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第180回「敗因は何と工学知らず:六ヶ所再処理工場」

 試運転終了(完工)を延々と繰り延べている六ヶ所再処理工場について、東奥日報の17日付「新たな工程は原因確定後/再処理 」は青森県の蝦名武副知事が「『ガラス溶融炉の安全を精査した上でなければ、将来の完工時期は立てられない』と語り、仮に8月を過ぎても炉のトラブル原因がはっきりするまでは、日本原燃は新たな工程を示すべきではない−との認識を示した」と伝えました。恐ろしい高放射能廃液を扱うガラス溶融炉について、安全性に本質的な疑問を抱いた地元行政側が突き放したとみるべきでしょう。

 やはり東奥日報12日付「津島氏『自信ないなら海外技術導入を』/再処理トラブル問題視 」は、津島派(旧橋本派)を率いる津島雄二衆院議員がガラス固化体製造トラブル続出を問題視して「なぜ国産技術にこだわるのか。自信がなかったら外国の技術を取り入れるべきだ」と主張したとも報じました。「津島氏の発言に対し経済産業省の担当者は『別の方式を導入すると時間がかかる』などと答え、国産技術からの転換を否定した」ことになっていますが、これから述べるように、大局を見ている政治家の方が、崩壊する現状を糊塗する役人より優れている好例になります。

 六ヶ所再処理工場については2月末の「核燃再処理工場に安全思想の設計無し!! [BM時評] 」で触れたきりになっています。ガラス溶融炉の運転失敗が別の失敗を呼び、さらに最も避けるべき高レベル廃液漏れまで起こしたところまでお伝えしました。この廃液が曲者で配線にかかり、炉の給電性能を損なって加熱できなくなっています。きれいに洗い流せば良いのですが、人間が全く立ち入れない「死の空間」です。遠隔操作でどう洗い流し、その洗い流し液(もちろん放射性)をどう回収するのか、汚染を広げるだけかも知れず、今後の見通しが見えてきません。将棋で言えば、もう詰んでいるのです。

 昨年書いた第162回「青森の再処理工場は未完成に終わる運命」でガラス溶融炉について、以前に原研機構の実験炉で開発された技術と比べ「仕組みと言い、スケールと言い、全くの新規開発です。崩壊熱を自ら発する多数の物質が入り交じった溶融炉の中の物質挙動が、これほど仕組みも物質量も変えて同じになるはずがありません。一国の核燃料再処理を担うのですから、当然、実物大の実験炉で成功させてから実機に組み込むべきです」と述べました。経済産業省と日本原燃のラインは、工学とは何か知らないとしか思えません。

 工学、エンジニアリングとは、それぞれに確立された要素技術を組み合わせて新たな目標を達成するものです。要素技術である高レベル廃液のガラス溶融炉に実証されていない新方式を採用した時点で、工学とはかけ離れた「ロマンの世界」に移ってしまいました。ブレークスルーすべき要素技術があるなら、実プラントの建設ではなく、まず研究室で実証すべきです。遅れに遅れて研究室に戻れないとしたら、次善の策です。六ヶ所再処理工場は2系統で出来ており、もう一つのガラス溶融炉は無傷ですから、そこで人間が目視できる疑似廃液から始めて、期待された性能を本当に持つのか検証すべきです。1年は楽にかかる作業になるでしょう。

 しかし、高レベル廃液本番まで成功する確率は試運転の失敗続きからみて、かなり低いのではないでしょうか。それが既に2兆円を投じた再処理工場のキー技術です。日本原燃は2012年から導入する次代のガラス溶融炉も同じ方式と決めていますが、実証されていない技術を発展させるというのですから、これまた工学の常識から外れています。津島議員が言う「自信がなかったら」を工学の言葉で言い直すと「実証データがなかったら」になります。日本原燃幹部の言動には未だに「落ち着いてやれば出来る」「なせばなる」といった精神主義が散見されますが、あまりの工学知らずぶりに、21世紀に生きているとは到底、思えません。


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