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『iPad新聞』の大欠陥:存在証明はテレビ以下

 既に1500万台以上売れているアップルiPadに特化した有料新聞「The Daily」が2日に創刊されて1週間が経ちます。紙の新聞はもちろん、ウェブ版も作らず、しかも米国のApp Storeでしか入手できないので、日本からはiPadを持っていてもアクセスできない存在です。辛うじてボランティアが作った非公式な目次集《The Daily: Indexed》があるので記事の一部は読めていますが、豊富な動画などマルチメディアを駆使しているという実像には手が届きません。気になりつつ横目で見ているうちに気付きました。新しい電子新聞の期待に反して、この形態の『iPad新聞』は社会的な批評の対象として考えるとテレビにも劣る存在になっています。

 概観してもらうには「ITmedia」の《写真で見る「The Daily」――これは新たなデジタルメディアか?》がよいと思います。iPadの大型画面で記事を載せた各ページがどう現れて、どう見せているのか感じはつかめます。

 有料と言っても週で99セント、年間で39.99ドルの画期的な安さです。その経営見通しはこうです。「News Corp.がThe Dailyの制作に100人体制のスタッフを組織し、その開発に3000万ドルもの金額を投じたということ、そして、今後の運営にも週に50万ドル程度が掛かる」「長期的には購読料と広告料のバランスが取れたメディアになる」「初期投資を考慮しなければ25万人程度の購読者獲得がまずは最初の目標となるだろう」

 「メディア・パブ」の《マードックが仕掛けたiPad専用の電子新聞「The Daily」、ユーザーの第一印象は》はiTunes app storeのユーザー評価を引いて「ユーザーの第一印象は比較的良かったようだ。2300人以上のユーザーが5段階評価(5つ星から1つ星まで)に参加している。平均すると、3.5となっている。満点(5つ星)を投じた人は、43%の1008人であった」と伝えています。

 その上で「ソーシャルメディア陣営の一部からもブーイングが」「90年代半ばに登場したCD-ROM版マルチメディアの復活で、閉じたパッケージメディアであると」「The Dailyの記事には、リンクがないし、RSSフィードもない。筆者や編集者と連絡するためのメールアドレスもない。検索エンジンからアクセスができない。対話性も決められた範囲内に限定される。などといった不満が聞かれる」

 CD-ROM版マルチメディア以上に困るのは、あの記事は面白かったね、と言い合う基盤を欠く点です。iPadをネットに接続して開くたびに60本以上もある記事が更新されて、前のものは読めなくなります。個人的に切り抜きたい記事はクリップ出来るようですが、大量の情報は日々にどんどん流れていき、テレビ番組を録画して批評を交換するといった程度の連携すら難しいのです。

 非公式な「The Daily」目次集を作成している方のブログ《Waxy.org: Andy Baio lives here》をのぞくと、「法的に問題があるから止めろ」と言われれば何時でも止めますとメールアドレスを掲げていらっしゃいます。しかし、ジャーナリズムの有り様として今日の記事しか見えず、以前の記事が全く読めないという形態には問題があるとの認識で、共感できます。

 昨年11月の第230回「既成メディアとネットの拮抗、潮目が変わる」ではiPad新聞に期待を持ったのですが、いざ現れてみるとネット社会の中で位置づけが難しいと感じます。少なくとも、非公式な目次集すら無い「The Daily」ならば存在感は極めて希薄ですし、物書きの側からしても何のために書いているのか魅力に欠けます。


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