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アジア工業国の非婚化は日本以上に進んでいる

 8月下旬、英エコノミスト誌からの記事「激変するアジア社会:結婚しない女性たち」を見て、非婚化傾向を追ってきた立場でフォローしようと思いました。2004年の合計出生率は日本が1.29と下がって騒いでいるのに、韓国1.16、台湾1.18、シンガポール1.24、香港0.93とアジア工業国(地域)は一段と低い状況です。欧米と違って婚外子があまりいないアジアですから、この数字は非婚化の進展を表しています。人口を維持するには2.1が必要です。

 JICAの「2.主要国の少子高齢化と経済成長」に「合計出生率の推移(実績と予測)」があるので引用します。1960年代に既に「2」台に落ちていた日本に比べて、他の諸国は高い出生率から1970年末、一気に「2」台に突入し、21世紀に入って日本を下回っていくのが見えます。



 英エコノミスト誌は「多くのアジア人は結婚を先送りしているのではない。一生結婚しないのだ。日本では、30代前半の女性の3分の1近くが未婚で、恐らく、その半数は今後も結婚しないだろう。台湾では、30代後半の女性の5分の1以上が未婚で、その大部分が一生独身だ」「さらに未婚率が際立っている場所もある。40〜44歳の女性の未婚率は、タイのバンコクでは20%、東京では21%に上る。シンガポールでは、この年齢層の大卒者は27%が結婚していない」「アジアで起きている結婚からの逃避は、現代の女性が大きな自由を享受できるようになった結果であり、それ自体は祝福すべきことだ」と指摘します。しかし、結婚できない男性を大量に生み出し、非常な速さで高齢化社会に突き進みます。(参照:日本の生涯未婚率最新見通し

 これに関して2008年に日大人口研が国際会議を開き、「アジアの低出生をテーマに国際会議 日大人口研、WHO、 国際人口学会」と題したドキュメントを残しています。「超低出生国というのは、合計特殊出生率が1.3以下と極めて低いという状態にある国のこと。この状態が続くと1世代(約30年)後には、人口が35%から40%減少するとされている」とし、アジア工業国は軒並みこれに該当します。

 中国も経済発展が著しい地域では出生率低下が進んでいます。「上海に隣接する江蘇省の2000年の合計特殊出生率(TFR、 1人の女性が生涯に産む平均子ども数の推計値)は1.0。中国全体の1.5よりかなり低い。ワン氏はこの理由として、グローバル化による経済発展が著しいことや、1979年から始まった『一人っ子政策』を、同省は最も厳格に遂行していることなどを挙げた」

 アジア工業国での出生率低下について「オーストラリア国立大学のピーター・マクドナルド教授は『結婚している割合が低いこと、子どもに掛かる直接費用が高いこと、女性の間に家族よリキャリアを追求しようという意識が強いこと』があると指摘した」。また「東アジアは家族を大事にするという価値観がある。特に男児の場合は『成功主義』が影響しており、子どもの成功が親の社会的評価につながることから、教育に多くを投資しているとした。その結果として『数』より『質』ということになり、出生率の低下につながる」「世界の金融危機のような不確定な要素があると、夫婦は子どもをつくらないだろうとし、東アジアの出生の回復は困難との見通しを述べた」

 子どもへの投資が日本でも深刻な負担になっています。生まれてから自立するまでの歳が「1984年は24歳だった。ところが高学歴化やニート・フリーターの増加などにより2004年には26歳に上昇した」「この期間のコスト(消費が所得を上回るため家族でサポートする分)を働き盛りの30〜49歳の平均年間労働所得から計算すると、約13年間分の給与が必要ということになる」

 出生率低下が進んで人口増加が早く終わってしまうと、社会が富む前に高齢化してしまうことになります。みずほ総研論集2008年弦罎「東アジアにおける高齢化の進展と政策的課題」に、15〜64歳の生産年齢人口がそれ以外の世代の2倍以上いる「人口ボーナス期」の終了時に、どれくらいの1人当たりGDPになっているか一覧表があったので引用します。アジア工業国は2万ドル以上の高水準ですが、人口の大きい中国は5千ドル台に止まります。タイ、インドネシアなども厳しい水準です。



 【参照】インターネットで読み解く!「結婚」関連エントリー


野田新代表、何もせぬ民主党政権で終わる瀬戸際

 政権交代2年で3人目の新代表、新首相として野田佳彦財務相が選出されました。野田氏は政権運営とは雪の玉を坂道で押し上げ雪が付着していく重みに耐えるモノなのに、現状は雪の玉が坂道を転げ落ちていると厳しい認識を示しました。1月の「『新政権を育てるのに失敗』年賀状での心配事」で憂慮した何もせぬ民主党政権が、大震災・福島原発事故でもどんどん後手に回り続けて見るべき成果をあげていません。民主党政権が何も出来ずに終わってしまう瀬戸際に立った新代表と言えます。

 財務相としての仕事ぶりは財務官僚の思惑に沿った感じが強かったと思えます。民主党が掲げた『政治主導』のにおいは薄いけれど、政治主導の意味も改めて問わねばなりません。政権交代以来、根拠を示さぬ、思いつきに近い『政治主導』で官僚組織を振り回してきました。一方で長い間、違う価値観に触れる機会を持たなかった官僚組織側の質的劣化も激しく、前例があるルーチンワーク以外の仕事には役に立たなくなっています。原発事故がその好例で国の安全審査が根底から覆っているのに、経済産業省は「原発は適法に運転されている」と言い張るばかりです。そんな主張は裁判になったら通用しません。

 代表選で対抗した海江田万里経済産業相は「修羅場をくぐった自分にしか判らないことがある」と主張しましたが、全くのお笑いぐさです。官僚の「保守」的な言い分を代弁しただけです。原発全電源喪失という大事故の進展を制御するには原子力安全・保安院の官僚では力不足は明らかですから、強力な技術スタッフを即席で整備して、司令塔を造るしか道はなかったのです。

 1月には「年金・医療など社会保障、農業と貿易の問題、内需拡大と成長戦略といった緊急を要する大きな政策課題に成果を上げさせねば、政権交代の意味そのものを失わせ、長く尾を引く後遺症になると心配します」と書きました。さらに震災復興と原発事故の後始末が加わっています。これでもなお小沢元代表をめぐる軋轢から党人事の方に民主党内やマスメディアの関心は向いていますが、冗談ではないと思えます。


15メートル大津波は、実は想定してあった!!!

 24日夕方から福島第一原発事故の津波想定が10メートル以上あったとのニュースが流れていましたが、夜遅くなって読売新聞が《東電、福島第一で高さ15mの津波予測していた》を報じました。「従来の想定を上回る10メートル以上の津波が到来する可能性があると2008年に試算していたことが政府の事故調査・検証委員会で明らかになった問題で、東電は同じ試算で高さ15メートルを超える津波の遡上(そじょう)を予測していたことが24日わかった」

 2008年に「マグニチュード(M)8・3の明治三陸地震(1896年)規模の地震が、福島県沖で起きたと仮定して、福島第一と第二の両原発に到達する津波の高さを試算した」というものです。経済産業省原子力安全・保安院に報告したのが地震の4日前の3月7日とはいえ、自ら危険性を認識して対応する時間は十分にあったのです。

 これとは別ですが、チェルノブイリ事故時に新聞社の原発問題取材班としての仕事で本になった『地球被曝―チェルノブイリ事故と日本』を見直して思い出しました。福島第一原発のような沸騰水型炉の再循環系配管では、大地震があると設計で許容された力の2倍以上が掛かることが大型振動実験で割り出さていました。破断しなければよいと判断でその後も放置されていたのですが、今回の事故では津波以前に、大地震の段階で配管が破断して冷却材喪失事故が始まっていたと疑われています。

 お金がかかる決断を嫌がって、至上命題である原発の安全確保を放棄してきた東電体質はずっと前から続いていました。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


政府の除染方針に自治体が不信感持って当然

 福島第一原発周辺の高放射能汚染区域について朝日新聞は「政府が居住を長期間禁止するとともに、その地域の土地を借り上げる方向で検討」、NHKは「警戒区域で継続区域は土地買い取りも」と伝えました。地元の大熊町長は「5カ月も経って詳細な放射能測定や除染もまだしていないのに」と不信感を表明しました。細野原発事故担当相がこの1週間ほど、国による除染活動体制の立ち上げを触れ回っているのですが、まだ何の実績もありません。

 何もしてくれず除染の方針すら示さない政府に業を煮やして、南相馬市だけが東京大アイソトープ総合センターと共同で動き出しています。読売新聞の《南相馬市が全域除染へ、避難準備区域解除検討で》によると政府は「原発から20キロ・メートル以遠の緊急時避難準備区域の解除を検討している。放射線量が高いままでは解除されても市民が避難先から戻って来ない懸念がある。市は補正予算を組み、早急に除染を進めることにした」「ヘリコプターなどで上空から放射性物質の汚染の状況を調べ、放射線量の高い建物や土壌がある地点などを記した汚染マップを作製。その上で、放射線量が高い場所では、同センターの助言を受けながら、市が専門的な除染を行う」「一般住宅などの民間の建物や庭の除染は、NPOのほか市民ボランティアも募って実施する」

 政府は内閣官房に「放射性物質汚染対策室」、福島現地に環境省や日本原子力研究開発機構などの「除染推進チーム」を発足させる意向です。しかし、南相馬市が打ち出しているほどの除染方針すら伝わってきません。

 本格的に広域で除染をする前提として、放射性物質を含んだ廃棄物の行き先が必要です。NHKニュースの《細野大臣“最終処分は福島県外で”》は大臣の意向として「当面の方針としては、市町村ごとに仮置きをお願いできないか」「中間貯蔵や最終処分については、政府として考え方を整理しており、いましばらく時間がかかる。ただ、福島を廃棄物の最終処分場にすべきではないと考えており、少なくとも私が関わっているかぎり、政府が責任を持って処理を行いたい」と説明しています。

 従来から放射性廃棄物の行き先をめぐって繰り返されてきた、地域エゴのぶつかり合いを知らないのでしょうか。このナイーブさで大丈夫か心配です。

 居住地域の除染の次は農地だと思いますが、政府内で真剣に検討している部門があるのでしょうか。朝日新聞の《セシウム、深さ15センチまで浸透 郡山の水田》は「5月下旬に調べた。放射性セシウム134と137の88%は深さ3センチまで、96%は同5センチまでにとどまっていたが、深さ15センチでもごく微量が検出された」と、考えられていたよりも速い速度で浸透している研究結果を報じました。こんな中、「米が本当にヤバいのは来年だ」(農家の婿のブログ)のように「除染の話は未だに来ない」「なのに、来年の種もみの注文書が回ってくる」と困っているのが農家の姿でしょう。

 【参照】「避難民を帰すのに国は本格除染を実施しない気か」


全面降伏した中国高速鉄道の知的財産権主張

 中国共産党機関紙「人民日報」から伝えたサーチナニュースの《わが高速鉄道に知的財産権はない 詐称を認める=共産党機関紙》は強烈でした。前後して、記者会見で「中国人民が創造した奇跡」と高らかに自主開発による知的財産権を主張した中国鉄道部・王勇平報道官の解任が報じられています。40人以上死亡の大事故は、確かに中国鉄道部が陥っていた虚妄から目を覚まさせる効果がありました。

 人民日報ウェブ版の「人民網」で該当記事を探してみました。題名を直訳すると《高速鉄道の自主開発知的財産権を全面検証:奇跡誕生と終止の真相》となる全部で4ページもある長文レポートがそうでした。

 冒頭はやはりサーチナの《高速鉄道「わが国は日本側の忠告を無視していた」=中国報道》とそっくりです。「記事はまず、『中国が高速鉄道技術の導入を決めた2004年、国内における営業運転の最高時速は160キロメートルだった』と指摘。川崎重工業の大橋社長は『急ぎすぎてはいけない』と忠告し、『まず8年間をかけて、時速200キロメートルの技術を掌握すべきだ。最高時速380キロメートルの技術を掌握するためには、さらに8年は必要だ』と述べたという」「しかし、政府・鉄道部の劉志軍部長(当時)は『最高時速は、大幅な引き上げが必要』、『(北京と上海を結ぶ)京滬高速鉄路では、最高時速380キロメートルを実現』と考え、強引に開発を進めさせた」

 「川崎重工業から技術提供を受けた中国の鉄道車両メーカー『南車』が、米国で特許を申請したことについても『日本の川崎重工業の説明は違っている』と指摘。契約書には、『日本側が供与した技術は、中国国内においてのみ、使用できる』と明記していると、日本側の主張を紹介した」。北京・上海間の「京滬高速鉄路が開業した直後の7月7日、中国鉄道部の王勇平報道官は『中国の高速鉄道は日本の新幹線の海賊版』という言い方に『奮起して反論』し、さまざまなデータを挙げながら、自国技術の優越性と信頼性を力説」などの要素も人民網レポートにも出てきます。

 人民網レポートにはインターネットメディア「新財網」からとしている部分もあるので、既出の報道や情報を集大成している感じもします。年を追って様々な動きがまとめられています。

 冒頭のサーチナ記事に戻ると、率直と言うべきか、かなり自虐的な表現があります。「人民網はエンジニアの発言を引用し『数年すれば国外の設計を元に、中国でもボギー・モーター・変圧器などの生産や、国外の核心部品を使ったコンバータや自動制御システムの組み立ては可能になるだろう。しかし、先頭車両の設計基準・原理・車体を広くすることのリスクの有無などは分からない。われわれにできるのは、塗料の塗り方や座席の素材の変更、室内装飾程度のことだ』と報じた」。原文レポートでは4ページ目に出ており、こう続きます。「さらに難しいのは(高速鉄道の衝突を防いでいる)列車自動制御システムのソフトウエアだ。核心技術を書き換えられない」

 長いレポートの最後はこうなっていました。8月9日に車両メーカー「北車」グループが技術的不調が続く高速鉄道列車のリコールを申し出たとした上で、「つぎはぎは一切無駄だった。7月23日、雨の夜に起きた惨劇が奇跡を終わらせてしまった」と結びます。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


中途半端な安全確保策は危険:中国高速鉄道

 死者少なくとも40人を出した中国浙江省の高速鉄道事故をうけて、この数日、目まぐるしく安全確保策の報道が流れています。最高速度を時速で50キロずつ下げる▽運行本数を大幅に減らす▽車両の生産停止とリコール▽事故調査チームから当事者である鉄道部幹部を外す▽新規路線開業の延期――などです。どれも決定打にならない中途半端な改善です。CNNの「中国北車、高速鉄道車両を回収へ」が伝えている「問題が管理・運用面にあることは明白であり、『真の問題に取り組まなければ、たとえ時速100キロまで速度を落としても衝突事故は起きる』との批判的な見方もある」との危惧が正しいと思います。

 運転士が目視で発見、急ブレーキで到底間に合わない高速鉄道では、自動列車制御装置が働いて危険になる前に停車させる保証が運行するための最低条件になります。「核心は信号の青・赤ではない:中国高速鉄道事故」で指摘したように、この制御が出来ていないことが明白なのですから、それに向けた対策を急ぐしかありません。システムの性質を考えると何かをちょっと追加して済むとは思えません。

 サーチナの《「完全に防げた事故だった」…中国鉄道事故の調査団長、人災を指摘》が「現段階の調査で、今回の事故はシステム設計に重大な欠陥があり設備故障を引き起こしたと同時に、故障後の応急措置や安全管理面にも問題があったことが明らかになった」としているのを見て、とても不審に感じます。

 そこまで認識しているのなら直ちに全列車の運行を停止し、欠陥を全て改めてから再開するしかありません。そこまでは中国政府のメンツが許さないのでしょうが、不用意な運行を続けていれば明日にでもまた事故は起きます。在来鉄道の事故と根本的に違う点が未だに判っていないようです。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


避難民を帰すのに国は本格除染を実施しない気か

 福島原発事故による緊急時避難準備区域が解除される見通しが報じられており、区域5市町村で実施された放射線量調査結果の伝え方を見ると、政府には2万人前後の避難民を自宅に帰すのに本格的な地域除染はする気がないようです。福島放送の《準備区域内に20ミリ超え可能性9カ所》はこうです。「避難の目安となる年間の積算線量20ミリシーベルトに達する可能性が高い毎時3・0マイクロシーベルト(高さ1メートル)を超えた宅地は田村市と川内村で計9カ所あった」「政府は『区域内の線量は基本的に安全性が確認された』とする一方、住民の被ばく量をさらに減らすために8月中に除染すべき場所や方法などの基本方針をまとめる計画だ。毎時3・0マイクロシーベルトを超えた地点を中心に除染を進める方針」

 日経新聞の《避難準備区域の放射線量分布を公表 文科省・内閣府、水準は低く》によると「区域内の公共施設の線量は毎時0.1〜1.4マイクロシーベルトで、生活圏の道路上でもほとんどが毎時1.9マイクロシーベルト以下だった」としていますから、毎時1マイクロシーベルト台の汚染など気にしていない様子です。

 年間被ばく線量限度を20ミリシーベルトにした学校の校庭管理方針が国内外から厳しい批判を浴びたことを忘れたかのようです。子どもがこの区域に帰ってくれば日常の生活空間で年間10ミリシーベルトくらい平気で浴びてしまいます。その可能性があるのではなく、必然的にそうなるのですから大規模な地域除染が欠かせないはずなのです。

 大規模な地域除染をするには相当な準備が要ります。現在、取り除いた大量の汚染土を持っていける場所さえありません。毎日新聞の《東日本大震災:福島第1原発事故 放射線、測定・除染を急げ 児玉龍彦氏に聞く》は南相馬市で除染活動を続ける児玉龍彦・東大アイソトープ総合センター長に「私たちは、除染した後の土を残しておけず、ドラム缶に入れて持ち帰っていますが、本来は法律違反です。現行法が今回のような事態を想定していないからです。旧来の法律で手足を縛られたままで、どうやって子どもが守れるでしょう。まき散らされた放射性物質を減らすために、法整備をしてくださいと言ってきました。それを4カ月もやらずに、国は何をやっているんですか、ということです」と語らせています。

 「福島中通り汚染は広く深刻、国は学童疎開を」で毎時1マイクロシーベルト台の汚染が郡山・福島など都市部に広がっていると指摘しました。だから緊急時避難準備区域も構わないのではなく、区域が無人で除染作業に支障がない今こそ取り組んで、どれくらい放射線量が下がるのか見極める先行モデルにするべきです。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


首都圏の高放射能汚染を市民が自費で実証

 市民グループ「放射能防御プロジェクト」が8日、参議院議員会館で記者会見して首都圏150カ所での土壌汚染調査結果を発表しました。福島原発事故による汚染で、チェルノブイリ事故で義務的移住区域とされた「特別放射線管理区域」レベルが埼玉で1カ所、移住の権利が認められる「高汚染区域」レベルが千葉2カ所、東京で茨城で1カ所の計4カ所もあることが判明しました。以下に地図を引用します。赤が特別放射線管理区域、オレンジ色が高汚染区域ですが、東京に2点あっても江戸川区の1カ所だけ有効で葛飾区のはぎりぎり基準以下です。



 Facebook上の公開グループ「福島第一原発を考えます」が母体になって有志を募り、身近な場所の土壌を一定の方法で採取、15750円の費用を負担して信頼できる機関で高精度の測定をしてもらっています。チェルノブイリ事故で「不必要な被ばくを防止するために設けられた管理区域」は、上のマップでは黄色で表示されていて、千代田区など都心部に広く分布している点も見逃せません。合計2百万円余りの費用でこれだけの結果を出せるのに、行政側がこの5カ月、動こうとしなかった点について、会見に同席した紀藤正樹弁護士が批判、大規模調査に取り組むよう要望しました。

 土壌とは別枠で、豊島区巣鴨の道路脇に溜まっていた土砂から1キロ当たり61713ベクレルの非常に高い汚染が見つかったことも報告されました。これは塵として吸い込まれる危険性があり、知らない間に内部被ばくの被害が広がっている恐れがあります。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


福島原発事故の全電源喪失安全審査に重大過失

 中国網日本語版のコラム《日本の新幹線:何よりも重要な「停止」》で当たり前のことが妙に感心されています。しかし、技術力を持ちながら福島第一原発は安全に停止できなかった訳で、中国高速鉄道事故を念頭に感心されても妙に面はゆいものがあります。この鉄道事故で中国メディアは政府の説明に対して国民に代わって怒りを表したのに、日本のマスメディアは原発事故で政府・東電の言い訳をずるずると垂れ流していた印象が強く、一度も怒っていないから尚更です。全電源喪失についての安全審査に重大過失があっても在京メディアに怒りは見えません。

 47newsの《原発安全審査、根拠不明の基準 電源喪失で安全委》は非常に決定的な情報なのに、どうしてこうも淡々としているのでしょうか。「原発の新設や、既設原発の設備を変更する際の安全審査で、国側が30年以上、なぜそう決まったかの根拠の定かでない基準を当てはめて審査していたことが、3日に開かれた原子力安全委員会(班目春樹委員長)の小委員会で明らかになった」「福島第1原発で事故拡大の原因となった電源喪失について、電力会社側は電源が30分間喪失しても安全を確保できるとする審査の申請書を提出、国はそのまま通していた」

 長時間の全電源喪失を考えなくてよいとする安全審査指針は、福島原発事故の進展に決定的な役割を果たしました。津波に非常用発電機が襲われ、運転停止直後の崩壊熱除去が出来なくなった誤算に加えて、発熱のため原子炉格納容器で上がった圧力を大気中に放出して破壊を免れるベント操作も電源が生きている前提で電動設計されていました。原子炉が高温高圧になった暗闇の建屋内を、人間が弁を開けに行くことなど想定されていなかったのです。電源が無くてもベントが円滑に出来て1、3号機の建屋爆発、2号機の格納容器爆発が防げていれば、事故の規模は大幅に小さくなっていました。

 誰がどのような根拠で電源喪失30分までの原則を考え出したか、極めて注目されると考えていたのに「なぜそう決まったかの根拠が定かでない」で済ませるとは、職業的ジャーナリストとして、子どもの使い以下です。国より東電の方が技術力があって主導権を握っていたことは容易に想像されますが、法律の建前は国がする安全審査で原発の安全は担保されます。国側に重大な瑕疵(かし)あり、つまり根本的な技術問題について当然なすべき注意・検討義務が果たされなかった過失状態が30年以上にわたって続いていたのならば、事故全体の責任は国が取るべきでしょう。メディアはここで怒らないでいつ怒るのか、です。

 「今度は本物、高速鉄道事故で中国メディア反乱」で描いたように、中国メディアは今回、政府が強制してくる枠組みを飛び出しました。社会主義国ではない日本では報道規制など存在していないはずですが、在京メディア各社の振る舞いは規制があるかのようです。政府が設定した議論の土俵に丸々乗ってしまい、自分の頭で考えない習慣が身に付いてしまっています。霞ヶ関依存症候群と呼ぶべきかと考えます。

 【参照】インターネットで読み解く!「在京メディア」関連エントリー


福島中通り汚染は広く深刻、国は学童疎開を

 福島市や郡山市など中通り放射能汚染地区の広がりを「文部科学省による放射線量分布マップ」(8/2公表)で確認して、その大きさにショックを受けました。6月から7月に福島第一原発から100キロ以内2000カ所で土壌調査した際に、1メートルの高さで空間線量を測っています。地図を以下に引用します。



 ピンクの線で仕切られた飯舘村など計画的避難区域は黄色の点で占められています。その直ぐ下、1.9〜3.8マイクロシーベルト毎時である黄緑色の点が都市部に広がり、1.0〜1.9マイクロシーベルト毎時の緑色が中通り東側を埋め尽くしています。この地区の自然放射線量はせいぜい0.054マイクロシーベルト毎時程度ですから、法定の年間限度線量1ミリシーベルトの10倍前後にもなる地域がこんなにも広大なのです。

 学校の校庭管理で文部科学省は当初は年間20ミリシーベルトを打ち出して非難を浴び、現在は目標1ミリシーベルトになっていますが、日常の生活空間が年間10ミリシーベルト級の汚染空間なら学校だけ下げても無意味です。しかも汚染は主に福島原発事故で降下した放射性セシウムによるもので、子どもが遊んだり運動したりすれば接触する可能性が高いのです。それによる内部被ばくの恐れも考えねばなりません。仕事がある中高年の親はともかく、子どもたちを育てる環境でないことは明白です。

 1学期の終わりに転校していく学童が多数いると報じられましたが、この汚染状況なら当然のことです。不安に思っても転校させる余裕がない親も多いはずです。国が負担して学童疎開を実施すべきです。法の建前から年間限度線量以上なら対象にすべきだと考えますが、少なくとも数倍になる0.5マイクロシーベルト毎時以上の地域は是非とも学童疎開させるべきです。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


今度は本物、高速鉄道事故で中国メディア反乱

 無理が通って道理が引っ込む中国政府のメディア管理にとうとう穴が開きました。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版の《中国の一部メディア、高速鉄道事故の報道規制に抵抗》や韓国・中央日報の《<中国高速鉄道事故>変化する中国メディア…党の報道指針に反発》などが伝えました。「中国のメディアは週末、中国共産党の中央宣伝部が29日夜に出した命令に不満を示した。それはメディア編集者に対し、週末は事故の報道を控えめに行い、前向きなニュースを強調するよう命じたものだった」

 多数のメディアが泣く泣く引き下がった中で、部数70万部ほどの経済観察報がかなり尖っています。救助打ち切り後に助けられた女児を念頭に置いた「温州に奇跡はない」という7面特集は既に読めませんが、1日現在でも下に引用する鉄道帽をかぶったドクロが高速鉄道を脅かすイラスト付きコメントがあって、対当局では十分に刺激的だと思えます。人命を軽んじる営利主義的あるいは拝金主義的な鉄道部の腐敗を糾弾する記事なども読めます。



 「中国という隣人」の「【温州列車追突】中国メディアがついにキレた」は「禁令が出たのが29日午後。30日分の報道も用意していた新聞は事故関連の紙面を直前差し替えるハメに。『21世紀経済報道』、『中国経営報』、『新京報』(北京)、『銭江晩報』(浙江)、『華商報』(西安)などが被害に遭っています」とし、その一方で「事故が起きた浙江省の『今日早報』だけではなく、『河南商報』(河南)、『上海青年報』(上海)『廈門商報』(福建)など一部メディアは一面を使って宣伝部に反旗を翻し、抗議する姿勢を見せています」と報じています。

 大紀元の《<中国高速鉄道事故>初七日に中宣部が箝口令 違反者への報復も始まる》はネット上に漏れだしているメディア関係者の悲痛な声を拾っています。「広州紙のベテラン編集者は、『今夜、百社の新聞が口をつぐんで記事を替えた。千人の記者が記事を消された。中国では1万の魂が行き場を失い、1億の真相が闇に葬られた。この国は無数のごろつきによって辱められている』と書き込む」

 いまネットで流れている言葉は重い意味を持ちます。強い当局批判で停職処分になった中国中央テレビ「24時間」のプロデューサーは「離れる前に同僚に8文字を送ったという。『守住底線、不惧犠牲』。(モラルの)最低基準を死守し、犠牲も恐れない、という意味だ」。そして広く流布しているという「中国そのものが雷雨の中を疾走する高速列車。あなたも私も観客ではない。我々は共に乗客なのだ」


2011年7月のエントリー一覧

7/30 ハードもソフトも安全装置総崩れ中国高速鉄道
7/28 核心は信号の青・赤ではない:中国高速鉄道事故
7/26 堪忍袋の緒が切れた? 中国政府が大事故の鉄道部に
7/26 セシウム稲わら・腐葉土はホットスポット放置のツケ
7/24 高速鉄道大事故でも運行停止しない中国政府
7/24 【速報】中国の高速鉄道が脱線、川に転落
7/20 中国の高速鉄道:無理な開業で故障続発、客離れ
7/18 女子サッカーW杯優勝:敵を知る米国も防げず
7/16 1週間後『地デジ難民』必至でも移行は強行
7/13 首相の原発無い社会志向、置き土産では実現不能
7/13 影が薄すぎる朝日の政策転換『原発ゼロ社会』
7/11 原発再稼働:政府の現状認識は全くの間違い
7/10 福島原発廃炉プランに見る楽観的過ぎる前提
7/07 東日本大震災の齟齬は阪神大震災の成功体験から
7/06 現行法に基づかぬ原発の追加安全確認は無意味
7/03 30前後世代に明確な結婚回帰:国勢調査を分析