金は取り続けると主張したことに対して東芝が異議を唱えたのでした。昨年の一審勝利で他のメーカーも同調し始めています。

 「デジタル放送録画規制は最悪、呪縛脱し思う」で指摘しているように、デジタル放送録画はアナログでの録画に慣れた消費者には思いもよらぬ不便が待っています。暇になったら鑑賞しようと番組を取り溜めしても、録画に使ったDVDレコーダーなどが壊れてしまえば、もう再生できません。本当に長く見たい録画番組はブルーレイディスクに焼くなり、面倒な手順で他のハードディスクに移して置かねばなりません。これほど不便を強いておきながら、さらに補償金を取ろうとするのですから強欲と評さざるを得ません。敗れたSARVH側は即日、最高裁に上告したそうです。


東電の電気料金「私物化」は過去まで遡り返済を

 東京新聞が伝えた《東電、電気料金に上乗せ 保養所維持管理費 高利子の財形貯蓄》は、東電による電気料金「私物化」が極度に進んでいたことを示しています。記事のトーンは、経産省の有識者会議はこれからは認めない――ですが、国民に有無を言わせず払わせる公共料金をここまで私物化していた以上、過去に遡って相当額を東電と社員に返済させるべきです。

 総括原価方式で発電に必要な費用を積み上げ、それに電力会社の利益を加えて電気料金として集めてきました。「発電とは無関係のものが費用計上されていると新たに判明したのは、ハード面では静岡県熱海市など各地にある保養所や社員専用の飲食施設、PR施設などの維持管理費」「ソフト面では、財形貯蓄の高金利、社内のサークル活動費、一般企業より大幅に高い自社株を買う社員への補助、健康保険料の会社負担など」です。

 リストから社員個人に渡った部分を拾うと、「健康保険料の70%負担」とは通常は50%会社負担ですから、社員負担50%の4割に相当する20%分を電気料金に転嫁していたことになります。社員の自社株式購入奨励金(代金の10%)、年3.5%の財形貯蓄利子、年8.5%のリフレッシュ財形貯蓄の利子なども電気料金の信じがたい「私物化」です。

 こうした部分は過去に遡ってきちんと計算が可能です。社員専用の飲食施設や接待用飲食施設、サークル活動費なども電気料金に別枠計上できる「利益」から出すべきであり、東電が会社として不当に得た金です。9月にも朝日新聞が、過去10年間で東電が費用を6000億円も高く見積もっていたと報道しましたが、その際には今回ほど中身が報じられませんでした。判明した悪質ぶりは電気料金を支払った消費者には到底、納得できない内容です。国が見過ごすなら、東京電力管内の消費者は集団で不当料金の返還訴訟を起こしうるでしょう。


東電技術力は2級品:NHKスペシャルで確認

 18日夜のNHKスペシャル「メルトダウン」を見て、改めて東電の技術力は2級品と思い知らされました。こんな東電現場チームに全電源喪失の大事故を任せてしまい、適切な専門家を緊急招集して司令塔を作らなかった政府の責任は重大です。

 まず、新しい知見として福島第一原発1号機の最後の安全装置である「非常用復水器」の弁が電源喪失とともに閉まってしまい、稼働させるためには手動で弁を開けに行かなければならない仕組みになっていたのに日本側は知らなかった点がありました。最後の頼みの綱である安全装置の作動条件を、40年間、誰も確かめなかった杜撰さには驚きました。米国では認識されて運転員の訓練に取り入れられているのです。製造元の米国との情報落差が無いように努める原子力業界の常識を、東電は守っていなかったことになります。

 1号機の運転チームが震災当日の3月11日から12日に日付が変わる時点でもメルトダウンを疑っていなかった点は愚かすぎて、開いた口が塞がりません。11日夕方、電源が一時、戻った時点で非常用復水器を起動、直ぐに停止させたのですから、崩壊熱で過熱していく原子炉を冷やす手段は電源喪失時点からほとんど取られなかったと自分で認識できます。核燃料崩壊熱の大きさを考えれば原子炉内に水が残るのがおかしい状況です。もう使える手段が無いと知れば、直ちに炉心溶融を考えるしかありません。それなのに、新たに水を補給していないのに水位計が『誤動作』で上昇するのを見ていたなんて、原発の運転員とは到底思えません。当初言われた想像力の貧困よりも、論理的思考力の欠如です。

 原子炉3基が同時に危機に陥る複合事故で、指導すべき現地対策本部は一つの炉に集中できない困難があった、と言い訳していましたが、2号機と3号機は別の安全装置が自動起動していました。もし1号機の安全装置も起動していたと誤解していたにしても、旧式の1号機は安全装置が有効な時間が最も短く半日もないのです。1号機に集中して対処しなかったのは完全に判断の誤りです。「2、3号機救えた:福島原発事故の米報告解読」で指摘したように2、3号機には対策の取りようがありました。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


放射能海洋流出拡大なのに事故収束宣言とは

 政府は16日に「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」と福島原発事故の収束を宣言しました。放射性物質の外部飛散が大きく減り、敷地境界での線量が下がったことを根拠にしていますが、表に見えにくい海洋への放射能の流出はむしろ拡大している証拠があります。水産庁の「水産物の放射性物質調査の結果について〜12月16日更新〜」にある一覧表から魚種別グラフにして以下に掲げます。



 福島沖で採取された魚の1キロ当たりセシウム含有量は夏の終わりにかけて減少する傾向を見せていましたが、秋に入って反転、増加しています。特にヒラメは暫定基準の500ベクレル前後をたびたび示し、11月16日に4500ベクレルの最大ピークを記録しました。やはり底魚のアイナメも11月30日に1780ベクレル、12月14日に1940ベクレルと非常に大きな汚染値を出しています。

 1カ月前に書いた「福島原発から海へのセシウム流出が再発生か」では、原発建屋地下の汚染水と地下水が出入り自由になっている問題を指摘しました。しかし、ヒラメの汚染が春から夏のレベルを超えて進んでいる点からは、もっと深刻な事態もあり得ると考えられます。圧力容器から落ちた溶融核燃料が、東電の主張するように格納容器内に止まらず、底を突き破って地下水と接触し始めている恐れです。

 「1号機の解体撤去は絶望的に:福島原発事故」で検討したように、炉心溶融を起こして格納容器に落ちてくる際に底にどれだけ水があったかで、格納容器内に止まるか、地下に抜けるかが決まります。ここは本来は水が無い場所で、東電の推定シナリオは希望の限りの最善と見えます。

 得られている水産物観測データの検討もしないで、年内収束宣言に突き進むとは困った政府です。福島第一原発の地下で何が起きているのか、横方向のボーリングその他、取れる方法は何でも試みて検証する必要があります。いくら「冷温停止」と称しても、核燃料があるとされる格納容器底部の温度は未知なのですから。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


『はやぶさ』が作った国民的希望を政治が潰す

 7年ぶり60億キロの苦難の旅路から昨年6月に帰還して、国民に感動と希望を与えた小惑星探査機『はやぶさ』の後継機プロジェクトが、政治の思惑で実質的に潰されようとしています。初代のプロジェクトマネージャ、川口淳一郎さんが「はやぶさプロジェクトサイト トップ」で「はやぶさ後継機(はやぶさ-2)への政府・与党の考え方が報道されている。大幅 に縮小すべきだという信じがたい評価を受けていることに驚きを禁じ得ない」と悲痛な訴えをしています。天体の相互関係で後継機打ち上げ時期は限られており、中途半端な予算縮小は中止に等しいのです。

 「はやぶさ-2は、実は、これが本番の1号機なのである」「初号機はあくまで、往復の宇宙飛行で試料を持ち帰ることができるという技術が、我々の手の届く範囲にあるということを実証しようとした、あくまで実験機」「我々の水と有機物に覆われた環境の起源と進化を探ることが、はやぶさ-2の目的である。まったく異なる天体(C型小惑星)を探査し、試料を持ち帰ろうという計画なのである」「政府・与党の意見には、はやぶさ-2に科学的な意義を見いだせないというものまであったという。まことに信じがたいことである」

 米国のNASAなどに比べれば僅かな予算で、世界に先駆けて小惑星から地球に試料物質を持ち帰った『はやぶさ』の意義評価は、世界では全く違います。科学ジャーナリストの松浦晋也さんが「はやぶさ2で野田事務所に嘆願書を送った」で「日本の成果を知り、その科学的価値を認識したアメリカは今年度からはやぶさと同様の小惑星サンプルを持ち帰る探査機『オシリス・レックス』の開発を開始しました。予算総額ははやぶさ2の3倍です。小惑星サンプル採取と持ち帰りには、それだけの価値があるとアメリカも認識したわけです」と野田首相に訴えます。

 『はやぶさ』の帰還は、ほとんど擬人化しての熱烈な歓迎でした。資料採取カプセル展示巡回は大好評でしたし、《探査機「はやぶさ」の快挙、しみじみ嬉しい》で紹介したように、持ち帰った微粒子1500個が小惑星イトカワ由来と発表された昨年11月には、同じ頃に話題だった「尖閣ビデオ流出」なみの反応をツィッターで得ました。科学技術立国への希望、手応えを感じさせる存在でした。

 成功に至った長年の技術開発をどう取り組み、何が得られたのか、《未来は決まっていない,挑戦なくして未来は開かない─「エンジニアの未来サミット for students 2011」第3回レポート》に『はやぶさ』の不屈のイオンエンジンを手掛けた國中均・宇宙科学研究所教授のエピソードがあります。

 米国が10年以上先に研究を進めていた分野で「後発の不利を挽回するため,國中教授たちは最初から消耗品となる電極のないエンジンの開発を目指します」「電極の代わりにマイクロ波を使い,電子を選んで加速させてプラズマを発生させる方式の開発に成功します。最初は推進利用効率が上がりませんでしたが,10年以上の研究の末」に、宇宙空間で使える非常に高効率のエンジンを達成しました。また、エンジン制御ソフトウェアは「こんな事もあろうか」と実に様々な想定をして多くのオプションを持った開発になっており、それが度重なる苦難を乗り越える力となりました。

 これだけの技術開発をして世界が注目する中で、本番の小惑星飛行を実施しないで初代『はやぶさ』のデモ飛行だけで終わらせるのか――来年度予算要求は、ほんの73億円です。自公政権下でも『はやぶさ』後継機プロジェクトは冷遇されてきましたが、本来の目標が実現出来うる今の段階になってこの話題を書こうとは思いませんでした。


高放射性廃棄物は「薄めて焼却せよ」と環境省

 朝日新聞の《芝生シート高線量の小学校、セシウム9万ベクレル 杉並》には、異常なほど高放射性の廃棄物でも一般廃棄物と混ぜて希釈すれば焼却してよいと、空恐ろしいことが平然と書かれています。焼却を認めた環境省は万死に値しますが、専門家からの評価も入れずに役所の意向を記事として垂れ流すマスメディアも酷すぎます。

 杉並区立堀之内小で「4月上旬まで敷いていた芝生の養生シートを同区が調べたところ、1キログラム当たり9万600ベクレルの放射性セシウムが検出された」「国が廃棄物処理できる目安とする『1キロ当たり8千ベクレル以下』を10倍以上上回っており」「環境省は12日夜になって『シート1キロに対し他の廃棄物1トンを混ぜて焼却すれば放射性物質は十分希釈される』と回答し、焼却処分を事実上認めた。これを受け、区は焼却する方向で検討している」

 千倍に希釈すれば環境に拡散してよいとは、とんでもない解釈です。高放射性廃棄物を通常廃棄物として処理できないようにする基準は何のために作られているのでしょうか。放射性物質は半減期が長く、通常化学物質のように環境の中で無害な物に変わる可能性はありません。高い汚染が発見されたなら環境からきちんと隔離しなければならないのが常識です。今回の論理で善ければ、各地の下水処理施設で困っている高放射性汚泥なども希釈してしまえば善いと解釈できます。そんなことが許されるわけがありません。原因者である東電に最終処分場を造らせ、高放射性廃棄物はそこに持ち込んで長期の監視下に置くしかないのです。この当然の枠組みさえ政府はまだ用意していません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


底は打った貿易収支、残る余裕を再建に生かせ

 年の瀬が近づいて来年はどうなるのか、東日本大震災の痛手が心配でしたが、今年の貿易・サービス収支は小さな赤字転落に止まり、来年は頑張って持ち直す見込みが語られています。資本の移動を見る所得収支は国際的に債権国としての基盤が出来て堅調です。経常収支の赤字を心配する必要は、今しばらくはありません。この余裕を経済・社会システムの再建に生かしたいものです。

 10月までの貿易収支速報値が出たのでグラフにしました。2008年のリーマン・ショックによる落ち込みから回復した直後に、東日本大震災で大打撃を受け、それでも既に底は打った状態にあることが読みとれます。



 日本貿易会の「2012年度わが国貿易収支、経常収支の見通しについて」は2011年について「貿易収支は、輸出の減少と輸入の増加により大幅に減少し、かろうじて9,420億円の黒字にとどまる。サービス収支は、旅行収支などの悪化を受けて1兆7,280億円と赤字幅が拡大。この結果、貿易・サービス収支は3 年ぶりに7,860億円の赤字に転じる。一方、所得収支は、円高や金利低下にもかかわらず、順調に伸びて黒字は14兆2,020億円に達する」としたうえで、2012年は「経常収支は、貿易・サービス収支が再び黒字に転じ、所得収支も前年度並みの黒字となることから、16兆1,940億円とほぼ2010年度の水準に復帰する」と見込んでいます。

 「溜池通信 vol.482」が1996年から経常収支の動きをまとめているので、グラフを引用します。



 2000年までの貿易収支で稼ぐ日本の姿が変貌したことが一望できます。やがて海外投資の果実を得られるようになり、2008年以降は所得収支の黒字が主役になっています。円高騒ぎは製品輸出面では不利ですが、海外企業買収などの資本投資には有利なのです。もっと長期を展望すれば経常収支の赤字がありうると指摘されはじめ、そうなれば国債の国内消化が危ぶまれるようにもなります。しかし、まだ時間はあります。「欧米の経済不安深刻化は愚かな日本を相対化」してくれていたのですが、来年は本格的な再建への議論をしなければなりません。


京都議定書延長で良い子ぶる余裕は存在しない

 地球温暖化対策を話し合う国連の会議COP17は9日、最終日を迎えて、先進国だけに温室効果ガス削減を義務づけた京都議定書を継続させ、新たな枠組みを作ることを目指すなどの合意が模索されています。はっきり言って、日本には京都議定書延長で良い子ぶる余裕は存在しなくなっています。もともとの枠組みに異常とも言える日本への不公平が存在している上に、東日本大震災と福島原発事故の収拾・復興へ膨大なエネルギーを投じるよう迫られている現在、冷ややかに一歩引いて対処するべきです。

 2005年、京都議定書発効の際に書いた「京都議定書、本当の問題点を言おう」が今でも議論として有効です。ニューヨークタイムズがウェブに掲示している「KYOTOグラフ」を見ていただきましょう。米国と中国の圧倒的な排出量が明らかです。

 当時こう指摘しました。「グラフの主題は各国別の温暖化ガス排出量(2002年あるいは2000年段階)である。1990年のレベルも添えられていて、先進国側にだけ、これに対して数%の国別削減目標がある。先進国、途上国を色分けした批准国地図も添えてある。排出が多い順位に米、中、ロ、印、日、独、ブラジル、加、英、伊が10カ国。『この10カ国の中で温暖化ガス排出削減に血の滲む努力をしなければならないのは日本だけ』と言われたら、京都議定書に対する見方が一変してしまうのではないか」

 この全体像は今でも変わりません。そして、米国と中国が温暖化対策に消極的な姿勢にも変わりはなく、新しい枠組み作りに対しても熱心どころか引いてしまっています。


SPEEDIデータ隠しで乳児を犠牲にした政府

 食品大手「明治」が製造した乳児用の粉ミルクから1キログラム当たり最大30.8ベクレルの放射性セシウムが検出された問題で、日刊スポーツは《粉ミルク、乾燥工程でセシウム汚染か》と伝えました。政府が原発事故時には発表すべき緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」のデータを隠した結果、明治・埼玉工場(埼玉県春日部市)が高濃度の放射能の雲通過を全く警戒しないで乳児向けミルクを造ってしまったのです。

 「工場内に取り込んだ大量の外気に液体の乳原料を霧状にして当てて乾燥させ、粉ミルクに加工している。今回放射性セシウムが検出された製品は、福島第1原発事故直後の3月14〜20日にこの乾燥工程があった」「原乳を粉状にした原材料は北海道や米国、オーストラリア、欧州から工場に搬入。水と栄養分などを混ぜて再び液体にし、約200度に熱した空気に当てる」と報じられています。

 賞味期限は「2012年10月」で40万缶の無償交換を申し出ていますが、なるべく新鮮な製品を与えたい親の心理を考えると既に消費された恐れが大でしょう。乳製品の国の暫定規制値である1キロあたり200ベクレルは下回っているものの、放射能に感受性が高い乳児には遙かに低い基準が必要と考えられます。

 放射能の拡散データを集め、分析している「早川由紀夫の火山ブログ」から「汚染ルートとタイミング(9月30日改訂)」を引用します。



 明治・埼玉工場は春日部市役所の近くにあり、3月15日の「群馬ルート」が問題の製造工程と合致します。「この放射能の雲の下に膨大な人がいた事実に戦慄」で「3月15日には原発周辺から放射能の雲に沿うルートで大量の避難民が逃げた惨状がありました。程度の差こそあれ首都圏でも事情は同じだったのです。本来ならば外出を制限して屋内に止まるよう努めるべきでした。半年遅れでこのような地図を見せられると、この国は主権者である国民のことなど何も考えていないと改めて思わされます」と指摘した怒りが蘇ります。

 このルートでは雨が少なかったので埼玉や東京都心などの放射能沈着量が目立ちにくいのですが、実際には相当に高濃度の放射能の雲が通過していたことが粉ミルク製造禍から逆に証明されました。放射能がどの方角に拡散するか予測するSPEEDIは、まさにこうした局面用に備えた仕組みだったはずです。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


大英図書館の300年新聞データベースを使ってみる

 engadget日本版が「大英図書館が300年分の新聞データを公開、検索・購入可能」を伝えています。300万ページという膨大なデータベースです。早速、その「British Newspaper Archive」を試しに使ってみました。

 例えば日露戦争で連合艦隊が世界の予想に反して劇的勝利をおさめた日本海海戦を、日英同盟下の英国紙がどう報じているのか、です。日本海海戦が英語訳して使われているはずがありません。ロシア・バルチック艦隊は英語で「baltic fleet」なのでこれを手がかりにします。日本海海戦は1905年ですから、年代フィルターをかけたら一部では「BATTLE OF TSUSHIMA」と呼ばれたことが分かりました。

 「BATTLE OF TSUSHIMA」で検索し直すと20世紀では21件でした。先頭の2件を引用します。

《1》Western Times (Sat 07 Jul 1906)
BATTLE OF TSUSHIMA (77 Words)
“ BATTLE OF TSUSHIMA. Rodjestvensky and the Surrender of the Biedovy. The trial of Admiral Rodjestvensky and the other officers of the Baltic Fleet has begun at St. Petersburg, says Reuters Agency. Admiral Rodjestvensky, in defending himself, assume ...

《2》Tamworth Herald (Sat 17 Jun 1905)
THE GREAT NAVAL BATTLE (1216 Words)
“ naval battle in' the Tsushima Straits were as follows: On the morning of May 27th the Russian Fleet approached the eastern straits of Korea in two columns, on the left the battleships and on the right the cruisers, with the transports between them. A ...

 2番目が第一報のようです。海戦から3週間も遅れているのは、はるか極東の出来事だったからでしょう。「《大海戦》対馬海峡での海戦は次の通り:5月27日朝、ロシア艦隊は朝鮮との海峡に2列縦隊で差しかかった。左に戦艦、右に巡洋艦が並び、さらに輸送船団……」

 この先を読みたければ支払いが必要です。「検索は無料。閲覧には有料の会員登録が必要で、たとえば一年間見放題プランだと 79.95 ポンド(1万円弱)という価格設定」で、2日間だけは6.95ポンドながら閲覧量の制限があります。

 調べたいテーマがはっきりしていれば使いではあると思います。日本の新聞業界は各社ごとにデータベースが出来ていて割高で、アマチュアが使うには高すぎます。

 【参照】インターネットで読み解く!「データベース」関連エントリー


『炉心溶融』を避け世論誘導した東電の愚劣

 東電が2日に公表した「福島原子力事故調査 中間報告書」には事実関係で目新しいものはほとんどありません。しかし、「中間報告書 別冊」にある『炉心溶融』という用語を避け事故を小さく見せようと誘導した東電の愚劣ぶりは、記録しておく価値があります。マスメディアが一部で事故直後に使い始めた『炉心溶融』を見事にブロックしておきながら、今頃になって「溶融も含めてその可能性は否定していない」とはよく言います。

 「当社の記者会見発言」はこうなっています。震災翌日の3月12日、1号機は圧力容器の底が抜けて格納容器と同じ圧力に落ちた段階では「現在確認されている水位では、燃料の頂部で若干燃料の損傷の可能性は否定できない」、1号機で水素爆発が既に起きていた14日段階では「(燃料が損傷した可能性を認めるのかとの質問に対して)自然状態より高いレベルの放射能が出ているので、燃料が損傷したとみている」と小さな損傷のニュアンスで答えているのです。

 質問した記者たちがあまりにも原発についての知識を持っていなかった点はマスメディア側の著しい不備、怠慢です。しかし、水素爆発が起きる程度に燃料被覆管のジルコニウムが溶けた状態を、上記のように説明しておきながら「出来る範囲で状態をイメージできる様な平易な言葉で説明してきた」と居直ります。

 政府・経済産業省と保安院もぐるになって『炉心溶融』を避けた、決定的な事実の証言もあります。「4月10日、当社より経産大臣に1号機〜3号機が炉心溶融しているが、その程度については、評価できないと説明。その場において、経産大臣、保安院、東電の間で用語の定義が曖昧であることに関する議論を実施。その結果、『炉心溶融』という言葉を使わずに『燃料ペレットの溶融』を使うように経産大臣より指示あり」です。それ以降、5月に炉心溶融を認めるまでの記者会見のやり取りは、まるで禅問答の様相です。

 科学技術社会論学会研究大会のシンポジウムで天文学者の牧野淳一郎氏が「原子力災害と科学者、STS研究者」と題した発言をしています。バイアスがかかっていない科学者の目に事態がどう映ったのか見るには良いと思います。

 「事故直後の1週間程度、原発事故の影響がどれほどのものか、は国・東京電力の公式発表やメディア報道からはよくわからなかった(例の『ただちに健康に影響はない』しか情報がなかった)」「国・東京電力の3月頃の発表と、現在わかっている当時の原子炉の実際の状況、放射性物質の放出状況には大きなずれがあった」

 3月13日に私が書いた「福島第一原発3号機も炉心溶融、後手の連続」があります。新聞社の科学部時代に原発取材を経験したジャーナリストとして公表済みの事実関係だけでも、事態の進行は読みとれました。ところが、政府・東電が『炉心溶融』を避け続けたため、在京メディアの幹部は疑心暗鬼に陥りました。『炉心溶融』を言う記者は執筆から外されたとも聞きます。「炉心溶融認めず」が、周辺住民の避難遅れやヨウ素剤の服用せずに繋がったのですから、東電の愚劣は実質的な被害拡大に及んだのです。

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1号機の解体撤去は絶望的に:福島原発事故

 福島第一原発で事故を起こした1〜3号機の炉心状況について《溶融燃料、コンクリ床浸食=格納容器内で最大65センチ−東電が推定公表・福島第1》(時事通信)との報道がありました。炉心溶融で核燃料が圧力容器から溶け落ちたけれど、下の格納容器コンクリート床を浸食しただけで外部には出ていないと主張しているのです。しかし、東電の期待を込めた最善の推定でも、少なくとも1号機の解体撤去は絶望的に見えます。チェルノブイリ原発のように永遠の管理を強いられるでしょう。



 上の図は最も溶融が進んだ1号機の状況説明です。「1号機は『相当量』、2、3号機は一部の溶融燃料が原子炉圧力容器から格納容器に落下したと推定。床面のコンクリートを1号機では最大65センチ浸食した可能性があるが、いずれも格納容器内にとどまっており、注水で冷却されているとしている」

 東電の「福島第一原子力発電所 1〜3 号機の炉心状態について」は多くをコンピュータシュミレーションから割り出しています。格納容器内は恐ろしい高線量で現場を確認するすべがないからです。計算の前提を変えれば結果はいくらでも変わる不確かさが再三、注記されています。読んでいくと、炉心溶融を起こして格納容器に落ちてくる際、床に水があって冷やしたかどうかが分かれ目のようです。

 格納容器の床には本来は水はありません。添付資料12「コア・コンクリート反応による原子炉格納容器への影響」には、水があった説明として圧力容器の水が漏れ落ちてくるとしています。「原子炉冷却材再循環系ポンプのメカシール部には、炉水が原子炉圧力容器バウンダリ外へ流出しないようシール水が供給されている」「全交流電源の喪失に伴いシール水を供給している制御棒駆動系が停止したため、メカシール部から炉水が流出したと想定される」

 水が無ければ格納容器の底貫通まで進んでしまうと専門家はみていました。1号機の炉心溶融は早く3月12日未明ですから、シール部から漏れ出る程度で十分な水が溜まっていたかに疑問が残ります。格納容器貫通の可能性は消せません。溶融まで時間があった2、3号機では水があったとされています。

 この推定を受け入れたとしても1号機の解体撤去は非常に困難です。圧力容器の解体から始め、格納容器全体を水で満たして上部の蓋を開けなければなりません。格納容器が健全かにも疑問がありますが、圧力容器から上が撤去できても、床に食い込んだ100トンもある形状不明な核燃料溶融体を、水の中で遠隔操作で細切れに切断して運び出すのです。乱暴にやれば高汚染域が広がり、人が入れるように除染することも不可能になります。技術開発次第とは、とても言えません。

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