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2年延期でも完成は無理?六ケ所再処理工場

 2兆2000億円を投じながら完成が13年遅れている青森の六ケ所核燃料再処理工場について、さらに2年の延期をする見通しとマスコミが一斉に報じました。朝日新聞の「六ケ所・核燃再処理工場、完成2年延期へ 原燃方針」は「処理過程で出る高レベル放射性廃棄物をガラスに閉じこめる『固化試験』でトラブルが続出。このため、炉の温度を細かく調整するための大幅な改修が必要と判断」としています。しかし、この延期で完成が保証されるのか、極めて疑わしいのです。

 朝日新聞青森版の「原燃 試運転終了を2年延期へ」は「原燃は、溶融炉内の温度管理のノウハウをさらに高めるとして、模擬廃液を使った試験でデータを蓄える方針。県幹部は『れんが落下は、放射性廃液をいきなり使って試験をしたため起きたのではないか。模擬廃液での検証に長期間かけ、工場完成につながる試運転には当面入るべきではない』と指摘した」とも伝えています。日本原燃の技術レベルの悲惨さがあらわになって、行政側も不信感を高めています。

 昨年の第180回「敗因は何と工学知らず:六ケ所再処理工場」で高レベル放射性廃液のガラス溶融炉に「実証されていない新方式を採用した時点で、工学とはかけ離れた『ロマンの世界』に移ってしまいました。ブレークスルーすべき要素技術があるなら、実プラントの建設ではなく、まず研究室で実証すべきです」と指摘したように、実用技術として確立していない方式を大型の実機に採用した点に根本的な問題があるのです。

 最近になって、東海村にある実規模試験装置で細かな温度管理をすればうまく動作する場合があると知れたようです。その細かな温度管理のために大幅な改修をしようというのですが、プラントの現場は既に高レベル放射性廃液で汚染され、人間が立ち入れない「死の空間」になってしまいました。大幅改修を遠隔操作でしなければなりません。これまでの試運転でのドタバタぶりを見れば、改修が成功し、安定した運転が続けられる可能性は低いと思えます。昨年、津島衆院議員が「なぜ国産技術にこだわるのか。自信がなかったら外国の技術を取り入れるべきだ」と主張しました。2年も延期するなら運転実績がある方式を新規に導入するべきです。

 高速増殖炉「もんじゅ」での炉心装置落下事故への対処が行き詰まっている問題といい、国策原子力開発には技術的な常識を持つ人材が欠けていると断ぜざるを得ません。巨費を投じているのですから、民間なら失敗を許されないケースです。


超々楽観主義!! もんじゅの事故トラブル想定

 重さ3トンもの装置を原子炉内に落下させた高速増殖炉「もんじゅ」では、落下による損傷は大丈夫か確認するにも不透明な高温の金属ナトリウム液の中では調べようがないことを「もんじゅの炉心用装置落下、死んだも同然に」でお伝えしました。こんな大きなモノでなく、小さな部品などを落とすことは軽水炉ではしばしばあります。冷却材は秒速数メートルの高速で炉内や配管を巡るので小部品でも炉内を傷つけ、危険です。回収せずに運転するわけにいきません。軽水炉なら透明な水の中ですから発見は容易ですが、もんじゅではどう考えられているのか、運転再開を前に公表されている「事故・トラブル等の事例とその対応集」で確認してみると、驚くべき事に全く考慮されていないのでした。

 何かのモノが落下して行方不明になる事態がどの項目にも見あたりません。「燃料出入機グリッパの故障」や「燃料集合体の変形」の項目では今回のようなつかみ損ねや引き抜けないケースが扱われていますが、落としてしまう事態は全く想定されていません。操作をやり直せばよいとの想定です。また、小部品が落ちてしまうような失敗はありえないと考えられているようです。この超々楽観主義で巨大設備の原発を長期に運転する気なのでしょうか。

 軽水炉の例ではこんな落下物もあります。「5号機 燃料装荷作業中における原子炉内への異物落下について」(中部電力)は「午前3時45分頃、燃料装荷作業中に、燃料交換機上で燃料の移動状況の監視に使用していた双眼鏡から接眼部の部品(大きさ直径約2cm)が外れ、原子炉内へ落下しました」とし「当該部品は炉心シュラウドの上部フランジ部で発見され、同日午前9時20分に回収しました」と報告しています。

 あらゆる部品に落下防止策を施していたとしても、何が起きるか分からないのが現実のプラントです。3トンの重量装置落下でなくて、ちょっとしたミスで物を落としても発見不能になり、もんじゅの運転は出来なくなるようですから、運転不能の事態は遅かれ早かれ到来する運命でした。マスメディアはつかみ部の異常など落下原因の方に目を向けていますが、問題にすべき点を間違えています。


もんじゅの炉心用装置落下、死んだも同然に

 福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」で26日、重さ3.3トンの炉心用装置が原子炉容器内に落下する事故がありました。福井新聞が28日、「もんじゅ、復旧作業長期化も 炉内中継装置落下」と伝えるなど、深刻になる兆しが現れています。現時点では異常は現れていませんが、運転を再開して原子炉容器が大丈夫か調べることが至難なのです。

 この炉内中継装置はもんじゅ特有のもので、ネット上で調べると高度情報科学技術研究機構にある「図3 原子炉内での燃料交換と移送」 が分かりやすそうです。
 炉内中継装置と示されている筒の下に落ちた本体があり、移送ポットや中継ラックを支えているのでしょう。核燃料を交換する装置から受け取って炉外へ搬出する中継ぎ役の装置です。作業が終わって撤去する際に、途中でグリップが外れて落下していますから、おそらく図の位置付近まで戻っているはずです。

 「状態確認は、原子炉容器内にファイバースコープやCCDカメラを挿入し、グリッパーの外観をまず調べる。異常がなければ、グリッパーを操作し、開閉などの作動に問題がないかを確かめる」「その上で、落下したとみられる炉内中継装置上部の状態をファイバースコープなどで確認し、さらにグリッパーを下げて同装置の位置を調査する。これらの後に、グリッパーが付いた同装置の収納設備を取り外し、目視でグリッパーを詳しく点検する」「原子力機構は『すべての状態確認を終えるめどは分からない』としている」

 原子炉容器内は軽水炉のように水で満たされているのではなくて、高温の液体金属ナトリウムですから不透明で目視するなど困難です。それでも装置の上部は対象範囲が狭いので何とかなるでしょうが、落下で衝撃音がした炉心周辺部の損傷状況をどうやって確認するのでしょうか。そんな深い場所までファイバースコープやCCDカメラを下ろしての細かい位置制御は難しく、不透明な液体中で目視確認をして意味があるのか、大きな疑問があります。

 気になってTwitterを見たら、批判の嵐です。その中に「高速増殖実験炉『常陽』の事故とその重大性」の参照を求める発言がありました。もんじゅと同じナトリウム冷却の常陽でも機器の破損事故があったのに、不透明であるために発見も対処も遅れたといいます。「そもそも『もんじゅ』では、究極の事故=炉心崩壊事故対策として、ナトリウム液位を炉心上面が見えるところまで下げられない構造になっている。破損を見つけること自体できない」。今回の損傷場所はさらに深いのです。

 この落下事故で、もんじゅは事実上、死んだも同然になりました。

 【参照】第187回「信頼性無し、もんじゅ運転再開は愚の骨頂」


「理系が文系より高給」京大さん、それは無茶

 朝日新聞の「『理系は文系より年収が100万円高い』 京大など調査」を見て、困ったものだと思いました。統計調査の基本、母集団の整備が出来ていないで結論を急ぐ典型的な悪例です。インターネット調査で1600人調べたと言い、京大が入ってちゃんとした研究に見えるのだから始末が悪いですね。理系と文系の収入を比較したければ、人事院が毎年している職種別民間給与実態調査が利用できます。以下に平成21年職種別民間給与実態調査「表6 職種別、年齢階層別平均給与月額」からの抜粋を掲げます。

 平均給与月額(企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上)
         40−44歳     48−52歳    56歳以上  
 大学教授    650,857円    702,766円   777,336円
 事務部長    660,954円    689,061円   668,078円
 支店長     680,126円    816,230円   726,787円
 研究部長    589,116円    703,444円   711,956円
 技術部長     589,236円    663,353円   646,283円
 工場長     505,738円    660,290円   733,238円
 医科長     1,270,432円    1,304,497円  1,266,670円
 医師     1,096,285円   1,282,693円  1,209,025円
 事務課長    582,429円    596,976円
 事務係長    451,844円
 技術課長    536,488円    580,412円
 技術係長    458,603円

 いかがでしょうか。医療関係を除けば、依然として文系が理系よりも高給である状況に変化はありません。事務部長や支店長の方が技術系より優遇されています。40〜44歳の課長でも事務と技術で4万6000円の差が出ていて、これは結構大きいと思います。記事にある「20〜60代の1632人(平均年齢43歳)を分析したところ、文系出身988人の平均年収は583万円だったのに対し、理系出身644人は681万円だった」はこの調査と全く相容れません。きちんとした公的な調査があるのにインターネット調査に頼るのは無茶、無謀です。

 この表は「インターネットで読み解く!」第143回「巨額な発明対価判決が映すもの」で使った平成8年職種別民間給与実態調査と形を合わせていますから、部長級以上では過去13年をはさんだ比較が出来ます。比べてみると56歳以上の事務部長(793,534円)や支店長(807,680円)が、現在では大幅に給与カットされていると知れます。不況による幹部社員の給与カットかも知れませんが、理系側はあまり目立ちません。多少は理系・文系の給与格差が縮小しているようです。