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英EU強硬離脱は議会阻止可能、米新政権は暴れ馬

 年明け早々、トランプ政権に移行の米国とEU強硬離脱表明の英国から大騒がせですが、全く違う先行きと考えるべきです。英国の無茶は議会に阻止させる伏線であり、米国のは無謀無展望の波乱時代幕開けと言うべきです。トランプ大統領が就任する前の発言は諸外国からは本意かどうか不明、あるいは手加減して受け止められていて、米国内外の自動車メーカーのトランプ発言への順応は商い人ゆえの過剰反応です。一方、英国のメイ首相表明は名分が立ってとても格好が良い半面、実行は無理です。首相が離脱には議会の承認を求めるとしただけでポンド急騰を生み出しました。

 昨年の第533回「永遠に言い出せぬEU離脱通告、現状凍結しかない英」で指摘したように、マイルドな離脱になるよう条件面で厄介な交渉をして2年の交渉期限を超えて破談になり、英国が裸でEUから放り出されるのが最も深刻な結果を生みます。日経新聞の《「開かれた英国」守れるか EUから強硬離脱へ》が伝えるように、《正味の交渉期間は1年半ほど。EU側の交渉責任者、欧州委員会のバルニエ首席交渉官は英側との最終合意の目標を「18年10月」としている。EUと英国の双方の議会の承認手続きに半年程度はかかるためだ》としたら、すっきり強硬離脱が良いのです。

 国民投票でEU離脱判断した民意に沿えますし、強硬離脱では例えば貿易協定を世界各国と離脱後に結び直さねばならず、金融機関が英国で許可を取ればEU域内で自由に営業できる制度が利用できなくなるなど経済的な打撃があまりに大きすぎると考える議会が実際には阻止してくれます。

 一方のトランプ氏、新政権の閣僚が米国議会の承認を得るために公聴会で述べている発言とはかけ離れたトーンでツイートしまくっています。20日の就任式以降はアメリカ大統領としての発言になるのに数日間で軟着陸できるのか疑問です。先日の記者会見を契機に大統領選挙からのマスメディアとの戦争が再開されましたし、自分の商売への外国からの利益供与が疑惑にならないか、ガードは著しく甘いと報じられています。


国にも原発事故責任、無原則な東電救済を許すな

 福島原発事故の対処費用が21.5兆円にも膨れ上がり、その7割は東京電力が負担する絵空事が閣議決定されました。疑問符を付けるしか能がない日本のメディアは、国にも原発事故責任がある事実を忘れたようです。事故後に東電が全ての費用負担をする枠組みが造られて国の責任が隠されました。今回も仕切りをしている経済産業省こそ無能な規制機関だった原子力安全・保安院を抱えていた「原発事故の戦犯」です。既に除染に直接の税金投入が始まり、将来は東電負担分が国民負担に転嫁されるのが必至なのに、「福島原発事故の責任は誰にも取らせない」との原子力ムラの総意が貫徹されている現実をマスメディアは看破すべきです。社会の木鐸として役に立たないこと夥しいと申し上げます。

 20日に出された東京電力改革・1F問題委員会の《東電改革提言(案)》から引用した資金繰り図です。総額22兆円あって閣議決定の21.5兆円が違うのは、除染に含まれている国負担の中間貯蔵施設費2兆円を1.6兆円に減額、さらに賠償金も7.9兆円に圧縮したからです。《廃炉は東京電力の改革努力で対応し》《賠償は、原発事故への対応に関する制度不備を反省しつつ、託送制度を活用した備え不足分の回収はするものの、託送料金の合理化等を同時に実施し、新電力への安価な電力提供を行う》《除染・中間貯蔵は、東京電力株式の売却益の拡大と国の予算措置によって対応する、ことから、今回の対応を全体で見れば、総じて電力料金の値上げとならない》と苦しい言い訳が付いています。

 東電負担15.9兆円が実現できると真面目に考えている官僚がいるとは思えません。除染の4兆円は政府が買った東電株1兆円を大幅に高く売れると想定したものだし、廃炉の8兆円は東電の事業合理化で生み出す「打ち出の小槌」があるとの説明になっています。出来ないことが目に見えており、将来、国民負担に転嫁されるでしょう。

 9月の第541回「東電破綻を救済なら福島原発事故の責任を明確に」でこう主張した全体状況は変わりません。

 《確かに事故は東電が起こしましたが、安全審査をして運転にゴーサインを出し、日常的にも運転・訓練の監督をしていたのは国です。また、事故後1年で書いた第300回「福島事故責任は誰にあるか、判明事実から究明」で具体的に挙げただけでも、するべきことさえしていれば事故の進展が食い止められる可能性がありました。その後、論点は増えています。誰にも責任を取らせないのが政府から原子力学会まで原子力ムラの総意でしたが、何兆円も新たに国民が持つなら国にも大きな責任があったと認めるべきです。それなら国民も理解するでしょうし、では過失の責任者は誰だったかが当然、問われます》

 ところが、メディアの反応が奇妙です。政府擁護が使命になっている読売新聞は《【社説】原発事故処理費 東電改革の実行力が問われる》で「未曽有の事故を完全に収束させるためには、資金の手当てなどで持続可能な仕組みとすることが何より重要だ」「有識者会議が指摘した改革の方向性は妥当である」と全く問題が無いとする姿勢です。

 朝日新聞は《東電へ3度目救済策 閣議決定》で《数千億円かかると見られる帰還困難区域の除染は「例外」だ。「まちづくり」の名目で復興予算を投じ、汚染者負担の原則を適用せず、東電に負担を求めない。山本公一環境相は20日、「避難された方の強い思いを受け止めての決定だ」と述べた。賠償でも、今回の新電力を巻き込んだ負担発生で、加害者が「無限」に責任を負う大原則は明確に崩れた。原発事故から来年で6年。責任の所在は、あいまいになるばかりだ》と憂うだけです。

 辛うじて毎日新聞が《帰還困難区域 除染に国費300億円投入…来年度予算計上》で《大阪市立大の除本理史(よけもと・まさふみ)教授(環境政策論)は「東電が負担すべき費用を国が肩代わりするのなら、国は原発事故の責任を認め、政策の転換や事故の検証を進めた上でないと理屈が通らない」と指摘する》との識者談話を盛り込んでいます。

 東電がもう負担に耐えられないとギブアップして始まった議論が、形だけさらに大きな負担を負わせて決着する――ジャーナリズムがこんな虚偽虚飾に加担してはいけません。正面から国の政策が行き詰まった点を問い質し、国の福島原発事故責任を明確にするよう求めるのがマスメディアの仕事です。


日本以上に非婚化・少子化が進むアジア工業国群

 貧乏人の子だくさんを続けるアフリカと一線を画し工業化を成し遂げたアジアは、追っていた日本以上の非婚化・少子化を抱え込みました。この秋学期に関西学院大で講義して国際学部生なのに知らないのに驚きました。BRICsは知っているのに、20世紀に目覚ましかった「アジア四小龍」を知らない学生が大半です。先進国化した大龍、日本を追った香港、シンガポール、韓国、台湾のことであり、今やタイやマレーシア、ベトナムなども工業化を進めています。人口問題はかなりの時間が経過しないと表面化しません。先日リリースした第544回「東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる」はその非婚化・少子化の現れであり、講義で使った資料で諸国事情を解説しておきます。

 アジア諸国での非婚化がどう進んだか分かる一覧表をネット上で見つけました。各国女性「25-29歳」と「30-34歳」の未婚率を1990年、2000年、2010年で推移が見えます。脚注にあるように様々なデータを参照しなければ出来ない労作です。『図解でわかる ざっくりASEAN: 一体化を強める東南アジア諸国の“今”を知る』(秀和システム刊)から「図表2 ASEANなどの女性の未婚率」を引用です。台湾のデータが欠けていたので、別の資料から2009年分だけ補い、空欄になっていたマレーシアのところに挿入しました。

 国別に歩みが随分と違っています。シンガポールや香港は30-34歳層の未婚率が早くから2割前後に達していたのに韓国は20年間で急上昇しました。2010年前後の30-34歳未婚率は、アジア四小龍で香港36%、台湾35.9%、韓国29%、シンガポール25%であり日本34%を凌ぐほどです。タイではアジア四小龍を追うように未婚が増えていますが、インドネシアは一桁のままです。ベトナムも未婚率が高まっていません。インドネシア6%やベトナム8%の一桁状態は日本の1980年前後の姿です。

 この結果、2011年における合計特殊出生率は日本1.39に対してシンガポール1.24、韓国1.23、台湾1.16、香港1.09に低下、一人っ子政策に加えて工業化が進んだ中国・上海は0.89でした。人口を維持できる出生率を人口置換水準と呼び、若年死亡率で変動します。現在の日本の人口置換水準は「2.07」であり、衛生状態を考慮すると大雑把に「2.1」あれば長期的にその国の人口を保てると考えて下さい。アジア四小龍は遥かに下回っていますから急激な高齢化が起きつつあります。タイもそれを追います。

 そこでは生産年齢人口が減り、現役世代が支えなければならない高齢者人口が急増します。第544回「東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる」に掲げた「アジアと欧米の老年人口指数推移」グラフはまさにそれを表しています。アジアでは欧米のような婚外子があまり存在せず、子育てが共稼ぎ家庭でも女性側に大きな負担になります。工業化で社会進出した女性が非婚化すれば少子化は必然です。一方で工業化できていないアフリカ諸国は人口増加を続け、今は2億人もいないナイジェリアが2050年には4億人を超えて米国を抜きインド、中国に次ぎます。

 アジア四小龍は1人当たりGDPが2万ドルを超えていて、それなりに富んだ社会を築いていますが、1万ドルにも達していない中国は生産年齢人口減少でアルゼンチンなどの挫折を招いた「中所得国の罠」に陥りつつあります。生産年齢人口減を補える技術革新のメドは立っていません。老いを支える年金制度にも問題があり、第482回「国家のエゴが歪ませた中国年金制度は大火薬庫」インターネットで読み解く!)で「中国メディアの報道では2030年ごろに制度崩壊しかねないとされますが、現状でもボロボロと申し上げて良いでしょう。このままなら都市部労働者の半分は無年金で老後を迎えるしかありませんし、農村部で新たに始まった年金制度は月額で千円もなく社会保障になりません」と指摘しました。


大統領弾劾、韓国メディアは権力監視失敗に責任を

 朴槿恵(パク・クネ)大統領と崔順実(チェ・スンシル)友人による国政壟断で弾劾が発動されました。しかし、報じる韓国メディアの他人事ぶりに目を覆いたくなります。権力監視に失敗したメディアの責任こそ問われるべきです。報道に《チェ・スンシルがこの国の大統領だった》《秘書室長にも会わずに政権を運営していた朴大統領》と恐るべき見出しが掲げられていますが、この4年、大統領を身近で取材して何も見えなかった、嗅ぎつけられなかった、おのれの不明を恥じる姿勢がありません。セウォル号事故をめぐって『沈没報道の韓国メディア、海洋警察の劣悪さ無視』[BM時評] で批判したのが想起されます。韓国メディアには大きな欠陥がありそうです。

 ハンギョレ新聞の《チェ・スンシルがこの国の大統領だった》は《2014年チョン・ユンフェ文書流出事件当時、パク・グヮンチョン元警正は検察で「我が国の権力序列はチェ・スンシルが1位、チョン・ユンフェが2位、朴大統領は3位に過ぎない」と供述した。検察関係者は「(少なくとも)チェ氏が1位というのは当たっている」として、「チェ氏が事実上の大統領だった。国家を運営していた」とまで話した》と伝えました。過去に感じ取るべき兆候はあったのに自らは何もしなかったと告白しているだけです。

 朝鮮日報の《【社説】秘書室長にも会わずに政権を運営していた朴大統領》の憤慨も虚しい気がします。

 《金淇春(キム・ギチュン)元大統領秘書室長は7日に行われた国会での聴聞会(証人喚問)で、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領への業務報告について「必要なときは週に2回やっていた。週に1回も顔を見ないこともあった」と証言した》《国民が抱く大統領の1日の生活のイメージは、朝一番は本館の執務室で秘書室長から報告を受けて始まるというものではないだろうか。朴大統領以外の全ての大統領は実際にそうしてきた。9年3カ月にわたり故・朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の秘書室長を務めた金正濂(キム・ジョンリョム)氏によると、在任中は毎朝金氏が主席秘書官会議を開催し、朴正熙大統領が登庁するとその内容を直ちに口頭で報告していたという。ところが今の朴大統領在任中にこの常識は覆されたのだ》

 政治の中枢から遠い庶民が嘆くなら理解出来ます。市民社会で権力監視を任務にしている大手メディアが嘆くなら「愚か者」と呼ぶしかありません。私も元新聞記者として、政権がどう運営されているのか、関心を持たなかったのか、問いただしたくなります。細部への関心から重大な問題が掘り起こされることがしばしばあるのです。

 韓国の国民には他人に法を守れと要求しても自分の行動は勝手とする傾向があると指摘したのが第477回「安全になれぬ韓国、手抜き勝手の国民意識が原因」 でした。大統領弾劾を「名誉革命」とか「市民革命」とか韓国では盛り上がっていますが、海外メディアで同調して評価するところはありません。歴代の大統領周辺で繰り返される腐敗を根絶するには、国民もメディアも法治国家として整然と自らの務めを果たす当たり前の状態にならねばなりません。


東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる

 韓国の生産年齢人口(15〜64歳)が2017年から減少に転じると発表されました。東アジア諸国では日本が1995年にピーク、次いで中国が2011年、台湾が2015年に最高を記録して減り始めており、4カ国そろって下り坂に入りました。減り方が急速なのも共通しています。社会の急な高齢化を反映しており、この機会にアジア諸国と欧米主要国について、現役世代である生産年齢人口に対する65歳以上の高齢者人口の割合を示す老年人口指数を国連推計で2050年までグラフにしてみました。少子高齢化、女性の社会進出による非婚化を抱えたアジア工業国は2015年に大きな曲がり角にある点が明瞭になりました。

 20世紀は欧米より老年人口指数が低かった日本が1995年以降、猛烈なカーブで上昇していきました。このカーブと同じ勢いで2015年から韓国とシンガポールが急上昇します。いや、踊り場がある日本に比べて一直線の上昇ぶりで、2050年には日本の近くに迫ります。タイもそれに近い勢いです。2050年の指数を並べると、日本70.9%、韓国65.8%、シンガポール61.6%、タイ52.5%です。

 中国は46.7%に留まっているものの、実は実態を表していません。中国は都市部の退職年齢が男性60歳、女性50歳(管理職は55歳)で日本よりも若いため60歳以上が年金対象になっています。中国社会科学院人口・労働経済研究所の2015年末の発表によると、2050年時点で15〜59歳人口に対する60歳以上人口の割合は75%にもなり、日本以上なのです。退職年齢の引き上げは大きな課題ですが、この超不人気政策を実行するのは国情から至難です。

 50%は現役2人で高齢者1人を支えるラインです。日本は2025年に突破です。中国が退職年齢を引き上げられなければ2035年には軽く突破の勢いです。修羅場はそんなに遠い未来ではありません。第482回「国家のエゴが歪ませた中国年金制度は大火薬庫」で「中国メディアの報道では2030年ごろに制度崩壊しかねないとされますが、現状でもボロボロと申し上げて良いでしょう。このままなら都市部労働者の半分は無年金で老後を迎えるしかありませんし、農村部で新たに始まった年金制度は月額で千円もなく社会保障になりません」と指摘した実態があります。

 先進国で米英仏は人口を維持、または増やしていくので50%を超えない落ち着いた状況です。ドイツだけはアジア工業国のグループに入っていますが、第497回「先進国で人口減少は日本だけに、独は難民受容」で紹介した難民大量受容が順調に進めば状況が変わってきます。アジアでもマレーシア、インドネシア、インドは2050年でも現役4〜5人で高齢者1人を支える水準です。

 朝鮮日報の《「3763万人」韓国の生産年齢人口は今年がピーク、来年から減少》は《活発に経済活動を行う生産年齢人口(15−64歳)は今年の3763万人をピークに来年から減少する。20年以降は毎年30万人ずつ急減し、65年には2062万人に減る見通しだ》と急速な変化を伝えます。社会が急速に老いていくのを放置できないと警鐘を鳴らす社説などが韓国で増えています。

 また大和総研グループの《中国経済 生産年齢人口急減への対応》も《中国社会科学院人口・労働経済研究所が2015年12月に発表した「人口と労働緑書−中国人口と労働問題報告No16」(主編:蔡ホウ、張車偉)によると、中国の生産年齢(15歳〜59歳)人口は2011年の9.41億人をピークに減少し、2023年には9億人以下に、2050年には6.51億人に急減するとしている。生産年齢人口が全人口に占める割合は7割弱から5割に急低下する計算である》と伝えています。

 実際に中国で2011年以降、生産年齢人口(15〜59歳)が毎年500万人ほども減っ行きました。現役が減り、年金を受ける世代が毎年大量に増えていくわけですから「富む前に老いる」不安が現実化しています。日本も現役2人で高齢者1人を支える状況になる前に国家百年の計を真剣に考えるべきです。2045年には現役1.5人で高齢者1人を支える窮状になるのですから。