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臓器移植のドナー不足は本当に悪なのか

 4月26日付、日経新聞社説「他国に頼る移植医療から抜け出せ」には、いかに経済紙だからと言って、移植臓器を自国で潤沢にまかなうことが前提の議論をされては困ると感じました。この日の社説は通常の2本構成ではなく、臓器移植だけをテーマにした1本社説ですから、なおさら問題があります。「本質論を避けるな」との中見出しを掲げて「脳死は人の死かという命題と、真正面から向き合わないと、話は前に進んでいかない」「技術論や制度論を超えて、この機会にもう一度脳死とは何か、移植医療とは何か、きちんと議論を重ねるべきだろう。誤解や思い込みや偏見はまだ議論の随所にみられる」では「脳死=人の死」を認めないのは無知蒙昧と言っているのと同じでしょう。

 世界保健機関(WHO)が5月に、海外に渡航しての移植を規制する見通しになり、臓器移植法改正案を長年、店晒しにしてきた国会が不作為の責めを問われたくなくて動き出しました。現在は3案、週明けには4番目の案も出されます。現在は不可能になっている15歳未満の臓器提供者(ドナー)をどう生み出すかがポイントです。大幅変更案では年齢を制限せずに「脳死=人の死」とし、本人が予め拒絶していなければ家族の同意で提供可能としています。これに対して、15歳以上が書面で提供の意志を残している場合に限って法的な脳死判定をするのが現行法です。

 第4案は15歳以上は現行法のままとし、15歳未満に限って第三者が児童虐待がなかったと認定した上で、家族の同意で提供できる不思議な折衷案です。大幅変更案も含めて、現行法が出来た経緯や脳死患者の実態についてあまり詳しくないのではと考えてしまいます。ご自身がドナーカードを持っている女性の「難しい問題」は「もし自分の子供が脳死の状態になって、まだ心臓は動いているのに、体を切り刻まれることを了承してくれる親がどれだけいるんだろうか」「移植が必要な子供の親が、どんなことをしても自分の子供を助けたいと思うように、脳死と判定された子供の親もまた、どんなことをしても自分の子供を助けたいと思うんとちゃうんかな」と疑問を投げています。

 日経社説を見ていると「脳死による臓器提供が年間十数件程度に止まっていると、日本における移植医療の水準が向上することは期待できない。渡航移植の増加は、患者ばかりか医療関係者の海外流出をも招くと、心配されている」とまで書かれていて、医療取材の経験者が執筆に加わっていないのが丸見えです。脳死臓器移植など世界的に見て、何の手柄でもありません。現行法が出来た1997年に書いた第8回「臓器移植法と脳死・移植の行方」 で、「脳死体からの移植は例外的な医療に長くとどまると決まった」と断じた上で医療不信が背景にあることや生体部分肝移植などの医療技術開発を紹介しました。様々な代替え技術が進んでも移植でしか救えないケースは存在し続けますが、その少数に合わせて大多数の国民の死生観に変更を求めるのは僭越に過ぎると言うべきです。