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日本以上に非婚化・少子化が進むアジア工業国群

 貧乏人の子だくさんを続けるアフリカと一線を画し工業化を成し遂げたアジアは、追っていた日本以上の非婚化・少子化を抱え込みました。この秋学期に関西学院大で講義して国際学部生なのに知らないのに驚きました。BRICsは知っているのに、20世紀に目覚ましかった「アジア四小龍」を知らない学生が大半です。先進国化した大龍、日本を追った香港、シンガポール、韓国、台湾のことであり、今やタイやマレーシア、ベトナムなども工業化を進めています。人口問題はかなりの時間が経過しないと表面化しません。先日リリースした第544回「東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる」はその非婚化・少子化の現れであり、講義で使った資料で諸国事情を解説しておきます。

 アジア諸国での非婚化がどう進んだか分かる一覧表をネット上で見つけました。各国女性「25-29歳」と「30-34歳」の未婚率を1990年、2000年、2010年で推移が見えます。脚注にあるように様々なデータを参照しなければ出来ない労作です。『図解でわかる ざっくりASEAN: 一体化を強める東南アジア諸国の“今”を知る』(秀和システム刊)から「図表2 ASEANなどの女性の未婚率」を引用です。台湾のデータが欠けていたので、別の資料から2009年分だけ補い、空欄になっていたマレーシアのところに挿入しました。

 国別に歩みが随分と違っています。シンガポールや香港は30-34歳層の未婚率が早くから2割前後に達していたのに韓国は20年間で急上昇しました。2010年前後の30-34歳未婚率は、アジア四小龍で香港36%、台湾35.9%、韓国29%、シンガポール25%であり日本34%を凌ぐほどです。タイではアジア四小龍を追うように未婚が増えていますが、インドネシアは一桁のままです。ベトナムも未婚率が高まっていません。インドネシア6%やベトナム8%の一桁状態は日本の1980年前後の姿です。

 この結果、2011年における合計特殊出生率は日本1.39に対してシンガポール1.24、韓国1.23、台湾1.16、香港1.09に低下、一人っ子政策に加えて工業化が進んだ中国・上海は0.89でした。人口を維持できる出生率を人口置換水準と呼び、若年死亡率で変動します。現在の日本の人口置換水準は「2.07」であり、衛生状態を考慮すると大雑把に「2.1」あれば長期的にその国の人口を保てると考えて下さい。アジア四小龍は遥かに下回っていますから急激な高齢化が起きつつあります。タイもそれを追います。

 そこでは生産年齢人口が減り、現役世代が支えなければならない高齢者人口が急増します。第544回「東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる」に掲げた「アジアと欧米の老年人口指数推移」グラフはまさにそれを表しています。アジアでは欧米のような婚外子があまり存在せず、子育てが共稼ぎ家庭でも女性側に大きな負担になります。工業化で社会進出した女性が非婚化すれば少子化は必然です。一方で工業化できていないアフリカ諸国は人口増加を続け、今は2億人もいないナイジェリアが2050年には4億人を超えて米国を抜きインド、中国に次ぎます。

 アジア四小龍は1人当たりGDPが2万ドルを超えていて、それなりに富んだ社会を築いていますが、1万ドルにも達していない中国は生産年齢人口減少でアルゼンチンなどの挫折を招いた「中所得国の罠」に陥りつつあります。生産年齢人口減を補える技術革新のメドは立っていません。老いを支える年金制度にも問題があり、第482回「国家のエゴが歪ませた中国年金制度は大火薬庫」インターネットで読み解く!)で「中国メディアの報道では2030年ごろに制度崩壊しかねないとされますが、現状でもボロボロと申し上げて良いでしょう。このままなら都市部労働者の半分は無年金で老後を迎えるしかありませんし、農村部で新たに始まった年金制度は月額で千円もなく社会保障になりません」と指摘しました。


東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる

 韓国の生産年齢人口(15〜64歳)が2017年から減少に転じると発表されました。東アジア諸国では日本が1995年にピーク、次いで中国が2011年、台湾が2015年に最高を記録して減り始めており、4カ国そろって下り坂に入りました。減り方が急速なのも共通しています。社会の急な高齢化を反映しており、この機会にアジア諸国と欧米主要国について、現役世代である生産年齢人口に対する65歳以上の高齢者人口の割合を示す老年人口指数を国連推計で2050年までグラフにしてみました。少子高齢化、女性の社会進出による非婚化を抱えたアジア工業国は2015年に大きな曲がり角にある点が明瞭になりました。

 20世紀は欧米より老年人口指数が低かった日本が1995年以降、猛烈なカーブで上昇していきました。このカーブと同じ勢いで2015年から韓国とシンガポールが急上昇します。いや、踊り場がある日本に比べて一直線の上昇ぶりで、2050年には日本の近くに迫ります。タイもそれに近い勢いです。2050年の指数を並べると、日本70.9%、韓国65.8%、シンガポール61.6%、タイ52.5%です。

 中国は46.7%に留まっているものの、実は実態を表していません。中国は都市部の退職年齢が男性60歳、女性50歳(管理職は55歳)で日本よりも若いため60歳以上が年金対象になっています。中国社会科学院人口・労働経済研究所の2015年末の発表によると、2050年時点で15〜59歳人口に対する60歳以上人口の割合は75%にもなり、日本以上なのです。退職年齢の引き上げは大きな課題ですが、この超不人気政策を実行するのは国情から至難です。

 50%は現役2人で高齢者1人を支えるラインです。日本は2025年に突破です。中国が退職年齢を引き上げられなければ2035年には軽く突破の勢いです。修羅場はそんなに遠い未来ではありません。第482回「国家のエゴが歪ませた中国年金制度は大火薬庫」で「中国メディアの報道では2030年ごろに制度崩壊しかねないとされますが、現状でもボロボロと申し上げて良いでしょう。このままなら都市部労働者の半分は無年金で老後を迎えるしかありませんし、農村部で新たに始まった年金制度は月額で千円もなく社会保障になりません」と指摘した実態があります。

 先進国で米英仏は人口を維持、または増やしていくので50%を超えない落ち着いた状況です。ドイツだけはアジア工業国のグループに入っていますが、第497回「先進国で人口減少は日本だけに、独は難民受容」で紹介した難民大量受容が順調に進めば状況が変わってきます。アジアでもマレーシア、インドネシア、インドは2050年でも現役4〜5人で高齢者1人を支える水準です。

 朝鮮日報の《「3763万人」韓国の生産年齢人口は今年がピーク、来年から減少》は《活発に経済活動を行う生産年齢人口(15−64歳)は今年の3763万人をピークに来年から減少する。20年以降は毎年30万人ずつ急減し、65年には2062万人に減る見通しだ》と急速な変化を伝えます。社会が急速に老いていくのを放置できないと警鐘を鳴らす社説などが韓国で増えています。

 また大和総研グループの《中国経済 生産年齢人口急減への対応》も《中国社会科学院人口・労働経済研究所が2015年12月に発表した「人口と労働緑書−中国人口と労働問題報告No16」(主編:蔡ホウ、張車偉)によると、中国の生産年齢(15歳〜59歳)人口は2011年の9.41億人をピークに減少し、2023年には9億人以下に、2050年には6.51億人に急減するとしている。生産年齢人口が全人口に占める割合は7割弱から5割に急低下する計算である》と伝えています。

 実際に中国で2011年以降、生産年齢人口(15〜59歳)が毎年500万人ほども減っ行きました。現役が減り、年金を受ける世代が毎年大量に増えていくわけですから「富む前に老いる」不安が現実化しています。日本も現役2人で高齢者1人を支える状況になる前に国家百年の計を真剣に考えるべきです。2045年には現役1.5人で高齢者1人を支える窮状になるのですから。


脱未婚=結婚へ動き、30代から中高年まで活発に

 2015年国政調査集計が終わって分析したところ生涯未婚で終わらない、結婚への動きが30代から60代の高年齢層まで活発化していました。これに対して20代は男女とも従来からの非婚化傾向を維持して対照的です。国立青少年教育振興機構が昨年末に実施した《若者の結婚観・子育て観等に関する調査》は2008年の同じ調査に比べて《「早く結婚したい」と「いい人が見つかれば結婚したい」の割合が低下し、「いつか結婚したい」と「結婚したくない」の割合が上昇している》としています。一方で年収に余裕がある層ほど結婚志向が強い点も明らかにしており、東日本大震災後に広がった絆志向が余裕がある30代以上を「脱未婚=結婚」に踏み切らせた可能性があります。


 表の左半分は国政調査の世代別未婚率を1995年から2015年まで並べてあります。未婚率推移を見る限りでは2015年に男性の30代でわずかに減っただけで非婚化に大きな変化は読み取れません。しかし、同じ世代が5年間に取った行動を計算で割り出すと劇的な変動が発生しているのです。5歳の階級別になっているために、同じ世代が5年後の次の調査では5歳年上のところに移動します。表の右半分は同世代の5年間での未婚率低下です。黄色の部分で過去3回の脱未婚行動とは異なる著しい低下が現れました。「-5.8→-7.8→-8.9→-10.6」と動いた女性30代後半は5年間で10.6%も結婚です。(なお、2005→2010で統計の誤差から一部にプラスが生じ異常ですがそのままにしてあります)


 過去からの変動を見やすくするために25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳、40〜44歳、45〜49歳で男女別に未婚率低下ポイントをグラフにしました。グラフが下に向いているほど結婚に動いている傾向を示します。20代後半だけが男女ともに上昇か横ばいになっているのに対して、他の世代が一斉に下向きに転じました。男の一番上のグラフ40代後半が「-1.7→-1.1→-0.2→-2.7」と動いて、2010年調査で結婚はほぼ終息したはずだったのに2015年調査で大きく復活しました。男女とも40代は同じ動きです。30代は一足早く「2005→2010」で既に結婚に向けて動くトレンドが出来ていたとも言えます。

 人口学では生涯未婚率を50歳時点と定めています。これ以降はほぼ子どもが作れなくなって人口の増減に影響しなくなるからです。今回の分析で注目は50代、60代で男女ともに未婚率を減らす動きが根強い点です。寂しい老後にしたくないとの思いが独身貴族だった男女の行動を変えているかもしれません。大震災後にニュースになった結婚願望は比較的若い世代が中心で、その後は収まったように言われました。中高年層には絆志向がもっと強く浸透したのでしょうか。

 この分析から50歳時の生涯未婚率を占うことが出来ます。年上世代が取った脱未婚行動を年下世代も踏襲すると仮定すれば、今の30代は男性で26%を割り込み、女性では18.6%ほどで収まってしまいます。今回調査の傾向が持続すれば50代以上でも結婚していくので本当の生涯未婚率はぐっと下がるでしょう。前回の非婚化が進んだ国勢調査で第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」を書いたのですが、今回調査によって全く様変わりの様相になりました。なお、8月の抽出集計速報が出た段階で第538回「生涯未婚率が劇的に改善か、2015国勢調査を分析」を書いています。


生涯未婚率が劇的に改善か、2015国勢調査を分析

 将来は35%にもと予測された男性の生涯未婚率が25%に、女性も18%にとどまりそうです。昨年の国勢調査抽出速報を分析すると男女を問わず中年から高年の未婚率低下、即ち結婚がこれまでになく増えていました。各種の調査で「結婚できない」「結婚したくない」との声が若者を中心に聞こえていますが、中年に対する結婚意識調査は希であり、今回の変化を説明してくれる調査が見当たりません。この5年間を見回して結婚に向かう背景を考えれば、東日本大震災の後で人と人の絆を求める志向が高まった点は挙げられるでしょう。20年来、国勢調査で生涯未婚率の分析をして来て激変と言えるトレンド変化に出会い、にわかに信じられない思いがして10月の全体集計発表が待たれます。


 2000年以降の調査で得られた未婚率を5歳毎の年齢区分で並べました。国勢調査は5年毎に実施されるので、同じ世代の集団は5年後にはひとつ右下に現れます。男性で40〜44歳の欄を見て下さい。未婚率は2000年「18.4」、2005年「22.0」、2010年「28.6」、2015年「29.3」と増え続けています。変化は無いと判断してはいけません。2015年「29.3」の集団は2010年には35〜39歳で「35.6」だったのですから、5年間で6.3ポイントも未婚率を減らしたのです。この計算結果を「同世代で5年間の未婚率低下」として右側に並べました。

 表で黄色の部分が未婚率低下が著しく、注目されます。「2000→2005」と「2005→2010」の動きを見れば男性の40歳以上は「もう結婚を諦めた」と判断できる状況でした。未婚率低下がプラスになっている部分がありますが、調査漏れなどで起きる統計誤差なので無視して下さい。

 「2010→2015」で未婚率を男性40〜44歳が6.3ポイント、45〜49歳が3.4ポイント、50〜54歳でも2.1ポイントも減らしたのは画期的だと言えます。この中高年層での結婚が盛んになれば生涯未婚率は10ポイントも下がります。生涯未婚率は50歳時点の未婚率なので高年の動向は計算に入りませんが、55歳以上でも結婚する人が明らかに増えています。

 女性についても40歳以上は「結婚を諦めた」状況だったのに一気に活性化しています。40〜44歳が4.0ポイント、45〜49歳が2.1ポイント、50〜54歳でも1.2ポイントも未婚率を減らしました。加えて35〜39歳が注目です。過去には8ポイント程度しか未婚率を減らさなかったのに11.2ポイント減と二桁に乗せました。

 全体的に見て男女ともに以前の世代よりも結婚が遅れていた層が一気に駆け込み結婚に走った印象です。この傾向は、高齢初産になり子どもをつくるのが難しそうな女性40代以上にまで及んでいます。

 これまでの国勢調査で観察された傾向は2013年の第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」にまとめてあります。現に2015年調査で50〜54歳の未婚率が男で20.3%、女で11.4%と、それぞれ20%、10%の大台の乗っています。従来通りの傾向なら将来は男35%、女27%へと突き進むはずでしたが、今回調査は中年段階で大ブレーキが掛かると示しました。その結果、私の試算では男25%、女18%程度で生涯未婚率は頭を打つようです。


イチローには一里塚、更に伸びる大記録が異論消そう

 イチローがピート・ローズの持つ大リーグ安打記録4256本を上回る4257本の生涯安打数を記録しました。日本プロ野球での安打1278本をどう見るかで異論が出ますが、これからも伸びる記録の輝きが打ち消すでしょう。科学的に見たイチローの特異性はパワー全盛、ムキムキ筋肉だらけの大リーガーを、細身で靭やかな筋肉がもたらすスピードで上回れると証明してみせた点です。時速150キロ前後で投げ込まれる硬式ボールをヘッドスピード150キロ前後で振り出されるバットが弾き返す――地上で最速のスポーツ衝突現象がハイレベル硬式野球の真実です。軽く当てる程度では飛ばないボールを、イチローは自在なバットコントロールを伴う高速振り出しでヒットにするのです。


 イチローが今現在、高度な勝負を続けている現場をローズの記録に王手を掛けた14日パドレス戦8回、この日3本目の安打で見ましょう。「mlb.com」の実況画像から引用しました。ストライクゾーンが描かれているので見やすいです。1死1塁、相手の左腕は内角いっぱい、147キロ前後の速球攻めに徹し、左打者のイチローから見て胸元に真っ直ぐ差し込んでくる感じです。1球目中ほどは見逃しストライク、2球目が高目いっぱいで空振りストライク、3球目に高いボール球を見せておいて4球目は空振りした高さで勝負です。ボール1個真ん中に寄ったのをイチローは鮮やかに左翼線に流すヒットにしてしまいました。左打者は左腕に弱い常識に反して、イチローは左腕の方が高打率です。

 普通のプロ野球選手が苦手にする低目の球にイチローは異常に強く、内外角、高低どのコースもほとんど穴がなくて比較的弱いのは外角高目くらいです。最速衝突現象であるからにはどのコースでもバットが速く振れていなければなりません。筋肉を付けてムキムキマン化した大リーグ強打者はツボにはまれば強いですが、太い筋肉が邪魔してバットが振りにくいコースを持ちます。投手はその苦手コースを突けば凡打に倒せます。

 イチローもピート・ローズも身長は180センチ。現役時代のローズは特にムキムキマンではなかったものの体重90キロあったのに対し、イチローは80キロを切っています。2001年に書いた第102回「大リーグとの『垣根』は消滅した」で紹介した筋肉トレーニング法「初動負荷理論」が走攻守ともに際立つスピード感をもたらしているのです。イチローは大リーグ入りしてからほとんど体重が変わっていないといいます。ちなみにローズは打撃では金字塔を打ち立てましたが、二塁の守備も走塁も目立った選手ではありませんでした。

 さて、ローズらから異論が出ている日本での記録についてです。《ローズ氏 イチローの日米通算安打をチクリ「高校時代のものをカウント」》の言うように高校野球の記録ではなくオリックス・ブルーウェーブ時代の安打です。この記事にある《ダイヤモンドバックスの打撃コーチ補佐を務めるマーク・グレース(51)は肯定派の一人。現役時代に通算2445安打をマークした同コーチは「高いレベルの野球で記録された安打。場所が日本であろうが南極であろうが関係ない」》に賛成です。

 円熟の27歳で渡米して前人未到10年間連続200本安打を続けた時期の平均打率が「3割3分1厘」でした。直前まで日本で残した打率は「3割5分3厘」で、多少はおまけがある程度の差に過ぎません。イチローはまだまだ現役を続けますし、安打記録は4300、4400とさらに偉大になっていきます。王貞治の本塁打記録868本が以前は陰口があっても絶対的な最高峰として尊敬を集めているように、ローズとの比較にならない、誰も超えられない大記録としてそびえ立つでしょう。


移民受容どころか国際結婚の活力も大幅減退

 人口動態統計の年次改訂がある秋、国際結婚の動きをグラフ化してみたら活力が大幅に減退していると判明です。国際離婚分を差し引いた実質の増分は年間7千件に落ち、移民受容どころか縮こまる日本人像が見えます。過去の傾向と異なり、実質経済成長率がプラスに転じた2012、2013年にも国際結婚が縮小し続ける異変は、結婚する若い世代で非正規雇用が半数となりお金が回らなくなった社会の構造からでしょう。もともと国際結婚は国内で難しくなった嫁探しを海外に求めて増えた経緯がありました。


 国際結婚は1990年代後半からリーマン・ショックまでの経済成長持続で右肩上がりの増加を続けました。第344回「急速に縮む国際結婚の謎判明:経済成長率に依存」にあるグラフを参照下さい。2006年には44701組とピークに達しました。それが2014年には21130組と1989年の22843組を下回る水準まで落ちました。国際離婚も結婚のピークから3年遅れた2009年に19404組に達した後、結婚数の減少に伴って下がっていきます。両者の差は2006年には27599組もあったのに、近年は7000組前後です。

 グラフの1992〜2014年の期間で集計して、離婚数を結婚数で割る離婚率は42.8%でした。第339回「夫婦3組に1組は離婚時代定着。米国は2に1」で紹介した日本と米国の中間値です。結婚相手の主な国籍別に見ると、韓国・朝鮮が49.0%と高く、フィリピンも46.6%です。一方、米国は26.8%、タイも38.3%と低く、中国は42.1%と平均並みでした。米国人との結婚は日本人が妻になるケースが圧倒的に多く、米国全体の半分しか離婚がないのは興味深いと思います。

 経済成長率はリーマン・ショックから回復して、2012年に1.75%、2013年に1.61%と増加に転じ、2014年は-0.06%と微減でした。これなら国際結婚が反転増加して良いのに、減っていく一方です。第314回「非正規雇用にある男性の半分は生涯未婚か」で指摘したように、生涯未婚率が5割にもなろうかとしているのが現実です。嫁探しどころでない、かつかつな生活をしている若い層が大幅に増えましたから国際結婚に打って出るどころではありません。

 これから深刻さを増す人口減少問題で、海外からの移民、あるいは中東・アフリカなど難民の受容は進みそうにありません。せめて国際結婚でも増えたらと考えて最新統計を調べましたが、構造的な深刻さが浮かぶだけです。第497回「先進国で人口減少は日本だけに、独は難民受容」にあるように先進国で日本のような状況は特異なのです。安倍政権はこの現実を直視しませんし、マスメディアも政府追従で弱々しい声しか上げません。


こんな超高齢亡国にしては…と痛感するグラフ

こんな超高齢亡国にしては…と痛感するグラフ  80歳以上人口が今年初めて1千万人を超え、街でお年寄りが目立つのも当然。この機会に少し先、2050年の予測統計を見て愕然としました。生産年齢人口が50%に落ちる日本を先頭にした各国のグラフを作成しました。2010年では日本の15〜64歳の生産年齢人口が63.8%あったわけですから、50.9%まで下がるのは想像を絶します。15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口を合わせて被扶養人口と言いますが、現役世代と被扶養人口が「1対1」になるのです。


 日本(50.9%)、スペイン(51.6%)、韓国(53.1%)、イタリア(53.1%)、ポルトガル(53.6%)、ギリシャ(53.8%)、それにドイツ(54.7%)と続く生産年齢人口割合「ワースト7」が世界の趨勢から一段落ち込んでいると見て取れます。グラフは40カ国だけプロットしており、残りの国は最高のパキスタン69%までの間にあります。

 ワースト7は65歳以上人口が各国の水準より浮き上がって30%台になっていることも分かります。日本はダントツの36.5%です。二番手は韓国の34.9%です。ちなみに日本では75歳以上が2割を超える恐ろしい事態になっています。ベビーブーマー世代もほぼ死に絶える35年後であり、経済成長などとても望むべくもない状況に陥るのは間違いないところです。こうなることが見えているのに何も手を打たず、座して死を待っているのがこの国です。戦後の中核になったベビーブーマー世代が手をこまねいたまま現役から引退してしまいました。

 総務省の《統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)−「敬老の日」にちなんで−》には2015年で「日本の高齢者人口の割合は、主要国で最高」として日本(26.7%)、次いでイタリア(22.4%)、ドイツ(21.2%)などがあがっていますが、2050年の状況よりはるかに良好です。世紀半ばには世界的にも格段に質が違う高齢化になって行きます。

 生産年齢人口の全てが働くわけではありません。専業主婦などが除かれて労働人口になります。その労働人口が女性の労働参加率を飛躍的に高めていかないと急減する問題を第476回「労働人口急減の恐怖を無視する国内メディア」で論じました。遠い将来でなく、近未来の経済成長を決定する問題に今まさに直面しています。2050年に向かって人口構成が変わっていく様子もグラフにしてありますのでご覧ください。


先進国で人口減少は日本だけに、独は難民受容

 戦乱のシリアなどからの大量難民問題でドイツは今年、80万人もの受け入れを想定しています。実はドイツは先進7カ国で珍しく日本とならんで人口減少中の国ですが、難民受け入れと定着で人口増に転換しそうです。一方の日本は難民ばかりか移民・外国人労働者受け入れも厳しい条件を付けて制限、これから急速に人口を減らして行きます。超高齢化まっしぐらであり、日本だけが先進国で唯一の人口減少国という特異な立場に取り残されそうです。


 第474回「先進国で稀な人口減少と高齢化をグラフで見る」で作成のグラフを再掲しました。ドイツを見れば2010年の8301万人が2020年に113万人減の8188万人へと予測されていました。減少は年間に10万人から20万人減るゆっくりペースでした。今年の80万人に、昨年も20万人ほどを受け入れていますし、来年以降も難民騒ぎが簡単に収束するとは思えません。トルコなどの難民収容キャンプが飽和状態にあるからです。

 ウォールストリートジャーナルの《難民大量流入で試されるドイツ型「効率性」》がこう伝えています。《5月には連邦移民・難民局は、紛争国から流入して今年ドイツで亡命申請する移民を45万人と予想した。先月、同局はこの予想を80万人に上方修正した。昨年全体のほぼ4倍だ》

 多数の市民ボランティアが難民受け入れの手助けをしているほか、国内定着に向けた動きが紹介されています。《ドイツの企業もこの支援努力に参加しており、シリア難民ないしその他の移民が潜在的に雇用可能かどうか見ようとしている》《多くの企業が移民向けに訓練や職業プログラムを申し出ており、一部の企業は子供向け教育支援を申し出ている》

 日本も難民を受け入れるべきだとの声が欧州から上がっていますが、日本政府は動きません。ドイツのように1兆3千億円を投入する決断も、受け入れ態勢を整えるノウハウも持たないのですから、手が出せないのです。日本では早くも2022年頃には生産年齢人口の2人で65歳以上の高齢者1人を支えるところまで高齢化が進みます。人道的な立場も含めて何の手も打たないで座視していいのか、深刻な人手不足が言われる中でも移民・難民についての本格的な議論はありません。

 労働人口が大きく減るのに政府は近未来の実質経済成長率を高めに設定しています。第476回「労働人口急減の恐怖を無視する国内メディア」でその無理、政策の非現実性を指摘しました。


「産まない方が問題だ」麻生発言を否定するグラフ

 麻生財務相の社会保障費膨張で「高齢者が悪いようなイメージをつくっている人がいっぱいいるが、子どもを産まない方が問題だ」発言を見て、前から気になった育児をしている女性の有業率統計のグラフを作りました。麻生さんは結局、言葉足らずと釈明しましたが、都道府県別の育児女性有業率を並べれば大家族的なサポート無しに、職を持ちながら育児は出来ない厳しい現実が容易に見えます。首都圏と関西圏のベッドタウンである神奈川と兵庫の両県で有業率が極端に低いのです。保育所の待機児童ゼロ達成ニュースが流れる大都市圏ほど現実を反映していないと見て取れます。


 総務省の《女性・高齢者の就業状況 −「勤労感謝の日」にちなんで−》にある「都道府県別育児をしている女性(25〜44歳)の有業率」をグラフにしました。全国平均が52.4%あるのに、神奈川の41.1%と兵庫の43.2%は断然低く、さらに人口が大きい首都圏と関西圏が底辺を形成しています。

 一方、有業率最高が島根の74.8%、山陰、北陸、東北の各県が高い峰をなします。暮らしやすさが言われる北陸は三世代同居などで家族のサポートが厚い土地柄として知られます。こうでないと現代の社会で子育ては難しいのです。麻生財務相は予算編成が子育て事情に配慮していると釈明しましたが、とんでもないと思います。

 アジアの社会は家族による育児サポートが当たり前とされてきましたが、女性の高学歴化で日本以上の非婚化がアジア工業国で起きています。2011年の第276回「アジア工業国の非婚化は日本以上に進んでいる」で論じました。この現実を見れば、女性が結婚して子どもを産んでくれるのはとても有り難いことだと、政治家は発想を大転換すべきです。


日清戦争120年の中国共産党宣伝、国際的に無理

 7月25日が120年前に日清戦争の火蓋が切られた開戦の日でした。この敗北をきっかけに傾いた国運を立て直したのが中国共産党と臆面もないプロパガンダですが、中華圏の宗主国だった地位は全く回復されていません。いくら世界第2位の経済大国になったからと言って尊敬されないのは、南シナ海で原油掘削装置を巡って昔は属国だったベトナムが敢然と立ち向かった例で明らかです。自分からにじり寄っていく国は、清朝世界でナンバー2を自認していた韓国くらいで、またナンバー2になれるとファンタジーを膨らませているよう。

 東洋経済オンラインの《中国で沸騰、「なぜ日清戦争に負けたのか?」120年前を起点に語られる民族復興のストーリー》が《120年前の7月25日、日清両国の海軍が仁川の沖合で激突した。いわゆる豊島沖海戦である。これによって日清戦争(中国では”甲午戦争”)の火蓋が切られた。両国が正式に宣戦を布告したのは8月1日だが、中国では7月25日が日清戦争が始まった日として認識されている。そのため、25日には中国の主要メディアがこぞって日清戦争敗北の意味を振り返る特集記事や論説を掲げた》と伝え、中国側の視点をまとめています。

 《中国人に、再び「中華民族」としての精神のよりどころを与えたのが中国共産党だという。中国において日本を語ることは、すなわち自国を語ることだということがよくわかる。中国において共産党の正統性を強調するためには、甲午戦争から始まる日本との戦いというストーリーが欠かせないのだ。中国が日本に「歴史問題」を提起するときは満州事変以降の日中戦争だけを対象にしているわけではない。東アジアの地域秩序はリセットすべきだという発想が根底にある。韓国と歴史問題で共闘したり、日本領とすることが日清戦争のさなかに閣議決定された尖閣諸島を自国のものだと主張するベースにも、こういう考えがあるのだ》

 ちょうど朝日新聞の《中国メディア、国防力の増強訴える 日清戦争120年で》が報じる人民日報の論評が呼応しています。《「甲午戦争の失敗の内因は、清末の腐敗しきった制度と官僚だった」と指摘。「勝敗を分けるのは海戦。沿岸警護しか知らない海軍が、大海制覇の野心に満ちた海軍に惨敗するのは当然だ」とも主張し、「反腐敗」や「海洋強国」を掲げる習近平指導部の政策の正当性をアピールした》

 身内相手の狭い了見の宣伝にうんざりですから、ここは日本側の視点をぶつけるより、第三者の目で語ってもらうのが良いでしょう。北大スラブ研究センターニュースにあるサラ・ペイン氏(US海軍大学)の《日清戦争 1894-1895》が目につきました。日清戦争で決定的に変わったアジア秩序は今もって同じと言えます。

 《東洋においても西洋においても人々の認識を変えたこの戦争は、極東に関与している全ての諸国の外交政策に影響を及ぼした。 中国の脆弱性への認識は、より攻撃的な外国の侵入を引き起こし、「利権の奪い合い」として知られる、海外の列強が中国を勢力圏に分割する時代を招いた。逆に、日本の強さに対する認識は、日本を列強の地位へと導いた。1902年の日英同盟は日本の新しい地位を正式に認めるものであった。これはイギリスにとって、ナポレオン戦争の終結から第二次世界大戦までの間の、唯一の同盟だった》

 《戦争は中国を奈落の底へ沈めた。それは中国が捨て去ることの出来ない、優越性への執拗な自覚の根幹を打ち砕き、世界における中国の地位の見直しを余儀なくさせる。かつての儒教世界の構成員である日本に敗北を喫したことは、アヘン戦争を含む、かつてのいかなる西欧諸国による敗北よりもこれを決定的にする。なぜなら異なる文明による敗北ならば軽く扱われうるが、儒教秩序のかつての構成員による敗北ではそれができないからである。同様に、中国におけるいかなる政治的安定の痕跡も打ち砕かれただろう。儒教秩序から変化した構成員による勝利は、この秩序の正統性を決定的に掘り崩した。中国人にとってこの戦争は、彼らの世界を覆すものとなった。一世紀後の今なお、中国は長い間中華思想の根幹を形成してきた安定的な儒教秩序に代わる、満足のいくものをまだ見つけていない》

 日清戦争の当時、GDPは中国が圧倒的に上でした。百年余り経過して、人口が10倍ある国に再び凌駕される時代が来て、中国の工業化にも十分手を貸した以上、不思議がることはありません。日本としてはGDPより人口減少問題こそ目を離せない課題です。第285回「日本の世界人口シェア、江戸中期3.9%が最高」で示したように、人口の世界シェアが現在2%近いのに、2050年には1%に落ちてしまうのです。また「富む前に老いてしまう」と考えられている中国の急速老齢化については第378回「日本に続き中国も超特急で超高齢社会へ突入予定」で描きました。


苦悩する韓国、日本の過去像か異質な国民性か

 旅客船沈没事故・地下鉄追突事故など社会のたがが外れている実態露呈に韓国が苦悩しています。マスメディアによる追及の続編を読むと日本がたどってきた過去像にも見えるし、我々と全く違う国民性の国とも思えます。第425回「国民性悪説に至った韓国メディアと反省なき日本」で韓国メディアの風向きが完全に変わったと指摘しました。朝鮮日報などは安全点検のキャンペーンを社会の色々な場面で粘り強く展開しています。

 中央日報の《【コラム】毎月1隻ずつセウォル号が沈没する=韓国》は「年間5000人以上が死亡する。大韓民国の交通事故だ。衝撃的な数だ」「大韓民国は先進国クラブといわれる経済協力開発機構(OECD)加盟国だ。本当に恥ずかしい。交通事故の死亡率は高い。人口10万人あたりの交通事故による死者(2011年)は、OECD加盟国の平均が6.8人だが、大韓民国はなんと10.5人にのぼる」と数字をあげています。

 人口が日本は韓国の2倍半あるのに交通事故死者数は少なく、10万人当たりなら韓国の3分の1です。しかし、日本だって昭和から平成に移る頃は死者が今の3倍もありました。交通事故に関してならば四半世紀前の日本だと思えば良いでしょう。安全点検キャンペーンでカラオケボックスやスーパーマーケットなど商業施設の防火設備や避難経路不備も取り上げられますが、日本だってこれが改まったのはそんなに昔ではありません。

 朝鮮日報の《【コラム】巧遅より拙速を好む国》がインド工科大で経営学博士号を得たキム・ヒョンドゥク氏の国民性比較論を掲載しています。韓国の「パルリパルリ(早く早く)文化」の功罪についてで、とても示唆的です。

 「韓国人とインド人はさまざまな面であまりにも大きく異なる。例えば仕事を始める前、韓国人は極端な楽観主義者であり、インド人は徹底した悲観主義者だ。韓国人は問題の70%を把握した上で『パルリパルリ』仕事を始めるが、インド人は120%確認してからその仕事をやるかどうか決める。ところが実際に仕事が始まると、韓国人とインド人の態度は正反対となり、韓国人は徹底した悲観論者、インド人は安易な楽観論者に変わる。インド人はあらかじめ把握してあった問題が発生すると落ち着いて対応し、損失が発生しても受け入れるべきは受け入れる。これに対して韓国人は『パルリパルリ』に執着するため、あらゆる問題が想定外であり、そのため大騒ぎをする。だからインド人は韓国人のことを『短い導火線』『押すだけでパニックになる人間たち』と表現する」

 日本人の立ち位置はインド人と韓国人の中間辺りなのでしょうか。

 セウォル号沈没の際に船長が真っ先に逃げ出しました。これに対比して朝鮮戦争の歴史を引いて「大統領がまず逃げた」と痛切な指摘が《[歴史と責任(1)] セウォル号の悪魔、大韓民国の悪魔…》にあります。「私たちの歴史の中にセウォル号の悪魔を上回りこそすれ決して下回らない悪魔はあまりにも多かった」「セウォル号船長イ・ジュンソクがそうしたように、李承晩は北朝鮮の攻撃で陥落の危機に陥った首都ソウルから一番最初に逃げた人だった」

 封建的身分制度が日本が朝鮮半島に介入を始める19世紀末まで存続しました。そこでは貴族階級に当たる「両班」が特権階級で科挙を受験できて上級官僚を独占しました。現在でも志の高い精神を両班意識とも言うのですが、両班階級の指導性に日本人から見ると疑問符が付くのです。両班がもし大きな官職に就けると遠縁まで含めて親族縁者が群がって来て、それを扶養する義務がありました。韓国の歴代大統領が親族まで含めた利益誘導と汚職にまみれ、職を辞した後で司直の手を煩わせ続けている構図とそっくりなのです。

 下層民から搾取したのは日本の武士階級だって同じです。しかし、有志の武士たちが明治維新を起こし、日本を近代化させました。もちろん維新政府で私腹を肥やした輩は出ましたが、維新の推進者だった西郷隆盛が最も嫌う行為でした。そして、廃藩置県、廃刀令、徴兵制と進む近代化は士族全体を裏切る形になりました。第53回「明治維新(上)志士達の夢と官僚国家」で描いた通り、それでも推進を続け、今に至る官僚制度を作ったのが大久保利通です。維新の先覚者精神と似通うものを韓国に見つけるのは難しいと感じます。

 【参照】インターネットで読み解く!『沈没事故に見る韓国の総無責任、秩序国家は無理か』


マー君の変幻配球、打者ごとに違う攻略法で翻弄

 大リーグ開幕から無敗、6連勝のヤンキース・田中将大投手には高速で落ちる魔球「スプリット」以外にも多彩な攻め手があります。7つの球種の制球力を駆使して打者ごとに攻略法を変え、幻惑し、翻弄しています。15日のメッツ戦、7回に相手のクリーンアップを三者連続三振に打ちとった場面が象徴しているので、大リーグが公開している球の軌道自動測定システムの画面を引用して、何があったか見ましょう。日本には無い大リーグの測定システムがあって初めて田中の変幻自在な配球が目に見えるようになりました。スプリットについては第426回「分かっていて打てない田中将の魔球を科学する」をご参照ください。

 《横変化》


 3番ライトには低めの緩く遠くに流れる時速131キロ・スライダーでまずファーストストライクを取りました。2球目は逆に膝元を突く明らかなボール。3球目はその中間に沈む球144キロ・シンカーで振らせました。4球目のスプリットはストライクゾーンに入ったのに球審はボール判定。ならばと5球目に再び内角ボール球として147キロ・シンカーを投げて近めを意識させた後で、空振りした1球目よりも遠く、外角低めいっぱいに流れる137キロのスライダー――空振り三振です。これだけ大きく横方向に揺さぶられるとバットに当てることすら難しくなります。

 《時間差》


 4番の左打者グランダーソンにも低めに流れる134キロのスライダーでまずストライク。しかし、ここからは3番ライトとまるで違っていきます。同じような低めに、ぐっと遅い118キロのカーブを投げてバットを振らせます。3球目は意識して147キロの速球を高めのボール球にします。ウイニングボールはやはり低めに122キロのカーブ――見逃し三振です。時速で30キロ近い球速差があるとバットを振り出すタイミングが大きく違うために時間差が効き、球種が読めていないとバットは振れません。甲子園大会でも130キロの速球と100キロのカーブだけの高校生投手がなかなか打てない現象が起きます。

 《縦変化》


 5番ヤングにも低めの131キロ・スライダーで空振り、ワンストライクです。次はど真ん中に147キロの速球、これはファウルでたちまち2ストライク。3球目はスプリットを低く落としますが、釣られません、ボール。4球目は1球目と同じ低めスライダー、5球目は遅いカーブを外角に投げますが、いずれもファウルで粘られました。ボールにした6球目はベルト辺りに150キロの速球です。これを見せてから139キロのスプリットを真ん中低めに落としますが、これもファウルされます。最後は150キロの速球を真ん中に投じてファウルチップを誘い三振でした。縦方向の変化にはついて来られなかったので、バットの芯には無理です。

 打者はネクストバッターズサークルで相手投手の攻め方を実地に研究しているものです。それで打席に立ったらまるで違う攻略シナリオに直面して面食らうと思います。メッツ戦をテレビで見たマー君の元ボス、楽天の星野監督が「丁寧に投げとったな。要求した通りに投げてくれるんやから、捕手も楽しいやろうな」と述べたと伝えられました。この配球の巧妙さはヤンキース・マキャン捕手の大リーグ経験と知識に支えられているのは間違いありません。7つの球種でボールとストライクを自由に手繰ることが出来て、無駄なボールが無い田中ならばこそと言えます。ボールが先行してカウントを整えるのに四苦八苦しているようでは、駆け引きなど出来ません。

 15日はエース、サバシア投手の故障者リスト入りなど先発陣が崩れたチームを4連敗で止めた初完封勝利でした。ニューヨークの地元メディアから「公式救世主」とまで持て囃された田中、魔球スプリットと制球力の威力は持続しそうです。

 【参照】インターネットで読み解く!《文化・スポーツ分野》


分かっていて打てない田中将の魔球を科学する

 大リーグに渡って開幕から無傷の6連勝を飾った田中将大投手。最近は米国で投げる投手が減った高速で落ちる魔球「スプリット」が威力を発揮しています。空振りするか、引っ掛けてゴロになる仕掛けを科学しましょう。かつて活躍した佐々木投手や野茂投手のフォークボールは同じ落ちる球でも無回転なので、最近の打者は見抜いてしまいます。田中のスプリットは直球に近い高速で、しかも直球のような回転をして落ちるから始末が悪いわけです。大リーグは球の軌道を自動測定するシステムを導入、リアルタイムで見せてくれるようになりました。この日、メッツのレッカー捕手からスプリットで2三振を取った場面を切り出して引用します。


 最初の三振では高めの球から入っているのに、2回目の三振では低めから攻めています。しかし、いずれも3球目までに時速150キロ近い直球を2つ使って、速球を意識させているのは同じ手法。そして、いずれも4球目に緩い時速130キロ台半ばのスライダーです。どちらも空振り三振になる5球目では、時速141キロのスプリットがストライクゾーン真ん中から大きく落ちています。打者は直球対応で振りに行ったけれど、ボールはそこには無いのです。

 なぜ振りに行くのか、佐々木投手たちのフォークボールを取り上げた2000年の第92回「新・日本人大リーガーへの科学的頌歌」で打者の生理をこう説明しています。「バットスイング開始からインパクトまでの時間は0.17〜0.2secは要する。したがって、36m/s(130Km/h)以上のスピードのボールであれば、投手板とホームベースの中間地点にボールが到達した時点でスイングを開始しなければならない」

 例えば「2回目の三振」の2球目の直球と5球目のスプリットを軌跡で比べてください。ホームベースとの中間地点で判断がつくか――フォークボールと違って直球のような回転まで見せているのですから、極めて困難です。

 投げ方について田中自身が《田中将大「僕がスプリットをマスターするまで」》でこう証言しています。「スプリットはフォークよりも真っすぐに近いです。真っすぐの軌道から打者の手元でスッと変化すれば打ちづらいだろうと思っていました。スピードの緩いフォークは打者に見極められることも多いんですよ。フォークほど投げミスが起きないことも大きいです」「投げ方はフォークのように抜く感覚ではなく、ストレートに近い。腕の振りも同じ意識で、ボールを真下にたたきつけるイメージです。大事なのはしっかりと腕を振ること」

 直球はバックスピン回転で揚力を得ていますから重力に逆らって落ちません。スプリットは回転しながらも微妙に少ないのでホームベースまで来て落ちてしまいます。田中は2010年にスプリットの握り方を覚えて、その微妙さを鍛えてきたのでしょう。大リーグで8試合58回を投げて奪三振66、与えた四球はわずかに7だけと精密なコントロールを誇ります。無敗、連勝記録はまだまだ伸びそうです。

 【参照】インターネットで読み解く!《文化・スポーツ分野》

 【追補】イチローの「レーザービーム」送球がフロックでないと実感する「あり得ない」送球プレイです。《思わず「うわ、すげー!!」と歓声をあげちゃうイチローのミラクルスロー》


結婚離れは非正規雇用増の結論避ける厚生労働白書

 思案投げ首でいいのか厚生労働白書、と言いたくなります。若者が結婚しなくなっている現状を各種調査でくどくど分析するのですが、非正規雇用が拡大し結婚の壁、年収300万円を越せない点を明確に言わないのです。いかに安倍政権が雇用流動化を指向していようと、結論が出ている傾向ははっきりさせねばなりません。さらに、この現状でも若者に結婚してもらい、人口減少に歯止めを掛けたいのなら、子ども手当などの支給を飛躍的に増やして子育て費用の心配を解消する施策を打ち出すしか策は無いのです。今年の白書からグラフを2点引用します。




 若い世代が年収300万円以下では既婚率が10%もない点と、15〜34歳男性で正規雇用と非正規雇用の有配偶率の比が4倍にもなる格差が読み取れます。引用は《平成25年版厚生労働白書 −若者の意識を探る−》からです。このグラフにはありませんが、賃金構造基本統計調査2012年版を見ると、非正規雇用男性の平均年収は20代後半で197万円、30代前半で216万円になっています。結婚観や恋愛論など副次的な要因はあるでしょうが、大きな傾向は年収不足から発しています。

 ドイツも日本のように出生率低下に悩んでいます。『涙ぐましい努力をしても報われることのないドイツ〜託児所、育児金、子供手当て・・・でも出生率は上がらない』を読んで、日本よりも子育て支援が遥かに手厚いのに驚きました。例えば月額2万4000円の子ども手当が「0歳から19歳未満のすべての子供に適用される。しかも、子供が18歳以上になっても独立せず、大学へ行ったり、職業訓練中であったり、インターンや社会福祉ボランティアに従事していたりする場合は、25歳まで延長される」といった具合です。託児所不足も法律を作って本格的に手が付けられました。

 しかし、この程度の手厚さでは足りないのです。日本の現状など論外です。第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」で出生率を人口維持水準まで回復させているフランスやスウェーデンなど欧州諸国との違いを取り上げています。家族関係社会支出の現金支給・現物支給が対GDP比で、日本は3分の1しかありません。

 第378回「日本に続き中国も超特急で超高齢社会へ突入予定」で65歳以上の老年人口の15〜64歳の生産年齢人口に対する割合が4割を越し、5割も間近いと示しました。非婚化と少子化の勢いを止める必要があるならば手を打たねばなりません。ところが、今回の厚生労働白書のように無為無策で政府は時を過ごしてきました。


日本に続き中国も超特急で超高齢社会へ突入予定

 中国の「一人っ子政策」が終わりそうとの報道が目立ちます。しかし、既に超高齢社会へ入った日本と、中国は似た年齢構成で30年遅れて後を追っており、富む前に老いてしまうと恐れての政策転換は手遅れのようです。65歳以上の老年人口が総人口に占める割合「高齢化率」が14%を超えると高齢社会、21%超えなら超高齢社会と分類します。中国は2025年過ぎには高齢社会に、2035年過ぎに超高齢社会に入ると予測され、子供を増やすなら早期に方向転換するべきでした。また、先行する日本社会の老齢化も間もなく無為無策であってはならないレベルまで深刻化します。

 日中の老齢化カーブが比較しやすい老年人口指数の推移グラフを国連推計から作りました。老年人口の生産年齢人口(15〜64歳)に対する割合です。


 1995年に高齢社会、2007年に超高齢社会になった日本のカーブとそっくり並行して、中国の高齢化が進みます。女性が生涯に生む子の数、合計特殊出生率が2005年に1.26まで下がった日本は実質的に一人っ子政策をしていたようなものでした。また外国人が人口の2%もいない「移民拒絶国」ですから、国民の老齢化がストレートに反映されます。中国では不法入国者の報道が聞かれ始めましたが、数は知れています。

 財経新聞の《中国の一人っ子政策:2016年から撤廃も、急速に進む高齢化に対応》は「急速に進む高齢化に対応するため、一人っ子政策を撤廃することが政府の内部で検討されており、早ければ2016年から実行される」と伝えました。しかし、同時に「第6回人口調査では女性の合計特殊出生率が1.18」しかなく、この数字は不妊や独身などの女性を含まない過大なものだったとの指摘も紹介しています。人口統計の不備で高齢化が隠れている恐れがあります。

 子どもが多いアジアの大人口国、例えばインドネシアが高齢社会になるのは2045年ごろ、超高齢社会は2075年ごろです。巨大人口を賄う食糧供給の弱点を抱えて高齢化に突き進んでいる中国と、大きな差があります。《コラム:中国「二人っ子政策」は遅きに失する》など、海外メディアに政策転換の効力に懐疑的な論調が目立ちます。

 ところで、2050年には中国の老年人口指数は現在の日本並みの40%になってしまいます。いま農村部でゼロに等しい社会福祉制度は整備できているでしょうか。一方、2050年の日本、70%を超える状態も想像しにくいものがあります。是非とも指数50%に達するこの数年の間に、このまま進んで世界に対して競争力がある経済運営が出来るのか、国家の行く末を検討しなければなりません。

 1999年に書いた第73回「非婚化の先に見える多民族社会」を読み返して、21世紀に漠然と願望された出生率の本格回復はありませんし、拡大期待の国際結婚ブームも萎縮しています。海外移民導入を拒んだまま、極東のこじんまりした国にしてしまうのか、大局的な国家進路選択の時は迫っているように見えます。

 【参照】第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」
     インターネットで読み解く! 「中国」関連エントリー


祝イチロー4000本。目指せプロ世界最高安打数

 イチローが22年の短期間で日米4000安打達成です。今後まだまだ伸びる記録については日米にまたがっている点で前々から議論があります。いや、スローガンを変えたらいいのです。目指せ「プロ世界最高安打数」です。大リーグ記録のピート・ローズ4256本を超えた時点で「日米摩擦」が起こりかねないと心配する方がいるほどですが、大リーグ3000本まで278本のイチローなら当然やってしまうでしょう。

 MLB公式サイトの記事『Ichiro joins select group with 4,000th hit』も記録の議論に触れていて、ローズら2人以外にもマイナーリーグまで通算すると4000安打グループは増えると指摘します。有名な強打者ハンク・アーロン4095本など3人を挙げています。

 しかし、プロ野球選手の記録が整備されている日米でこれだけしか4000安打記録者はいないのです。ちまちました限定条件を付けずに、すっきりと世界最高安打数を目指せと主張します。『10年連続200安打、まだまだ夢は続くイチロー』で、10年連続200安打達成についてピート・ローズとの確執があったと紹介しました。相手は大リーグにこだわっているのですから、なおのこと細かなカテゴリー分けを排した世界一で勝負しましょう。

 ヤンキースの同僚たちがダッグアウトから全員出てきて、記録達成した1塁上のイチローをハグして祝福してくれたシーンには熱いものを感じました。ヤンキースに移籍してよかったなと思わせる瞬間でした。MLBサイト記事でキャプテンのジーターが「consistent」とう言葉を使ってイチローを讃えています。「首尾一貫」「信念がある」などの訳語がありますが、「誰にも負けないひたむき」の意味に解しておきましょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「イチロー」関連エントリー


生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力

 少子化社会対策白書のあまりの覇気の無さに驚き、国勢調査から生涯未婚率を予測し直して男35%、女27%にもなる結果を得ました。非正規雇用は増えるばかりで、若者の生活を不安定にさせている根源は政府施策です。『安倍政権が嫌いな雇用安定こそ少子化対策の核心』で指摘した通りです。生涯未婚率は人口学で50歳時点の未婚率と定められています。2010年国勢調査で20代前半だった世代が50歳に到達する25年後には、現在に倍する生涯未婚者であふれる事態になります。

 NHKの《少子化白書 晩婚・晩産化進む》は《生涯未婚という人の割合は、平成22年には、▽男性が20.14%、▽女性が10.61%で、いずれも過去最高に達し、「未婚化」とともに一生結婚するつもりはないとする「非婚化」も進んでいると指摘し》《内閣府は「若い世代は雇用が不安定で、所得が低い傾向にあり、こうした経済的理由から結婚に踏み切れない人が増えているのではないか」と分析》と伝えました。

 50歳に到達した世代ではなく、現在の若い世代がなる生涯未婚率を合理的に予測することができます。2010年国勢調査で男性の20代前半世代は未婚率94%でした。次の5年間で未婚率がどれほど減るか、年上の20代後半世代が2005年国勢調査からの5年間で21.7ポイント減らしている実績を採用します。そのあとの5年間は30代前半世代の実績24.1ポイントを、さらに50歳まで年上世代がした脱未婚実績を積み上げると合計58.6ポイントですから、現在の「94」から引き算して残る「35.4」が予測される生涯未婚率になります。男女別、世代別に同じ計算をした結果「生涯未婚率の世代別予測」をグラフにしました。


 2010年の生涯未婚率は増えたと言っても男20.14%、女10.61%に過ぎません。30代後半世代が50歳に届く10年後には男女共に倍増する勢いであると知れます。現在、20歳前後の若い世代が50歳になるころには、男35.4%、女27%前後にもなってしまいます。この予測方法は過去の世代の実績をもとにしています。実際には過去実績ほどに「脱未婚=結婚」が進まない可能性が高いはずです。もっと高い生涯未婚率が実現されると見るべきでしょう。なお、2011年にも同様の予測計算をしましたが、国勢調査速報版によるものでした。確定版の数字がかなり変わったと知り、計算し直しました。

 少子化社会対策白書は緊急に対策をと訴えつつ、具体的に何を進めるのかピンときません。第1部「少子化対策の現状と課題について」「第1章 少子化の現状」の最後に自らはっきり問題点を書いているではありませんか。

 『我が国は、欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じて家族政策全体の財政的な規模が小さいことが指摘されている。家族関係社会支出の対GDP比をみると、我が国は、0.96%(2009(平成21)年度)となっており、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べておよそ3分の1となっている』


 ここに添えられている合計特殊出生率の国際比較グラフも引用しました。人口維持に必要な出生率「2.1」に米英仏とスウェーデンが近づけているのに、2次大戦敗戦国の日独伊はそろって「1.4」前後と失格です。妙な自己責任主義では駄目です。人口を本当に維持したいなら、それなりに社会が面倒をみる、お金を掛けた強力な施策を打ち出すしかありません。女性手帳とか枝葉末節の議論をする暇があれば本筋の政策検討に移ってもらわねばなりません。

 【参照】インターネットで読み解く!「生涯未婚」関連エントリー
     第314回「非正規雇用にある男性の半分は生涯未婚か」 (2012/08/31)

安倍政権が嫌いな雇用安定こそ少子化対策の核心

 少子化対策を検討している政府の有識者会議が報告書をまとめたとの報道に唖然としました。結婚を増やすには正規雇用を増やして雇用を安定させるしかありません。安倍政権が狙う雇用流動化こそ少子化促進です。報告書が重視する結婚の後に来る妊娠・出産の支援、子育て支援は確かに必要ですが、まず多くの未婚者に結婚してもらわねば話になりません。この報告書は一番の基本について何も考えない欠陥品です。

 昨夏にリリースした第314回「非正規雇用にある男性の半分は生涯未婚か」で以下のグラフを「平成22年社会保障を支える世代に関する意識等調査」から引用しました。


 グラフにある非正規雇用40代男性の未婚率45.7%は、国勢調査で得られているデータを勘案すると実際には50%を軽く超えると考えられます。この世代が今後、結婚する可能性はとても低く、生涯未婚のままで終わりそうなのです。正規雇用40代男性の未婚率15.1%との差は歴然です。本当に少子化対策を考えるならば、非正規雇用が3分の1にも達した実情から出発すべきです。

 NHKの「少子化対策の報告書まとまる」はこう伝えました。《報告書によりますと、「わが国は、社会経済の根幹を揺るがしかねない『少子化危機』ともいうべき状況に直面している」として、「子育て支援」と「働き方改革」の強化、それに「結婚・妊娠・出産支援」の3本の矢で緊急対策を推進するとしています》

 話題になっていた女性手帳の配布など、少し事情に通じていれば少子化対策に効かないと分かります。《「働き方改革」では、企業に対して、役員や管理職への女性の登用を進め、その状況を開示するよう働きかけるほか、男性の子育て参加に向けて、長時間労働の抑制や多様な働き方の導入を促進するとしています》とか、非正規雇用が若い世代では2分の1にもなっている現状からは虚しい議論です。安倍政権は労働者を解雇しやすくし、労働市場の流動化を図ろうとしているのですから、有識者会議は背後から鉄砲を撃たれていると知るべきです。

 【参照】インターネットで読み解く!「生涯未婚」関連エントリー


ダルビッシュの秘密が動画に。大リーグで打てなくて当然、

 野球シーズンが始まって早々、驚異的に面白い動画が出ました。大リーグで完全試合まで行きかけたダルビッシュ、5種の球を投げているのに投球フォームが全く同じ。素晴らしい投球の秘密はこれだったんです。高速の硬式球に対抗するには打者も高速のバット回転が必要なので、どんな球が来るか、早めに見極めてバットを振り始めるのが打者の生理です。見極めをほぼ不可能にしている以上、打者は闇雲にバットを振りに行くしかなくなります。

 「何がすごいって、5球種を投げ分けているフォームとリリースポイント(ボールを離す場所)がほぼ同じなのです!」と紹介している「らばQ」の「全米が震撼…ダルビッシュの三振動画がありえないことになってると海外で話題に」に習って、ダルビッシュの5球種を合成したアニメーションGIFのリンクを貼っておきます。

ダルビッシュの投球

 2000年の第92回「新・日本人大リーガーへの科学的頌歌」で野球の高速現象を科学してあります。そこで「ホームベース手前でバウンドするようなフォークボールを好打者が空振りする例を数多く見るが、打者にとってフォークボールは直球と識別困難な非常に打ちづらい球であることが理解できる」「バットスイング開始からインパクトまでの時間は0.17〜0.2secは要する。したがって、36m/s(130Km/h)以上のスピードのボールであれば、投手板とホームベースの中間地点にボールが到達した時点でスイングを開始しなければならない」と整理しました。これを理解して上の動画を見ると、打者はノーチャンスであると確認できます。

 【参照インターネットで読み解く!「大リーグ」関連エントリー


年金制度欠陥と高齢化が中国財政破綻を呼ぶ

 先週、中国の60歳以上人口が2億人を突破、中国政府の債務残高は地方の隠れ借金に年金債務を入れるとGDPの90%にもと、気になる報道が相次ぎました。中国の経済成長を束縛する内在要因は根が深いと知れます。人口学は65歳以上人口の割合が7%以上の社会を高齢化社会、14%を上回った社会を高齢社会としています。東アジアで日本は既に24%と高齢社会に入り、韓国が2018年頃、中国は2025年頃に仲間入りします。問題はその時の社会の豊かさで、日本はGDP1人当り4万ドルあったのに、韓国は現在2万ドル余り、中国は6千ドルに過ぎません。


 人口が日本の10倍もある中国の老齢化を論じる際、日中それぞれの国内比率だけではイメージが湧かない面があります。絶対的な人口ボリュームが見えるように日中の高齢化推移を同じ縮尺のグラフにしました。既に緑色の65歳以上人口だけで日本総人口を上回っている上に、世紀半ばにかけて3億人を超す膨大な数に膨らみます。また、このグラフからも読み取れるように中国の生産年齢人口(15〜64歳)は今がピークで、2011年から減少に転じています。(人口出典:日本中国

 レコードチャイナの《「白髪の中国」へ、初ピーク迎えた中国の高齢者人口増=問題山積み―中国専門家》がこう報じました。「2013年、中国の高齢者人口は2億の大台を突破して2億200万人に達し、総人口の14.8%を占めるまでとなった。1950年代の『ベビーブーム』に生まれた人々がいま、最初の高齢者人口増のピークを形成している」「現在、高齢者人口は年平均800万人ずつ増加しており、2050年には4億3000万人に達する見通し。その時には、中国では3人に1人が60歳以上の高齢者となる計算だ」

 65歳以上人口ではなくて60歳以上を問題にしているのは、中国の定年退職が日本よりも早いからです。日本総研の『中国における少子高齢化とその社会経済への影響』は「定年とは、男性が60歳、ホワイトカラーの女性が55歳、ブルーカラーの女性が50歳(ただし勤続10年以上)であることを意味する」「退職とは、所定の年齢を満たし、または労災、病気で働く能力を完全に失った者が職場を退いて年金等の社会保障制度を享受することである」とします。

 実際の退職平均年齢は52歳前後との指摘もあり、退職して年金を得るべき層はグラフ緑部分の1.5倍から2倍にもなりかねません。実は、曲がりなりにも年金制度が整備されているのは都市の住民だけで、人口の3分の2もいる農業戸籍の地方住民には試行が始まった段階です。グラフ緑部分には年金保険の保障がなく、福祉政策で手当すべき高齢者が多数含まれます。

 現在、中国の年金積立総額はGDPの2%程度しかなく、日本の25%などと比べて大きく見劣りします。ジェトロ・アジア経済研究所の『中国都市部における公的年金制度改革と所得移転』によると経緯はこうです。「1995年と1997年に中国都市部の企業部門について賦課方式から部分積立方式に移行する等の抜本的な年金改革が実施された」。しかし、部分積立方式に移行するにあたり、従来の積立金はゼロだったので2000年GDPの75%に当たる年金純債務が発生したが、「政府はその存在自体を認識しておらず、その処理について具体的な方策も打ち出さなかった」

 政府債務がGDPの90%にもなると伝えた日経新聞の《中国、地方の「隠れ借金」拡大 GDP比50〜60%》の背景はこれだったのです。公表ベースの政府債務残高はGDP15%と財政健全ですが《中国の招商証券や華泰証券が推計している地方政府の「隠れ借金」は約15兆元。項懐誠元財政相は「20兆元以上」という見通しを示す。これを反映させると、中国の政府債務はGDP比で50〜60%に跳ね上がる。このほか、旧鉄道省の鉄道建設債務や年金債務などの公的な借り入れもある。「広義の負債まで入れると政府債務は90%を超える」(華泰証券)》

 ロイターは昨年、《中国も年金危機、高齢化で「時限爆弾」》で「中国国務院(内閣に相当)は年金基金の積み立て不足解決の1つの方策として、定年退職年齢の引き上げを検討している。国民受けは悪い政策だが、それ以外に選択の余地はほとんどないだろう」と伝えました。

 この超不人気政策を高齢社会に入るまでに実現させるのは習近平政権しかあり得ません。しかし、上記『中国における少子高齢化とその社会経済への影響』は「反対する意見も根強くある。大卒者の就職難が社会問題化している今、各レベルの政府機関、国有企業、大学・研究所など労働条件の良い所に定年を延ばす人が堆積すると、若者の行く道が狭まり、それに対する不満が高まる。そもそも定年の引き上げを支持する者は特権を握る社会的強者が多い。地位が高く、資源の配分で有利な立場にいる人は、その利権を手放したくないだけだとの批判もある」と厳しい内情を指摘しています。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


WEBRONZAに「東アジアの国際結婚ブームは去ってしまうのか」

 先日のブログエントリーを東アジア規模に拡張したストーリー《東アジアの国際結婚ブームは去ってしまうのか》を、WEBRONZAで公開しました。「21世紀に入って国籍の壁など吹き飛ぶのではないか、とも思わせた東アジアの国際結婚ブームが急速にしぼみつつある。最新2011年統計では、2005年に結婚件数の13.6%もが国際結婚だった韓国が9.0%に、2006年に6.1%だった日本が3.9%まで落ちた・・・」

 前半で日本と韓国、さらに「嫁不足」を起こしている女性自立の構図から、男女比が極度に男に偏っている中国の問題へと進みます。後半は有料会員でないと読めませんが、参照しているリンクにある私の記事リストに加え、人民網『男女比不均衡、新たな人口移動問題を誘発 中国』、レコードチャイナ『ミャンマーで女性の人身売買が横行、8割が嫁不足の中国へ売られる―ミャンマー紙』を素材にしています。興味がある方は検索してください。


急速に縮む国際結婚の謎判明:経済成長率に依存

 グローバル化で年間4万5千組近くに達していた日本人の国際結婚が、2011年には2万5千組台にまで落ち込みました。実は、フィリピンなどからの興行ビザ規制の要因を除けば、経済成長率に依存していると判明しました。そして、この流れはインターネット普及による国際的な婚活、婚姻相手探し方の自由化から発していました。国際結婚がどうして急速に縮小しているのか謎が解けたのですから、マイナス基調の経済成長率が反転する時が訪れれば急回復する可能性があると考えられます。人口動態調査の統計表などから過去20年間をグラフ化したので、ご覧下さい。


 夫婦どちらかが日本人の国際結婚数は2011年には1990年代始めレベルまで下がっています。その1990年代に何があったのか――このグラフで一番の注目は、消費税増税のあおりでマイナス成長に落ち込んだ1998年からの動きです。実質経済成長率の動きを1年遅れて国際結婚数が追いかけていくのが明瞭です。2005年のやや停滞にもかかわらず結婚数が伸びたのは、このころフィリピン、中国、ロシア、インドネシアから年間13万人前後の若い女性が興行ビザで入国、各地の夜の街で男女の接触が増えたからです。アメリカ国務省の人身売買報告書(2004年)で非難されてからビザ厳格化が進んだ様は、フィリピン人との国際結婚が激減していくグラフ下部で歴然としています。

 タレントではない女性を排除する興行ビザ規制の影響が去っても下がり続ける国際結婚数です。最初の傾向に戻って実質経済成長率の動きと連動しているのです。リーマンショック後の2010年には、あまりに大きかった落ち込みの反動で数字だけはプラスに戻しましたが、庶民の懐感覚はマイナスに振れたままです。このグラフで見ると、実数が大きい中国人との国際結婚数の推移が、1年遅れで経済成長率の動きをよく追いかけているのが読みとれます。2001、2002年の経済停滞がきれいに反映されています。

 アジア諸国からの花嫁は1980年代から話題になりました。当時は嫁不足に泣く地方、過疎地の男性に様々なコネで結婚相手が紹介がされました。しかし、1998年からの動きは違います。1998年はインターネット普及率が11%、2001年には60%にも達するのです。都市の男性もネット上に積み上がっている情報を自由に集めて国際結婚戦略を立てられるようになりました。もちろん、企業の海外進出などで生身の人間同士の接触機会も膨らみました。留学などで来日する外国人も増えました。

 インターネットが実質的に立ち上がり、「goo」と「infoseek」でインターネット検索が利用できるようになった1997年に私のコラム連載は始まりました。その「インターネットで読み解く!」第1回「空前の生涯独身時代」で《結婚したくてできない男性に、国際結婚の動きがある。「夫婦の国籍別にみた婚姻件数の年次推移」という法務省データよると、10年ほど前から国際結婚の数が増え始め、20年前の4倍以上、年間27,000件にも達した》と触れています。その後で起きたストーリーを、この記事で分析したことになります。

 【参照】インターネットで読み解く! 人口・歴史分野
     過熱とも見える東アジアの国際結婚(2006)
     第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」(2006)
     第213回「中国との国際結婚は嫁日照りから次の段階へ」(2010)
     第233回「30代の『家離れせず・出来ず』は相当に深刻」(2010)

 2/22 WEBRONZAに「東アジアの国際結婚ブームは去ってしまうのか」


夫婦3組に1組は離婚時代定着。米国は2に1

 人口動態の2012年推計が発表されて東日本大震災で生まれた離婚率の特異な減少が2年連続で維持されました。最近の推移を離婚対婚姻の比グラフでみると、夫婦3組に1組は離婚する時代が定着したとも言えます。米国では2組に1組の離婚がずっと続いていますから、日本の離婚はやがて米国並みに増えるとの予測は当たらなかったことになります。しかし、1980年代では5組に1組の離婚だったのですから離婚夫婦が珍しくなくなったのは当然です。

 厚生労働省の2012年推計によると、離婚は237000件(2011年235719件)、人口千人当たり離婚率1.88(同1.87)でした。婚姻率も5.3(同5.2)と、ほとんど横這いです。


 昨年の「離婚率が特異な減少、震災で家庭防衛意識か」の際には1995年の阪神淡路大震災と比べていませんでしたから、上のグラフを作ってみました。東日本大震災の影響を知ってから見ると、1990年から急増していた離婚率が1995〜96年と鈍り、踊り場状態になっていたと知れます。大津波や福島原発事故による家族崩壊の危機はありませんでしたから、阪神大震災が離婚に及ぼした影響は限られていたのでしょう。

 日本の状況が世界と比べてどうなっているかは、「図録▽主要国の離婚率推移(1947年〜)」を参照してください。これでもロシアや韓国のように急増や激減を見せる国と比べればなだらかな変動です。このページに収録されている米国の離婚対婚姻の比グラフは、1975年頃から「0.5」前後で推移しています。比較できる日本のグラフを作りました。


 分母に婚姻が入っているので離婚・婚姻件数両者の変動が効いてきます。興味深いのは東日本大震災の減少が、婚姻も減ったため目立たず、むしろ2008年リーマンショックの影響がくっきりしています。阪神大震災による「伸び停滞」がもっと明解です。リーマンショックでも阪神大震災でも婚姻件数は落ちていなかったと推測されます。東日本大震災では婚姻も減った点が特異だったようです。

 このグラフを見る限り離婚対婚姻の比は「0.35」あたりに収束し、夫婦3組に1組離婚時代と言えそうです。第175回「続・離婚減少は定着、熟年離婚の嵐吹かず」に掲載のグラフで紹介しているように、近年の離婚率は失業率とリンクする傾向があります。歪んだ円高が是正されれば景気が上向いて失業率が下がり、離婚率ももう少し落ちるかも知れません。

 【参照】「インターネットで読み解く!」「人口・歴史」


ルーツは武田武士団:氷解した会津藩の特別さ

 大河ドラマに最近はあまり興味を持ちませんが、ブログ「武田武士団を基盤とした会津武士団の誕生」を読んで15年来の謎が氷解する思いがしました。明治維新の東北地方で会津藩の特別さは際立っているからです。幕末動乱期の京都守護職として活躍、孝明天皇から「会津藩を頼りとしている」旨の「御宸翰(ごしんかん)」を賜り、それにもかかわらず維新戦争では朝敵になって、白虎隊などで知られる壮絶な会津戦争を戦い抜いて果てました。

 明治維新の原動力になった薩長土肥など西国諸藩に比べて、ひとからげに守旧派とされる東北諸藩で、会津藩は全く違うと感じたのは、15年前に「インターネットで読み解く!」第54回「明治維新(下)循環社会から膨張社会へ」を書いたからです。そこで会津戦争の砲撃戦について、リンク先が無くなっている引用資料を含めてこう書いています。


 「城にたてこもった会津兵の守備は固く降伏させる事はできなかった。
倒幕軍も包囲したものの決定的な攻城兵器を持たず勝負の決着はなかなか
つかないと見られていた。八月二六日、会津城の近くの小高い丘、小田山
を占領したことにより佐賀藩多久兵のアームストロング砲を山上に運び上
げ会津城内へ砲撃を開始した」 

 「アームストロング砲の破裂弾がタイムヒューズ付きで着弾と同時の破
裂ではなかった」「弾丸は着弾後、数分間経過して破裂し、現在のように
着弾前、着弾、着弾後に爆発するように細かく操作することができなかっ
た。砲弾は発射の時、砲弾の導火信管に火がつくと飛翔中も燃え続け着弾
後、十分な時間が経ってから破裂するようになっていた」

 「打ち込まれた砲弾を水に濡らした厚布で砲弾の導火線を消して爆発を
防いでいた。山川大蔵夫人も城内に打ち込まれた砲弾を処理中に砲弾が破
裂し戦死している。籠城中の城内でのアームストロング砲弾の処理は婦女
子の役目だったようで、通常は打ち込まれた砲弾を爆発しても被害が及ば
ないところに運ぶ余裕があることを示している」 

 熱く焼けて、いつ爆発するか分からない砲弾を、塗れ布で包んで運ぶ仕
事。当時の大砲の多くは砲弾を前ごめしており、その際に未燃焼の火薬が
暴発して砲手の命を奪うことがたびたびあった。新式のアームストロング
砲は砲弾を後ろからこめる形式に改良されていたのに、旧式の大砲を扱う
砲手と変わらない勇気と判断力を、保守的とされている、会津の女性達が
発揮したであろうことに、少なからず感動した。


 最初のブログに戻ると、会津松平家の始祖保科正之は二代将軍秀忠の庶子で「武田信玄の次女見性院に育てられ、その伝手で信濃高遠城主保科正光の養子となった」「保科正之は会津入りに際して高遠時代の家臣を重用し高遠からの人材流出をもたらした一方で、会津が与えられる直前に藩主であった山形藩や保科氏入部以前の会津藩主であった加藤氏の家臣団の採用はほとんど行わなかったという。正之が会津入りしたときの知行取り以上の家臣は四二七名で、そのうち前者の山形藩時代の鳥居氏旧臣の家臣は三〇名、後者の加藤氏旧臣は三一名と、旧武田遺臣の信州武士が会津武士団の中核を占めた」となっています。

 豊かな西国諸藩に東北を代表して対峙できた会津藩は、武田信玄が育て、戦国時代に特別な存在として知られた武田武士団にルーツを持っていたのでした。徳川時代は停滞の時代でしたから二百余年にわたって気性・気質を維持することは可能だったでしょう。『八重の桜』。城内に撃ち込まれ爆発寸前の砲弾を捨てに走った女性達の気丈さに改めて思いをいたします。


非正規雇用にある男性の半分は生涯未婚か

 厚生労働省が30日に発表した「平成22年社会保障を支える世代に関する意識等調査」を詳しく分析すると、非正規雇用の形態にある男性の半数は生涯未婚に終わる可能性が高いと読みとれます。収入が十分でないから結婚できないと俗に言われてきましたが、実態は想像以上に深刻であり、若い世代の半分は非正規雇用の職にしか就けない現状では少子非婚化の流れが加速しそうです。


 調査報告書は「就業状況別に婚姻の状況をみると、男性は正規就業者の方が未婚の割合が低く、女性は逆に正規就業者の方が未婚の割合が高くなっている。特に30 歳代は男性の正規就業者の未婚割合が30.7%であるのに対して、非正規就業者は75.6%となっており」と30代に注目しています。しかし、これから動く30代に比べ、40代の未婚率、非正規45.7%と正規15.1%の方がもっとショッキングです。2010年国勢調査を分析した第267回「30前後世代に明確な結婚回帰:国勢調査を分析」で計算しているように、40代の10年間で未婚率は2.6ポイントしか下がりません。45.7%という数字は、50歳時点と定義されている生涯未婚率に限りなく近いのです。

 さらに、40代男性全体の未婚率が19.8%しかありません。国勢調査の未婚率は40〜44歳が27.9%、45〜49歳が21.5%であり平均して25%近くあるべきです。標本の抽出が適正だったとすると、回答を回収できなかった部分に多数の未婚者がいると考えられます。この調査の未婚率は現実よりもかなり低く出ているとみるべきで、45.7%が実は50%を超えている実情を推測させます。なお、グラフで50〜64歳の未婚率が、正規、非正規ともあまり差がないのは、近年の非正規雇用拡大がこの世代までは及んでいないためと考えられます。

 【参照】インターネットで読み解く!「生涯未婚」関連エントリー


なでしこサッカーが米国と『両雄相並んだ』日

 五輪女子サッカー決勝の光景は今まで見たことがない、強者同士がぶつかり合う美しさでした。《米メディアがなでしこらを称賛「聖地で美しいサッカーが行われた記念すべき夜」》(soccer-king.jp)が「『ESPN』は世界女王決定戦について、『ウェンブリースタジアムには、オリンピックの女子サッカー史上最多となる80,203人の大観衆が詰めかけた。日本とアメリカはどちらも攻守の切り替えが素早く、一瞬たりとも目が離せないサッカーを繰り広げ、改めて両チームがトップレベルのチームであることを証明してみせた』と報道」と伝えました。

 1年前の第270回「女子サッカーW杯優勝:敵を知る米国も防げず」で描いた神懸かりでなく、五輪ブラジル戦・フランス戦での堪え忍んで勝つサッカーでもない、最強米国と互角にした秘密を、キャプテン宮間選手の半年前のインタビューから覗けます。《宮間あやサマを「ネ申」だと思う理由》(Sam-Home Sam-Camp WEBマスターのお気に入り!)が収録しています。

 質問「アメリカの選手たちはフィジカルが強くコンタクトプレーでは日本はどうしても不利になる。ロンドン五輪ではアメリカとの再戦も予想されます。再び勝利を収めるためには、何が必要だと思いますか?」に対し宮間選手はこう答えます。「日本とアメリカとの間にあるのは『差』ではなく『違い』だという発想が大事になるでしょう。たとえばフィジカルを差ととらえてしまうと、アメリカのようにフィジカルの強いチームを目指さなければならない。これは私の持論ですが、フィジカルの強さは『決定的な勝利の要因にはならない』けれども、フィジカルの弱さが『負ける要因にはなる』ので、ある程度、フィジカルのトレーニングは必要です。だけど、それによって(差を埋めることで)勝つのではなく、『違う』点で勝負をすることが大事だと思っています」

 W杯での奇跡的勝利が、米国選手には「悪夢」であり雪辱に燃えていたことを《リベンジにかけるアメリカ選手の心境》(MikSの浅横日記)が『ワシントン・ポスト』紙からまとめています。

 ワンバック選手は「あんなつらい敗北の後の数日間は、朝、目が覚めると、『あれは現実だったのか?』と自分に向かって考えるようになるものです」と語っているそうです。「確かに、本当に起こったのだ、そしてあの試合の細部が――色々なことがあったこのオリンピックのトーナメントの最中でも――アメリカ選手に付きまとっていたのだ。ワンバックは当初、あの試合の悪夢を何度も見たことを初めて打ち明けた。あのきわどかった準決勝のカナダ戦の勝利の直後、MFのカーリ・ロイド(Carli Lloyd)は、まぢかに迫る決戦を念頭に『復讐(revenge)』や『つぐない(redemption)』という言葉を使った」

 この米国相手の決勝は、フランス戦等を考えると非常に厳しい試練になるはずだったのに、《澤「チャンスがあれば、やれるところまでやりたい」=帰国後、監督&選手コメント》(スポーツナビ)で澤選手が胸を張って語っています。「(決勝での失点は)早い時間帯での失点だったので、そこは課題として残りましたけど、なでしことしてやれることはできていたので、そこは成長として感じていました。五輪の中では一番いい試合ができたんじゃないかと思います」

 佐々木監督には、今回のハイレベル日米決戦の彼方が見えています。「(ここ数年で各国の女子サッカーが進化したことについて)デンマークとかノルウェーとか、僕が監督に就任する前は、前に蹴ってフィジカルで勝負するスタイルでベスト4に勝ち上がっていた。それが北京(五輪)での、われわれのゲームがセンセーショナルだったと思います」「ああいうフィジカル(能力)の高い選手たちが、本当にスキルを重んじるようになったら、今度はなでしことしては、身体能力のある選手が加わる中で、スキルを重んじながら、なでしこらしいサッカーを構築していくという、向こうが上がれば、こっちも上がるという環境の中で、女子サッカーもスペクタクルな男子のようなサッカーになっていくというのは間違いないと思います」

 【参照】インターネットで読み解く!《文化・スポーツ》


生涯未婚率2割に驚くのは愚:内外もっと高率に

 読売新聞の「生涯未婚の男性、2割を突破…30年で8倍」が連休谷間のニュースとして話題になっています。生涯未婚率は人口学の約束から50歳時点で計算しています。私が過去の国勢調査トレンドから予測した結果では、10年後の生涯未婚率は「男性32%、女性20%」にもなってしまうのです。「男性2割、女性1割」の現状に比べ衝撃度は格段に高くなります。

 実はアジア各国に広がる現象です。第276回「アジア工業国の非婚化は日本以上に進んでいる」で「2004年の合計出生率は日本が1.29と下がって騒いでいるのに、韓国1.16、台湾1.18、シンガポール1.24、香港0.93とアジア工業国(地域)は一段と低い状況です。欧米と違って婚外子があまりいないアジアですから、この数字は非婚化の進展を表しています」と指摘した通りです。出生率が早くから落ちている日本は50歳の生涯未婚率に数字として現れた訳で、アジア諸国も近い将来、日本以上に生涯未婚率が上がってしまうと考えられます。

 英エコノミスト誌は「多くのアジア人は結婚を先送りしているのではない。一生結婚しないのだ」「40〜44歳の女性の未婚率は、タイのバンコクでは20%、東京では21%に上る。シンガポールでは、この年齢層の大卒者は27%が結婚していない」「アジアで起きている結婚からの逃避は、現代の女性が大きな自由を享受できるようになった結果であり、それ自体は祝福すべきことだ」と指摘しています。しかし、結婚できない男性を大量に生み出し、非常な速さで高齢化社会に突き進みます。

 先週は中国関連でも注目すべきニュースを見ました。サーチナの《超少子化危機に学者「第2子認めるだけでは全然足りない」=中国》は「合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子の平均)が1.5以下に低下したことで、この20年で『ある世代の人口が前世代より30%減少する』状況が発生した」「上海市ではすでに合計特殊出生率が世界最低の0.7に達しており『このまま出生率が下がり続ければ、高齢化が最も深刻な国となり、国際競争で劣勢に立たされる』と警鐘を鳴らした」と報じています。

 上海のような中国大都市部では、「結婚しない派」あるいは「結婚出来ない派」が主流になりつつあるのかも知れません。「男性は家とクルマが無ければ結婚できない」というハードルが加われば、日本国内だって結婚は激減しますから。

 【参照】インターネットで読み解く!「生涯未婚」関連エントリー


日本の世界人口シェア、江戸中期3.9%が最高

 世界人口が70億人に達します。《「70億人目」認定、31日生まれ全員に 国連人口基金》(朝日新聞)で「70億人目の赤ちゃんたち」認定証がもらえると伝えられるなど、お祝いムードです。人口減少に転じてしまったに日本はこれから影が薄くなっていく一方でしょうが、日本人口の世界人口に占めるシェアはいつが最高だったのかと疑問が湧いて調べてみました。結論は江戸中期3.9%です。

 「図録▽人口の超長期推移(縄文時代から2100年まで)」(社会実情データ図録)で描かれた日本人口の推移グラフを、「70億人目前、人類はいつからどのように増加してきたのか」(GIGAZINE)の世界人口推移グラフで割り算してみようと考えました。全く違う用途で描かれたモノですから、年代もぴたりとは合いません。しかし、1900年以前は人口推計自体が幅がありますから大きく誤ることはないでしょう。「国勢調査」やウィキペディアの「世界人口」からも欠けた所を補いました。



 西暦元年のころ、日本は弥生時代推計59万人、世界は3億人からスタートしたのが、上の一覧とグラフです。西にローマ帝国、東は漢王朝の時代ですから本当に比べものにならないシェア0.2%、ちっぽけな存在でした。それから1200年、律令制国家から鎌倉時代の684万人への成長は、世界人口の伸びを大きく上回って進み、シェア1.5%。そして江戸時代に入った初期は1227万人なのに、八代将軍吉宗のころに3000万人台に達します。シェア3.9%のピークです。その後、幕末まで人口はほぼ横這いで推移するのが江戸期の特徴で、倍増する世界人口に置いて行かれます。明治維新が起きて富国強兵策に転じて以降は、人口も急増しました。しかし、戦後ベビーブーム期の1950年、シェア3.3%でも江戸中期に及びません。現在は人口1億3千万人の手前で頭打ちになっており、シェア1.9%。2050年の推計では1億を割って9515万人、世界人口の1%にまで下がってしまいます。

 70億人時代を迎えて出された「世界人口白書2011」は、色々な資源が人口増に追い付いていかない将来の大変さを考えさせる記述で満ちています。日本の人口減は国内市場規模や活力の低下には響きますが、急増する途上国に席を空けてあげる意味では悪いことではありません。現在でも欧州では8230万人のドイツを除き、6千万人台の英国、フランス、イタリアは世界人口シェア1%を切っています。

 【参照】インターネットで読み解く!「人口・歴史」エントリー一覧


30代の再婚熱が高まっている:推移グラフ作成

 このところ個人的にも再婚した人と出会う頻度が増えています。ネットを探しても手頃な説明データが見あたらなかったので、国立社会保障・人口問題研究所の「表6−6 性,年齢(5歳階級)別再婚率:1930〜2009年」を使い、世代別の再婚率推移グラフにしました。再婚率はその世代人口1000人に対する件数ですから、男女ともに5前後もある30代では毎年200人に1人、10年間も継続すれば20人に1人にもなります。若くて再婚した人に出合う機会が多いわけです。





 再婚率トップは夫の35〜39歳世代「4.88」、妻の30〜34歳世代「5.22」。2位が別の30代世代であり、30代に次ぐのは男性側が40〜44歳世代、女性側は25〜29歳世代になる点も違います。子どもが作りたくて再婚する女性は早めに、男性側はもう少し遅めでもいいと考えているのでしょう。2009年の数字で比べると男性40〜44歳世代の再婚率「3.77」は同世代の初婚率「4.66」に迫る数字です。また、2000年以降、40代後半、50代でも再婚志向が立ち上がっており、特に男性側にはっきりと現れています。

 【参照】インターネットで読み解く!「結婚」関連エントリー


アジア工業国の非婚化は日本以上に進んでいる

 8月下旬、英エコノミスト誌からの記事「激変するアジア社会:結婚しない女性たち」を見て、非婚化傾向を追ってきた立場でフォローしようと思いました。2004年の合計出生率は日本が1.29と下がって騒いでいるのに、韓国1.16、台湾1.18、シンガポール1.24、香港0.93とアジア工業国(地域)は一段と低い状況です。欧米と違って婚外子があまりいないアジアですから、この数字は非婚化の進展を表しています。人口を維持するには2.1が必要です。

 JICAの「2.主要国の少子高齢化と経済成長」に「合計出生率の推移(実績と予測)」があるので引用します。1960年代に既に「2」台に落ちていた日本に比べて、他の諸国は高い出生率から1970年末、一気に「2」台に突入し、21世紀に入って日本を下回っていくのが見えます。



 英エコノミスト誌は「多くのアジア人は結婚を先送りしているのではない。一生結婚しないのだ。日本では、30代前半の女性の3分の1近くが未婚で、恐らく、その半数は今後も結婚しないだろう。台湾では、30代後半の女性の5分の1以上が未婚で、その大部分が一生独身だ」「さらに未婚率が際立っている場所もある。40〜44歳の女性の未婚率は、タイのバンコクでは20%、東京では21%に上る。シンガポールでは、この年齢層の大卒者は27%が結婚していない」「アジアで起きている結婚からの逃避は、現代の女性が大きな自由を享受できるようになった結果であり、それ自体は祝福すべきことだ」と指摘します。しかし、結婚できない男性を大量に生み出し、非常な速さで高齢化社会に突き進みます。(参照:日本の生涯未婚率最新見通し

 これに関して2008年に日大人口研が国際会議を開き、「アジアの低出生をテーマに国際会議 日大人口研、WHO、 国際人口学会」と題したドキュメントを残しています。「超低出生国というのは、合計特殊出生率が1.3以下と極めて低いという状態にある国のこと。この状態が続くと1世代(約30年)後には、人口が35%から40%減少するとされている」とし、アジア工業国は軒並みこれに該当します。

 中国も経済発展が著しい地域では出生率低下が進んでいます。「上海に隣接する江蘇省の2000年の合計特殊出生率(TFR、 1人の女性が生涯に産む平均子ども数の推計値)は1.0。中国全体の1.5よりかなり低い。ワン氏はこの理由として、グローバル化による経済発展が著しいことや、1979年から始まった『一人っ子政策』を、同省は最も厳格に遂行していることなどを挙げた」

 アジア工業国での出生率低下について「オーストラリア国立大学のピーター・マクドナルド教授は『結婚している割合が低いこと、子どもに掛かる直接費用が高いこと、女性の間に家族よリキャリアを追求しようという意識が強いこと』があると指摘した」。また「東アジアは家族を大事にするという価値観がある。特に男児の場合は『成功主義』が影響しており、子どもの成功が親の社会的評価につながることから、教育に多くを投資しているとした。その結果として『数』より『質』ということになり、出生率の低下につながる」「世界の金融危機のような不確定な要素があると、夫婦は子どもをつくらないだろうとし、東アジアの出生の回復は困難との見通しを述べた」

 子どもへの投資が日本でも深刻な負担になっています。生まれてから自立するまでの歳が「1984年は24歳だった。ところが高学歴化やニート・フリーターの増加などにより2004年には26歳に上昇した」「この期間のコスト(消費が所得を上回るため家族でサポートする分)を働き盛りの30〜49歳の平均年間労働所得から計算すると、約13年間分の給与が必要ということになる」

 出生率低下が進んで人口増加が早く終わってしまうと、社会が富む前に高齢化してしまうことになります。みずほ総研論集2008年弦罎「東アジアにおける高齢化の進展と政策的課題」に、15〜64歳の生産年齢人口がそれ以外の世代の2倍以上いる「人口ボーナス期」の終了時に、どれくらいの1人当たりGDPになっているか一覧表があったので引用します。アジア工業国は2万ドル以上の高水準ですが、人口の大きい中国は5千ドル台に止まります。タイ、インドネシアなども厳しい水準です。



 【参照】インターネットで読み解く!「結婚」関連エントリー


女子サッカーW杯優勝:敵を知る米国も防げず

 女子サッカーワールドカップ決勝、日本時間で夜明けの勝利に涙の場面があまりなかったのが印象的でした。2度の失点をぎりぎりで追いついた後、PK戦に入る前の円陣で、なでしこジャパンの選手とスタッフが笑顔だったのを見て妙な安堵感を覚えました。佐々木監督は日頃のミーティングからネタを用意して選手を笑わせるのが常とどこかで読みました。表情がひきつっていた米国選手との差は歴然でした。米国1人目で宙に飛んだゴールキーパー海堀選手が残した右足でボールをセーブした瞬間、勝負あったと思えました。

 試合開始直後から米国選手の動きは機敏かつパワフルと圧倒的で、逆にこんなハイテンション状態が最後まで続くはずがないと思いつつも、メンタリティの高さに驚かされていました。思い起こしたのが14日付ニューヨークタイムズの記事《Japanese Team Comes of Age, and Lifts a Country》でした。

 米国ゴールキーパーのソロ選手による、こんなコメントを収録していました。なでしこジャパンの「彼女たちは試合そのものより、もっと大きくて意味がある何かのためにプレーしている。そんな大きな感情に突き動かされている相手に対抗するのは難しい」

 東日本大震災を背景にした日本チームの心情について深く理解しているがゆえに、米国チームの監督は徹底的に先手を打って叩く戦術に出たのだと思います。しかし、それでも諦めさせられなかったのです。そこまで敵を知る米国も防ぎきれなかったのが、この決勝の本質でしょう。

 【追加エピソード】毎日新聞の《なでしこ世界一:澤、PKは「10番」だった》がPK戦前の内情を伝えてほほえましく、面白い。重責の5番を蹴るものと思いこんでいたのですが「『PKは苦手でけりたくない』という澤は、順番を決めようとする佐々木監督に『最後にしてください』と頼んだという」「澤はGK海堀より後の『10番』に。周囲からは『ええっ』『澤さん、ずるい』などと声が上がったが、佐々木監督は『さっきお仕事をしてくれたから』と延長後半の澤の同点ゴールを理由に順番を確定。笑いが起きたという」


30前後世代に明確な結婚回帰:国勢調査を分析

 2010年国勢調査の抽出速報が利用できるようになり、独自に考え出した手法で分析してみると、非婚化・晩婚化の傾向が言われる中で意外にも30歳前後の若い世代で結婚率が強く回復していました。生涯未婚率はなお高まる見込みではありますが、天井知らずに上がっていく恐れは薄らぎました。現在20歳前後の世代でも男性で32%、女性は23%前後で止まる見込みです。

 【注】このエントリーの計算は国勢調査速報版によるものでした。確定版はかなり数字が変わっており、《生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力》でやり直しているので、是非ご参照ください。

 国勢調査は5年ごとで、5歳の年齢階級別に婚姻関係の数字が出ます。5年前の調査で「40〜44歳」の世代は、今度の調査では「45〜49歳」のところに現れます。したがって過去の国勢調査結果を並べると、同一世代の行動を5年間隔でモニターできるのです。下に未婚率に焦点を当てて集計した表を掲げます。5年間で未婚率がどれくらい下がったかを計算し「脱未婚ポイント」と名付けています。一部に赤字がありマイナスを表していますが、速報が百分の1の抽出集計結果であるための誤差で、ゼロとして処理します。



 一番の注目は30〜34歳の世代が25〜29歳からの5年間に出した脱未婚ポイントです。該当する水色のセルを右下方向に見ていくと、現役世代、5歳上の世代、さらに5歳上……と過去に出来た傾向と今回の違いが読みとれます。男性では30歳をまたいだ脱未婚、すなわち結婚する率はずるずると落ち込む一方でしたが、最新5年間は24.9%でその前に比べ2.6ポイントもアップしました。女性では極めてゆっくりと増える傾向でしたが、大幅3.7ポイント増加の25.7%と、こちらも流れが変わりました。水色の一つ上のセル列は25〜29歳世代になっていて、男女とも従来傾向とは違う反転増加や下げ止まりの変化が読みとれます。

 生涯未婚率は人口学で50歳時点と定められています。今の若い世代がどうなるか、この5年間に年上世代が示した脱未婚ポイントが将来になると仮定して予測しました。右の黄色セルに一覧があり、男性32%、女性23%くらいで頭打ちになる点は、前回調査時に同じ予測をした第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」のグラフがどこまで上がるか判らない勢いだったのと大きく異なります。

 結婚・婚姻の回復傾向を裏付ける社会調査に、国立社会保障・人口問題研究所の「第13回結婚と出産に関する全国調査・独身者調査」があります。様々な要因について調べていますが、端的な傾向を示すグラフをひとつ引用します。「ある程度の年齢までには結婚するつもり」と答えた結婚意思を持つ未婚者が調査のたびに減り続けていたのに、2005年にはっきり持ち直したのです。



 婚姻件数の実際の変動はどうなっているのか、人口動態統計で2000年以降を調べました。2010年はまだ推計値です。国勢調査で見える基底部からの指向変化に比べると表面的な変動になりますが、見ておきましょう。

  2000	798,138
  2001	799,999
  2002	757,331
  2003	740,191
  2004	720,417
  2005	714,265
  2006	730,971
  2007	719,822
  2008	726,106
  2009	707,734
  2010	706,000

 2005年まで減り続けているのに、2006年と2008年には確かに回復しています。あの年に何があったか、最近の事でも忘れがちです。こういう場合は電通の「広告景気年表」が一番です。2006年は「堅調な輸出、旺盛な設備投資、底堅い個人消費を背景に景気回復基調」でしたが、2008年は「アメリカ発の金融不安による世界経済の減速を背景に景気が悪化」です。むしろテレビの高視聴率番組を挙げた方が記憶が蘇りそうです。2006年はトリノ冬季五輪、ワールド・ベースボール・クラシック、サッカーのワールドカップドイツ大会、2008年はNHK大河ドラマ「篤姫」に北京オリンピックです。


男性の生涯独身傾向が加速:国勢調査抽出速報

 29日午後に公表された2010年国勢調査の抽出速報集計結果を見て、男性の生涯独身傾向が加速された点を指摘しておきます。人口学では50歳での未婚割合を生涯未婚率としていて、国勢調査では50〜54歳の未婚割合が該当します。男性は2005年の14%が17.2%に急増、女性は2005年の6.2%が7.8%に増えています。

 前回2005年国勢調査の集計結果をもとに、過去の独身増加傾向が続くと仮定し推計した第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」を公表しています。そこでは5年後の生涯未婚率予測は男性16.7%、女性7.8%でした。今回の抽出速報集計結果は女性ではぴたりでしたが、男性は0.5ポイントも大きく、過去の傾向よりさらに独身化傾向が加速しているのは間違いありません。ちなみに男性の生涯未婚率は10年前で10.3%、20年前で4.4%でした。

 このほか今回の集計結果で注目されるのは、一人暮らし世帯が最も多い家族類型になった点です。単独世帯が31.2%を占めて、夫婦と子どもからなる世帯の28.7%を初めて上回りました。離婚の増加や高齢になって死別というケースももちろん多いのですが、生涯独身傾向の強さも大きな要因になっています。速報は全世帯の約100分の1の調査票をまとめたものです。

 【参照】生涯独身・非婚化なら《人口・歴史》分野に関連エントリー。 日米若者貧困化との関係や30代の「家離れせず・出来ず」、東アジアの国際結婚など。      


サッカー決勝の交替マジックは監督と選手達の合作

 サッカーアジア杯決勝をテレビ観戦していて、後半の選手交替で一度出されたザッケローニ監督からの交替指示に選手側が「×」を出し、5分後にやり直す不思議なシーンがありました。この交替は試合の流れを大きく日本に引き寄せるマジックになったのに、当日の実況中継では判らなかった真相がようやく伝えられました。《今野が出した×マーク ザック監督第2案と選手の提案が一致し決勝点に》(スポニチ)や《流れ変えた「5分後」の交代 サッカーアジア杯優勝》(朝日新聞)です。

 「それは珍しい光景だった。後半の立ち上がりを見極めて、ベンチは動きの悪いMF藤本を外してDF岩政を入れようとした。ところが、ピッチの中で盛んにやり取りをした選手たちがタッチライン際に立った岩政をベンチへと押し返す」

 「それを見た指揮官は岩政をいったんベンチに呼び戻し、コーチ陣と協議。同時に選手も試合を進めながら話し合いを持ち、遠藤が選手の総意として代替案をベンチに伝えた」

 「これを了承した指揮官は後半11分、右MFの藤本に代わって岩政をセンターバックに入れ、今野を左サイドバックにスライド。さらに左サイドバックの長友を左MFに上げるフォーメーションに切り替えた。結果的にこのシステム変更が、長友→李と渡っての決勝点につながった」

 最終ラインで頑張りながらオーストラリアの長身フォワードに苦しんでいた今野を中盤に上げるのが最初のプランだったのですが、前半に負傷し、最近は中盤でプレーしていない今野が拒否してしまいました。長身の岩政を入れつつも今野をサイドに移し、サイドの長友を中盤に上げるのが選手側提案だったのです。イタリアで活躍する長友は守備の負担から放たれて左サイドをずたずたに切り裂いていきます。

 「選手の意向を受け入れた指揮官は『今野は前半に左足を負傷していたし、中盤でプレーする状態にないということだった。もともと、4―2―3―1のシステムも替えずに長友を左MFに入れる解決策もあった』と振り返った。指揮官の持っていた第2案を選手が自主的に提案してきたことが、ザック流が浸透していることの証だった」

 ブログにこんな評価があります。「健全な組織の日本代表。」(BloNg SPORT)は「基本的にサッカーでは監督が全責任を負う代わりに、選手選考・作戦などの決定権を持ちます。だから意思決定は監督が行い、トップダウンで選手に伝えるのが普通です」としながらも「でも、個人的には『基本はトップダウンでも現場からの積極的な意見は大歓迎』という組織が好きです。 トップダウンだけには限界があるし、現場だけの判断だけでも限界がある。 サッカーのみならずマネージャーとメンバーが相互に情報交換をおこない、相互に助け合ってこそよい仕事ができると思っています」と歓迎します。

 「原博実の勝利」(武藤文雄のサッカー講釈)が「ザッケローニ氏の手腕恐るべしである。大会の3ヶ月前の親善試合を2試合生観戦し、2ヶ月前に2試合親善試合を戦い、約2ヶ月間Jリーグを視察しただけで、ザッケローニ氏はこのチームを作り上げた。しかも、大会前にまともに集中トレーニングする時間すらなかったのだ。にもかかわらず、試合ごとに深まる連動、次々と活躍する控え選手。そして、決勝戦での見事な采配勝ち」と称えるチーム作りに、こうした風通しの良さ、選手側の自主性も含まれていたのです。


いくらアウェーでも!!カタール戦YouTubeコメントに賛成

 アジア杯準々決勝のカタール戦、はらはらしながら見てしまいました。ザッケローニ監督は「カタールのホームゲームという雰囲気の中で、10人になったが、攻撃の手を緩めることなく、最後はサイドバックの選手がゴールを決めるという日本らしいサッカーができた」と結果として満足そうでしたが、いくらアウェーでもあの審判ぶりは酷かったと思えました。「決勝ゴールのYouTube」についたコメントに賛成です。

 まず伊野波にこぼれ玉が渡る前の、ゴール前で香川へ繰り返されたタックルは危険すぎます。「最後、香川にタックルかました奴、サッカー辞めて欲しい。見逃した主審は、サッカーに二度と関わるな!」(totoloto6)。それにしてもゴール前でボールを持たせたら、瞬発力がありドリブル突破できる香川は極めて危険な選手であることが証明されました。

 退場になった吉田は、守備対象にしている相手フォワードがこれでもかと体を預けて倒れ、ファウルと見せる演出を執拗に繰り返すのですから、ちょっと可哀想に思えました。「欧州の審判に裁かせて、セバスチャ-ンみたいな見え見えのシミュを繰り返しする下手な選手をイエロー二枚で退場させれば普通の試合になったのにね。カタールはこんな見苦しい事やってると永遠に強くなれないよ」(cubekleene)

『中国で新卒争奪戦』刺激的だが大勢ではない

 朝日新聞の《中国で新卒争奪戦 日本企業、「負けず嫌い」求める》がブログなどで話題になっています。「日本の企業が、本格的に中国で大学新卒者の確保に動き出した。年630万人という世界最大の市場に狙いを定め、日本本社の幹部要員として採用する」という話ですから、就職難に喘いでいる日本の大学生を刺激します。「リクルートによると、3〜6日、北京と上海で開いた面接会に参加した大学は39校。北京大や清華大、上海の復旦大など中国のトップ校を中心に約1万人の学生が集まり、その中から適性テストや面接を通過した大学4年生計1千人が面接に臨んだ」そうですから、「贅沢なご馳走」を用意された企業の採用担当者が喜んだのも無理からぬところ。

 中国での本質的な人余りぶりは、昨年の第171回「世界不況を契機に経済成長神話見直そう」で大紀元時報の報道「2008年中国国内失業者数、2.5億人に達する恐れ」を紹介しました。「政府は毎年2400万人の雇用機会を創出しなければならないと計画しているが、しかし人材需要に関しては、毎年8%から9%の経済成長率を持続していくには現有の労働力の上、1200万人の新たな労働力があれば十分だという試算がある」。中規模国の産業社会をそっくり毎年、新たに造りだしていくような異常な目標を掲げなければならないのですから、人は余ります。

 一方で、ニューズウィークが先日「中国エリートは欧米を目指さない」と題した、名門・清華大でのインタビューをもとにしたレポートを出しました。「欧米、特にアメリカは、かつて世界で最も上昇志向の強い人々の最終目標だった。だが今は、世界のエリートにとっての通過点でしかない。本気でビジネスに取り組み、富の創造を始める前に、学位を取って履歴書に箔を付けるための場所だ」「彼らにとっては、新興諸国こそリッチで有名になるための舞台だ。今後数十年の世界経済の成長の大部分は新興諸国が担うだろう」

 そこで先週の第228回「若者が目指す国、捨てる国〜世界総覧を作成」では割愛した高学歴層の移住希望動向に目を向けましょう。ギャラップの調査から拾い直すと、中国は若者での移住希望指標はマイナス10%でしたが、4年制大卒以上の高学歴層ではマイナス18%と、さらに多くの人が祖国を離れたがっています。香港の指標は若者マイナス5%に対し高学歴層マイナス28%と一段と顕著です。

 産経ニュースの《【石平のChina Watch】始まった「中国からの大逃亡」 エリートばかり6万5千人》が「2009年に中国から米国への移民だけでその人数は6万5千人に上り、しかもその大半は、エリートや富裕層であるという。彼らの移民先は主に、米国を筆頭にカナダやオーストラリア、シンガポールなどの諸先進国である」と伝えています。

 これからのし上がろうとする若手は新興国に、財をなしたグループは先進国に目が向いている状況です。日本の採用活動はささやかなエピソードでしょう。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


韓国GP、薄氷の準備。路面はF1カーに耐えられるか

 お隣、韓国がFIA(国際自動車連盟)から誘致したF1レースが今週末、木浦市近郊、霊岩郡の新設サーキットで開催されるのですが、サーキットの完成が遅れに遅れて、本当にレースが出来るのか、現在もなお疑問符が付いたままです。完成延期が繰り返し伝えられるたびに、この半年ほどネット上はとても賑やかでした。一応の舗装が出来たのが今月11日の最終査察直前であり、F1本番までに別のカーレースを開催する約束も実行されませんでした。路面にもの凄い力を及ぼすF1カーに、通常必要とされる養生期間を全くとれなかった路面が耐えられるのか、見物になっています。

 最新情報です。「F1-Gate.com」の「F1関係者、韓国の第一印象」には「ドイツの Auto Motor und Sport は、いまだ圧延機械がアスファルトの最上層に取り組んでおり、スターティンググリッドもまだスプレーされておらず『金曜日にならなければ路面がF1マシンのストレスに耐えられるかわからない』と報道」とあります。本来なら木曜日には各ドライバーに練習走行が許されるはずですが、それも無しのぶっつけ本番なのでしょうか。

 「F1韓国GP、サーキットでは工事が終わらず」(F1TopNews.JP)は「22日(金)にいよいよ開幕を迎える韓国GP。しかし、舞台になる韓国インターナショナル・サーキットは、完成にはまだまだ程遠い状態だ」「縁石が実際には設置されておらず、ペイントで縁石を描いているだけになっている部分があることも確認できる。スターティング・グリッドの枠線は、20日(水)になってようやく書かれたようだ」と伝えます。

 電気系統や下水設備も完全でないようですし、レースコースを跨いでメインスタンドに向かう橋が韓国の伝統様式で、瓦で葺いてある点にも疑問の声があります。大量の観客が通ると、建物は緩んできますから、瓦のコース落下が心配されます。また、敷設したばかりのアスファルトからは油が浮いてきます。超高速レースでのスピンは命取りになる恐れ大です。

 【レース本番10/24】
 コーナーに穴が出来るなど大変な出来ながら予選は何とか終了。本番の24日は雨でアスファルト敷いたばかりの路面には水が溜まりぱなし。日没まで時間が無くなって無理無理にスタートしたレースを今、見ていますが、スピンに巻き添え、水煙で前が見えない中でドライバーは大変です。
 なお、コメント欄の指摘にあるようにフリー走行は金曜でした。


10年連続200安打、まだまだ夢は続くイチロー

 気分の晴れない極東の空気にすかっとしたニュースでした――イチロー10年連続200安打達成で、大リーグ史未踏の名を刻みました。今年の場合は、10年連続ではないけれど200安打10回を記録している名選手ピート・ローズとの確執がありました。ローズは並ばれるのが不愉快なのでしたが、イチローは試合後のインタビューでこうコメントしています。「200安打10度でローズに並んだ」と尋ねられて「ぜひ超えてあげたいですね」。

 スポーツナビの「イチローの内野安打は“ラッキー”なのか? 10年連続200安打を追って」で、問題のローズ発言が紹介されています。「先日、ローズは『イチローは世界で一番ラッキーな選手だ』などと話した」「それは、内野安打が多いことを指摘したものだが、ローズの考えでは、内野安打はすべてとは言わないまでも『偶然の産物』。つまり、“ラッキーによるもの”ということのよう」

 期せずして日本でも久しぶりに200安打が話題です。阪神のマートン選手が今期201安打を記録し、ヒットの分布が分析されています。内野安打はわずかに18本です。イチローの大リーグでの内野安打数は、上の記事から引用するとこうなっています。

 2001年 : 56本
 2002年 : 53本
 2003年 : 45本
 2004年 : 57本
 2005年 : 34本
 2006年 : 40本
 2007年 : 57本
 2008年 : 56本
 2009年 : 63本
 2010年 : 55本(9月21日現在)

 「“ラッキー”で毎年毎年、年間50本前後の内野安打など打てまい」――まさにその通りです。イチローはフライを打たない、ゴロの多い選手で、ヒットに出来る可能性を求めて意図的に転がしています。内野手が慌てて球をとり、イチローの俊足と勝負するスリリングさが名物になっています。左サイドへのゴロの数はフライより多いのだそうです。

 大リーグの「MLB.com」はトップページに「Ichiro's 200th hit extends own record, ties Rose」の見出しを掲げています。そして、記録達成のビデオを見ると中前打を放った瞬間にガッツポーズで立ち上がる観客がたくさんいて、ちょっと熱くなります。場所はアウェーのトロントで、日本人でもないのに、です。30秒は拍手が続き、遠慮していたイチローがようやくヘルメットを掲げて応えるシーンも善いものでした。


中国との国際結婚は嫁日照りから次の段階へ

 「社会実情データ図録」が「図録▽在日外国人の人口ピラミッド」で中国人やフィリピン人などの在日人口構成をグラフ化しています。「東アジアの国際結婚」に関心を持ってきたので、両者のピラミッドが余りに違っていた点を見て直感しました――中国との国際結婚は、アジアで続いていた「嫁日照り」対策結婚から次の段階へ移行したと。

 仮説を立てたので「平成20年 人口動態統計(確定数)の概況」などを参照して、「夫日本・妻外国」の結婚件数がどう推移したか調べました。

       《夫日本・妻外国の結婚件数(年次別推移)》
[妻の国籍] 1995  2000  2001  2002  2003  2004  2005  2006  2007  2008
韓国・朝鮮 4521  6214  6188  5353  5318  5730  6066  6041  5606  4558
  中国     5174  9884 13936 10750 10242 11915 11644 12131 11926 12218
フィリピン 7188  7519  7160  7630  7794  8397 10242 12150  9217  7290
  タイ     1915  2137  1840  1536  1445  1640  1637  1676  1475  1338

 中国人を妻とする結婚のピークは2001年の13936件でした。90年代から先行していたフィリピン人妻との結婚件数を追い抜いてしまいます。2006年に滋賀県で中国籍の妻が近所の幼稚園児2人を刺殺する事件がありましたが、言葉や心のケアが案じられた結婚はこの前後でした。フィリピン人妻との結婚件数は2005年にかけて再び増え、2006年には12150件と中国を抜きます。しかし、2008年には7290件と急速に落ち込み、韓国・朝鮮やタイも同じ減少傾向です。一方、中国人妻との結婚だけは落ち込む気配がありません。

 中国商務部が認可した日系企業の累積件数は「中国進出日系外資企業の挫折率」によると、2002年頃からかなり増えるのですが、挫折も多くなります。ビジネス実務による人の往来が急増していく中で、普通の出会いによる普通の結婚が主流になってきているのでしょう。

 ブログでも普通の日中カップルがどう生活しているか、読むことが出来ます。「嫁さんは中国人」は中国での職場結婚から、昨年秋に日本に呼び寄せた例です。「来日から2ヶ月」にはこんなやり取りがあります。「もうすぐ嫁さんのアルバイトの初任給がもらえます」「嫁さんもバイトとはいえ、中国から比べると超高給取りです」「嫁:『中国でこれくらいもらえればいいのにね〜』」「onisa:『とりあえずその給料で地デジの液晶テレビ買おう』」「嫁:『ダメ! これは(運転)免許のために貯金!』」。家事も分担してこなしているそうです。

 最初に紹介した人口ピラミッドでも女性側が膨らんでいるのは仕方がないことで、まだ日本女性で中国に出て行って仕事をする人の数は知れているでしょう。「夫中国・妻日本」の結婚ケースは毎年1000件余りを続けています。なお、「夫日本・妻中国」の離婚件数は2006年4728件、2007年5020件、2008年5338件と増えていて、こちらはフィリピン人妻と歩調を合わせています。


2026年インド人口世界一:牛糞が家庭燃料の国

 「現在11億人のインド人口が16年後には3億7100万人増えて、中国の人口13億5000万人を超える」と伝える「India to overtake China as world's biggest country by 2026, says report」(telegraph.co.uk)を見て、「大丈夫か」という思いにとらわれました。公的な人口計画がまったく働いていないインドは、電気を使える家庭が5割、家庭の半数で牛糞が燃料に使われている国でもあります。戦後の日本で言えば、薪の時代がまだ続いている状態です。

 「インドの環境問題・・・原子力と牛糞」(さまよえる団塊世代・・・インド在年9年・・・ 夢翔る世界紀行)が2001年国勢調査から「世帯数は1億9,200万、電気使用世帯は44%、燃料として牛糞と薪を使用している世帯は53%、人口増加率は1.7%。6年後の現在は、大雑把に見て、約2億世帯、電気未使用世帯と牛糞・薪使用世帯はそれぞれ50%前後だろう」と書いています。そんなに牛がいるのでしょうか。「農業就労者は約2億5千万人・1億3千万世帯、数頭の牛を飼っている農家が多い。牛は約2億8千万頭いる。インドのミルク生産量は世界1で約9,200万トン、其の内70%は貧農が生産するミルクである。ミルクと共に牛糞は家庭用燃料であると同時に重要な現金収入源」

 牛糞の原料は身近で生えている草ですから、家庭燃料として燃やしてもCO2排出量は増えません。「図録▽世界各国のCO2排出量」で大人口のインドが中国の4分の1しかCO2を出していないことを確認してください。1人当たり排出量が先進国の1割くらい、世界最低レベルである点が大きく効いています。

 冒頭の記事は、人口増加は5億人の貧困層をさらに増やすと同時に「毎年16万人の優れたエンジニアと100万人以上の工業技能者を生み出す」とも書いています。強気の方なら人口増大は成長要因との見方もあるようですが、増え方が膨大すぎて、自然と共生している生活のバランスを大きく崩す恐れがあります。日本の家庭が薪からプロパンガスに移行したのに習って「インドの農民が生活水準の向上と共に電気を使いプロパンを使い、牛糞を活用しなくなったら、大変な事になる。あっという間に日量200〜300万バーレルに相当する化石燃料の消費増となる」と「インドの環境問題・・・原子力と牛糞」は危惧します。人口が制御できないインドは貧富の差、経済成長のまだら模様がひどく、無政府状態のまま、世界最大人口国に突き進むのでしょうか。


衝撃:ネアンデルタール遺伝子が現生人類に

 米国「サイエンス誌」の研究発表を伝えた「ネアンデルタール人の遺伝子、我々にも? ゲノムで解明」(朝日新聞)などの報道は衝撃的でした。50万年前にヒトと分かれたネアンデルタール人の血が数万年前に人類に混じり、今に伝えられているとする研究です。ネアンデルタール人は欧州と地中海周辺にしか住みませんでした。国際研究チームはそこから遠い中国人、パプアニューギニア人のゲノムからネアンデルタール遺伝子を検出する一方、アフリカ人からは検出できませんでした。アフリカで生まれて世界に広まった人類が、アフリカを出た直後に混血を起こした可能性が高いのです。

 今回の研究論文はネット上に全文が提供されています。「The Neandertal Genome - Comparative Genomics」から順にたどっていただければ論文のフルテキストまで行けます。「By comparing this composite Neandertal genome with the complete genomes of five living humans from different parts of the world, the researchers found that both Europeans and Asians share 1% to 4% of their nuclear DNA with Neandertals. But Africans do not.」が上記の核心部分です。

 アフリカを出た人類はせいぜい数百人の小さなグループだと考えられています。混血の状況は、わずかな数のネアンデルタール人が、この小集団に取り込まれた感じです。「If a few Neandertals interbred with members of a small population of modern humans, Neandertal gene variants might persist in subsequent generations of modern humans if the interbred population expanded rapidly, thereby spreading Neandertal DNA widely. 」ネアンデルタール人は目の上の骨が突き出した、ごつい顔をしています。低レベル混血の可能性を予言していたというハーバード大の研究者によると、中東で出土するネアンデルタール女性の頭蓋骨はそんなに武骨ではないそうです。

 しかし、今回の研究成果は「National Geographic」が世界規模で進めている「The Genographic Project」と食い違うところもあります。日本国内からも多くの方がDNA採取キットを買い、解析を依頼しています。その結果を自分のブログに掲載している方が多数あり、その中から日本人に多い3つのグループを紹介します。

 まず最大34%のハプログループ「D」に属する「遺伝学的ルーツを公開してみる」で、グループ移動地図を見てください。アフリカから紅海の入口にある海峡「悲しみの門」を突破してインド、東南アジア、沖縄、日本、中国へと移るグループです。

 次は15%を占めるグループ「B」の「私のDNAの足跡・・・ジェノグラフィック・プロジェクト」です。「アフリカから、カスピ海やバイカル湖あたりで枝分かれし、タフな人たちは北に向かい、シベリアからカムチャッカを渡りアメリカ大陸へ」「その他の人たちは、大陸にしばらくとどまり、その後多くは南のポリネシアに向かい(ポリネシア人の95%はこのタイプ)、日本には南西諸島を伝ってきたという学説があるのだそう」こちらの移動地図はシナイ半島付近からアフリカ脱出になっています。

 3番目はやはり15%を占めるグループ「M」の「えむ [ジェノグラフィック・プロジェクト]」です。このグループは一度、アフリカ内部をさすらってから紅海を「悲しみの門」付近で越え、南アジアに広まります。グループ「D」が直接、「悲しみの門」に向かうのと差があります。実は人類はアフリカ内部で一時、非常に人口を減らす絶滅の危機を迎えたとの説があります。生き残りグループが集まり、新天地を求めてアフリカを脱出したのかも。

 世界中の各グループをまとめている「Atlas of the Human Journey - The Genographic Project」で年代を追って地図の変化を見てください。脱アフリカの動きは相当、多様に描かれています。ネアンデルタール遺伝子がアフリカ以外の世界中の人に普遍的だとすれば、もっとシンプルでないと拙い気がします。

 【関連】第157回「日本人の起源を読み解く@2008リンク集」
  第7回「縄文の人々と日本人の起源」


公文書と学術雑誌、往時を振り返るアーカイブ

 3月も終わり、ネットを歩いていて、少し前の往時を振り返るアーカイブを見つけました。国立公文書館の「デジタルアーカイブ」と、科学技術情報発信・流通システム(J-STAGE)の「Journal@rchive」の公開記事数100万件突破のニュースです。どちらもネット検索などで引っかかってこず、重ためな中身があります。

 まず「デジタルアーカイブ」です。一般の人が利用しにくかったのを、3月から検索機能を充実させるなどしてリニューアルしました。重要文化財などを大判資料で収録し、細部まで拡大して見られるようにもなって、絵巻物鑑賞も楽しいと思います。今回は公文書で何か探しましょう。最近、日露戦争が話題になっていましたので「日露講和条約」の原本を見ましょうか。批准して署名している明治天皇は「睦仁」ですし、キーワードとして「露」を追加して検索すると49件あり、27番目が「日露両国講和条約及追加約款・御署名原本・明治三十八年・条約」です。「天皇御璽」が押された写真が以下です。


 「Journal@rchive」は独立行政法人科学技術振興機構の下にあるジャーナルアーカイブで、「国内の学協会の学術雑誌の国際発信力をさらに強化するとともに、日本の知的財産の保存を目的として、紙媒体の雑誌を創刊号から電子アーカイブ化」してきています。これまでに650誌くらいがアーカイブ化されています。記事数が100万件とは言え、個々の記事(論文)をキーワードで引けないのが残念です。雑誌名や学会名でまず雑誌を探してから、各号ごとに論文を探すことになります。むしろジャーナル名一覧から当たるべきかも知れません。栄養学関係などごく最近の論文も読めます。

 トピックスとして「Journal rchive Stories 〜数物学会誌の紹介」が用意されていて、日本人初のノーベル賞学者湯川秀樹さんの中間子論の論文などが紹介されています。『数物学会誌』(1935年)に掲載された、その論文のPDF「On the Interaction of Elementary Particles. I.」 (「素粒子の相互作用について I.」)もご覧になってください。


混沌の現状と将来像を占う中国異聞3件

 中国について今週、注目したい記事を3件見ました。食用油の1割は極めて不潔な方法で再生されたものという驚愕、また中国政府が最も恐れるのはネット世論、そして中国の将来に民主化は来ないだろうとの予測――巨大な「象」が今どこをどう歩き、どこへ向いていくのか、考える資料になると思います。

 まず「レコードチャイナ」の「『リサイクル食用油』その原材料は下水道の汚水!年間300万トンが国民の胃袋へ―中国」です。最初は半信半疑、ちょっとオーバーな言い方をしているのだろうと思っていたのですが、違っていました。「<続報>リサイクル食用油、当局が飲食業界の実態調査へ―中国」「<レコチャ広場>汚水から作る『リサイクル食用油』は中国人の浪費好き・拝金主義が生み出した―中国」と続くニュースを見ていると、この国民には倫理観が無いのかと、絶望したくなります。中国旅行をされた方は胸が悪くなる思いでしょう。

 「リサイクル食用油のニュースは全ての中国人の怒りと驚きを招いた。われわれは豊かになった。しかし病気、特にがん患者はその数を増している。リサイクル食用油は高温で精製されるために細菌やウイルスの心配はないかもしれない。しかしその中にはヒ素の百倍も毒性が高く、地上最強の発がん性物質とも呼ばれるアフラトキシンが含まれているのだ。なるべく外食は避けること。特に揚げ物や水煮魚(油で川魚を煮る料理)はリサイクル食用油が使われることが多い料理だ」

 「ニューズウィーク日本版」の「中国がアメリカに背を向ける理由」がネット世論こそ中国政府を動かしていると指摘しています。

 「中国が自信満々だという印象を受けるかもしれないが、実際は違う。いま中国の指導者を突き動かしているのは、底知れない不安だ」「今や世論の動向を無視すれば、共産党支配の存続が脅かされかねない。『現在の中国政府はこれまでなかったほど、国民のナショナリズムの高まりに応えて振る舞いを決めなくてはならなくなった』と、中国屈指のアメリカ専門家との呼び声も高い北京大学国際関係学院の王緝思(ワン・チースー)院長は言う」「『世論とは主にネットユーザーの意見のこと』だと、中国人民大学国際関係学院の金燦栄(チン・ツァンロン)副院長は言う。『中国のネットユーザーは、アメリカより1億5000万人多く、3億8400万人。中国の指導者は方針を決める際、この層の多数意見に大きく注目する』」

 民主主義のシステムを持たない国だからこそ、「世論」は無視できないはずです。自由な世論調査を許さない以上、膨大な参加者の間から勝手に出来上がってくるネット世論を尊重せざるを得ない理屈になります。だからこそ、グーグルと衝突している、ネット上の言論統制は捨てられないのです。

 中国の将来の民主化に期待する人は多いと思います。ところが、「JBpress」の「民主化の道は絶対に選べない中国」は台湾民主化の過程との比較から、その可能性は低いと論じます。「李登輝の民主化運動は、政治制度の正当性を確立するだけでなく、台湾という島から国共合作、国共対立といった『外来的要素』を排除し、台湾人のための台湾をつくるための手段であった」「李登輝の『民主化』は我々が知るような『中国的』現象ではなかったのだと思う。どうやら中国が『何かの拍子に』民主化することはなさそうだ。やはり中華人民共和国の究極のモデルは『台湾』ではなく、『シンガポール』である」

 御しにくい相手であることがますます明白になっています。おまけに大国になった(あるいは数百年ぶりに大国に復帰した)にもかかわらず、時として不都合があると「途上国」の面をかぶってすませます。地球温暖化問題などで世界から不評を買ったのに、中国政府が内向きにならざるを得ない仕組みも見えてきています。

 【関連】インターネットで読み解く!「人口・歴史」


ゴジラMVPおめでとう、松井苦節7年の末

 WBCでの日本連覇で始まった野球シーズンの終幕に、こんな劇的なイベントが来るとは。ヤンキースのワールドシリーズ優勝に貢献した松井秀喜が日本人初のMVPに輝きました。優勝を決めた第6戦で2点本塁打、2点シングル、2点二塁打と大爆発して、スタンドの観客が「MVP」と叫びだしたのには、ちょっと胸が熱くなりました。ワールドチャンピオンになるために米国に渡って7年、やっと思いがかなった時、もうひとつの願いもかないました。

 ネット上では読売新聞の4年前のインタビュー記事が見直されています。「いつかメジャーでMVP」です。「車のアクセルを踏み込みつつ、『おれ、いつかメジャーでMVP(リーグ最優秀選手)をとりたい』と継いだ。驚く記者に向かって“演説”を続ける。『ただし、優勝した上でね。一番、優勝チームに貢献したという選ばれ方で、MVPがほしい』」「不思議なぐらいに言葉があふれ出す。高速道路の渋滞が解消し、遅刻を免れると判断して、フッと気が緩んだのだろうか」

 まるで4年後、今日の自分を言い当てているような言い方です。大リーグに渡った野手として、イチローと並ぶ存在なのにイチローに比べて話題が少なかった松井です。7年前、最初のワールドシリーズで日本人初の本塁打を打ったくらいしか、すぐに思いつくものがありません。次々に大リーグの打撃記録を塗り替えていくイチローに比べて、この数年は特に地味でした。

 両膝の故障を持っている松井は守備が出来ません。今年で4年契約が切れるヤンキースが契約を続けるか、シーズン後半から注目の的でした。大リーグのホームページでも、「地元紙」ニューヨークタイムズの記事でも賛辞の後で、これでヤンキースを去ることになれば、最後のゲームで最高の仕事をすることになるという感じの書き方をしていたのが気になりました。NYTの記事のコメント欄以上に国内のブログも大漁です。グーグル検索によると半日で4000以上あります。悲願の世界一達成と合わせて、今日はまず、お祝いムードです。


第184回「イチロー200×9達成、大リーグが驚く」

 大リーグの世界にもう誰も抜くことが出来ないであろう打撃記録「9年連続200安打」をイチローが14日に達成しました。大リーグのホームページは「Ichiro passes Keeler to set 200-hit history」をこの日、ずっとトップに掲げていました。最大級の賛辞です。マリナーズ「Ichiro Suzuki: Chasing History: 9 consecutive seasons with 200 hits | Mariners.com: News」の特設ページはしばらくはこのまま読めるのでしょう。色々なコメントも豊富に含む、充実した記事で構成されています。

 私のウェブで「インターネットで読み解く!」第102回「大リーグとの『垣根』は消滅した」をリリースしたのが2001年4月です。あの時、パワーよりスピードで勝負するイチロースタイルが、日本プロ野球と大リーグとの間にあった「壁」を消すと宣言したのに、今度はイチローが誰にも破れない「記録の壁」を大リーグに作ってしまいました。おそらく来年には10年連続200安打も達成してしまうでしょう。ピート・ローズの生涯200安打10回を超えることもほぼ確実に思えます。大リーグのページでも「次に記録を失う犠牲者はローズだろう」と書かれています。

 上記の大リーグのページには現役選手の生涯打率ランクがあります。イチローは第2位で「.333」。第1位はAlbert Pujolsで「.334」です。この選手はイチローと同じ2001年にデビューし新人王(ナショナルリーグ)を取っていますから、比較には好都合です。これだけの打率を残している好打者がこれまでの9シーズンで放った安打は「1695」なんですね。年間200安打に達したことはないだろうと思います。今、イチローは「2005」です。

 大記録達成で王貞治さんが「4000安打を」とコメントしていました。イチローの日本での安打は「1278」、大リーグで昨年までが「1805」、そして今年が「200」ですから、合計は「3283」。35歳のイチローが30代の内に4000本をパスできれば、ローズの持つ通算安打の大記録「4256」も楽に塗り替えることでしょう。まだまだ偉業は待っています。


WBCやはりイチロー。韓国捕手交代が伏線

 疲れましたが、WBC2連覇、堪能しました。それにしても10回に決勝打を放ったイチローを敬遠しなかったのは何故でしょう。2、3塁が埋まり、1塁は空いていたのでとても不思議です。テレビ放送の解説陣は「韓国の潔さ」のような話をしていましたが、信じられません。

 試合終了後、中央日報のインタビュー記事<WBC>金寅植監督「イチローを歩かせなかったのが敗因」を見て理解できました。「悔やまれるのは、はっきりと敬遠のサインを送っておくべきだったということだ。 捕手が変わり、若い捕手が作戦のサインを投手と十分に疎通できなかった可能性もある」「ベンチからは捕手に、敬遠ではなくても(ストライクではなく)ボール球を投げて、状況が良くなければ(四球で)歩かせろと伝えた。 そして捕手の姜鎬も投手にサインを送った。 しかし林昌勇が自信があったのか勝負をした」

 韓国は終盤に野手を全員出してしまいました。代走の連続で主軸打者まで替えて大丈夫かな、延長戦を戦えるのかと思って見ていました。ベテラン捕手の交代でベンチからの指揮・司令系統が揺らいでいたのでした。イチローがファウルで粘りながらタイミングが合っていったのに、強引に勝負に来てくれたのですから、こんな有り難いことはありません。

 イチローの「優勝インタビュー」をユーチューブでご覧下さい。本当に、彼のところに神様が降りてきたんですね。

 《3/26》増補して親サイトに「WBC連覇讃:米国の見方とイチロー敬遠なし」掲載。


第172回「離婚減少は定着、熟年離婚の嵐吹かず」

親サイトでは、インターネットで読み解く!第172回)

 新年になって発表された「平成20年人口動態統計の年間推計」はあまり話題にもならなかったようです。でも、少し事情を知っていれば注目ものだったのです。それは離婚件数と、人口千人当たりの離婚件数=離婚率が2002年をピークに2008年も下がり続け、離婚減少傾向がしっかり定着したからです。年金分割法が2007年と2008年の4月に二段階で施行され、夫の厚生年金の受給権が妻にも分割されるようになりました。これを待って離婚したいと考えている女性が多数いて、2008年には「熟年離婚の嵐」が吹き荒れるとする専門家が多くいらっしゃいましたが、何も起きずに2008年は過ぎました。

 それどころか、1月22日に発表の「人口動態統計速報(平成20年11月分)」を見れば、大不況入りがはっきりした11月は前年を大きく下回る離婚件数になっています。該当のグラフを以下に引用します。赤い折れ線が2008年です。


 実は離婚動向と景気とが相関しているとの見方がありました。「図録▽離婚件数の推移と景気との相関」のグラフに示されているように、1980年頃から離婚が増えれば景気が少し遅れて悪化し、離婚が減れば景気が上昇する傾向が観察されたといいます。しかし、2003年以降の離婚減少局面ではこの相関も失われました。「2004年〜06年は離婚件数が景気回復の程度以上に傾向線との関係で大きく減少しているのが目立っている。これは、『離婚時の厚生年金の分割制度』の導入を見越して離婚を手控えているのではないかと考えられる」と説明されていたのですが、上述のように事実が否定しました。

 離婚減少がはっきりしてきた2005年に「離婚の減少はサッカーW杯から始まった [ブログ時評26]」という仮説を、月別の離婚件数動向をベースにして書いています。「今回の離婚の減少はサッカーW杯から始まり、『冬のソナタ』でブレークした韓流ドラマブームで本格化し、北朝鮮拉致被害者と家族の帰国などによって増幅されている」――証明不能であることは承知の上です。しかし、2002年以降の有り様を見れば、日本の家族に内在する何かが変わったと考えるしかないのです。

 「第3表人口動態総覧(率)の国際比較」を以下に引用します。


 日本の離婚率が「2」を切って「1.99」になったのはニュースだと思います。かつて一時は米国の「3.6」に向かって増え続けると考えられていたのに――です。韓国の「2.5」とは大きな差になってしまいました。

【続編】3/25に第175回「続・離婚減少は定着、熟年離婚の嵐吹かず」リリース。2003年からの経済状況好転にシンクロして減少をグラフ化。

 【参照】インターネットで読み解く!「人口・歴史」分野エントリー…生涯未婚など


五輪野球メダル逃す、星野報告書に批判続出

 北京五輪で4位に終わった野球についてのJOC報告書が26日に公表されました。47Newsの「星野監督『気持ちで弱い面が』 北京五輪報告書を公表」などの報道にブログから一斉に批判の声が巻き起こっています。

 「日本代表監督を務めた星野仙一氏は、敗因として選手の精神面の弱さと国際試合の経験の少なさを挙げた」「金メダルを獲得した韓国と比較し『気持ちの面で、弱い面が出た。選手たちは気を抜いて戦ったわけではもちろんないが、気持ちの部分で差があったかもしれないとも思う』と指摘」――これは何の分析にもなっていませんよ。単なる感想です。国際経験を積ませたいと言うのも意味があるようでいて、野球の国際大会が少ない現状では無意味です。

 「星野氏それはないでしょ」(元日本代表の新聞・テレビに出ない野球理論)は「すべて監督の采配ミスで負けたはずです。気持ちの面で弱気が出て、投手交代もできず、敗戦に導いたのは監督でした。また国際大会の経験がなく動揺したのはご本人のはず」と切り捨てます。

 【星野】敗軍の将、兵を語る【北京五輪選手団報告書公表】(再チャレンジ日記〜道一筋)は「短期戦なのに不調の選手を使い続けてかえって結果を悪くした采配」「エースはダルビッシュと言いながらほとんど敗戦処理で全くエースとして扱わないなど言動不一致による選手の士気低下」などの敗因を具体的に挙げます。その上で「そしてこの星野の話で不思議に思うのは、『選手の国際試合の経験の少なさ』の個所です」とし、実は選手側は国際経験が結構豊富だと国際戦歴を一覧にしています。

 「とても残念なオリンピック・野球の敗因分析」(トラのホシ)は「一番は監督・コーチ陣の国際経験と国際感覚のなさ、もちろん日本オリンピック委員会の野球担当の方たちも含めてですが、足りなかったからと言えるのではないでしょうか」「星野さん一人がどうこうということではなく、野球とベースボールは違うなんて言っていないで、本当に国際化しないといけないのは、野球をやっている人と見ている人の意識の問題でしょうか」と総括しています。


北京五輪と暑い夏、冷ややかに過ごせ

 何とも暑い夏です。そして、ほぼ毎日、夕刻には土砂降りの雨が降って、熱帯に住んでいるのではないかと錯覚させられるほどです。先日は休みを取って自転車で走り回っているところを豪雨に遭い、傘が役に立たない横殴りの雨にすっかりまいりました。この雨を北京に持って行けたら、大気汚染解消なのにとつい思ってしまいます。

 北京五輪が始まりました。ブログの関心を示すテクノラティグラフを貼っておきましょう。「五輪 OR オリンピック」をとると開会式の8日は17000件に迫る記事が書かれ、6月初めのスピード社水着解禁めぐる騒ぎを上回りました。
過去180日間に書かれた、五輪 OR オリンピックを含む日本語のブログ記事
テクノラティ グラフ: キーワード「五輪 OR オリンピック」に関するグラフ


 五輪直前の報道で、人口1500万人の北京市から出稼ぎ者100万人ほどが強制的に帰省させられ、代わりに警備要員140万人が地方から集められたと伝えられました。こうまでしなければオリンピックが開けないのかと呆れていたときに、「内田樹の研究室」で「北京オリンピックに思うこと」を読みました。五輪のような国家的行事の遂行によって失われるものがあります。「日本の場合、それは『何となく風通しのよい敗戦国の脱力感』であった。中国の場合、それに相当するのは何だろうか」「考えてみたが、それは『貧しさとつきあう知恵』ではないかと思う。端的に経済的に『金がない』ということではなく、貧しさを致命的なものとさせないための『生活の知恵』がこれまで中国にはあった。少なくともそのような『生活の知恵』が必須であることについての国民的合意はあった。それが失われるのではないかと私は思っている」

 「図録▽中国の食料消費対世界シェアの推移」にあるように、世界人口の2割しかない中国人が56.2%の豚肉を消費しています。その豚肉が今年、何割も値上がりして庶民には手が届きかねる事態だといいます。中国では開会式のテレビ視聴率が9割を超えたそうですが、「華やかな夢」実現の後に来るものを注視したいと思います。

 スポーツの祭典ですから、もう結果が出始めて、メディアは熱くなっている感じです。隣国ならではの『とんでもないアウェー』で戦っているのですから、醒めた目で見てあげましょう。谷選手の銅メダルについて「日本一ではない選手を出して金メダルを取ることを期待するとは」が書かれています。「オリンピックで銅メダルを取るということは、確かに賞賛に値するすばらしい成績です。しかし、日本には今の谷よりも強い選手がいる(少なくとも全日本の選考会時点ではいた)のです。その選手が出ていたならば、銅メダル以上の成績を獲得する可能性が期待されたはずだと、誰しも考えることだと思います」

 猛暑は当分、続きそうです。だからこそ冷ややかに……。


大リーグから野茂が帰って来る!!

 ロイヤルズを自由契約になった野茂英雄投手(39)が日本球界に帰って来るとのニュースが流れています。日本で交渉権を持つオリックス(旧近鉄)ではなく、先発陣が弱体な楽天が名乗りを上げているようです。これからも話題になることを期待して、テクノラティの頻度グラフを貼っておきましょう。この春の大リーグ復帰時には1日600件を越すブログ記事が書かれています。衰えたとは言え、今でも人気の高さが判ります。

☆過去180日間に書かれた、野茂を含む日本語のブログ記事☆
テクノラティ グラフ: キーワード「野茂」に関するグラフ

 MLBの開拓者野茂について一番、思い出深い記事は10年前に書いた第36回「日本人大リーガーへの科学的頌歌」です。大リーグへの挑戦は、その改訂新版、さらにイチローら野手による第102回「大リーグとの『垣根』は消滅した」へと続きましたが、何と言っても最初の野茂の勇姿が目に焼き付いています。どれくらい投げられるのか分かりませんが、もう一度、球場で見たいと思います。


日本人の起源を読み解く@2008リンク集

親サイトでは、インターネットで読み解く!第157回)

 昨年11月にNHK「サイエンスZERO」で「第184回 日本人の起源に迫る」が放送されてから、1997年6月に書いた第7回「縄文の人々と日本人の起源」へのアクセスが増え続けています。Googleで「日本人の起源」を検索すると4番目に出てくるからでしょうが、中身は当然ながら古くて申し訳ないなと思ってきました。「サイエンスZERO」は録画して見て「最新の成果を」との看板の割にはいまひとつ物足りない内容でした。いま調べてみて結論を言えば、「2010年に現在進行しているプロジェクトが成果を出すまでしばらく待ちなさい」となるのですが、当面、話題になりうるリンクを集めて関心を持つ皆さんのお役に立ちたいと考えました。

 「サイエンスZERO」は細胞のエネルギー源を司るミトコンドリアのDNAで明らかになった研究成果に依拠していました。ミトコンドリアDNAは細胞核DNAと違って細胞質中にあり、母から子に伝えられるだけです。「日本人の大半は16のグループに入るということから、日本人は16人の母を持つともいえる」となりました。各グループの仲間が世界各地にいて、この列島にいかに様々な遺伝子が持ち込まれたのかが分かります。また、ミトコンドリアDNAは核と違って大量にあって白骨化しても残る確率が高く、縄文人や弥生の渡来人の古人骨から採取できます。両者と現代日本人のグループ分けを比べると、縄文人にしかなくて現代に引き継がれたグループ、弥生の渡来人が持ち込んだグループが現れ、混血によって日本人が形成された様子が歴然とします。

 まとまったボリュームのある資料を古い順に紹介すると、まず1997年制作の九大総合研究博物館・インターネット博物館「倭人の形成」を挙げるべきでしょう。九大は縄文・弥生遺跡が多い地の利を生かして、早くから発掘される古人骨の研究を精力的に進めてきました。そのハイライトが「縄文人と弥生人■身長・遺伝■」のページにある系統図「頭骨の形態小変異22項目に基づく東アジア、北アメリカ、オセアニア集団の類縁関係」でしょう。縄文、アイヌ、古墳、江戸、現代、モンゴル、タイ、ハワイから北米先住民まで類縁関係とその距離が明かされています。

 次は2001年の国立科学博物館「日本人はるかな旅」展です。残念ながら「第5章 そして日本人が生まれた」の最後「分子レベルでみた日本人のルーツ」では雑然と研究成果が示されるだけで、では何が言えるのか釈然としません。この企画とタイアップしたNHKスペシャル「日本人はるかな旅」で、縄文人を形成した北方からの民の移動を過大に言い過ぎて専門家の間で問題視されたことがありました。逆に、国立遺伝学研の遺伝学電子博物館「遺伝子からわかる人の進化」の「縄文人骨からの解読」も「約6000年前に日本列島の中心部(現在の埼玉県)に住んでいた縄文人は、現代の東南アジア人と共通の起源を持つという可能性が示唆される」と興味深くはあっても断片的なデータです。

 2004年の「理戦78」に所収の論文「ブレンド人種・日本人の誕生」(藤尾慎一郎・国立歴史民族博物館)は先史考古学の立場で研究の流れが全体として見えるよう提示し、なかなかにチャーミングです。縄文文化の華、三内丸山遺跡の時代は現代で言う地球温暖化が進んだ時期で、北国青森なのにクリ林を果樹園のように管理し、主食としていました。この時期、西日本は暑すぎて人口は少なかったようで、東北の繁栄は数千年続いたのに寒冷化で気温が元に戻り始めると崩壊してしまいます。そして稲作がもたらされ、富の蓄積により戦争が起き始めるのです。「縄文人と弥生人、どっちが幸せ?」と筆者は問いかけます。縄文人と渡来人の遺伝子はどれくらいの割合で現代日本人に伝わっているのかも論点です。

 いわゆる「科研費」、日本学術振興会科学研究費補助金による「更新世から縄文・弥生期にかけての日本人の変遷に関する総合的研究」が2005〜2009年度の期間で進行しています。「日本人形成過程のシナリオ」にある疑問、問題点をどこまで解き明かせるのか注目です。例えば、縄文人はかなり長期、1万年くらい孤立したためにアジア周辺に近親集団が見あたらない古いモンゴロイドのようです。私も以前に書いたように成人T細胞白血病ウイルスを母系垂直感染で長年保持し、同じウイルスを持つ集団がカリブ海やパプアニューギニアで見られる不思議な人たちです。一方、寒冷期に耐える体づくりをした新モンゴロイドの弥生期渡来人の出自もよく分かりません。研究班からは「2010年3月に、本研究班が再構築した現代日本人形成過程のシナリオを登載する予定ですので、ご期待下さい」とあります。

 ブログやウェブでの声も欠かせませんね。研究班の一人、篠田謙一さんの著書をパラフレーズし論じている「日本人になった祖先たち」や、最近の類書の評論が面白い「日本人の遺伝子(+言語系統とヒト移住)」もリストに加えておきます。日本を「単一民族国家」と考える一部政治家の愚かしさは論じるまでもありません。アイヌや沖縄の人たちに縄文人の血が濃いのは事実ですが、Y染色体の研究者からは日本人遺伝子の半分は縄文人由来との見方すら出されているのです。

 ナショナル・ジオグラフィックの「ジェノグラフィック・プロジェクト」が2005年に5年間かけて「世界各地で数十万人のDNAサンプルを収集・解析し、人類がどのように地球上に広がったかを探る」と発表しています。このプロジェクトで興味深いのは百ドル弱のキットを買って、頬の内側から採取したサンプルを提供すると、自分の先祖がたどった移動の歴史を知ることが出来る点です。もちろん、この費用にはプロジェクトへ寄付の意味も含まれています。世界各地の先住民からはデータ量が大きい血液サンプルを集めることになりますから色々と批判もあるようですが、日本の研究だけが進んでも周辺地域のデータが薄い現状では意味が無いことを考えると、とてもありがたいプロジェクトだと思えます。2010年には上記の研究班と合わせて、我々のルーツ探しの視界が一挙に開けたら楽しいですね。期待して待ちましょう。