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科学力失速、英有力誌の再警鐘を無視する日本

 新聞の科学記者が長く、英ネイチャー誌に日本関係の記事が出れば紹介するのが常識でした。3月の特集に続いて8月、ネイチャー社説で科学力失速と対応策を求める再警鐘が出たのに政府もマスメディアも反応せずです。これに先立って公表された科学技術・学術政策研究所の「科学研究のベンチマーキング2017」は世界の趨勢から取り残された日本の科学技術研究の転落ぶりを明かしています。ネイチャー誌指摘の研究費削減が論文生産に大ブレーキになった点もデータとして現れています。4月の第554回「科学技術立国崩壊の共犯に堕したマスメディア」では3月特集への日経新聞社説の誤解を取り上げたのですが、今回社説はどの新聞も取り上げておらず、あまりと言える「暖簾に腕押し」ぶりにネイチャー編集部の困惑が目に見えます。

 「科学研究のベンチマーキング2017」の《報道発表資料》から日本の現状が見えるグラフを2点引用します。最初は2003〜2005年と2013〜2015年の平均で全論文数と多く引用され世界Top10%に入る重要論文数の変動です。《日本の論文数は、整数カウント法では横ばい、分数カウント法では微減している様子が見られ、この現象は主要国唯一である》とコメントされています。


 次は論文数減少はどの機関で起きたのか、Top10%論文で1994年から5年毎の変化です。1990年代は論文数増加の主役だった国立大学が、今世紀からは減少の主役側に回っています。《2004年平均から2009年平均の変化では、企業の減少に加えて、国立大学の減少が最も大きく、日本全体では最も減少幅が大きい期間である》とコメントが付いています。2004年の国立大学法人化から毎年1%の運営交付金削減継続が産んだ結果です。


 14日付のネイチャー社説《Budget cuts fuel frustration among Japan’s academics》を正面から取り上げているのはニフティニュースの《英ネイチャーが日本の科学研究費の乏しさを指摘 「未来を守るため対策取るべき」と警鐘》くらいです。

 《記事では、日本の研究機関で研究にかけられるお金が年々減っている現状を紹介している。例えば、理化学研究所はかつて潤沢な研究資金を持っていることから「研究者の楽園」と呼ばれていたが、それも今や昔。「過去10年で予算は20%以上削減され、その影響で、同研究所の脳科学総合研究センターの研究者は61人から41人に減少した」と報じている》

 《大学の研究資金不足についても指摘する。国立大学法人の運営費用として国から支出される「運営交付金」は、2004年の法人化以降毎年1%ずつ減らされている。これは、企業との共同研究や軍事研究の実施によって、大学の競争力を強化する目的で行われているが、削減で生じた経済的損失を埋めるために大学が取ったのは、教員補充の停止や任期付き教員の採用だった》

 研究費全体を抑制しても「良い研究」を選択して集中投資すれば問題ないとの発想が政府を支配しています。特に財務省は「国立大学の教員は学生の教育目的には多過ぎる。減らすべきだ」と考えていて、これが交付金毎年1%削減の原動力になっています。第557回「やはりノーベル賞大隅さんの警鐘を無視した政府」で大きく実を結んだ研究が最初から認められた訳ではなく、不遇な時に運営交付金から出た校費研究費がノーベル賞への道を支えた経緯を書いています。最初から「良い研究」が判るはずがない最高の実例を前にして眼を覚ませない頑迷さには恐れ入ります。

 それにしても今回の再警鐘を主要マスメディアが無視するのは問題です。権力がしている政策が誤っていると指摘するのが市民社会におけるメディアの役割です。世界二大科学誌のひとつ、ネイチャーが危惧し対策を求める親切心を理解できないのでしょうか。福島原発事故以降の大政翼賛報道の影が色濃く見えます。3月特集ですら政府を動かせなかったとしても、ボツにされても記事にして出稿し続ける一線記者のハートまでしぼんだかと疑わせる今回の事態です。