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2008年8月のエントリー一覧

8/24 民間健保への国財政の寄生、限界を超す
8/21 福島判決:医療界の安堵と患者側の不信
8/18 オーマイニュース終幕:市民メディアは無用か
8/14 うどんのコシは素人でも自由自在
8/10 北京五輪と暑い夏、冷ややかに過ごせ
8/06 第163回「ビールはこんなに遠くに来てしまった」
8/02 内閣改造も臨戦態勢に見えない不思議

民間健保への国財政の寄生、限界を超す

 西濃運輸グループの健康保険組合解散のニュースは、猛烈な勢いで拡大してきた国医療財政の民間健保への『寄生』が行き詰まったことを象徴するものでした。健保連がまとめている「平成20年度健保組合予算早期集計結果の概要」の「表5 保険料収入に対する拠出金・納付金の割合別組合数」を見て、ここまで来ていたのかと驚きました。前期高齢者と後期高齢者への拠出金を合計した部分を抜き出してみます。

  《保険料収入に対する拠出金等負担》
      20年度 割合% 19年度 割合% 
 20%未満    1  0.1   13  0.9
 20〜30%   15  1.2   175  11.5
 30〜40%   190   14.8   619  40.7
 40〜50%   623  48.5   590  38.8
 50〜60%   370  28.8   101  6.6
 60%以上   86  6.7   22  1.5
  計    1285組合    1520組合  
 平均負担率  46.5%     39.4%

 高齢者医療を前期と後期に制度を分けた今年度「改正」で、これまで以上に健保が拠出する分を増やした結果です。前年度比5094億円増の2兆8423億円が拠出されます。健保が組合員から集めた保険料の半分に近い46.5%が、健保の外にいる高齢者用に「上納」されている訳です。それも国によって強制的に吸い上げられる形です。余裕があって支えているのならともかく、今年度は9割の健保が赤字を見込んでいるのですから、過去の余剰金が大きく積み立てられているのでなければ長く続けられません。

 「西濃健康保険組合の解散の影響」が説く危惧が本物になる可能性が高いでしょう。健保組合が本来の業務では「赤字でもないのに解散するということは、健康保険制度の財政政策を崩壊させることになります」「健康保険組合の解散が続けば、健康保険料が上がるのは必至ですし、自己負担金の割合も現在は3割負担ですが、もっと上がるでしょう。健康保険制度の崩壊が近いかもしれません」

 来年度の厚生労働省予算について、日経は23日付けで「社会保障費の増加は8700億円の伸びと見込まれているが6489億円に抑えた。ただ、具体的な抑制策は示さず」と伝えました。はっきり言うと安定財源のめどは立っていないのです。1年限りの約束で、政管健保の国庫負担削減分750億円を健保連に肩代わりさせた措置を恒久化する画策もあるようですが、2007年度には社会保障費は1兆年も増えたのですから、焼け石に水とも思えます。

 ここまで危機が深まれば、民間の健保組合など要らないと言う考え方も出て来ます。「西濃運輸の健保の解散」は「私も規制撤廃による民活導入には一般的に賛成だが、健保の話しは筋が違う。国民全体の社会保障制度をどうするかという話しだから、大企業関係者や公務員だけが利益を享受している今の制度はすべて撤廃すべきであろう」と主張します。高額療養費の補助など、かなり大きな差があるのは事実です。政管健保も国民健康保険も組合健保も一本化して、国民に広がる不公平感を無くせと説きます。

 当然ながら健保連は「医療保険制度における財政調整と財源負担に関する調査研究 中間報告書(概要)」で一元化論について「所得捕捉が明確な職域保険と、所得捕捉が必ずしも十分でない地域保険を統合した韓国で、結果として保険料率の上昇を招き、特に職域保険加入者への負担が増大したことは、示唆的である」と懐疑的です。

 百年の計とは言いませんが、せめて10年、20年先まで見通せる健康保険制度をつくるのが、政府の責務です。それなのに、来年度予算要求の段階で整合する数字を出せない現状です。首相も厚労相も別に不思議と思われていないところが、とても不思議ですね。

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福島判決:医療界の安堵と患者側の不信

 福島県立大野病院・帝王切開死での20日福島地裁判決を巡って、ブログに様々な声が飛び交っています。産科医無罪の判決そのものは論理的に妥当なものでしょう。「ある産婦人科医のひとりごと」の「大野病院事件 産婦人科医 加藤克彦被告に無罪判決 (詳細)」が「もしも、今回の裁判で有罪の判決だった場合は、『癒着胎盤を少しでも疑ったら、何でもかんでも、直ちに子宮摘出を行わねばならない!』という判例となってしまうところで、産科臨床の実際とはとんでもなくかけ離れた判決になるところでした」と指摘している通りです。非常に稀な症例を心配して、数多く子宮摘出してしまう恐ろしいことになる恐れ大でした。もちろん、摘出してしまえば、もう子どもは産めません。

 今回のメディア報道で気になったのは、亡くなった妊婦の父親の不信感の強さです。当初はメディアが強調しすぎかとも思ったのですが、どうも本気のようです。「大野病院でなければ、亡くさずにすんだ命」という言葉が読売にも産経にも出ています。父親は大病院に移されていたならば助かったと信じ、移すよう助言する助産師らがいたのに産科医が耳を貸さなかった点に不審を感じ、裁判にその解明を求めていたようです。

 例によって1面から社会面まで展開されている新聞記事のほんの一部しか、ネットに提供されていません。ネットに出ない中で朝日の朝刊2面「時時刻刻」にある症例記事は注目ものでした。2006年11月、都内の大学病院で癒着胎盤と診断された20代の女性が、大量出血を避けるために帝王切開から、直ちに子宮摘出手術に移ったのに出血死してしまいました。今回の裁判で検察側が求めた通りに処置した例です。この病院は最もレベルが高い総合周産期母子医療センターだったのですから、福島のケースも大学病院に移っていても必ずしも助かっていなかったことを暗示します。それにしても何年も経つのに、病院側が遺族を納得させる説明が出来ていないことが残念でなりません。

 このあたりの問題と背景について「法医学者の悩み事」の「大野病院事件無罪判決」はこう分析しています。「遺族は、かなり辛いだろう。しかし、遺族の心のケアが、刑事裁判でされるものではないというのは、この事件でよくわかる。背景には、刑事手続で得られた情報が、全く非開示となり、裁判でしか出てこないという日本独特のあしき風潮がある」「情報開示がないので、示談もとまってしまう。問題の本質は、そうした日本の刑事手続き上の秘密主義を改善しない限り、改善しないだろう。事故調を作るとしても、それと並行してそうした部分の改革は必要なはずだ」

 今回の判決は検察側完敗の形ではありますが、論理構成まで否定はしていません。むしろ、大枠では検察の考え方を認めています。足りなかったのは、この産科医が取った行動を否定するだけの学問的な裏付け、あるいは専門家による証言です。産婦人科の学会をあげて被告の産科医に肩入れする中で、検察側は適切な証人を見つけるのに苦労する有り様でした。こうなるとは予想外だったと漏らす検察幹部もいるようですが、潰されたメンツにかけて控訴して戦う可能性もかなりあると思えます。

 いずれにせよ、ひとつの判決が大きな解決策になるはずもなく、影響は限定的でしょう。関係者の合意形成で制度を急いで直さなければならないのに、あっちの分野もこっちの分野も進まないのが日本の現状です。


オーマイニュース終幕:市民メディアは無用か

 2年前に「新しい市民参加型メディア」を掲げて出発したオーマイニュースが7月末で20人の社員全員を解雇、9月から企業タイアップ型『Oh! MyLife』として再出発するようです。MyNewsJapanの「オーマイニュース、全社員に解雇通告『ニュース』の看板降ろす」が15日に詳しく伝え、ネット上ひと騒ぎになりました。やはり市民記者系のパブリックジャーナリストを掲げたライブドアPJも、2ちゃんねるウオッチャーが中身に呆れ見捨てる中、細々と続いている状況です。オーマイについてなら本家韓国でも以下のアクセス量グラフのように衰退しているので、あの韓国モデルも狂い咲きに近かったのです。


 前後して「ネット報道の質向上へ、『インターネット報道協会』設立」も報じられて、ジェイ・キャスト、オーマイニュース、市民記者系のJANJAN(日本インターネット新聞)など5社が横の連携を強化する方向に動き出します。「ネットを使った記者会見の開催」あたりが目を引きます。既成メディアの枠組に食い込めないミディメディアが、経営の論理で連合する様相でしょうか。

 オーマイニュースの理念を一度は信じたという「●オーマイニュースはなるようになったのか」は17日に新たにアナウンスされた原稿料「・スーパー市民記者:一律300円 ・市民記者:一律100円」設定に怒りの気持ちを隠していません。「はっきり言って、これでもなおガイドラインに沿った商品宣伝記事をわざわざ投稿する人は、俗に言う『アフィリエイト乞食』『ポイント乞食』どころではない」「『お人よし』を超えた『スーパーお人よし』としてウェブ上で『認定』され、末永く語り継がれてしまうことになりかねないのではないか」

 私は2年前にオーマイニュース開設早々でその限界を見極めました。しばらくして「大型市民記者メディアは無理と決した [ブログ時評65]」を書きました。ところが、末尾部分で「メディア各社は最近、ブログなどで読者、視聴者の声を聞く態勢を整えつつある。現状は読者サービス的な色彩が強いが、メディア水準を超えた市民の『知のピーク』を取り入れるべく、市民社会と対話する方向に自覚して進む時が来たと感じる。マスメディアが自分でしなければならないと、オーマイニュースの挫折は教えている」と論じたのに、予期したように進んでいません。マスメディアは相変わらず企業防衛に傾き、市民の声を取り入れて余計な火の粉はごめんだ、という姿勢です。毎日新聞のようにネット市民と激突する事態すら起きています。

 市民側の声はメディアとしてまとめて発信しなくとも、これだけ多数のブログやウェブがあるのですから日々に流れています。ところが、国内のブログには米国にある「保守」「リベラル」のような「ハブ」が出来ないのです。郵政解散総選挙の時には出来かけたのですが、争点だった郵政民営化のお粗末な実態が明らかになり、左右とも一気に白けてしまいました。だから、個人ごとに好きな場所をいくつか見つけて、そこを足がかりに有用な情報を探すことになります。勢い、盛り上がっているようでいて、散発的に騒ぎが起きているだけという様相になります。

 本当にこれで良いのかが問題です。私は、ブログ「ハブ」機能も持ちつつ、何のために書くのか、ジャーナリズムの意味を勉強し直して、取材や情報収集の訓練も積んだ次世代・市民メディアが生まれても良いと思い始めています。何も企業体である必要もなく、初めは小さなブログ連合体でも良いでしょう。かなり本格的なサーバーをポケットマネーで維持できる時代なのですから。


うどんのコシは素人でも自由自在

 エキサイトのニュースをたまたま見て「うどんはなぜ『冷凍』が美味いのか」が目に付きました。自分で茹でるうどんは乾麺でも生麺でもやわらかくなってしまうが、冷凍うどんはコシがあって良いとの疑問から出発しています。トラックバックもたくさん来ていますが、元記事筆者を含めどれも、うどん、麺類の科学がお判りでない方ばかりです。

 遠い昔に科学面記事にしたので、現在では記事データベースにも収録されていませんが、うどんのコシは顕微鏡で観察可能です。茹で上がったうどんを素早く切断して瞬間冷凍します。手打ちうどんの店で、うどん生地を何度も伸ばしては畳み、あるいは足で踏んでいるのをご覧になっているでしょう。小麦粉にはグルテンというタンパク質がたくさん含まれており、デンプンの部分と折り重なって複雑な組織を形成します。

 デンプンは茹でる前は全て硬いベータの状態ですが、茹でることで消化がよいアルファ状態に変わります。断面の観察でデンプン粒の何割がアルファ化していれば、どれくらいのコシがあるか判断できるのです。グルテンとデンプンによる組織をどれくらい複雑に造るかで、味わいは変わります。極端なケースとして、全く組織を造らず、ところてんのようにお湯の中に1本で押し出してしまえば全部アルファ化した、ぼわっとした麺になります。手延べ素麺の場合は、時間を掛けて伸ばしていくことでグルテン組織が縦に通っていくそうです。

 食す上で大事なことは、良い組織が出来上がっている麺は一度、アルファ化した部分でも氷水で必要なだけ締めてベータに戻せるのです。茹ですぎたと慌てて食べることなく、ボールに氷水を入れて麺を締め直しましょう。どれだけ締めるかは、つまみ食いしながら判断してください。もし氷水に入れっぱなしにすれば、食べられないくらい硬く出来ます。そうです。素人でも自由自在なのです。

 冒頭の記事は「残念ながら、『冷凍うどん』が乾麺よりも生麺よりも美味しいのは、製法も茹で方も研究されたうえで、『すでに完成された状態』をつくってくれているから」「乾麺や生麺は、美味しさを『茹で方』に委ねられる部分が多く、自分で台無しにしちゃってるようです」とギブアップしていますが、とんでもないことです。冷凍うどんより遙かに美味い麺を我が家は何十年も食べています。大量の氷が使えなかった昔は、経験から得た予定調和で早めに火を止め、水にさらすのが腕でしたが、氷が豊富な今では何の心配もありません。

 この暑さです。冷えて、きりきりした素麺、冷や麦、冷やしうどんは素敵ですよ。


北京五輪と暑い夏、冷ややかに過ごせ

 何とも暑い夏です。そして、ほぼ毎日、夕刻には土砂降りの雨が降って、熱帯に住んでいるのではないかと錯覚させられるほどです。先日は休みを取って自転車で走り回っているところを豪雨に遭い、傘が役に立たない横殴りの雨にすっかりまいりました。この雨を北京に持って行けたら、大気汚染解消なのにとつい思ってしまいます。

 北京五輪が始まりました。ブログの関心を示すテクノラティグラフを貼っておきましょう。「五輪 OR オリンピック」をとると開会式の8日は17000件に迫る記事が書かれ、6月初めのスピード社水着解禁めぐる騒ぎを上回りました。
過去180日間に書かれた、五輪 OR オリンピックを含む日本語のブログ記事
テクノラティ グラフ: キーワード「五輪 OR オリンピック」に関するグラフ


 五輪直前の報道で、人口1500万人の北京市から出稼ぎ者100万人ほどが強制的に帰省させられ、代わりに警備要員140万人が地方から集められたと伝えられました。こうまでしなければオリンピックが開けないのかと呆れていたときに、「内田樹の研究室」で「北京オリンピックに思うこと」を読みました。五輪のような国家的行事の遂行によって失われるものがあります。「日本の場合、それは『何となく風通しのよい敗戦国の脱力感』であった。中国の場合、それに相当するのは何だろうか」「考えてみたが、それは『貧しさとつきあう知恵』ではないかと思う。端的に経済的に『金がない』ということではなく、貧しさを致命的なものとさせないための『生活の知恵』がこれまで中国にはあった。少なくともそのような『生活の知恵』が必須であることについての国民的合意はあった。それが失われるのではないかと私は思っている」

 「図録▽中国の食料消費対世界シェアの推移」にあるように、世界人口の2割しかない中国人が56.2%の豚肉を消費しています。その豚肉が今年、何割も値上がりして庶民には手が届きかねる事態だといいます。中国では開会式のテレビ視聴率が9割を超えたそうですが、「華やかな夢」実現の後に来るものを注視したいと思います。

 スポーツの祭典ですから、もう結果が出始めて、メディアは熱くなっている感じです。隣国ならではの『とんでもないアウェー』で戦っているのですから、醒めた目で見てあげましょう。谷選手の銅メダルについて「日本一ではない選手を出して金メダルを取ることを期待するとは」が書かれています。「オリンピックで銅メダルを取るということは、確かに賞賛に値するすばらしい成績です。しかし、日本には今の谷よりも強い選手がいる(少なくとも全日本の選考会時点ではいた)のです。その選手が出ていたならば、銅メダル以上の成績を獲得する可能性が期待されたはずだと、誰しも考えることだと思います」

 猛暑は当分、続きそうです。だからこそ冷ややかに……。


第163回「ビールはこんなに遠くに来てしまった」

親サイトでは、インターネットで読み解く!第163回)

 この夏、大変な暑さなのに、ビール大手は春に価格を据え置いたサントリーを除いて苦戦、アサヒとキリン、サッポロビールは今年の販売量を前年比3〜6%減少と目標に置いているそうです。加えて消費者の節約指向をうけて、各社揃って今年後半は値段の安い「第3のビール」に力を入れると、昨日から今日、メディア各社が報じました。もはや本物のビールなど、どうでもよくなって来ているのでしょう。

 1997年に始めた私の連載は第3回「ビール戦争・地ビール・自ビール」以来、折にふれてビールの話題を追いかけてきました。2000年の第89回「ビールから離れつつある発泡酒」のころに既にこの業界の動向に危うさを感じ、2005年の「食文化に背を向けたビール業界の悲劇 [ブログ時評25] 」で「自ら築いてきたビール文化を貶めているように見える」と批評したものです。

 先日、サイエンスポータルの「オピニオン」で、脂質膜による味覚センサの研究をされている都甲潔・九大教授の「おいしさを目で見る」を見て、大いに腑に落ちた気分になりました。味覚センサが数値化して割り出す一つの例として、ビール類の味地図を見せてくれます。ビール各社の主要銘柄を「苦味雑味(モルト感)」を横軸に、「酸味(キレ・ドライ感)」を縦軸にしてプロットしています。とても興味深いので、以下に引用します。


 昔、苦味が強い右下あたりに集まって、ビール各社ともほとんど味の差が無かった所から出発し、有名なアサヒ・スーパードライの登場が最初の地殻変動です。キリンが「一番搾り」で追随したころは、まだ可愛い変化だったと読みとれます。第2世代発泡酒と第3世代その他雑酒のワイドバリエーションぶりが歴然としています。ビール本来の苦味を離れた左のフィールドで、酸味(キレ・ドライ感)の変化をつけて新製品が「垂れ流された」ことが判ります。(ビールとは何か、関心がある方は上記の過去の連載でご覧下さい)

 他社とひと味違う飲み物、気の利いた宣伝コマーシャルさえ打てれば何でも造る――それをビールと呼ぶ必要はないはずです。ところが、ビールをもじった飲料を続々登場させている間に、気が付けば各社「本丸」の純粋ビールをじっくり味わおうとうする雰囲気まで薄れてしまいました。「1杯目はまず生ビール」が国内の宴席で注文されるお酒の飲み方です。その後は、和洋様々なお酒に移るのが普通です。家庭でも最初の乾きを潤すだけの存在になっていて、それなら第3のビールでも十分です。

 ここで思い出したのが、京大農学部・伏木亨教授の「ネズミにビールの味がわかるか:美味しさの研究と動物実験」です。ビールは本当に乾き対策だけのものなのか、です。ドイツを中心に「ビールの多飲量特性は、たくさん飲んでもまだおいしく飲める性質のことで、飲み飽きないといい表すこともできる」「ヨーロッパのあるビール会社では、醸造技師ができあがったビールの評価をするのに、まず数リットルを飲んでそれからおいしいかどうかを判断するということを実際に現地で聞いたことがある」というほど、欧州でのビールの旨さは飲み続けて評価するものです。

 そこでネズミです。ネズミはビールが好きで、ただの水よりも、5%アルコール水よりも明らかに好きなのです。「ラットはビールの銘柄を的確に識別する。たくさん飲まれるビールは、何回実験してもよく飲まれる。再現性が非常に高い」「同じ銘柄を今度はヒトに与えた実験を行って驚いた。ヒトもラットとほぼ同じ選択をしたからである」「両者の選択が一致するということから、この実験系がヒトの味覚ではなくて、動物としての生理によってビールを選択させたと考えられる。ビールの多飲量性には味ではなくて生理が支配的な要因となることを示している」

 ドイツの醸造元直営、というより工場の前にあるビアハウスで飲んだことがあります。ほとんど選択の余地がない2種類のビールを、多くのドイツ人が愉快に長時間、飲み続けます。スーパードライが呼び起こしたビール革命は革新として評価すべきだったと考えていますが、それから後に起きた日本ならではの小手先の改良、税制の歪みによる無用の修飾が、ビールを、ビールから切り離してしまいました。こんなに遠くに来てしまった――先月末から10種類余りのビール系飲料を立て続けに飲んだ感想です。


内閣改造も臨戦態勢に見えない不思議

 福田首相が大幅な内閣改造と自民党役員の刷新に手を着けました。このまま何もしないで、追い込まれて退陣に向かうとも考えられていたので、福田さんにしては思い切った行動とも言えます。しかし、このベテラン重厚布陣が、来るべき総選挙に備えた臨戦態勢に見えないところが不思議です。日経新聞は、首相が麻生氏に幹事長を依頼する際、2人だけで密談し「自分の手では解散しない」との言質を与えたとの観測記事まで書いています。人気がある麻生氏に禅譲してから総選挙というシナリオでしょう。

 ブログの動きを示す、テクノラティ・グラフを貼っておきましょう。1日が1300件くらいと予想外に少ない感じですし、前向きに評価しているエントリーはあまり無いようです。
過去90日間に書かれた、内閣改造を含む日本語のブログ記事
テクノラティ グラフ: キーワード「内閣改造」に関するグラフ


 「フランス24が伝える福田内閣改造(音声ドキュメント)」がフレデリック・シャルル特派員のコメントを翻訳しています。「保守党は内閣改造を通して2009年9月まで続行するよう試みています。前倒しの総選挙は敗北が確実なので避けたいのです」「今日、議会は麻痺し、日本政治の当事者の1つも妥協に至ることは出来ず、日本は衆議院(下院)から参議院(上院)へ少ししか法案を通すことが出来ません」――傍目から見て、これが正直な観察でしょう。

 小泉構造改革路線が姿を消し、消費税の増税が見え始めた点ははっきりしています。税理士さんが書く「内閣改造・・・ でも、こんなんじゃぁ」は「これで、増税路線が確定したように思います。消費税も、次期選挙後に増税するツモリでしょうかね。こんな内閣じゃぁ、日本の前途はありませんね」と主張しています。「今日もクライアントのお客様がご相談に見えて、雑談も含めていろいろとお話しましたが、物価上昇、賃金は上がらず(上げられず)、しかも不動産の値下がりという不景気の現実は、政治が悪いという同意見でした」

 公明党は大臣2人との提案も辞退、国土交通相から環境相という軽量ポストに引っ込んで目立たないようにしています。閣外協力に転じるとの噂すらありました。来年夏の都議選の前後での総選挙は避けたい意向なのに、「ぐずぐず福田」では思い通りの展開にならないかも知れません。

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