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iPS大虚報へNatureからの叱責と科学詐欺師対策

 読売新聞などによるiPS細胞「世界初の臨床応用」の大虚報へ、英国の科学誌「ネイチャー」が「Bad press」と厳しい日本メディア批判を掲載しました。翻訳を掲載している「世界有数の科学ジャーナルもあきれる日本のメディアのレベルの低さ」は「読売新聞の森口氏の『功績』に関する報道には大変失望したし、日本経済新聞など他の新聞もこの10年の長きに渡り裏を取らずに森口氏を記事に載せてきてしまったということを認めている」と指摘、嘘を見抜くための手法を紹介しています。

 「何より重要なのは論文執筆者とは協力していない他の研究者にその研究の重要性や実現可能性について話を聞くということだ」と日本メディアに求めると同時に、「日本の科学者は自分たちの同僚に対して批判的な思考をすることが余りない。これは日本では欧米などと比較して内部告発者に対する保護が薄く、せっかくのキャリアをふいにしたくないと思うからかもしれない」と、日本の科学者も切っているところがネイチャーらしいと思います。2004年の第145回「大学改革は最悪のスタートに」インターネットで読み解く!)で「ピアレビュー能力を欠く国内研究者」と評した通りです。

 しかし、時事通信が伝えた「森口氏の論文2本取り消し=卵巣凍結と肝がん細胞初期化−英科学誌」を見て、ネイチャーもきれい事だけ言っても、との思いもしました。ネイチャー系と言われる英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」が大虚報の当人、森口尚史氏の論文を取り消していますが、この雑誌は閾が低めながら研究者による査読があるのです。「ヒト肝がん細胞を化合物だけで直接初期化する手法」は眉唾物ですが、この論文掲載がある種の説得力を付与して、大虚報の伏線になったとも考えられます。

 一方で科学ジャーナリストの小出五郎さんが《科学詐欺師に騙されるメディア 「誤報」の背景(1)》で「今回の『誤報』に関しては、科学の世界で常態化している不正の問題、メディアのビヘイビアの両方から見ることが必要です」と論評しています。科学者の側も何らかの不正行為を容認する風潮があると米国のデータを示しています。

 ネイチャーからは「日本のジャーナリストたちも科学者を前にすると借りてきた猫のようにお行儀よく、何も突っ込んだ質問をしなくなる」と皮肉られています。取材中に喧嘩ばかりしていても前に進めませんから、相手の話をよく聞くのが基本です。しかし、いざとなったら、相手の言い分を全てひっくり返すのがジャーナリストの仕事と構えていなければなりません。これは取材先を科学者ではなく、権力とした場合の付き合い方でも同じなのです。

 【参照】大虚報の後始末が不可解に過ぎる読売新聞 [BM時評]


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