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マスメディアによる「私刑」の様相すら

 民主党の小沢幹事長をめぐる政治資金疑惑は小沢氏本人には嫌疑不十分による不起訴、秘書3人は政治資金規正法違反(虚偽記載)での起訴で決着しました。検察側が想定していた裏献金のような「実質犯罪」は摘発できず、虚偽記載も「億円単位の巨額だから悪質」との但し書き付き形式犯です。ところが、検察の尻馬に乗って突っ走っていたマスメディアは、振り上げた拳の下ろし方が分からなくなっています。刑事罰に問えなくとも「政治責任がある」と論じていて、「私刑」の様相すら呈し始めています。朝日新聞と読売新聞の世論調査で、鳩山内閣の支持率が下がって初めて不支持が上回る結果になりました。

 ジャーナリズムの仕事には見えていないことを明かす重要な要素があります。しかし、その結果が刑事事件に発展するのか、国会などの場で論戦の対象になるのか、そこまで仕切る必要もなければ権限もありません。東京地検特捜部が処分決定にあたって行った異例の記者会見について、メディアは「はぐらかすばかり」と斜に構えた伝え方をしました。しかし、記者会見を敢えてした特捜部に対して文句を付けるのなら、疑惑報道と称して自社で取材した疑惑ネタを検察からリークされたがごとく流したメディアも説明責任を果たす記者会見をするべきなのです。もちろんそんなことは出来ません。だからこそ、公的な捜査に区切りがついた今、追及が仕事である野党に任せて、メディアは距離を置くべきです。国会で論議すべき中心項目は危機的な経済運営や医療・年金制度、農業と貿易などで盛りだくさんです。

 秘書3人の逮捕、起訴は重大だと野党は主張していますが、政治資金の記載漏れや間違いが無い政治家を捜す方が難しいと言われるのが現状です。この程度の案件で現職の国会議員まで逮捕できるようになり、議員辞職が要求されるようになると、メディアの役目は検察の横暴をチェックすることでなければならないと思います。「摘発基準を下げた検察に追従はメディアの自殺行為」で危惧していたことが現実になりそうな予感がします。


トヨタにあった安全技術思想の独善に驚く

 米国での「踏み込んだアクセルが戻らない」リコールに続いて、いまや主力になったハイブリッド車「プリウス」でブレーキが効かない瞬間が出来る問題が相次いでトヨタ自動車を襲っています。4日に記者会見で安全担当の常務が「運転者と車の感覚の違い」という弁明をしているのを聞いて、工学部出身で科学部が長く、人間と機械のヒューマンインターフェースに関心を持ってきた私には違和感がありました。5日夜、これから豊田章男社長が記者会見する段階で、気になる情報をまとめておきます。まずメルマガJMMの第446回 「疑惑のアクセルペダル、どうしたトヨタ?」(from 911/USAレポート / 冷泉 彰彦)で読んだ指摘です。

 クルマの歴史で「長い間ブレーキを踏むと『油圧』によって、その力が四輪に伝えられるようになっていたのですが、最近の車はブレーキも電気仕掛けになりました」「アクセルもブレーキも電子化された車の場合に、仮に『アクセルが引っかかって暴走した』場合に、ブレーキを踏むとどうなるでしょう? ここに設計思想の問題が出てきます。多くのメーカーは、『アクセルとブレーキが同時に踏まれるのは異常だから、ブレーキを優先して車を停める』方向に動くような仕様にしています。ところが、トヨタの場合は違うらしいのです」「加速中にブレーキを利かせると『ブレーキが焼き付いて制動力を失う危険』があるからと、アクセルと同時に踏まれた場合はブレーキの利きを弱くしているようなのです」

 新たに問題化したブレーキ無効については、このように説明されています。凍結した路面でブレーキをかけると滑りが発生する場面では、通常路面でクルマの運動エネルギーを電気として回収する回生ブレーキから、効きが良い油圧ブレーキに変えねばなりません。この切り替えのタイミングに遅れがあって運転者にブレーキが効かない瞬間があると感じられるようなのです。それが1秒間に満たない時間であってもクルマは確実に動いています。これをトヨタは欠陥ではなく、クルマの仕様だと言い張っていました。

 二つのケースを並べると、広く消費者に提供している商品、製品について、起きる事態は常に安全側に倒れるようにしておく思想が欠けていたことは明白です。トヨタにこのような安全技術思想の独善があったのです。

 「Japan Blogs Net」での巡回なら「トヨタプリウスリコールに見る日本的問題、抗がん剤の副作用」(生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ)はこう主張しています。

 「素晴らしい製品ならすばらしい物作りの成果をうることができればあとは無言でもいいのだ、素晴らしい修理能力と整備能力があれば、無言でもいいのだ、こういう日本の海外での伝統はもう百年前からあるのです」「今回のように、いっぽうで米当局がとことんのところで何を考えているのかそれをつかむ能力がトヨタはかなり弱かったのでしょう。そして自己の物作りの能力への過信があったに違いありません。コンピュータと実際のブレーキ部分の接点でのトラブルと聞くとまさに弱点の部分でしょう。しかしそれでも外国での折衝能力、危機への研ぎ澄ました感覚があればここまでの大問題にならなかったでしょう。でもこれはトヨタだけの問題でなく、日本の全体での問題なのでしょう」


生涯未婚率急増への注目と日米・貧困で非婚化

 私のサイトにある第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」(2006年)をはじめとした非婚化についての記事が、最近しばしば多くのアクセスを集めます。先週末もNHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死” 3万2千人の衝撃〜」をきっかけに大量の方が検索して来られました。家族をつくらずに死んでいく人が急増していく様が伝えられ「2030年の生涯未婚は女性で4人に1人、男性で3人に1人」と予測されているというのですが、この予測を一番早く言い始めたのは私のところだと思います。

 推計は過去の国勢調査によっています。方法の詳細は上記の記事をご覧いただくとして結論部分のグラフを掲げておきます。2005年の国勢調査時点の世代別に生涯未婚率はこのようになる可能性が高いのです。


 生涯未婚率は人口学の概念で、女性が結婚しても子どもが生まれる可能性が少なくなる50歳時点での未婚率です。人口変動への影響が無視できる年齢ということです。60歳を過ぎてからの初婚もありえますが、実際の数字としてはわずかです。2030年の生涯未婚率とは2005年で25歳が50歳になる時点ですから、グラフの右端、20代後半が相当しています。男性は33.5%、女性は28.1%です。30代後半の男性でも4人に1人は生涯未婚であることが分かります。

 非婚化は以前は少子化と対で語られることが多かったのですが、最近は単独でも、あるいは若い層の貧困化と関連づけてよく論じられます。非正規雇用が半数にもなった国内の若い世代ばかりでなく、貧富の差が大きい米国でも若者の未来は明るくないとされます。「中岡望の目からウロコのアメリカ 」の「金融危機でアメリカ人の生活はどう変わったか:消えたアメリカン・ドリーム」が、労働組合のナショナル・センターであるAFL−CIO(米労働総同盟産別会議)の報告「若い労働者−失われた10年」から引用しています。

 「35歳以下の労働者の34%が十分な所得がないために家族と同居しており、10年前と比べるとはるかに大きな雇用不安を感じており、医療保険に加入するのも無理だと答えている。25%の若い労働者は毎月の支払いをするだけの収入がないと答え、半分以上が未来に希望を感じられないと答えている」「この10年間で若者の機会が失われ、彼らは生きていくのに精一杯である。結婚を断念し、子供を産むのを先延ばしし、いつまでも大人になれない状況が続いている」。この記事ではまた、金融危機が米国の大学を直撃し、雇用だけでなく学生生活も苦しくなっている状況が語られています。

 非婚化について国勢調査を利用して書き始めたのは1997年の第1回「空前の生涯独身時代」からです。このほか国際結婚や離婚の状況まで含めた人口の動きを追う記事が、インターネットで読み解く!「人口・歴史」分野に集められています。


2010年1月のエントリー一覧

1/31 デジタル放送録画規制は最悪、呪縛脱し思う
1/28 アップルのタブレットPC、やはりエポックメーキング
1/26 新聞有料電子版、日経とデイスポの落差鮮烈
1/24 続・失敗国家ランクと紙消費量のぴたり
1/23 後ろ向き新聞業界のもの知らず、本当に心配になる
1/20 摘発基準を下げた検察に追従はメディアの自殺行為
1/17 スズキとVWのクルマ強者連合が走り出した
1/15 ハイチ地震の惨状をグーグル・アースでつぶさに
1/14 グーグル対中国政府の戦い、一気に本格化
1/12アップル以外もタブレット端末ラッシュ、でも国内は…
1/11 アジアと生きるしかなくも簡単ではない
1/05 本当にタブレット型PCの年になった
1/03 [AV特集]ベルリンフィルに耐えるPC用オーディオ新春版
1/02 鳩山首相がブログとツイッター開始。メディアは?