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『博士漂流時代』視座の優しさと事態の深刻

 年の暮れ、年内に一冊だけ取り上げておきたい本があります。私のサイトは「インターネットで読み解く!」として始まった経緯もあって、あまり書評はしていませんが、榎木英介さんの『博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? 』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)には話の始まりに関係しているのです。2年前、新聞社でオピニオン面を担当していた際に書いていただいた《「私の視点」2008年7月29日「博士研究員 就職難が招く科学技術の危機」》が本書のスタートになっていると献本いただく際に教えられました。

 新聞記者には記事を書く以外に編集者の役割もあります。あの時、メールでやりとりしながら、小ぶりなコラム「私の視点」に最初の原稿の2倍くらい内容を詰め込むことになりました。NPO法人サイエンス・コミュニケーション代表理事として若手研究者周辺の現場に関わってこられた経験にプラスして、近未来に向けて警鐘を鳴らしていただきました。新聞社のオピニオン投稿欄ですから新規性やニュース性がないと、部内を説得しにくいのです。

  第1章 博士崩壊
  第2章 博士はこうして余った
  第3章 「博士が使えない」なんて誰が言った?
  第4章 博士は使わないと損!
  第5章 博士が変える未来
  付録 博士の就職問題について識者に聞く

 これが本書にまとめられた構成です。榎木さんは昨年末の行政刷新会議「事業仕分け事件」から説き起こして、博士・ポスドク問題の今と過去を丹念に追っていきます。資料の豊富さは活動の幅から来るのでしょう。その視座は筆者の人柄の通り、渦中に投げ込まれて苦しんでいる人たちにとても優しいものです。博士活用を考える場面ではとことん可能性を追います。冗長かなと思えるほどなのも、優しさの故でしょう。一度ここまで広く展開してみることも確かに必要です。

 第2章にこんなエピソードがあります。「あるシンポジウムの場で、同席した著名な大学教授が、最近の大学院生はレベルが低いという発言をしたとき、思わず反論してしまった。『あなたたちに責任はないのですか』と」「自分たちがトレーニングした博士が、社会の中で低い評価を得ていることに、どうして憤らないのか」「もう大学院博士課程は科学者になる人だけを養成する機関じゃない。むしろ社会に出る方が多数派だ。なのに大学関係者の意識は変わっていない」。このトーンで押すのかと思いつつ第5章まで読んで、もっと突き放す必要を感じましたが、それは付録にある識者インタビューに委ねた形です。そこで非常に厳しい指摘を引き出しています。

 私から論点を追加させてもらえば、2004年の第145回「大学改革は最悪のスタートに」で副題とした「〜急務はピアレビューを可能にする研究者の守備範囲拡大〜」があります。使いにくい人材を作ってしまった大きな要因に、隣の研究室の仕事すらレビュー出来ない蛸壺型の研究環境があると考えています。これでは民間企業に就職しても困るはずです。

 博士・ポスドク問題が本質的には改善されない、動かない様は驚くべきで、2002年に書いた第120回「負け組の生きる力・勝ち組の奈落」の認識がいまだに現役で通用します。

 今年になって「水月昭道 blog」が「2010年版科学技術白書の怪 高学歴ワーキングプア増産か?」で痛打しています。「表面的には『博士の就職難』といった現象を採り上げてはいる。だが、なぜそういうことが起こったのか、どこに問題の本質があったのか、政策で増やしたはずの博士が十万人余りも職に就けず社会から姿を消そうとしているのはなぜなのか、それなのになぜ今また博士を増産しようとするのか、そして現在どれほどの非正規雇用状態にある博士が存在するのか。こういったことに触れず、科学技術の競争力低下を防ぐため『博士人材の育成が急務』と言われても、『すでに余りに余ってるんですけど・・』」

 今年半ば第208回「文系も理系も高学歴プアー:年上世代は身勝手」で申し上げたように、事態を動かす責任がある年上世代の目は節穴としか言いようがありません。さらに、官僚リークに頼る在京マスメディアの体質と感度の悪さがそれを許し、事態悪化を増幅していると指摘しておきます。


郵便不正事件:検証の名に値しない最高検報告書

 村木厚子・元厚生労働省局長の郵便不正えん罪事件で、最高検が24日、法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」に内部検証の報告書を提出しました。持つべき危機意識を欠いた官僚的調査であり、国民が求めていた検察の在り方全体を問い直す検証ではありませんでした、

 朝日新聞の《前部長「村木氏立件が君の使命」 郵便不正事件検証報告》がこう伝えています。「報告書によると、村木氏の捜査の過程では、証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)のデータが関係者の供述と合わなかったのに、元主任検事・前田恒彦被告(43)=証拠隠滅罪で起訴、懲戒免職=は上司に報告していなかった」「前田元検事は大坪前部長から『何とか村木氏までやりたい』『これが君に与えられたミッションだ』と言われたうえ、『村木氏の部下の独断による犯行は考えられない』と当時の大阪高検検事長ら複数の幹部からも言われていた。村木氏の立件が『最低限の使命』だとプレッシャーを強く感じていたという」

 最高検は記者会見では色々と話したようですが、完全に個人の資質と言っているようなものです。おまけに最高検が大坪前部長を起訴したストーリーを明かした形であり、第三者性に疑問があります。郵便不正えん罪事件は最高検の了承の上で展開された経緯からも、第三者組織が徹底検証すべきです。

 「Japan Blogs Net」から拾うと、「■法、刑事裁判、言語を考える」が《■最高検検証ー「検事の本分」、官僚の「作文」》で厳しく指弾しています。「そもそも最高検の今回の村木事件は、検察が密室で犯罪そのものを作り出した『でっち上げ犯罪』であったという深刻な認識がうかがえない」「結局、相変わらず、『一介の当事者』の意識が抜けていない。悪いことに、事件を都合よく処理すればよい、としか考えていない検察庁は国家権力=捜査権限を持っている、たちの悪い『事件屋』だ。そう受けとめられている、という深刻さをまったく感じない」

 マスメディアはネット上には詳しい記事を流していません。毎日新聞が「郵便不正事件:村木元局長の起訴自戒 最高検、検証報告書」のほか何本もの記事をアップして目立つ程度です。今年の大問題だっただけに残念です。


北京大教授論考の衝撃:中国高成長は維持不能

 日経新聞「経済教室」21日付に黄益平・北京大教授が「中国経済の持続的成長へ 生産コストのゆがみ正せ」との論考を書いています。中国政府を気遣ってかマイルドな表現になっていますが、持続的成長とは現在より大幅に鈍化した「通常の成長段階への移行」でしかありえないと読めます。エネルギー価格を国家統制で国際価格より大幅に下げるなど「改革期の中国は国を挙げて経済活動に補助金を出してきた」わけで、庶民の懐から取り上げたお金を企業に回しているとも読めます。「同じGDP規模なのに税収は中国が日本の2.8倍」などで最近、中国について抱いていたいくつもの疑問が氷解する思いがしました。中国内に「成長路線はいずれ行き詰ると考える経済学者や政策担当者も多い」そうです。

 黄教授は高い成長を維持してきたために、土地、労働、固定資本などの生産要素に大きなゆがみが出たと指摘します。例えば労働市場については「農村住民と都市住民を区別する戸籍管理制度の下で、都市部への移住労働者の差別がいまだに続いている。移住労働者は賃金を低く抑えられるだけでなく、社会福祉など基本的なサービスすら利用できない」としています。農村部が貧しいのは開発が遅れているからだけではなく、政府が集めたお金を都市部で集中的に使い、9億人いる農村部の住民をあまり顧みていないからでしょう。

 今年はこんなデータが出されました。「中国の都市部と農村部所得格差が拡大」(化学業界の話題)から農村部と都市部の「一人当たり純所得」推移グラフを引用します。(1人民元は12.5円程度です)


 「中国国家統計局の発表では、2009年の中国の都市部の一人当たり純所得は17,175人民元($2,525)で、農村部の5,153人民元と比較し、3.33対1に広がった」「中国農務部の農村経済研究所の研究員は、国が農村開発よりも都市の拡大に注力しているため、所得格差は今後もっと拡大すると懸念している」

 3年前に書かれた「中国、戸籍制度改革へ」がまったくと言っていいほど動いていない事実が解決の難しさを表しています。「社会保険上の差別=年金、失業保険、医療保険、労災保険、生活扶養金が農民工には与えられない」だけをとっても、本来は暴動ものだと思いますが、垣根を取り払ったら農村部人口の膨大さゆえに大混乱になると中国政府は考えているのでしょう。

 農村部住民だけが損をしているのではないと、黄教授はみています。驚くべき経済成長をしているのに「過去10年間、家計の所得が国民所得に占める比率は10ポイント以上低下している」「同時期に家計の消費がGDPに占める比率も下がっている」「政府の消費刺激策にほとんど効果が出ていないのは、こうした事情からだ」。GDPに占める個人消費が6割前後ある日欧米に比べ、中国は35%しかなく、それも10年前は45%前後はあったのです。

 社会と経済が行き詰ってしまう構造的リスクを減らし、成長持続性を高めるために「生産要素市場の自由化とコストのゆがみ是正に政策の軸足を移せ」と黄教授は提言します。「このような改革を行えば生産コストは上昇し、従って経済成長は鈍化するだろう」が「内需の均衡回復、経常収支の均衡回復などをはじめ、バランスがとれた経済の回復に好ましい効果があるはずだ」とします。第232回「持続不能!?中国の無謀なエネルギー消費拡大」での危惧も市場原理が働けば是正されるでしょう。

 「中国の都市部と農村部所得格差が拡大」には富が一握りの人々に集まっているデータがあります。「中国の調査会社によると、10百万元(約150万ドル)以上の金持ちが825千人、1億元以上が51千人になった。これらの人のうち、57%は年間100〜300万元を、他の18%は300万元以上を消費している」。1人当たりGDPはまだ3800ドルしかない中国でこのように貧富の差が開き続ければ不満が蓄積し、大きな社会不安を抱え込む恐れが高まります。黄教授によると「楽観論者は、政府には深刻なリスクを抑え込んできた見事な実績があると主張」するそうです。ノーベル平和賞問題などの民主化抑制はまさにそうした対応ですが、貧富の差を覆い隠すのは不可能です。しかも建前は共産主義の国なのですから。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


漁業資源枯渇が国内マスメディアに見えない

 2010年は国際生物多様性年と定められ、クロマグロなどを中心に漁業資源枯渇にも注目が集まった年でした。大西洋クロマグロは3月のワシントン条約締約国会議で禁輸が議論され、12月には日本の主要漁場を管理する中西部太平洋まぐろ類委員会で初めて漁獲規制が合意されたのですが、それを伝える国内マスメディアの論調は資源枯渇が視野になく、いまだに消費に支障があるかどうかにポイントを置く不思議なトーンでした。

 例えば時事通信の「太平洋クロマグロ、日本は3割減=幼魚の漁獲量規制で合意−WCPFC」は「日本近海を含む太平洋の西側でクロマグロ(本マグロ)の漁獲量を削減する国際規制を採択し、閉幕した。水産庁によると、削減対象は3歳以下の幼魚で、規制は2011、12の両年に適用される。太平洋クロマグロ全体の漁獲シェアで7割を占める日本には、約3割の幼魚削減となる」「ただ、幼魚の削減量は、多様な刺し身マグロの国内供給全体の1%程度。水産庁は『マグロ価格への大きな影響はない』とみている」と報じています。

 朝日新聞の「クロマグロ漁獲、太平洋で初の削減合意 カツオは先送り」なら「対日輸出を減らしたくない韓国が抵抗。最終的に韓国だけ02〜04年の平均水準に縛られない合意となったが、韓国も『幼魚の漁獲量を規制するために必要な措置を講じる』ことは受け入れた」と対韓国の方に目が向いています。

 こうした記事を書いている水産庁担当記者が官庁情報以外に目を向けていないからです。「勝川俊雄 公式サイト」の「クロマグロの日本海産卵群は壊滅的」から、鳥取・境港でのクロマグロ漁獲の推移を表すグラフを引用します。


 こう解説されています。「図の青の部分が産卵場で獲られた成熟群、赤の部分は日本海北部漁場(能登から新潟にかけて)で獲られた未成漁である。操業が本格化した翌年から、産卵群は直線的に減っていることがわかる。6年間で7%に落ち込んでしまった。2007年から、北の方の未成漁にも手を出している。海に残しておけば、来年から産卵群に加わる群れを、根こそぎ獲っているのである。今年は、6月から漁が始まって、ほぼ2週間で未成漁の群れを獲り尽くしてしまった」

 こんな愚かな、幼魚を根こそぎにする漁業をしているから成熟した親魚も見る見る減っていく訳です。その意味では今回の26%削減合意は遅すぎたし、もっと大幅削減でも良かったはずです。乱獲で資源量がはっきり落ちているメバチマグロなども含めて包括的な規制を考え、持続可能な漁業に引っ張っていくのが新聞などマスメディアの仕事と思うのですが……。

 【参照】2006/11/19「世界規模での漁業崩壊が見えてきた [ブログ時評69]」


もんじゅ落下事故に甘い認識、文科省の死角

 (2011/6/10お知らせ:この問題を検討した最新記事は「高速炉もんじゅ落下装置引き上げに工学的無理」です)

 高速増殖炉もんじゅ(福井・敦賀)は落下した炉内中継装置を引き上げるために出力40%の試験運転日程を半年延期すると発表したのですが、47NEWSの《副大臣「大きな事故ではない」 もんじゅ装置落下で》が「笹木竜三文部科学副大臣は17日、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)で職員らに訓示し、8月に起きた燃料交換用装置の落下事故について『安全上、大きなトラブルではない』と述べた」と伝え、監督官庁である文科省の甘い認識が露呈されました。炉内中継装置を抜きとる大がかりな工事が無事に終わっても、落下事故によって炉心内に出来た損傷が冷却材ナトリウム液の中で確認できるかどうかすら不明です。

 日本原子力研究開発機構が16日に発表した引抜き工程は次の図です。


 取り出し口の燃料出入孔スリーブの上には高さ7メートルにわたって各種機材が積み上がっていますから、まずそれを撤去します。そこに4階建てのビルほど高さがある簡易キャスクを設定し、アルゴンガスを満たして原子炉内と同じ状態にした上で、変形して抜けない炉内中継装置と燃料出入孔スリーブを一体で引き上げるというものです。炉内中継装置に付着している冷却材ナトリウムが空気と激しく反応して燃えるため、簡易キャスクに収容してから後の処理もナーバスになります。

 この図で注目点はナトリウム液位です。引き上げ作業の失敗で空気が炉内に入ることを心配して、ナトリウム液位をぎりぎりまで下げるはずです。その状態で炉内中継装置が落下してぶつかった場所は液中に隠れています。金属ナトリウム液は不透明ですから、引き上げが成功しても第215回「もんじゅの炉心用装置落下、死んだも同然に」 での「破損を見つけられない」指摘はそのまま有効です。

 もともと今回の落下事故は核燃料交換という、原子炉管理では初歩的な作業で起きました。「超々楽観主義!! もんじゅの事故トラブル想定」で検証したように、炉内に物が落ちる想定が全くされていません。文科省は想定になかったから『大きなトラブルではない』と思っているのですから、技術的にはもう笑い話の世界です。これまで全く経験がない引き上げ作業が本当に無事済むのか、過去の失敗の数々からも疑わしいと思います。

 ただ、これが成功すれば本格運転はそのままで出来なくとも、廃炉にする事は可能になるはずです。動かなくても年間200億円以上を食いつぶす怪物を早く廃止したいものです。ブログでも廃止待望の声は数多く聞けます。


毎日新聞「金沢市長選:ツイッターで選挙戦」について

 毎日新聞が12日朝刊1面トップで「金沢市長選:当選陣営がツイッターで選挙戦 指導を無視し」と報じました。1364票の小差で当選が決まった選挙戦に「ネット運動が影響を与えた可能性が高く、公選法改正の動きや来春の統一地方選に向けて波紋を呼びそうだ」と、問題だとの論調です。しかし、このケースは立件して裁判になったとして、最終的に最高裁で有罪になるか疑わしいと思います。

 《市選管が問題視するツイッターを書き込んだのは、陣営のネット戦略を担当したIT関連会社社長(48)と山野氏の秘書。社長は告示(11月21日)後の23日、「金沢市長候補山野氏。今は金沢ベイで街頭演説中です」と山野氏の画像を添付して投稿。公選法への抵触を心配する声に「心配ご無用! メール、電話、ツイッターALL(オール)OK!『一票入れて!』とハッキリ言っていいです」と、投票呼びかけの拡散を求めるような書き込みをしていた。28日の投開票日までの書き込みは、選挙に関係ない個人的な内容も含め212回あった》

 《秘書は市長選を中心に計44回書き込み、投票締め切り約2時間前の28日午後5時51分には「かなり、せってます。まだの方はその一票で変わる」と記載。午後6時36分には社長が「今、500名差です」「あなたの一票で! 新市長誕生を! 投票所へ! 一番ヤル気満々の男にお願いします」と書き、文末のURLをクリックすると山野氏の画像が表示されるようにした》

 総務省はツイッターも公選法に引っかかると解釈していますが、厳しい規制ある「文書図画の頒布、掲示」とは不特定多数を相手に配布、掲示する行為です。エントリーが長期にわたって見えるブログの場合はともかく、ツイッターにこれを適用するのはもともと無理筋です。ツイッターはフォローしてくれている知人に対して発信しているもので、不特定多数の人が見るのは特に評判になった希なケースです。フォローした知人がリツィートして広がっていく可能性はありますが、そこから先は知人の問題です。

 参院選を前に「ネット選挙は大衆には解禁済み。運動でなければOK」で書いているように、直接の投票勧誘でなければ実質的に何を書いてもかまわない状況がすでに生まれています。リツィートする知人が責任を問われることはまずありません。

 世耕弘成参院議員が「【ネット選挙解禁その3:ツイッター自粛の扱いに苦労】」で「結果として第三者による選挙運動を誘発する可能性がある。そこでこれらの機能を利用することを自粛することにした」「かなり苦しい理屈に見えるかもしれないが、ネット利用選挙運動解禁を一歩前進させるための整理ということでご理解頂きたい」と書いているように、政治家でもツイッターの本質を知っている人には無理なことをしているとの自覚があります。

 毎日新聞は《電話で指導。改善されないため、選管は24日に石川県警に連絡した。県警は警察庁と相談したが、公選法違反の警告はしなかった。県警幹部は「判断は難しい。ネット選挙解禁の流れから、いま立件するのはどうかというところもある」としている》とも伝えています。捜査側として手掛けたい事件ではないでしょう。

 ブログあるいはツイッターの反応を見ていると賛否両論ですが、新聞に引きずられた感情的な議論が多いようです。県庁所在地都市の市長選がツイッターで左右されることがあれば、とても興味深いのですが、フォローしている人の規模も不明で、冷静な目配りがされた記事ではありません。毎日新聞が挙げている「投票日の午後6時過ぎから若い人がどっと投票に来た所があった。初めて見る光景に驚いた」(市選管職員)などの状況証拠に説得力があるとは思えません。


30代の『家離れせず・出来ず』は相当に深刻

 国立社会保障・人口問題研究所の世帯動態調査で30代の『家離れせず・出来ず』が相当に深刻な状況にあると判明しました。「30代前半の男性、半数が親と同居…不況背景?晩婚化も」(朝日新聞)や「未婚・不景気…30歳代後半男性4割が親と同居」(読売新聞)と報じられています。

 5歳階級別に5年ごとに実施されている調査ですから、第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」 で開発した「5歳年上世代の行動をなぞる」考え方を採用して、5年先の2014年も予測しましょう。1999年から2014年までまとめた一覧が以下の表です。

 【離家していない割合】
  男性 % 1999  2004  2009 2014  
  20-24歳 77.7  76.5  79.4
  25-29歳 58.3  64.0  64.2
  30-34歳 39.0  45.4  47.9→48.1 ?
  35-39歳 31.7  33.4  41.6→44.1 ?
 35-39歳未婚20.9 23.3 30.6
 非正規雇用 11.0  15.9  17.7

  女性 % 1999  2004  2009 2014 
  20-24歳 77.5  77.5  83.4
  25-29歳 51.3  56.1  60.3
  30-34歳 22.9  33.1  36.5→40.7 ?
  35-39歳 15.7  19.8  24.3→27.7 ?
 35-39歳未婚 9.7 14.1 16.1
 非正規雇用 45.0  52.5  53.6

 35-39歳の2014年「44.1%」は、30-34歳の2009年「47.9%」が5年後に3.8ポイント減ると予測して出されています。5歳年上世代が「45.4→41.6」と変化しているからです。男性の30代は前半が48%、後半も44%が親と同居を続ける結果ですから、従来の常識からは意外感ありです。未婚割合のデータも採られているので並べています。35-39歳で10年間に10ポイントも未婚が増えていて、その分がそっくり同居の増加になっています。女性も2014年には30代前半が同居40%に乗ってくるのですね。10年前のことを考えると大きな様変わりです。こちらも未婚割合の増加が効いています。女性の場合は男性以上に非正規雇用の割合が大きい点も見逃せないでしょう。

 国立社会保障・人口問題研究所のコメントは「未婚・晩婚が増えているほか、景気の低迷で親からの自立が経済的に厳しくなっている」です。パラサイト・シングルという言葉があります。「ちゃっかり依存」のイメージですが、結婚というきっかけも少なくなり、独立したくても出来ない感じの方が強まっているようです。こうなると40代ではどうなのか興味があります。なお、調査票の回収率が単身世帯では低くなりがちなので、親と同居が強めに出ている可能性があるとされています。

 【参照】インターネットで読み解く!「人口・歴史」エントリー


岡崎図書館事件始末の次は被害届の取り下げ

 岡崎市立中央図書館のホームページ・システムを作った三菱電機インフォメーションシステムズが事件後、半年も経過してから、かなり渋々とシステム欠陥を謝罪したのですが、偽計業務妨害容疑で愛知県警に逮捕された中川さんが大事な論点を「私にとって重要なポイント(朝日新聞記事)」で提起されています。「今後ほかの技術者の皆さんが、同じ状況に出くわしたときに、私と同じように逮捕され、犯罪者とみなされてしまうことを心配しています」「警察への被害届は出されたままという状態です」「公式に『これは犯罪ではありませんでした』と発表して頂けることを願っています」と、図書館側に迫っています。

 「高木浩光@自宅の日記」も「 岡崎市に求められているものは何か 岡崎図書館事件(12)」で、岡崎市は公式には「その後の捜査により、大量アクセスを行った人物が逮捕され、報道によりますと、起訴猶予処分となっているとのことです」と発表したままであり、犯罪があったとの立場を変えていないと指摘します。そして「岡崎市には、これが犯罪ではなかったのだということを認めて、発表していただきたい。それは中川氏個人に対してではなく、すべての国民に対して必要なことではないか。そうしようにもきっかけがないのかもしれないが、それは、被害届の取り下げという方法で可能だと思う」と述べます。

 起訴猶予処分が出された後で被害届を取り下げても刑事訴訟上の意味はありませんが、捜査上でするべきことをせず、半端な理解のまま処分を出した警察と検察側に対して警鐘を鳴らす意味は持つでしょう。私の手元にも読者からのメールで「大きな過ちをした、検察の担当者には、罪が課されないというのは、刑事事件の誤認逮捕の警官が罪を問われないというのと同じですね。懲戒免職くらいの責任の取り方が必要だと思います」と非常に厳しい意見が届きました。捜査側が何か反省を示してくれる可能性はきわめて薄いと思いますが、きちんとネジを巻いておくことが必要でしょう。

 そして、岡崎市側についてコメントすれば、市立図書館の真っ当な利用者を事前の警告もなく警察に突き出した形になっているのですから、システムの欠陥が明らかになった今、頬被りして済ませるのは地方自治体の在り方としても問題ありです。


持続不能!?中国の無謀なエネルギー消費拡大

 国際エネルギー機関(IEA)の調べで、2009年時点で中国がエネルギー消費量で米国を抜いて世界最大になったことを、中国政府は認めたがらないようです。しかし、2010年時点では中国自身も世界最大を認めるでしょうから、遅かれ早かれの問題です。それを確認したIEAの「World Energy Outlook 2010」が気になって眺めているうちに、中国が打ち出している、あまりに無謀なエネルギー消費拡大見通しに驚いたので、いくつかグラフを並べながらまとめておきます。この見通しを10年単位で持続しながら経済成長ができるはずもなく、早晩行き詰まると考えます。

 「NEDO海外レポート NO.1066」の「IEA: 中国が米国を超え世界最大のエネルギー消費国家に」から最初のグラフを引用します。

 2000年には米国の半分もなかったエネルギー消費の激増ぶりがよく分かります。それでも1人当たり消費量に直すと、ようやく世界平均の水準に到達したばかりです。米国に比べると3分の1以下です。「中国の一人あたりのエネルギー消費量は、今もなお、先進工業国の平均の約1/3に過ぎない。このように一人あたりのエネルギー消費量が低いことや、地球上で最も人口の多い国家であることを考慮し、IEA は『今後さらに目覚ましい伸びが見込まれる』と結論づけている」のですが、「World Energy Outlook 2010」キーグラフを見れば首を傾げたくなります。


 このグラフは各国政府が地球温暖化を考慮し、比較的抑制的な新政策をとるとして集計されました。2000〜2008年の過去実績で世界のエネルギー消費増分の半分近くを中国が占めています。同じ期間でGDPの増加シェアは2割もありませんから、エネルギー効率が非常に悪い経済成長だった訳です。2008〜2035年の未来予測になるとエネルギー効率は多少改善されるものの、石炭消費量や石油輸入量では世界で増える分の9割を中国が占める、とんでもなく無謀なシナリオが描かれています。

 各種資源が豊富で欲しいだけ買える好環境は、現在の世界にありません。需要が急増すれば売り手市場ですから価格は吊り上がります。エネルギーと並んで中国が成長のために大量に使用量を増やした鉄鉱石が良い例です。資源価格高騰を考える◆薪換枩弌‥換櫺然覆郎禿拆緇困 - JC-NET(ジェイシーネット)にある鉄鉱石価格のグラフを引用しましょう。トン当たりの値段が2003年以前に比べて5倍にもなっています。エネルギーも思い通りに買いまくれるはずがありません。


 「人民網日本語版」2010年6月21日の「エネルギー消費量、中国が米国抜き世界一に?」は「中国はまもなく世界一のエネルギー消費大国になる見込みで、年内にも米国を抜く可能性がある」と認めていますが、気になる部分があります。「中国が国内総生産(GDP)1万元(単位GDP)当たりのエネルギー消費量を5年ごとに20%削減できたとしても、2020年以降のエネルギー消費量は世界全体の30%を超えるという」

 「World Energy Outlook 2010」日本語版の表現は「中国はエネルギー需要量を2008-2035年で75%増加させる」「世界需要に占めるシェアは現在の17%から2035年には22%へ上昇」ですから、IEAに中国が提出している予測は本音よりも相当、控えめなのかも知れません。10年たてば2倍近くになってしまうのでしょう。つまり「無謀」と表現した上記シナリオを、さらに上回るエネルギー消費増加が想定されているようなのです。そんな無茶苦茶な――とだけ申し上げておきます。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


岡崎図書館事件、半年経過しシステム欠陥謝罪

 第207回「岡崎図書館事件を知るとIT立国など到底無理」で取り上げた38歳の会社社長が岡崎市立中央図書館のホームページに大量アクセスを繰り返しシステムを止めたとして、偽計業務妨害容疑で愛知県警に逮捕されたのが5月でした。昨11月30日、このシステムを作った三菱電機インフォメーションシステムズが半年も経過してシステムに欠陥があったと認めました。《三菱電機ISが図書館システム問題で謝罪、「SIerとして不十分な点があった」》(INTERNET Watch)などが伝えました。

 会見では「1回のアクセスに対して10分間データベースとの接続を維持する仕様となっていたため、頻度の高い機械的アクセスによってデータベースの同時接続数が設定値を超えたためアクセス障害が発生した」と説明されました。せいぜい数十秒で終わる図書検索なのに10分間も引っ張り続ける仕様だったために、1秒間に1回、新着図書の有無を見に行く会社社長のコンピュータからのアクセスがあると、同時に処理する件数が膨大になってしまう欠陥です。検索結果を返したら接続を切る――普通の処理にするだけで問題解決でした。

 全く突然に逮捕され20日間も拘留の上に不起訴(起訴猶予)になったご本人が長大な「Librahackメモ」に、自身の経験とこの間、色々な人が真相究明のために集めたデータを時系列で並べていらっしゃいます。「6/10 検察庁で検察の取り調べを受けた」の項にある会話がシステム欠陥との関係、日本の検察のITレベルを示しています。

 《検察官との会話1:本人「あの(方式の)アクセスでサーバがエラーを発生するとは(普通)思いませんよ?」 検察官「でもプロなんだからそれぐらい気付かないの?」 本人「いやいや(予想できません)。リクエストに対するレスポンスが返ってきてから次のリクエストを送信するのでサーバにかける負荷は高々1リクエスト分です。だから自分のアクセスが原因でサーバにエラーが発生するはずはないと考えますよ、普通。」 検察官「でも君が何回もアクセスしたから問題が起きたわけでしょ。」 本人「それは図書館のサーバの不具合が原因ですよ。」 検察官「・・・」 検察官「でも他の利用者はそんなことする(プログラムを使ったアクセス)と思う?」》

 検察官がここまで説明されて理解できなかったとは、地検廻りを経験し頭脳明晰な検事を知っている者として意外です。会社社長の「リクエストに対するレスポンスが返ってきてから次のリクエストを送信する」説明が理解できれば、全く別のファクターが裏側に潜んでいると推論して当然なのです。理系出身か文系出身かの問題ではなく、純粋にロジックの問題です。そして、早期の真相究明を阻んだのが「システムに問題は無い」と言い張り続けた三菱電機ISと、その言い分に乗って頑なだった図書館側の姿勢でした。

 この件で大活躍された高木浩光さんが「三菱電機ISに求められているものは何か 岡崎図書館事件(10)」の最後に、10月下旬に同社を訪れて常務を相手に非常に厳しい通告をされたことが書かれています。「三菱電機ISは情報システムの会社だ。現時点でなくとも将来、Webクローラを用いたシステムを開発し運用することだってあるだろう。そのような当事者でありながら、このような対応を続けるのか。情報システムの関係者全体に迷惑がかかることが未だわからないのなら、業界から退場してほしい」

 6月には「司法、マスコミを含めた社会全体のデジタルデバイドは深刻で、これじゃIT立国など到底無理」と書きましたが、あの時点ではシステム製作側までもがこんなに鈍とは思っていませんでした。これではグーグルに対抗するような、国際的な競争力があるモノやシステムを生み出すなんて根本から無理です。天を仰いで嘆息するばかりです。