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『炉心溶融』を避け世論誘導した東電の愚劣

 東電が2日に公表した「福島原子力事故調査 中間報告書」には事実関係で目新しいものはほとんどありません。しかし、「中間報告書 別冊」にある『炉心溶融』という用語を避け事故を小さく見せようと誘導した東電の愚劣ぶりは、記録しておく価値があります。マスメディアが一部で事故直後に使い始めた『炉心溶融』を見事にブロックしておきながら、今頃になって「溶融も含めてその可能性は否定していない」とはよく言います。

 「当社の記者会見発言」はこうなっています。震災翌日の3月12日、1号機は圧力容器の底が抜けて格納容器と同じ圧力に落ちた段階では「現在確認されている水位では、燃料の頂部で若干燃料の損傷の可能性は否定できない」、1号機で水素爆発が既に起きていた14日段階では「(燃料が損傷した可能性を認めるのかとの質問に対して)自然状態より高いレベルの放射能が出ているので、燃料が損傷したとみている」と小さな損傷のニュアンスで答えているのです。

 質問した記者たちがあまりにも原発についての知識を持っていなかった点はマスメディア側の著しい不備、怠慢です。しかし、水素爆発が起きる程度に燃料被覆管のジルコニウムが溶けた状態を、上記のように説明しておきながら「出来る範囲で状態をイメージできる様な平易な言葉で説明してきた」と居直ります。

 政府・経済産業省と保安院もぐるになって『炉心溶融』を避けた、決定的な事実の証言もあります。「4月10日、当社より経産大臣に1号機〜3号機が炉心溶融しているが、その程度については、評価できないと説明。その場において、経産大臣、保安院、東電の間で用語の定義が曖昧であることに関する議論を実施。その結果、『炉心溶融』という言葉を使わずに『燃料ペレットの溶融』を使うように経産大臣より指示あり」です。それ以降、5月に炉心溶融を認めるまでの記者会見のやり取りは、まるで禅問答の様相です。

 科学技術社会論学会研究大会のシンポジウムで天文学者の牧野淳一郎氏が「原子力災害と科学者、STS研究者」と題した発言をしています。バイアスがかかっていない科学者の目に事態がどう映ったのか見るには良いと思います。

 「事故直後の1週間程度、原発事故の影響がどれほどのものか、は国・東京電力の公式発表やメディア報道からはよくわからなかった(例の『ただちに健康に影響はない』しか情報がなかった)」「国・東京電力の3月頃の発表と、現在わかっている当時の原子炉の実際の状況、放射性物質の放出状況には大きなずれがあった」

 3月13日に私が書いた「福島第一原発3号機も炉心溶融、後手の連続」があります。新聞社の科学部時代に原発取材を経験したジャーナリストとして公表済みの事実関係だけでも、事態の進行は読みとれました。ところが、政府・東電が『炉心溶融』を避け続けたため、在京メディアの幹部は疑心暗鬼に陥りました。『炉心溶融』を言う記者は執筆から外されたとも聞きます。「炉心溶融認めず」が、周辺住民の避難遅れやヨウ素剤の服用せずに繋がったのですから、東電の愚劣は実質的な被害拡大に及んだのです。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


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