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文科省主導の大学改革が国立大の首を絞める

 国立大に対する運営費交付金の継続的な削減が論文数・重要論文数の減少を招いている現状に、文科省主導の大学改革が決定的な打撃を与えそうです。新潟大教授が「年間研究費が3万円に激減」とブログで明かしました。独立法人化以前には研究費が40万円あり、以後やせ細りながらも昨年は10万円だったのに事務経費まで含めてこの金額では何も出来ません。毎年1%の運営費交付金削減は今年に限り見送られており、これほどの経費削減は文科省主導の改革で新学部創設が図られるからでしょう。地方の国立大は旧帝大などのように科研費が獲得できないでも、やり繰りして研究論文を生産してきたのですが、最終的に首が絞められたと言わざるを得ません。

 新潟大の三浦淳教授(ドイツ文学)が《新潟大学の話題/ ブラック化する新潟大学(その17)・・・激減する研究費と羊のごとき教員たち》でこう明かしています。

 《人文学部では教員一人あたりの研究費は3万円となった。前年度も前々年度比で激減していたわけだけど、2年続けての激減である。おさらいをすると、私が大学から1年間にもらう研究費は以下のように変遷してきている。

 2003年度まで   研究費約40万円 + 出張旅費6万円
 2004年度独法化 出張旅費を含めた研究教育費が20万円
 2015年度     同上 10万円
 2016年度     同上 3万円

 理学部の先生にうかがったところでは、理学部の教員も一人3万円だそうである。これも以前に書いたことだけど、この研究教育費には研究室で使うパソコン・プリンターのインク代など、事務的な経費も含まれている。如何ともしがたい額だ。万事に自腹を切らないとやっていけない状態になっている》

 財政難の新潟大は今年から2年間、退職する教員の補充を止めると公表しています。ところが、文科省が音頭を取っている理工系重視・社会的要請の高い分野に転換の大学改革で「創生学部」を新設すると発表しました。教育学部の文系学科を廃止し、新学部の「専任教員は、学内で再配置した10人と新規採用の8人で構成」と説明されているそうです。財政難の下での無理無茶が研究費激減を招いたと考えられます。新潟大に限った話ではなく、文科省から圧力を受けた他の国立大も一斉に学部の新設・改組に走っています。

 2年前の第435回「2016年に国立大の研究崩壊へ引き金が引かれる」、さらに1年前の第488回「国立大の2016年研究崩壊に在京メディア無理解」で心配した事態が極端な形で具現化してきました。ただでさえ疲弊しきった研究の現場には壊滅的な打撃です。


 この問題を継続的に追っていらっしゃる豊田長康さんが書いている《応用物理学会にて「日本の大学の研究競争力はなぜ弱くなったのか?」》からグラフ「人口あたり高等教育機関への公的研究資金の推移」を引用しました。「日本の高等教育機関への公的研究資金(人口あたり)は停滞し、多くの先進国との差が開いた」とのコメントが付けられています。日本より下はチェコ、スペインだけ。人口当り論文数で世界37位まで落ちたのも当然と思わせられるグラフです。


 理系論文について先進国で特異な落ち込みは知られていますが文系はどうでしょうか。文系の論文順位が出ている「主要14か国の分野別論文数の順位(その2)」も引用します。「経営・経済学や社会学でも韓国・台湾が上」とコメントされているように、人口が半分以下の韓国、5分の1の台湾に文系の研究論文数で劣っているのです。地方国立大では出張費も出ないところが多々あると聞きますから不思議ではありません。2004年の独立法人化から毎年、運営費交付金を削り続けた結果に対して文科省は危機感を見せません。世界と競える有力大学があれば良いとお考えのようですが、世界の大学ランキングから日本勢は姿を消しつつあります。


低い投票率続きでは自公政権を揺さぶれない

 参院選で民主党から党名を変えた民進に多少は復調の気配は見えましたが、自公政権に揺るぎはありません。政権交代があった2009年総選挙から国政選を並べると投票率の低下が著しく変動を起こす票が足りないのです。現政権への評価が高いのではなく、政権交代しても、ほとんど業績をあげられなかった民主党政権への失望がまだまだ尾を引いています。


 NHK調査の政党支持率と比例区での党派得票率を対比して、2009総選挙から2010参院選、2012総選挙、2013参院選、2016参院選と並べました。政党支持で目につくのは今回、無党派層が44.2%とかつて無い多さになっている点です。改憲の自民から離れる層があり、民進は民主の時代からの低迷を脱せず、維新の分裂もあって行き場がない無党派層が膨張しました。

 党派別得票率では自民35.9%・公明13.5%が3年前と変わらぬ強さを見せます。一方、民進が21.0%と前回13.8%のどん底を脱して上向き、共産は10.7%と国政選で着実に積み上げています。政党支持率以上の票積み上げに政権批判のトーンが読み取れます。

 朝日新聞の《参院選、「野党に魅力なかった」71% 朝日世論調査》は選挙結果について2択で質問し、《「安倍首相の政策が評価されたから」は15%で、「野党に魅力がなかったから」が71%に及んだ》と伝えました。この2択が適切か議論があるでしょうが、低投票率は説明されています。

 東京での復調を開票途中に『参院選速報、東京では民進党が自民党を逆転か』で伝えましたが、結局、東京の比例区得票率は自民34.4%に対して民進19.8%に終わりました。個人票で蓮舫候補の人気が高かった結果になっています。

1年半前に第461回「IMFは『失われた30年』認定、首相の強気は虚構」で紹介したようにアベノミクスは国際的には虚構に近いものです。最近の経済変動以前に馬脚は現れていました。しかし、そのアベノミクスに代わる経済政策を打ち出せない野党ではどうにもなりません。マスメディアも小手先の批判をするばかりでなく、本格的な政策提言が出来る体質に進まねばなりません。

 軍事力を捨てた戦後の日本が歩んできた科学技術立国の歩みが崩壊しつつあるのは第500回「大学ランク退潮は文科省が招いた研究低迷から」など一連の検証記事で明白にしました。この十年、知的な営みを象徴する論文数が減少し、人口当たりで見れば東欧の小国にも抜かれてどうするのかです。トップクラス大学だけ育てれば世界に勝てる――自公政権の恐るべき錯誤をマスメディアはきちんと批判できません。


参院選速報、東京では民進党が自民党を逆転か

 参院選の大勝に酔う自民党に冷水が浴びせられるかもしれません。有権者の1割がいる首都・東京でこれまでの国政選挙とはトーンが変わったのです。民主党から変わった民進党が自民を逆転したと考えられ速報します。全国区の集計には時間が掛かりますが、東京選挙区の候補者別得票を開票率99.07%の段階で主要党派別に合計して、過去の国政選での比例区党派別得票数と比較するグラフにしてみました。


 自民から民主へ政権交代があった2009年総選挙から2010年参院選、自民・公明に政権に戻る2012年総選挙、続く2013年参院選、それに今回の参院選候補者別得票計を比べています。2009総選挙での圧勝の後、民主党の東京での得票は下がり続け、2013参院選に至っては公明・共産・維新・みんなの党にも及ばぬ惨憺たる水準に落ち込みました。しかし、維新がかつての勢いを失くし、みんなの党が消える状況の中で変化が起きました。

 民進党代表代行で個人的な人気がある蓮舫候補がいるとはいえ、前回の東京選挙区で民主党候補2人を共倒れさせた状況とは明らかに違います。自民の2候補の合計票「1518043」を民進2候補の合計票「1627087」が上回っています。自民は選挙のたびに1524848全国的に議席数は伸ばしているのですが、実際の得票数はさして伸びておらず、今回は東京で減少に転じたようです。

 今回の参院選を改憲の是非、衆参「3分の2」と強引に結びつけるマスメディアの報道姿勢は私には違和感があるところです。改憲の手続きや党の姿勢には随分と差があります。有権者の反応は民進の復調に向かうとともに、得票数を増やしている与党の公明党にも改憲を阻む「平和の党」としての役割を付託しているように見えます。

 全国での状況は開票が全て終わってから試みますが、民進党の前途はそれでも楽観できません。2011年初、3月の東日本大震災の前に「『新政権を育てるのに失敗』年賀状での心配事」で警鐘を鳴らしました。《政権発足から1年以上を経過して、きちんとした政策ブレーンを形成できない民主党は叱責されるべきですが、既成メディアも自民党政権時代と違って政権批判ばかりでは駄目なことを知るべきでした》

 政権に就いたのに官僚を敵視するばかりで、官僚の使い方を知らない状況、政策ブレーンの形成不足はさほど改善されていないのではないでしょうか。安倍政権の暴走を止めるには心もとない限りです。マスメディアが政権の飼い犬化され、なすべき仕事をしていない現状では、2011年賀状の危惧は続いています。


永遠に言い出せぬEU離脱通告、現状凍結しかない英

 英国の国民投票でEU離脱が多数になったのはベルリンの壁崩壊に匹敵する衝撃を世界に与え経済激震かとも思わせたのですが、伝えられる情報を集約するとEU離脱通告は英首相が誰でも永遠に言い出せぬと考えられます。EU離脱派が離脱手順をきちんと考えていなかった杜撰さが明らかになっていますし「公約」が投票後に撤回されるなどボロボロです。スコットランドの独立、EUへの残留なども取り沙汰されているものの英国本体が動けないなら余波もあり得ません。離脱成立を前提にした各種の論説・予測は無意味になるでしょう。

 離脱派の中心人物でカリスマ的人気を誇るジョンソン前ロンドン市長が、キャメロン首相の後継を選ぶ保守党の党首選で6月末の登録締め切り直前に出馬を見送りを表明しました。党首選で残留派を中心に支持を集めているメイ内相は離脱派議員などでEUとの交渉を担う専門の省を作り交渉の準備を進めるとしていますが、これでは肩透かしもいいところです。

 EU離脱を実行したいのなら1972年のEU参加を決めた法律を変えるのが最初のハードルです。現状では英国下院の3分の2を残留派議員が占めると言われており、個々の議員は自分の政治的信条に則ればよく国民投票の結果に縛られていませんから、そもそもの出発点から危うい所です。

 さらにもしEUとの交渉は始めてしまえば2年でケリは付かないのは明白です。既にEU側から「英国はEU域内労働者の移動の自由を認める場合に限り、単一市場に参入することができる」とする強硬な声明が発表されており、英国国民投票の建前からは受け入れられません。交渉が難航するなら延長もありえますが、EU加盟27カ国の内で1国でも反対なら不可能です。交渉を始めてしまえば包括的な貿易協定なしにEUから追い出される結果が見えているのに、誰が英首相でもEU離脱通告は出来ないでしょう。

 国民投票で結果が出たのに従わないのは民主主義の否定とも言われますが、EUから裸で放り出された場合に生じる国民が受ける巨大な損失を前にEU離脱通告を急かす世論は形成されないでしょう。総選挙も再度の国民投票も難しいなら現状凍結しかないとい言わざるを得ません。宙ぶらりんが続くのは困ると言われても決めようがありません。

 30日付のフィナンシャル・タイムズの《英離脱、最善策は何もしないこと》は《現時点で最善の策は何もしないことだ。英国は、自らが望むものを考え抜いて決めなければならない。EUは移動の自由が果たして不可侵なのかどうか考えなければならない。英国は50条を発動するのを避けるべきだ。発動したら英国は影響力を失い、恐らくさらなる貿易協定がないまま2年以内にEUから追い出される》と主張しています。

 今回の国民投票の経緯を見ていると、問題とされたEUへの分担金と見返りの恩恵への精査や、移民問題での検証があまりにも杜撰に過ぎます。EUに加盟しているから生じている問題と大英帝国時代から引きずっている問題の切り分けも出来ていません。英国のマスメディアが読者・視聴者に果たすべき役割を怠ったと申し上げて良いでしょう。


隠蔽は東電だけか、在京メディアも責任を取れ

 福島原発事故で炉心溶融が隠蔽された問題の報告を読んで、東電の語るに落ちる無能さが再認識されました。無批判に隠蔽に乗っかった在京メディア各社も他人事のように報道すべきではなく、自らの責任も取るべきです。原発事故に際して公式の発表は福島現地の住民や国民に広く事態の真実を知らせるためにあるのです。その本分を外れて重大事態を軽く見せようとした東電、炉心溶融を口にした原子力安全・保安院の審議官を発表から外した政府も同罪ですし、メディア内部でも疑問の声が握りつぶされていたと聞きます。報道の自由世界ランキングを大幅に下げた国内メディアの覇気の無さはここから始まったのです。

 マニュアルに「炉心損傷割合が5%以上なら炉心溶融」と定められていたのに、5年後の今頃になってその判定基準が「発見」された不思議は、21日に公表された東電の《福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告問題に関する当社の対策について》でこう解明されています。

 《福島第一原子力発電所では、防災訓練は、予め日時が決められ、シナリオも用意されていたため、防災訓練に参加する緊急時対策班の要員らは、その都度、原災マニュアルを確認しなくても、対応することが可能であった》《本件事故当時の原災マニュアルに「炉心溶融」の判定基準が記載されていたことを知っていた者もいたが、限られた範囲の社員に止まっており》

 防災訓練で緊急時対策班員は原災マニュアルを読むなど自分で頭を使うことなく、シナリオに書いてある通りのお芝居をしていたと告白しています。だから少数の社員しかマニュアルの規定を知らなかったのです。「やったふり」をするものでしかない緊張感なし訓練が役に立つはずがありません。最初に爆発した1号機で、緊急時の命綱である「非常用復水器」を動かした経験者が皆無だった東電らしい、脱力感いっぱいの新「珍事実」です。

 事故当時の清水社長が「炉心溶融」など記載のメモを渡して「官邸からの指示によりこの言葉は使わないように」指示したとされる問題は、当時の枝野官房長官らが事実無根と猛反発していて尾を引きそうです。当時の菅首相も《東電第三者委員会委員長から「説明する義務はない」との返事》とブログで怒っています。当時の首相や官房長官に事情聴取せず、社長も指示を受けた詳しい経緯を説明できないままで「官邸からの指示」だけが一人歩きするのは異様です。ただし原子力安全・保安院が炉心溶融を知らないはずがなく、保安院内部で自主規制があったのは確かでしょう。


 事故発生から3日目に書いた第245回「福島第一原発3号機も炉心溶融、後手の連続」で掲げたグラフです。原発敷地境界で測定された放射線量(マイクロシーベルト毎時)が2日目「1050」と3日目「882」と大きく制限値500を超え、1号機に続き3号機でも炉心溶融は明確としています。これは当時、誰でも入手出来たデータです。

 朝日新聞の大阪本社で専門家に取材した結果をもとに東京本社に炉心溶融をアピールしたが、握りつぶされたと聞いています。朝日だけでなく在京メディアは政府・東電の発表以外は取材する気がなく、内部からの指摘さえ聞く耳を持たない状態を続けたのでした。いわゆる「大本営発表報道」に堕してしまい、2011年9月の第278回「説明責任を果たさない政府・東電・メディア」で指弾しました。東電を笑えない不始末が在京メディアにはあったのです。政治経済分野を含めて報道の自由は記者の精神的自由を構造的にスポイルしたために大きく損なわれたままです。