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線量限度に一国二制度、帰還住民はモルモットに

 福島原発事故の避難民帰還を迎えて法定の線量限度年間1mSvが曖昧にされようとしています。マスメディアは政府の設けた土俵で議論し、個人線量計を付けさせた帰還が法の保証が無いモルモットと見えないのです。線量計を1年間着用して例えば1mSvに収まったらそれでオーケーとの発想がそもそも異様です。線量計を付けるのは職業人の被曝対策であり、一般公衆の線量限度は普通に生活して十分クリアする環境を放射線障害防止法が整えていると解すべきです。そうでない環境に帰還させるならば、現行法体系が適用されない場所であると明確に説明すべきです。年間20mSv以下になったら帰還させる政府方針は完全に一国二制度なのです。どうしても帰りたい人はリスクを知った上で帰るしかありませんし、帰らないで移住する権利もあるとはっきり言わねばなりません。

 原子力規制委員会が20日にまとめた「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」は「公衆の被ばく線量限度(年間1ミリシーベルト)は、国際放射線防護委員会(ICRP)が、低線量率生涯被ばくによる年齢別年間がん死亡率の推定、及び自然から受ける放射線による年間の被ばく線量の差等を基に定めたものであり、放射線による被ばくにおける安全と危険の境界を表したものではない」とするだけで、法定線量限度である点に触れません。緊急事態後の防護の最適化では「長期的な目標として、年間1〜20ミリシーベルトの線量域の下方部分から選択すべきであるとしている。過去の経験から、この目標は、長期の事故後では年間1ミリシーベルトが適切である」と長い目で見る立場です。

 放射線障害防止法のどこを読んでも「年間1mSv」は出てきません。この法律は放射線源施設の認証基準をそれぞれ規制していって、外にある一般社会での線量を一定以下に落とすよう出来ています。法第十二条の三「認証の基準」は文部科学大臣らに省令で定める技術基準で認証するよう求めています。それに基づく施行規則第十四条の三には「当該申請に係る使用、保管及び運搬に関する条件に従つて取り扱うとき、外部被ばく(外部放射線に被ばくすることをいう。以下同じ。)による線量が、文部科学大臣が定める線量限度以下であること」とあります。そして、文部科学省の「設計認証等に関する技術上の基準に係る細目を定める告示」で「文部科学大臣が定める線量限度は、実効線量が一年間につき一ミリシーベルトとする」となっているのです。

 国際放射線防護委員会による勧告と日本国内での法定化は意味が違います。法律である以上、国民は国や自治体に法を守るよう求める権利があります。原子力規制委の帰還に向けた提言は、法が通用しない帰還地域で個人線量計を付けてもらい、被曝の評価に使うというのです。空間線量から計算した数値よりも個人線量計は低めに出るので安心できる面があり、また、帰還後の行動と線量を照らし合わせることで危険な場所が明確になるでしょう。しかし、それは帰還民をモルモットにする結果になると、なぜ気付かないのでしょうか。

 「3カ月で1.3mSv」を超える場所は放射線管理区域として規制されています。立ち入る関係者は線量計を付け、飲食は禁止で、業務が終われば速やかに退出しなければなりません。福島県外ではこのように運用されているレベルの汚染環境で、食事をし寝る日常生活が営まれる事態が帰還地域では発生するでしょう。いや、現に福島市などのホットスポットでは除染しても放射線管理区域並の場所が多く残ります。そこで生活しているのに眼をつぶってきたゴマカシがさらに広がるのです。第325回「浮かび上がる放射線棄民にマスメディア無力」(2012/10/21)で指摘したようにマスメディアも共犯関係にあります。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー