<< August 2010 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
 
Latest Entry
Profile  Facebook
Dando's Site
Category
Search

Archives
Recent Comment
  • 科学技術立国崩壊の共犯に堕したマスメディア
    森田 (04/23)
  • 自主避難の根拠は放射線障害防止法の下の平等
    (04/08)
  • 京大さん、日経さん、ネット調査信頼は無茶
    (01/16)
  • 国にも原発事故責任、無原則な東電救済を許すな
    森田 (12/25)
  • 東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる
    森田 (12/18)
  • 脱未婚=結婚へ動き、30代から中高年まで活発に
    大山弘一 (11/28)
  • ノーベル賞・大隅さんの警鐘は政府に通じまい
    よたろう (11/01)
  • ノーベル賞・大隅さんの警鐘は政府に通じまい
    森田 (10/10)
  • 生涯未婚率が劇的に改善か、2015国勢調査を分析
    通りすがり (08/30)
  • 文科省主導の大学改革が国立大の首を絞める
    yokodon (08/07)
Recent Trackback
Admin
   
Mobile

超々楽観主義!! もんじゅの事故トラブル想定

 重さ3トンもの装置を原子炉内に落下させた高速増殖炉「もんじゅ」では、落下による損傷は大丈夫か確認するにも不透明な高温の金属ナトリウム液の中では調べようがないことを「もんじゅの炉心用装置落下、死んだも同然に」でお伝えしました。こんな大きなモノでなく、小さな部品などを落とすことは軽水炉ではしばしばあります。冷却材は秒速数メートルの高速で炉内や配管を巡るので小部品でも炉内を傷つけ、危険です。回収せずに運転するわけにいきません。軽水炉なら透明な水の中ですから発見は容易ですが、もんじゅではどう考えられているのか、運転再開を前に公表されている「事故・トラブル等の事例とその対応集」で確認してみると、驚くべき事に全く考慮されていないのでした。

 何かのモノが落下して行方不明になる事態がどの項目にも見あたりません。「燃料出入機グリッパの故障」や「燃料集合体の変形」の項目では今回のようなつかみ損ねや引き抜けないケースが扱われていますが、落としてしまう事態は全く想定されていません。操作をやり直せばよいとの想定です。また、小部品が落ちてしまうような失敗はありえないと考えられているようです。この超々楽観主義で巨大設備の原発を長期に運転する気なのでしょうか。

 軽水炉の例ではこんな落下物もあります。「5号機 燃料装荷作業中における原子炉内への異物落下について」(中部電力)は「午前3時45分頃、燃料装荷作業中に、燃料交換機上で燃料の移動状況の監視に使用していた双眼鏡から接眼部の部品(大きさ直径約2cm)が外れ、原子炉内へ落下しました」とし「当該部品は炉心シュラウドの上部フランジ部で発見され、同日午前9時20分に回収しました」と報告しています。

 あらゆる部品に落下防止策を施していたとしても、何が起きるか分からないのが現実のプラントです。3トンの重量装置落下でなくて、ちょっとしたミスで物を落としても発見不能になり、もんじゅの運転は出来なくなるようですから、運転不能の事態は遅かれ早かれ到来する運命でした。マスメディアはつかみ部の異常など落下原因の方に目を向けていますが、問題にすべき点を間違えています。


もんじゅの炉心用装置落下、死んだも同然に

 福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」で26日、重さ3.3トンの炉心用装置が原子炉容器内に落下する事故がありました。福井新聞が28日、「もんじゅ、復旧作業長期化も 炉内中継装置落下」と伝えるなど、深刻になる兆しが現れています。現時点では異常は現れていませんが、運転を再開して原子炉容器が大丈夫か調べることが至難なのです。

 この炉内中継装置はもんじゅ特有のもので、ネット上で調べると高度情報科学技術研究機構にある「図3 原子炉内での燃料交換と移送」 が分かりやすそうです。
 炉内中継装置と示されている筒の下に落ちた本体があり、移送ポットや中継ラックを支えているのでしょう。核燃料を交換する装置から受け取って炉外へ搬出する中継ぎ役の装置です。作業が終わって撤去する際に、途中でグリップが外れて落下していますから、おそらく図の位置付近まで戻っているはずです。

 「状態確認は、原子炉容器内にファイバースコープやCCDカメラを挿入し、グリッパーの外観をまず調べる。異常がなければ、グリッパーを操作し、開閉などの作動に問題がないかを確かめる」「その上で、落下したとみられる炉内中継装置上部の状態をファイバースコープなどで確認し、さらにグリッパーを下げて同装置の位置を調査する。これらの後に、グリッパーが付いた同装置の収納設備を取り外し、目視でグリッパーを詳しく点検する」「原子力機構は『すべての状態確認を終えるめどは分からない』としている」

 原子炉容器内は軽水炉のように水で満たされているのではなくて、高温の液体金属ナトリウムですから不透明で目視するなど困難です。それでも装置の上部は対象範囲が狭いので何とかなるでしょうが、落下で衝撃音がした炉心周辺部の損傷状況をどうやって確認するのでしょうか。そんな深い場所までファイバースコープやCCDカメラを下ろしての細かい位置制御は難しく、不透明な液体中で目視確認をして意味があるのか、大きな疑問があります。

 気になってTwitterを見たら、批判の嵐です。その中に「高速増殖実験炉『常陽』の事故とその重大性」の参照を求める発言がありました。もんじゅと同じナトリウム冷却の常陽でも機器の破損事故があったのに、不透明であるために発見も対処も遅れたといいます。「そもそも『もんじゅ』では、究極の事故=炉心崩壊事故対策として、ナトリウム液位を炉心上面が見えるところまで下げられない構造になっている。破損を見つけること自体できない」。今回の損傷場所はさらに深いのです。

 この落下事故で、もんじゅは事実上、死んだも同然になりました。

 【参照】第187回「信頼性無し、もんじゅ運転再開は愚の骨頂」

 【続報】2010/10/17「高速炉もんじゅに出た『生殺し』死亡宣告」


「理系が文系より高給」京大さん、それは無茶

 朝日新聞の「『理系は文系より年収が100万円高い』 京大など調査」を見て、困ったものだと思いました。統計調査の基本、母集団の整備が出来ていないで結論を急ぐ典型的な悪例です。インターネット調査で1600人調べたと言い、京大が入ってちゃんとした研究に見えるのだから始末が悪いですね。理系と文系の収入を比較したければ、人事院が毎年している職種別民間給与実態調査が利用できます。以下に平成21年職種別民間給与実態調査「表6 職種別、年齢階層別平均給与月額」からの抜粋を掲げます。

 平均給与月額(企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上)
         40−44歳     48−52歳    56歳以上  
 大学教授    650,857円    702,766円   777,336円
 事務部長    660,954円    689,061円   668,078円
 支店長     680,126円    816,230円   726,787円
 研究部長    589,116円    703,444円   711,956円
 技術部長     589,236円    663,353円   646,283円
 工場長     505,738円    660,290円   733,238円
 医科長     1,270,432円    1,304,497円  1,266,670円
 医師     1,096,285円   1,282,693円  1,209,025円
 事務課長    582,429円    596,976円
 事務係長    451,844円
 技術課長    536,488円    580,412円
 技術係長    458,603円

 いかがでしょうか。医療関係を除けば、依然として文系が理系よりも高給である状況に変化はありません。事務部長や支店長の方が技術系より優遇されています。40〜44歳の課長でも事務と技術で4万6000円の差が出ていて、これは結構大きいと思います。記事にある「20〜60代の1632人(平均年齢43歳)を分析したところ、文系出身988人の平均年収は583万円だったのに対し、理系出身644人は681万円だった」はこの調査と全く相容れません。きちんとした公的な調査があるのにインターネット調査に頼るのは無茶、無謀です。

 この表は「インターネットで読み解く!」第143回「巨額な発明対価判決が映すもの」で使った平成8年職種別民間給与実態調査と形を合わせていますから、部長級以上では過去13年をはさんだ比較が出来ます。比べてみると56歳以上の事務部長(793,534円)や支店長(807,680円)が、現在では大幅に給与カットされていると知れます。不況による幹部社員の給与カットかも知れませんが、理系側はあまり目立ちません。多少は理系・文系の給与格差が縮小しているようです。

 【続報】9/25「京大さん、日経さん、ネット調査信頼は無茶」


同じGDP規模なのに税収は中国が日本の2.8倍

 今年、GDPで中国が日本を抜き去ることになる話は前々から言われてきたことで、当たり前すぎて今更コメントすることもありません。しかし、関連するネット記事を眺めているうちに驚くべきデータに行き当たりました。経済発展著しい中国はもの凄い重税国家だったのです。「『重税国家ランキング世界2位』中国を揺らす『税金論争』」(北京のランダム・ウォーカー)に書かれた数字は是非ともメモしておきたいと感じました。

 「今年上半期(1〜6月)の税収は、前年同期比27.6%アップの4兆3349億元に達した。この勢いが続けば、2010年をトータルすると、税収は8兆元を超える見込みである」「1元は約13.1円なので、8兆元と言えば、約105兆円に上る。日本の今年度予算では税収は37.4兆円なので、実に日本の2.8倍の税収が見込めるということだ」

 これは息をのむ数字です。リーマンショックで大規模な財政出動をする余裕はここに用意されていたのでしょうか。また、物価水準が格段に安いので、これだけ搾り取っても国民は生活できるということでしょうか。さらに恐るべきことが後段に書かれています。

 「米中の税制度を比較研究している中国人学者が、このほど"告発"したことだが、税金を徴収するためのコスト(主に税務署職員の人件費)が、アメリカは税収の0.6%に過ぎないが、中国は、最大8%にも達するという」「昨年の税収のうち、日本円にして5兆5000億円もの大金が、税務署職員のポケットに消えているのである。まさに"官僚大国"の正体見たりである」

 にわかに信じられないとはこのことです。それだけ重税が、有り余りすぎている人を雇う資源になっているのでしょうか。いったいどれくらいの人を雇っているのか考えると、こんなデータも頭に浮かびます。第171回「世界不況を契機に経済成長神話見直そう」で「大紀元時報の『2008年中国国内失業者数、2・5億人に達する恐れ』は『政府は毎年2400万人の雇用機会を創出しなければならないと計画しているが、しかし人材需要に関しては、毎年8%から9%の経済成長率を持続していくには現有の労働力の上、1200万人の新たな労働力があれば十分だという試算がある』と伝えています。この通りならば中国の内需拡大策はもう破綻している事になります」と書きました。

 なお、日中のGDP逆転問題については昨年の第182回「日本抜く中国GDP、矛盾する数字と未来」 をご覧ください。結構、辛口です。


岡崎図書館事件を朝日新聞が独自取材で追及

 6月の第207回「岡崎図書館事件を知るとIT立国など到底無理」で「これで事件だと騒ぐ警察と、冤罪を疑おうとしないマスメディアで固められていては」と断罪した『事件』の罪滅ぼしを、朝日新聞名古屋本社の神田大介記者が「図書館HP閲覧不能、サイバー攻撃の容疑者逮捕、だが…」でやってくれました。名古屋は朝刊、東京・大阪は夕刊に入るようです。

 「朝日新聞が依頼した専門家の解析によると、図書館ソフトに不具合があり、大量アクセスによる攻撃を受けたように見えていたことが分かった。同じソフトを使う全国6カ所の図書館でも同様の障害が起きていたことも判明。ソフト開発会社は全国約30の図書館で改修を始めた」「岡崎市立図書館は『様々なプログラムによるアクセスにも対応するよう改善を進めたい』と説明。愛知県警は一連の不具合を把握していなかったが、『図書館の業務に支障が出たことは事実で、捜査に問題はない』としている」

 一般紙の紙面でこの話を取り上げるとなると、予備知識がない、広範囲の読者に分からせる必要があります。表現方法など随分、苦労しているのが見えます。大繁盛のこの件のTwitterでも神田記者本人が説明しています。ただ最後の部分「捜査に問題はない」だけはいただけない釈明です。問答無用で逮捕して20日間も拘留したのが問題で、警察である以上、捜査することには何の問題もありません。

 警察・司法に自浄能力が無い以上、せめてマスメディアがきちんとエネルギーを使って取材し社会的な間違いを正さなくてはなりません。「商業新聞」と言うと響きが悪く感じられる方もいるでしょうが、内部にいる側は多数の読者からの購読料=付託に応えるべく活動する理念を持っています。古い言葉を使うと「読者への忠誠心」です。「第四の権力」などあろうはずもありませんが、数百万人から付託されているのは事実です。

 この事件についてはその後、高木浩光氏が色々とフォローされていて「国会図書館の施策で全国の公共機関のWebサイトが消滅する 岡崎図書館事件(5)」などを見ていると、図書館関係者の技術レベルがあまりにお寒いと知れます。検索用にデータを集めに来るロボット向け「robots.txt」の書き方が稚拙にすぎて深刻な副作用が出るといいます。当然ながらメンテナンスを担当しているシステム業者の知識レベルも疑われます。6月に書いたことを再収録しましょう。「司法、マスコミを含めた社会全体のデジタルデバイドは深刻で、これじゃIT立国など到底無理です」

 【参考】この事件について良いまとめ記事があります。「岡崎図書館HP大量アクセス事件について」(さかなの目)


「自炊」電子書籍=裁断本の取引と貸本アイデア

 話だけ多数あって乱立模様、なかなか本格的に動き出さない国内の電子書籍です。そんな中で「電子書籍の普及が早いか、貸本屋の裁断本が早いか」(「走れ!プロジェクトマネージャー!」)が絶滅寸前の貸本屋さんの起死回生策として面白いアイデアを出して、注目です。「裁断本を置くことで貸本屋業が一気に復活してくるんじゃないか、なんて個人的に考えています」

 この記事の指摘にあるように、Yahoo!オークションで「裁断済」「断裁済」のキーワードを引くとかなり多くの書籍出品が見られます。例えば前者なら物理学や法律の専門書、文学作品に、漫画の「ワンピース」全59巻セットとかが並んでいます。値段は一見して安いと思えるもの、高めと様々です。

 「個人所有本のPDF化サービスは大繁盛のよう」で紹介したように、1冊100円前後で裁断サービスを受けて出品しているのでしょう。いわゆる「自炊」電子書籍です。その上で裁断サービス料金などを回収しようと考えるか、本そのものの価値を訴えるかですが、通常のオークションと違って出品者が電子データを取得済みなのは明らかで、どんな値付けが主流になっていくのか、興味があるところです。

 オークションで買われた裁断本が再びオークションに出ることも十分に考えられます。多数の裁断済み書籍がどんどん回っていくようなら、実質的に貸本のような状態が生まれます。何かゲリラ的なやり方ですが、書籍の売り買いそのものは合法的です。


遅すぎた参院自民の「革命」、党外の反応は希薄

 自民党参院議員会長選が行われ、町村・古賀・額賀派閥連合が推す谷川秀善自民党参議院幹事長を、中堅・若手が押し立てた中曽根弘文元外相が破りました。ある意味で革命的なのですが、政権交代から1年が経とうとしているこの時期になるまで派閥支配が継続していたことを示すのですから、遅きに失した観ありです。恒例の「Japan Blogs Net」ウオッチでも自民党外からの反応はほとんどありません。

 中曽根氏の推薦人をマスコミの予測を超える21人も集めた中心人物《山本一太の「気分はいつも直滑降」》は「議員会長選挙、ドラマチックな結末」で「今回の選挙結果は、『もはや、派閥談合と長老支配の時代ではない』ことを証明した。 何しろ、『3派閥の連合軍』を打ち破ったのだ。 参院自民党にっては、革命的な出来事だった」「過去15年の政治生活で、こんなに『スカッとした』こと、なかったんじゃないかなあ!!(ニッコリX100)」と雄叫びをあげます。

 この選挙、実は両者40票の同数になり、くじ引きで中曽根氏に決まりました。しかし、中曽根推薦人の1人が中国出張で投票できなかったので、くじを引くまでもなく勝っていたのでした。また選挙なのに立候補者による立会演説会もなしでした。石破茂・自民党政調会長は公式ブログ「自民党参議院議員会長選挙」で「いやしくも選挙なのに、候補者の識見を聞く立会演説会も開かれないというのはどう考えてもおかしい」「『規則にないから』などというのは理由にもなりませんし、不在者投票制度だって、不備があればその都度直せばいいだけの話です」と参院側の選挙運営を批判しています。自民党全体としても、参院はここまで奇妙な場所だった訳です。

 自民OBの「早川忠孝の一念発起・日々新たなり」は「コップの中の嵐でしかない」でこう述べます。「参議院の自民党にやってほしいことは、参議院での派閥的な活動をなくすことである」「野党だから、いくら人事に首を突っ込んでも大したことは無い。党の役員人事に変な色気を出すことなく、それぞれの分野の専門家を核にして、良識の府らしい政策提言活動を進めていただきたい」

 新しい「ねじれ国会」の主戦場になる参院。有能な若手、衆院議員からの転身組を使って政策論争でスマートに押しまくるべきでしょうが、干されてきた中曽根氏でも派閥幹部を無視せず取り込んでいくとしかないという観測がマスメディアで流れます。


大卒若者就職難のネット論議がホット展開

 読売新聞が6日に出した記事「大卒2割 就職せず…今春10万6000人」を巡って有力ブロガーらが取り上げ、ネット論議が盛り上がっています。この記事は「就職留年7人に1人、これも高学歴プアー」で紹介した今春の就職難規模が、文部科学省公表の学校基本調査ではさらに悪化していて、大学を卒業しての進路未定が10万人、留年も10万人に膨れあがっている話です。読売新聞のグッドジョブです。

 「茂木健一郎 @kenichiromogi さんの日本の就職連続ツイートとその反響」には「大学3年の夏から、実質上就職活動が始まる日本の慣習は、明らかに異常である。学問が面白くなって、これからいよいよ本格的にやろうという時に、なぜ邪魔をするのか」「新卒一括採用という慣習は、経営的に合理性を欠く愚行だとしか言いようがない。組織を強くしようと思ったら、多様な人材をそろえるのが合理的である」「日本の企業がiPadのような革新的な商品、googleやyoutubeのような革新的なサービスを出せない理由の一つに、大学3年から従順に就職活動をするような人材しかとっていないという事実がある」など。これまでもサイエンスやオピニオン系の取材をして、多くの研究者からたびたび聞いている趣旨の発言が含まれています。

 「内田樹の研究室」の「日本の人事システムについて」に多数のはてなブックマークが付きました。やはり新卒一括採用に疑問を呈しますが、従来とは目線を転換した発言です。「現行の就活は、『優秀な人材の登用』よりもむしろ、日本の若者たちを『組織的に不安にさせること』を結果として生み出していることを、企業の人事担当者はもう少し自覚して欲しい」「いまの雇用システムでは、『きわだって優秀な人間がそれにふさわしい格付けを得られない』ことよりも、『ふつうの子どもたちが絶えず査定にさらされることによって組織的に壊されている』ことの危険の方を重く見る」「正直言って、私は日本人がiPadを発明しなくても、YouTubeを発明しなくても、別に構わないし、それをとくに恥じる必要もないと思っている。それより、ふつうの人たちが等身大の自尊感情を持って暮らせる社会を確保することの方が先決ではないかと思う」

 確かに苦しんでいる若者の心に響くのでしょう。しかし、はてなブックマークを辿ると「新卒一括採用の是非」(nonomachon2ndの日記)は「新卒一括採用は悪だから廃止すべしといっても、廃止されて一番困るのは当の若者だ。新卒一括採用がなくなればアメリカやヨーロッパのように若年失業率は跳ね上がる。経験者たちと同じラインで就職活動するわけだから当然の帰結。若者が負うハンデは消えることはない」と現実問題を指摘をしています。「卒業後も自らを高める余力があるのは結局金持ちの子だけだ。貧困な大半の子は働かざるをえない。でも新卒一括採用がない。何かの専門能力を高めなければならない。でも仕事につけないのだから専門能力も高まらない。じゃあアルバイトでもするしかない。アルバイトで生活していくには正規労働者の1.5倍は働かないといけない。結局働きづめでいつまで経っても貧困から抜け出せない」

 読売新聞の記事は「国公私立の別では、私立が約9万3000人と全体の9割近くを占めた。また、進路未定者の6割超はいわゆる文系で、『私立文系男子』の苦戦が目立った」とも伝えています。「池田信夫 blog」の「大卒はなぜ職にあぶれるのか」は「経営者に『新卒一括採用はよくない』などと説教したって始まらない。それは日本的雇用慣行の中核にある年功序列システムの一環であり、人事システム全体を変えないで新卒一括採用だけをやめることはできない」と突き放していて、若者には評判が良くないようです。結論である「大学生の供給過剰は文科省がコントロールできるのだから、早急に対策をとるべきだ」は読売記事のこの部分と呼応していると観るべきでしょう。

 【参照】親サイト「インターネットで読み解く!」
   2010年「文系も理系も高学歴プアー:年上世代は身勝手」
   2002年第120回「負け組の生きる力・勝ち組の奈落」
   2000年第95回「学力低下問題の最深層をえぐる」


株式配当ばかりしている日本企業:通説と正反対

 日経新聞の5日付「経済教室」で野間幹晴・一橋大准教授が興味深い分析と主張をしていました。見出しは「『通説』と異なる日本企業 有配企業の比率、高水準」です。1985年から2009年にかけて上場企業で配当をしている有配企業の割合が、米国では73.2%から30.2%まで下がったのに、日本は2009年に86.5%で1985年以降ずっと高止まりしているそうです。この結果、日英独米加の5カ国で日本だけがダントツ高有配率の国となっています。

 従来の通説とはこうです。「配当政策に関する通説とは『米国企業は株主還元を手厚く行なっている』というものである。たとえば『米国企業は株主への配当が多いのに対して、日本企業の配当性向は低い。日本企業も配当を通じた株主還元を強化し、企業価値をたかめるべきである』などといわれる。一方、投資政策に関する通説では『米国企業は短期的あるいは近視眼的な投資を行なうのに対して、日本企業は長期的な視野に基づいて設備投資や研究開発投資を行なっている』と論じられる」

 野間さんの分析結果は、これとは全く逆になっています。成長著しいグーグルは一度も株主に配当を払ったことがないといいます。投資先を見つけて成長を図り、企業価値を高めることが株主への本当のアピールになります。投資先がないから配当している日本企業ばかりでは、経済が活性化しなくて当然です。日本企業は設備投資、R&D投資を削減する傾向が欧米諸国の企業より強いことも分かってきています。雇用が増えない、税収が伸びないのも当然です。野間さんは「経営者が『投資先がない』というのは、責任放棄であると考える」と主張します。

 Twitterでは全く反応が記録されていません。興味深い話なのに、ネットに出ないと駄目なのかな。ブログでは「日本企業の配当政策、投資政策」(吉永康樹のCFO News)が「これは経営者の意識の問題ではなく、経営能力の問題です。能力のある経営者がとても少ないことが今の日本企業の最大の弱点なのです」「日本国内にすぐれた経営者がいないのなら、海外から来てもらうしかないでしょう。今後はグローバル企業に限らず、内需型企業であっても希少な資源である経営者を世界に求めるというのが普通になるかもしれません」と痛切な指摘をしています。


中国との国際結婚は嫁日照りから次の段階へ

 「社会実情データ図録」が「図録▽在日外国人の人口ピラミッド」で中国人やフィリピン人などの在日人口構成をグラフ化しています。「東アジアの国際結婚」に関心を持ってきたので、両者のピラミッドが余りに違っていた点を見て直感しました――中国との国際結婚は、アジアで続いていた「嫁日照り」対策結婚から次の段階へ移行したと。

 仮説を立てたので「平成20年 人口動態統計(確定数)の概況」などを参照して、「夫日本・妻外国」の結婚件数がどう推移したか調べました。

       《夫日本・妻外国の結婚件数(年次別推移)》
[妻の国籍] 1995  2000  2001  2002  2003  2004  2005  2006  2007  2008
韓国・朝鮮 4521  6214  6188  5353  5318  5730  6066  6041  5606  4558
  中国     5174  9884 13936 10750 10242 11915 11644 12131 11926 12218
フィリピン 7188  7519  7160  7630  7794  8397 10242 12150  9217  7290
  タイ     1915  2137  1840  1536  1445  1640  1637  1676  1475  1338

 中国人を妻とする結婚のピークは2001年の13936件でした。90年代から先行していたフィリピン人妻との結婚件数を追い抜いてしまいます。2006年に滋賀県で中国籍の妻が近所の幼稚園児2人を刺殺する事件がありましたが、言葉や心のケアが案じられた結婚はこの前後でした。フィリピン人妻との結婚件数は2005年にかけて再び増え、2006年には12150件と中国を抜きます。しかし、2008年には7290件と急速に落ち込み、韓国・朝鮮やタイも同じ減少傾向です。一方、中国人妻との結婚だけは落ち込む気配がありません。

 中国商務部が認可した日系企業の累積件数は「中国進出日系外資企業の挫折率」によると、2002年頃からかなり増えるのですが、挫折も多くなります。ビジネス実務による人の往来が急増していく中で、普通の出会いによる普通の結婚が主流になってきているのでしょう。

 ブログでも普通の日中カップルがどう生活しているか、読むことが出来ます。「嫁さんは中国人」は中国での職場結婚から、昨年秋に日本に呼び寄せた例です。「来日から2ヶ月」にはこんなやり取りがあります。「もうすぐ嫁さんのアルバイトの初任給がもらえます」「嫁さんもバイトとはいえ、中国から比べると超高給取りです」「嫁:『中国でこれくらいもらえればいいのにね〜』」「onisa:『とりあえずその給料で地デジの液晶テレビ買おう』」「嫁:『ダメ! これは(運転)免許のために貯金!』」。家事も分担してこなしているそうです。

 最初に紹介した人口ピラミッドでも女性側が膨らんでいるのは仕方がないことで、まだ日本女性で中国に出て行って仕事をする人の数は知れているでしょう。「夫中国・妻日本」の結婚ケースは毎年1000件余りを続けています。なお、「夫日本・妻中国」の離婚件数は2006年4728件、2007年5020件、2008年5338件と増えていて、こちらはフィリピン人妻と歩調を合わせています。