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舞鶴女子高生殺害の捜査・報道と裁判員導入

 裁判員制度導入の5月21日を前にした舞鶴女子高校生殺害容疑での逮捕・捜査と、それにまつわる一連のメディア報道は、裁判員制度に対する疑問を明るみに出しました。このまま導入して良いものなのか、問いかけねばならないと思います。犯行に結びつく有力な物証が無く状況証拠しかない事件であり、裁判員を納得させることが困難であろうから現在の裁判官による裁判に滑り込ませようとしている恐れがひとつ。起訴する時点が延びて裁判員制度導入後なら裁判員を意識した報道に切り替えねばならないマスメディアが、従来通りに読者が犯人と思ってしまう伝え方をしている点も大問題です。

 捜査側が持つ情報は小出しに漏れ伝えられるのですが、これまでのところ証拠らしいものは事件の直前に容疑者と被害者が並んで歩いていたとされる防犯カメラの映像しか無いと考えてよいでしょう。家宅捜索でも凶器は見つからず、容疑者は否認を続けています。「弁護士会が容疑者を重点支援 舞鶴女子高生殺害事件で」は京都弁護士会が「女子高生が殺害されて埋められた重大事件で世の中の注目度が高いうえ、犯行を直接裏付ける物証が乏しく、中容疑者が否認を続けていることから自白を強要される恐れなどがあるとして、輪番の当番弁護士ではなく、刑事弁護に慣れた弁護士」を派遣したと伝えました。

 ブログ上でも捜査を批判する厳しい声が上がっています。法律専門家が説明可能と言い出しながら、読者からの批判にたじたじの例「捜査批判に少し突っ込みを入れてみました。」すらあります。メディア多数からコメントを求められる「法、刑事裁判、言語を考える」の「舞鶴女子高生殺害事件ー各紙コメントから by Gishu」はこんな風に本音を書いています。

 「今後の捜査によっては、有力で、市民である裁判員にも解りやすい有罪証拠がでてくるかもしれない。そのときには、5月21日までなお慎重捜査をしてから起訴してもよい。その場合には、すでに別件窃盗で服役中なので、殺人容疑での勾留中にあえて起訴しなくともすくなくとも逃亡は防げる。無理な捜査をする必要はない」「しかし、万が一にも、今マスコミで紹介されている範囲の間接証拠―間接事実とその延長線上の証拠の積み上げによって犯人性、犯行態様をすべて立証しなければならないとすると、これはそうした証拠の取扱いと、きめ細かな事実認定に習熟しているプロの裁判官に判断を委ねるのが妥当だろう」

 玄人はそう判断するのか――で納得してよいのでしょうか。メディア側「47news」から「【47コラム】シロウトの裁判員は頼りにならない? 捜査当局も私たちも疑ってはいないか」が疑問を呈しています。「ここで問題なのは、『シロウト』の裁判員たちの判断をバカにする考えが、こういう観測の底に潜んではいないか、ということである。警察や検察にも、裁判所にも、そしてメディアの側にも、もっといえば社会全体でも、裁判員裁判が出す結論が信用できないで困っている、という事情があるのではなかろうか」「もしシロウトが頼りにならないという気持ちが私たちの中にあるなら、もしそういう心配が私たちの気持ちの中につのっているのなら、裁判員制度の実施は延期ないし中止したほうがいい。それを決めるのは今からでも遅くはない」

 日本新聞協会は「裁判員制度開始にあたっての取材・報道指針」を発表し、その第1項は「捜査段階の供述の報道にあたっては、供述とは、多くの場合、その一部が捜査当局や弁護士等を通じて間接的に伝えられるものであり、情報提供者の立場によって力点の置き方やニュアンスが異なること、時を追って変遷する例があることなどを念頭に、内容のすべてがそのまま真実であるとの印象を読者・視聴者に与えることのないよう記事の書き方等に十分配慮する」です。新聞各紙が容疑者逮捕の第一報を朝刊トップで並べたのを見て、配慮があるとはとても考えられませんでした。こうした事件の報道、扱い方そのものを縮小しないといけない時期が来たと思いました。

 犯人と強く思わせる報道例は、読売新聞の「容疑の60歳、事件後にバール消える…舞鶴女子高生殺害」を見てください。「事件当夜、現場周辺の防犯カメラに小杉さんと一緒に映っていた『自転車の男』が押していた自転車とよく似た自転車数台を中容疑者も、自宅に所有。自転車のフレームのすきまに長さ約40〜60センチのバールを載せ、側溝に落ちたものを拾うために使っていたという」「事件後に複数の自転車の色が塗り替えられていたほか、中容疑者は自転車にバールを載せなくなったことも判明した」

 こういう情報が勾留期限が終わるまでの3週間、小出しに流され続ければ、多くの裁判員の心証は形成されてしまうでしょう。裁判員制度導入時期すれすれの事件だからこそ、メディア側の準備が本当に出来ているのかが見えてしまいました。このまま突入するのは非常に危険です。延期して、準備の仕切りを直しすべきだと考えます。


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