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東電破綻を救済なら福島原発事故の責任を明確に

 経済産業省が「東京電力改革・1F問題委員会」を立ち上げ、事実上破綻している東電の救済に乗り出しました。東電が事故のツケを全て払うから、誰にも事故の責任を取らせず済ませた責任所在が再浮上せざるを得ません。政府の狙いは責任あやふやな現状を変えずに何兆円もの資金を用立てる「妙案」をひねり出すことでしょう。《東電の経営改革 有識者の委員会で検討開始へ》と報じたNHKなどメディアの多くは事態の本質を覆い隠す政府に同調する動きですが、先月の第536回「東電資金破綻の現実を認めぬ政府と既成メディア」で指摘したように、もともとの枠組みが間違っており、電気料金しか収入がない東電が全て払う虚構を維持できなくなっただけなのです。

 経済産業省の《東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会)の設置について》は回りくどい言い方しか出来ません。

 《原発事故に伴う費用が増大する中、福島復興と事故収束への責任を果たすため、東京電力はいかなる経営改革をすべきか。原子力の社会的信頼を取り戻すため、事故を起こした東京電力はいかなる経営改革をすべきか。自由化の下で需要の構造的縮小が続く中、世界レベルの生産性水準を達成し、福島復興と国民への還元につなげるため、東京電力はいかなる経営改革をすべきか》

 《これらの課題への回答について、福島県の方々が安心し、国民が納得し、昼夜問わず第一線を支え続ける「現場」が気概を持って働ける解を見つけなければなりません。東電改革の姿は、電力産業の将来を示し、この改革とパッケージで整備する国の制度改革は、被災者救済と事故炉廃炉促進のための制度となります。東電改革は、福島復興、原子力事業、原子力政策の根幹的課題です》

 しかし、10日ほど前にテレビ朝日が暴露していました。《“国民負担”8兆円超を検討 原発の廃炉・賠償で》はこう伝えました。

 《政府は、原発の廃炉費用などのために新た 8兆円余りという莫大(ばくだい)な費用を利用者に負担させる形で調整に入ったことが分かりました。そのうち、福島第一原発の廃炉に4兆円、賠償に3兆円。また、今後、原発の廃炉費用が足りなくなるとして1.3兆円を充てるとしています》

 これが「東京電力改革」の内実なのです。利用者に負担とは主に電気料金を上げる方法であり、広く国民負担になるしかありません。

 確かに事故は東電が起こしましたが、安全審査をして運転にゴーサインを出し、日常的にも運転・訓練の監督をしていたのは国です。また、事故後1年で書いた第300回「福島事故責任は誰にあるか、判明事実から究明」で具体的に挙げただけでも、するべきことさえしていれば事故の進展が食い止められる可能性がありました。その後、論点は増えています。誰にも責任を取らせないのが政府から原子力学会まで原子力ムラの総意でしたが、何兆円も新たに国民が持つなら国にも大きな責任があったと認めるべきです。それなら国民も理解するでしょうし、では過失の責任者は誰だったかが当然、問われます。


もんじゅ廃炉より決定的な核燃再処理工場の迷走

 高速増殖炉もんじゅは年内に廃炉決定の見通しとメディアが報じています。それでも核燃料サイクル政策は維持だと伝えられますが、六ケ所村の再処理工場が新規制基準適合審査で迷路にハマった現実が見えないようです。2015年11月に完工時期を2018年度上期に延期し、2年前に当たる来月には日本原燃から原子力規制委に重大事故の想定や安全対策の説明を終えるつもりだったのに見通しは立っていません。普通ならば事業者の説明に対して規制委側から突っ込みがあり、施設の改善や追加が生じるのですが、審査の流れを見ていると規制委が求める技術レベルに原燃側が達していない感があります。国策会社として大甘に遇されてきたツケが噴出です。

 重大事故時には核爆発に至りかねないほど危険と主張してきたのですから、もんじゅ(福井・敦賀)にケリが付く点は歓迎します。しかし、廃炉にしてもMOX燃料としてプルトニウムを燃やすとか、新しい高速炉を開発するから構わないと伝えられる政府の議論はサイクル政策維持には枝葉末節です。再処理工場の23回目の完工延期が決まる直前に書いた第504回「核燃サイクルは破綻目前、国策に責任者なし」で新規制基準適合審査の「日暮れて道遠し」ぶりを指摘しました。その後はどうなっているでしょうか。

 8月29日の第142回核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合での議事録が公開されています。2カ月間も審査を中断して準備をやり直しており、冒頭に原燃側から「本来、申請書に基づいて審査をいただくところ、検討が終了していることを条件に、申請書でお約束する内容を資料に記載し、それに沿って審査をいただいているにもかかわらず、お約束した事項を検討の進捗に応じて変更するなど、本来のお約束に沿っていない対応をしてしまったことに対しても指摘をいただきました。大変申し訳ございませんでした」とお詫びがあります。

 規制委に突っ込まれたらズルズルと対応策を変更し、また突っ込まれて変更を繰り返す審査過程がよく現れています。「10月中には何とか説明を終了させていただきまして」と述べてもいますが、規制委は「スケジュールありきということではなくて、厳正に審査を行っていくということでございますので、もし、審査会合を頻度高くやりたいということであれば、それにできる限り沿うように我々としてはやっていくつもりではありますけれども、会合を開いても中身がないということでは困るので、しっかりと中身のほうも詰めていただいて持ってきていただくということをしないと、御希望のスケジュールどおりにはいかないということになるかと思います」と甘い対応はしないと言明しています。

 この適合審査は原発に課した安全対策に準じた厳しいものです。審査会合のたびに参考資料《再処理施設 前回までの審査会合における主な論点と対応について》が提出されており、これまでウオッチしていると規制委が指摘の論点項目は増えるばかりです。一応は対応ができた項目は色付けされているものの未対応な白地の項目が多数残っています。今回の議事録でも原燃側が対応策を出すと、それに対する突っ込みがあって、また課題が残る悪循環に陥っています。

 廃炉にしたら終了のもんじゅよりも大変な状況なのです。核燃サイクルにとって再処理工場こそが根幹であるのに、大本営発表型の報道に堕してしまった在京メディアには見えていません。


役場集落等だけ再生?福島の「復興像」に疑問

 福島原発事故で放射能汚染された市町村復興に疑問符を打たざるを得ない動きが続いています。帰還困難区域の一部に拠点を設けて2022年をめどに敢えて帰還させる政府方針であり、モデル地区で森林除染する決定です。原発周辺の双葉町や大熊町などはほぼ全域が重度の汚染下にあり、事故後6年を経過しても年間線量が20ミリシーベルトまで下がらない帰還困難区域が広がっています。その中で役場周辺集落などを重点的に除染して住民帰還させ、町復興のシンボルにする政策意図です。しかしこれでは、チェルノブイリ事故での住民の移住基準であり、放射線障害防止法で定める放射線管理区域の設定基準でもある年間5ミリシーベルトを超える地域に役場集落がぽつんと存在することになります。

 朝日新聞の《帰還困難区域、22年めどに一部解除 役場周辺など限定》はこう伝えていますが、同じ町内で帰れる住民と帰れない住民の分断だけを問題としています。

 《政府は31日、東京電力福島第一原発の事故で放射線量が高くなった帰還困難区域(約2万4千人)の一部について、2022年をめどに避難指示を解除する方針を発表した。対象は役場周辺などに限定し、来年度から放射性物質の除染などを本格的に始める》《方針では、事故から5年以上たち、除染をしていなくても「区域の線量は低下している」と説明。放置したままだと風評被害が続き、福島の復興が遅れる懸念も示した。解除の対象は役場や駅、公民館の近くなど、もともと住宅が多く、帰還しやすい場所。法律で復興拠点として認定する》


 上図は《放射線量等分布マップ拡大サイト》に掲げられている昨年11月時点での地表1メートル空間線量率マップから引用です。年間20ミリシーベルトは3.8マイクロシーベルト/時に相当しますから、黄色以上の地域でまだ大きな広がりがあります。年間5ミリシーベルト相当の放射線管理区域では、福島以外なら法律によって飲食禁止であり、寝泊まりなど論外です。年間5ミリシーベルトはマップでは1マイクロシーベルト/時の濃いグリーン以上で、今なお広範囲であると知れます。放射線障害防止法が決めている公衆の被ばく限度年間1ミリシーベルト以下を満たすのは濃い青とやや濃い青の地域で、かなり原発から離れなければなりません。

 ただし《1年の間、屋外に毎日8時間、屋内に毎日16時間いると仮定した場合、木造の建屋の遮蔽係数0.4を考慮して約20ミリシーベルトになるような空間線量率は毎時3.8マイクロシーベルト(自然放射線による影響も含む。)である》と説明があるように、家屋による遮蔽が加味されて甘くなっています。2012年の『20mSvで居住可の無茶を何年も続けて良いのか』でも指摘したように、年間5ミリシーベルトを超えるような地域に「お帰りください」と勧めることは本来は法治国家として出来ないはずです。子どもを持つ家庭なら帰らないでしょう。

 また、現状でも除染作業で生じた汚染物質の貯蔵施設や処分場が決まらず、大量に野積みされているのに森林除染まで手を付けるとは愚かすぎます。NHKの《政府 森林除染のモデル地区4か所決定 秋から除染へ》は《森林の除染について、政府は、原則として住民の生活圏から20メートルの範囲などに限って行う方針でしたが、福島県などから除染地域の拡大を求める声が相次いだことから、避難指示区域とその周辺で10か所程度をモデル地区として選んで除染を行うことになりました》と報じています。

 除染の費用は政府が立替て東電に請求する建前であり、いくらでも膨らませられるかのようですが、第536回「東電資金破綻の現実を認めぬ政府と既成メディア」で明かしたように収入が電気料金しかなくなった東電に支払い能力はありません。いずれは国民負担にならざるを得ない先行きは見えており、広げたらきりがない除染にどこまでお金を掛けるのか、負担に耐えられるのか議論してから始めるべきです。相次いでいる格好を付けるばかりの「復興像」は本質的なところで間違っていると言えます。


生涯未婚率が劇的に改善か、2015国勢調査を分析

 将来は35%にもと予測された男性の生涯未婚率が25%に、女性も18%にとどまりそうです。昨年の国勢調査抽出速報を分析すると男女を問わず中年から高年の未婚率低下、即ち結婚がこれまでになく増えていました。各種の調査で「結婚できない」「結婚したくない」との声が若者を中心に聞こえていますが、中年に対する結婚意識調査は希であり、今回の変化を説明してくれる調査が見当たりません。この5年間を見回して結婚に向かう背景を考えれば、東日本大震災の後で人と人の絆を求める志向が高まった点は挙げられるでしょう。20年来、国勢調査で生涯未婚率の分析をして来て激変と言えるトレンド変化に出会い、にわかに信じられない思いがして10月の全体集計発表が待たれます。


 2000年以降の調査で得られた未婚率を5歳毎の年齢区分で並べました。国勢調査は5年毎に実施されるので、同じ世代の集団は5年後にはひとつ右下に現れます。男性で40〜44歳の欄を見て下さい。未婚率は2000年「18.4」、2005年「22.0」、2010年「28.6」、2015年「29.3」と増え続けています。変化は無いと判断してはいけません。2015年「29.3」の集団は2010年には35〜39歳で「35.6」だったのですから、5年間で6.3ポイントも未婚率を減らしたのです。この計算結果を「同世代で5年間の未婚率低下」として右側に並べました。

 表で黄色の部分が未婚率低下が著しく、注目されます。「2000→2005」と「2005→2010」の動きを見れば男性の40歳以上は「もう結婚を諦めた」と判断できる状況でした。未婚率低下がプラスになっている部分がありますが、調査漏れなどで起きる統計誤差なので無視して下さい。

 「2010→2015」で未婚率を男性40〜44歳が6.3ポイント、45〜49歳が3.4ポイント、50〜54歳でも2.1ポイントも減らしたのは画期的だと言えます。この中高年層での結婚が盛んになれば生涯未婚率は10ポイントも下がります。生涯未婚率は50歳時点の未婚率なので高年の動向は計算に入りませんが、55歳以上でも結婚する人が明らかに増えています。

 女性についても40歳以上は「結婚を諦めた」状況だったのに一気に活性化しています。40〜44歳が4.0ポイント、45〜49歳が2.1ポイント、50〜54歳でも1.2ポイントも未婚率を減らしました。加えて35〜39歳が注目です。過去には8ポイント程度しか未婚率を減らさなかったのに11.2ポイント減と二桁に乗せました。

 全体的に見て男女ともに以前の世代よりも結婚が遅れていた層が一気に駆け込み結婚に走った印象です。この傾向は、高齢初産になり子どもをつくるのが難しそうな女性40代以上にまで及んでいます。

 これまでの国勢調査で観察された傾向は2013年の第368回「生涯未婚率は男35%、女27%にも:少子化対策無力」にまとめてあります。現に2015年調査で50〜54歳の未婚率が男で20.3%、女で11.4%と、それぞれ20%、10%の大台の乗っています。従来通りの傾向なら将来は男35%、女27%へと突き進むはずでしたが、今回調査は中年段階で大ブレーキが掛かると示しました。その結果、私の試算では男25%、女18%程度で生涯未婚率は頭を打つようです。


急拡大する中国ロボット産業は脅威か実態探る

 中国は世界最大の産業用ロボット市場になり、国をあげてロボット産業を育成し千社もメーカーが出来ました。独ロボット大手クーカの買収にも手を出す急拡大ぶりが脅威になるか、最近続く報道から実態を探ってみます。2015年に世界の産業用ロボット市場で売られたのは24万8000台、この内、6万7000台が中国に導入されています。中国が世界一の市場になったのは2013年からであり、2018年には15万台と2倍以上になると予測されています。世界産業用ロボット市場の推移と2015年の各国シェアをグラフで見ましょう。


 今世紀に入ってしばらく停滞していたのに2011年から世界市場が急拡大しています。2011-2012年は日米が引っ張ったのに対して2013年からは中国が躍り出ました。2015年で中国が27%を占め、今後はさらに大きな市場になっていきます。

 しかし、2015年に導入された中国のロボットは海外製品が圧倒的でした。サーチナ《中国の産業用ロボット市場は世界最大、だが市場は外資メーカーのもの》がこう伝えました。

 《15年の中国の産業用ロボット市場におけるシェアは、日本のファナックが18%、ドイツのクーカが14%、スウェーデンのABBが13.5%、安川電機が12%、中国を除くその他のメーカーが合わせて34.5%であり、中国メーカーのシェアは合計でも8%に過ぎない》

 アップルからiPhone組み立てを請け負うフォックスコンが単純労働による人海戦術で増産を凌いだ結果、多数の自殺者を出した悲劇は記憶に残っています。そのフォックスコンが従業員11万人が働く崑山工場で6万人を何千台もの産業ロボットで置き換えると5月に発表しています。製品の質を安定させるためにも、また生産年齢人口が頭を打ち減少期に入った人手不足対策としても活用され始めたのです。

 しかし、全体では好意的に見ているウォールストリートジャーナル《【寄稿】到来する中国のロボット革命 成長力と競争力に貢献か》の記述を見ても、現在のロボット導入が初歩的な段階にある点は明瞭です。

 《中国がロボット革命を支持したのは遅かった。中国では製造業労働者1万人当たりロボット台数は依然としてわずか36台だ。これに対し日本では、1万人当たり315台、韓国では同478台だ。しかし中国はこの差を縮めるべく大胆に動いている。中国政府は労働者1万人に対するロボット台数を2020年までに100台以上に引き上げる目標を設定した》

 昨年の第481回「中国の夢、技術強国化は構造的に阻まれている」で指摘したように、中国の自主ブランド自動車メーカーの多くが自前のエンジンを生産できません。ロボットで言えば、力を伝え動きを制御する高度な減速機を造れていません。形にならないアフターサービスにお金を払わない国民性も大きな妨げになるでしょう。それにもかかわらず40ものロボット工業団地が地方で相互に連絡もなく作られ、バラバラに動き出しています。中国自身には世界と戦える技術はありません。

 そんな中で中国家電大手の美的集団が今月、大手ロボットメーカー、独クーカへの株式公開買い付けで94.55%の株を獲得したのは衝撃的でした。美的集団は本社としてクーカに干渉せず、独占禁止法に関する審査を経て来年3月にも買収完了の意向だといいますが、ニューズウィーク《中国美的の独クーカ買収、自由貿易派メルケル首相のジレンマに》が伝える大問題が残っています。ドイツ政府が強力に進めたい「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の鍵になる企業だからです。

 《ドイツは自由貿易を掲げているものの、国内の一部ビジネスリーダーは、美的によるクーカ買収計画が「インダストリー4.0」を推し進める国の努力に水を差すのではないか、と懸念している。独IT業界のある幹部は匿名を条件に、クーカの技術が「インダストリー4.0」の中核であるにもかかわらず、もっと大きな騒動になっていないことに驚いていると語った》

 例えば日本大手のファナックを中国が買収となれば黙って見過ごされるとは考えにくいと断言できます。ドイツの対外貿易法には戦略的に重要な企業を保護するための拒否権があり、今は沈黙しているメルケル政権がどう出るかは分かりません。