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メタボ健診重視政策は医療費膨張危機からの逃避

 政府の「健康・医療戦略」素案を読売新聞が報じ、その柱がメタボリック症候群健診の受診率アップだというのです。国民医療費が3年連続で1兆円増えている危機的状況から目をそらす逃避政策と言わざるを得ません。健診と称してウエスト測定値が減った増えたと騒いでいますが、『小太り長生きは日本で調査済み。WSJ報道に驚くな』で指摘したように、少なくとも男性に限れば小太りの方が長生きとの大規模追跡調査があるのです。社会保障費対策として消費税率をいくら上げても追いつかないペースの医療費膨張を前に、抜本的な対策にはなり得ません。

 読売新聞の《メタボ受診46%を80%にする…政府戦略素案》はこう伝えます。《健康寿命を2020年までに今より1年以上延ばすことや、生活習慣病を引き起こす恐れのある「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の人の割合を4分の1減らす目標を掲げた》《40〜74歳を対象とした特定健診(メタボ健診)の受診率が12年現在で46・2%と低率であることから、80%に引き上げるとの数値目標も明記した》

 さらに素案は医療機器市場を3兆2千億円まで拡大して、輸出を倍増させると華々しく打ち上げています。しかし、これは2013年度には40兆円を突破すると見られる国民医療費をむしろ増やす方向に繋がるはずです。医療は社会保障費の3割強を占めており、年金・介護などを含む社会保障給付費総額は2012年度の110兆円が2025年度に149兆円に膨らむ厚労省推計があります。消費税率が10%になったとしてもとても賄えない大きさです。

 医療費削減については高齢者医療の自己負担を上げる案がありますが、もっと本質的な対策――無用な医療を止める方向に舵を切るべきです。日経BPネットで《米国医学会が出した「衝撃のリスト」〜全米8割の医師が示した無駄な医療とは》がこう述べています。《「精神病でない子供にいきなり抗精神病薬は禁物」「風邪に抗菌薬は使わない」「ピルをもらうのに膣内診は不要」「PETガン検診は控えよ」「胃ろうは認知症では意味なし」》医療費を抑制するために《全米から出てきたこの衝撃のリストは真っ先に参考になるだろうと思えた。そのまま採用するかは別として、全米の国際的な学会が無駄と認定した医療が並んでいるのだ。日本での適用を考えない手はないだろう》

 実は政府は医療の本質に切り込む改革を、当然起きるであろう摩擦の大きさから避けてきました。しかし、第420回「人間ドック健診基準値の大幅緩和は遅すぎた結論」で紹介しているとおり機は熟しつつあると考えます。無駄な検査、無駄な投薬、すべきでない医療行為――こちらにこそ目を向けねばなりません。思い付きで始まったメタボ健診万能の怠惰な健康政策では、危機はもう乗り切れないと知るべきです。


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